不妊治療のやめどきは、
どう考えればよいですか
不妊治療をいつやめるかに、全員に当てはまる決まった基準はありません。厚生労働省の資料も、不妊治療は妊娠・出産まで、あるいは治療をやめる決断をするまで続くものとしています。年齢、不妊の原因、これまでの治療の経過、からだと気持ちの負担、費用や仕事のことを合わせて、ご本人とパートナーの方が決めていきます。当院では、続けるか迷っている段階からご相談をうかがっています。
保険が使える年齢や胚移植の回数は、不妊治療の保険適用の記事にまとめています。
やめどきに、
決まった基準はありますか?
一律の基準はありません。治療の進み方も、かかる期間も、人によってまったく違うからです。
厚生労働省のハンドブックは、不妊治療の内容や期間は人によって状況がまったく異なるとしています。治療を始めてすぐに妊娠する場合もあれば、何年も治療を続ける場合もあります。そのうえで、不妊治療は妊娠・出産まで、あるいは治療をやめる決断をするまで続く、と書かれています。終わりの時期を、あらかじめ決めておく治療ではありません。
医学書でも、やめる時期に一律の基準はなく、年齢、不妊の原因やその程度、1回の治療でどのくらい見込みがあるかをもとに、一人ひとり判断するとされています。医学的なことに加えて、ご夫婦の暮らしや仕事のことも考えに入れます。
ハンドブックが紹介している調査では、仕事と治療を両立できずに治療をやめた方もいます。からだや見込みのことだけでなく、通院の負担から迷いが出てくるのも自然なことです。
年齢は、
どう関係しますか?
年齢が上がると、男女とも妊娠しにくくなります。そのため、年齢は考える材料のひとつになります。
日本産科婦人科学会は、女性は30歳を過ぎると妊娠するチカラ(妊孕性)が低下し始め、35歳を過ぎるとその低下が加速するとしています。おもな原因は、卵巣で卵子の数と質が低下することと、子宮筋腫や子宮内膜症などの病気が増えることです。男性も、35歳を過ぎると精子の質が徐々に低下するといわれています。
厚生労働省のハンドブックも、年齢が若いうちに治療を始めたほうが、1回あたりの妊娠・出産に至る確率は高い傾向があるとしています。学会は、女性が高齢の場合は、タイミング法から体外受精へと治療を進めるペースが早まるとしています。
ただし、何歳になったらやめる、という線が医学的に決まっているわけではありません。保険が使える年齢の上限も、治療を続けられる年齢の限界ではありません。年齢と卵子の関係は年齢と卵子の質の記事で取り上げています。
続けるか考えるとき、
何を材料にすればよいですか?
医学的な見通しと、からだ・気持ち・お金・暮らしの負担を、並べて考えます。
卵子が得られているか、受精や胚の育ち方はどうか、移植しても着床しないことや流産が続いていないか。経過の中に、次の治療で変えられる点が残っていないかを確かめます。
注射や採卵、通院の回数、結果を待つ時期のつらさ。続けるかどうかを考えるときは、どれくらい負担になっているかも大事な材料です。
保険で受けられる胚移植には回数の上限があります。上限に近づいたときに、自費で続けるかどうかを考える方もいます。費用は費用のページに載せています。
子どもを望む気持ちの強さや、治療の受け止め方は、ご夫婦でも違うことがあります。どこまで続けたいかを、それぞれの言葉で話しておくと、決めるときの迷いが小さくなります。
医学書では、まず改善できる点を確認し、それでも妊娠しない場合に一人ひとり決めていく考え方が示されています。続けたい方には、そのつど負担と見込みを確かめながら進めます。原因がはっきりしないまま、見込みの低い治療を長く続けないことも大切だとされています。
やめる前に、お休みするという
選び方はありますか?
あります。治療は途中でお休みすることも、終えることもできます。
結果が出ない周期が続いて気持ちが追いつかないとき、仕事が忙しい時期に入るときなどに、何周期かお休みしてから考え直す方もいます。お休みの間も、それまでの経過は記録に残しているので、再開するときはその続きからお話しできます。
ただ、年齢によって妊娠のしやすさは変わっていくので、お休みの長さは、年齢やこれまでの経過も見ながら決めます。お休みを考えたときに、診察でご相談ください。
治療を終えると決めたら、
何をすればよいですか?
凍結している胚があれば、保存を続けるか廃棄するかを決める手続きがあります。
当院で凍結した胚は、凍結した日、または前回の更新月から1年ごとに、保存を延ばすか廃棄するかの手続きをしていただきます。治療を終えると決めたときも、残っている胚をどうするかをパートナーの方と話し合って決めます。保存の詳しいことは胚凍結の記事で取り上げています。
治療をやめたあとで、気持ちの整理がつかないこともあります。終えるという決断も、ご本人とパートナーの方が考え抜いて選んだものです。そのあとのことも、診察や公的な相談窓口でお話しいただけます。
迷っているとき、
誰に相談できますか?
当院の診察のほか、都道府県などの「性と健康の相談センター」や、東京都の不妊・不育ホットラインで相談できます。
性と健康の相談センターでは、不妊症や不育症についての相談を受けています。東京都の不妊・不育ホットラインでは、同じ不妊で悩んだ経験のある方が、ピア(仲間)カウンセラーとして相談に応じています。男性も相談できます。窓口の日時や電話番号は妊活・不妊治療のストレスの相談先の記事にまとめています。
当院は質問のしやすい診察を心がけています。やめるかどうかはまだ決めていない、という段階でも構いません。気になっていることをそのままお話しください。パートナーと一緒に説明を聞きたいときは、受付でお申し出ください。
よくある質問
何歳になったら、やめたほうがよいですか?
年齢だけで決まる線はありません。年齢とともに妊娠しにくくなるのは確かなので、年齢と、これまでの経過や不妊の原因を合わせて考えます。
保険の回数を使い切ったら、治療は終わりですか?
保険で受けられる回数の上限は、治療を続けられるかどうかの限界ではありません。自費で続けるという選び方もあります。回数の数え方は、保険適用の記事にまとめています。
一度やめたら、もう再開できませんか?
再開できます。お休みや中断の間も、それまでの経過は記録に残しています。
夫婦で考えが違います。
子どもを望む気持ちの強さや治療の受け止め方は、ご夫婦でも違うことがあります。一緒に説明を聞きたいときは、受付でお申し出ください。
凍結した胚が残っています。やめるときはどうなりますか?
1年ごとの手続きで、保存を延ばすか廃棄するかを決めていただきます。どうするかは、パートナーの方と話し合って決めてください。
やめるかどうか、診察で相談してもよいですか?
ご相談ください。続けるか迷っている段階でも、お話をうかがいます。
監修・更新
監修:城南レディースクリニック品川 院長 岩﨑 信爾(日本生殖医学会認定 生殖医療専門医/日本産科婦人科学会認定 産婦人科専門医)
最終更新:2026年10月31日
この記事は一般的な医学情報をまとめたものです。個別の診断・治療方針は診察のうえでご説明します。
出典
厚生労働省「不妊治療と仕事の両立サポートハンドブック」(PDF)
公益社団法人 日本産科婦人科学会「不妊症」
こども家庭庁「性と健康の相談センター事業の概要」
東京都福祉局「東京都 不妊・不育ホットライン」
久慈直昭・京野廣一 編『今すぐ知りたい!不妊治療Q&A』医学書院(2019)