受精卵凍結とは、
どのような方法ですか?
体外受精・顕微授精でできた受精卵(胚)を凍らせて保存する方法です。
日本生殖医学会の解説によると、受精した胚は専用の凍結保護液に浸してから容器に入れ、マイナス196℃の液体窒素で保存します。この温度だと、生物の活動や化学反応はほとんど止まります。
体外受精は、卵巣刺激、採卵、受精、培養、胚凍結、胚移植という順に進みます。培養した胚をいったん凍結しておき、あとの周期に融かして子宮に戻すのが、凍結融解胚移植です。胚を凍結できるかどうかは、胚の状態によって変わります。
当院での体外受精の進め方は体外受精にまとめています。
なぜ受精卵を
凍結するのですか?
もともとは、双子や三つ子などの多胎妊娠を防ぐために始まった方法です。
日本生殖医学会の説明では、一度の採卵で胚がたくさんできても、子宮に戻すのは1個に絞ります。残りを凍結しておくことで、多胎妊娠のリスクを抑えられます。凍結しておいた胚を順番に使って、将来きょうだいを迎えることも考えられます。
いまは「全胚凍結」も広く行われています。採卵した周期には胚を戻さず、できた胚をすべて凍結して、あとの周期に融かして移植する方法です。日本生殖医学会は、この方法を選ぶ場合として2つを挙げています。
- 採卵した周期にそのまま戻すと、母体への負担やリスクが大きいとき
- 凍結した胚を戻したほうが着床しやすいと考えられるとき
日本産科婦人科学会も、胚をいったん凍結保存して、卵巣や子宮を休ませてから融かして移植する方法を紹介しています。日本生殖医学会の説明では、凍結融解胚移植は次の月経周期以降に行います。ホルモンを補うか自然の月経周期で、子宮内膜が妊娠に適した状態に育ったのを確かめてから胚を戻します。
卵子凍結とは、
何が違いますか?
凍らせるものが違いますし、目的も、保険の扱いも、同意が要る人も違います。
| 項目 | 受精卵(胚)凍結 | 卵子凍結(将来に備えて行うもの) |
|---|---|---|
| 凍らせるもの | 精子と受精させて育てた胚 | 受精させていない卵子 |
| 行う人 | 体外受精・顕微授精を受けている夫婦 | 今は妊娠を希望していないが、将来に備えたい女性(パートナーがいてもいなくても選べる) |
| 目的 | 移植する胚を絞り、残りをあとの周期で使う。全胚凍結として行うこともある | 将来の妊娠のための選択肢を残す |
| 保険 | 生殖補助医療の一部として保険の対象(年齢・回数の要件あり) | 自費診療 |
| 移植・延長・廃棄の判断 | 夫婦お二人の同意が要る | ご本人が決める(保存を続けるかどうかを定期的に確認) |
| 保存期間の考え方 | 延長できるのは、女性が妊娠できる年齢(一般的には閉経)まで | 当院では凍結保存した日から50歳の誕生日まで |
卵子凍結は、使うときに卵子を融かして、体外受精の流れのなかで受精させます。胚凍結は、受精と培養まで済ませた状態で保存しておく点が違います。どちらがよい・悪いということではなく、いまのご状況と目的によって選ぶ方法が変わります。
卵子凍結の年齢の目安と限界は卵子凍結のページでもご案内しています。
受精卵凍結に
保険は使えますか?
使えます。胚の凍結保存は、生殖補助医療の一部として保険の対象です。
保険では「胚凍結保存管理料」という費用がかかります。凍結を始めるときの金額は、凍らせる初期胚または胚盤胞の数で決まります。凍結から1年を過ぎて保管を続けるときは、1年に1回かかります。
以前は、保管の費用に保険が使えるのは、凍結した日から3年までとされていました。令和6年度の診療報酬改定で、この上限がなくなりました。古い資料や案内には「3年まで」と書かれていることがあります。
生殖補助医療を保険で受けるには、年齢と胚移植の回数に決まりがあります。くわしくは不妊治療の保険はどこまで使えますかで取り上げています。当院の金額は費用についての「胚凍結」に載せています。
保存期間や、
使うときの決まりはありますか?
保存を続けるには、期限ごとに延長の手続きが要ります。胚をどうするかは、夫婦お二人で決めていただきます。
日本生殖医学会の解説では、胚の保存期間は通常1年間で、多くの医療機関では決められた手続きをすれば延長できます。延長が認められるのは、女性が妊娠できる年齢のうち(一般的には閉経まで)に限られます。期限までに延長の手続きをしないと、契約にそって胚を廃棄する決まりの医療機関が多いようです。
同じ解説によると、凍結した胚はお二人のものです。移植も、延長も、廃棄も、お二人の同意がないとできません。どちらか一方でも同意していないときは、その胚を使った移植はできません。夫婦のどちらかが亡くなった場合や離婚した場合に、その胚を使って妊娠することも、いまは認められていません。
当院での保管の期間や更新のしかたは、診察でご説明します。
凍結した受精卵について、
知っておくことはありますか?
融かすときに胚が変性したり、災害などで失われたりすることがあります。
凍らせてから融かすまでのあいだに、胚が変性することがあります。融かしたあとの状態によっては、移植に使えないことがあります。
保存中に液体窒素の温度が何らかの原因で上がると、胚の細胞は死んでしまいます。地震や火事などで胚が失われることもあります。そのため学会は、万一のときにどうするかを、治療の前に同意書で確かめておくよう勧めています。
将来その胚を使いたいときは、期限が来る前に延長の手続きをしてください。
凍結保存した胚から生まれた子どもへの影響についても、日本生殖医学会が説明しています。これまでの研究で、健康の問題が起こる割合は高くならないことが確かめられています。
よくある質問
凍結した受精卵で、2人目を考えることはできますか?
一度の採卵でできた胚を順番に使って、きょうだいを迎えることも考えられます。保険の回数の数え方は保険の記事をご覧ください。
保存期間の延長をしないと、どうなりますか?
多くの医療機関では、契約にそって胚を廃棄することになっています。期限が来る前に手続きをしてください。
夫婦の一方の判断だけで移植できますか?
できません。移植・延長・廃棄のいずれにも、夫婦お二人の同意が要ります。
保管の費用は、何年目までかかりますか?
保管を続けるあいだは、1年を過ぎるごとに維持管理料がかかります。令和6年度の改定で、保険が使える年数の上限はなくなりました。
ほかの医療機関で凍結した受精卵を移せますか?
移送できます。担当医にお話しいただくか、お電話でご相談ください。
凍結した卵子を、あとで受精卵にすることはできますか?
できます。凍結した卵子を融かして、体外受精の流れのなかで受精させます。ただ、融かしたあとに全部の卵子が使えるとは限らないので、そのときの状態を見て決めます。
監修・更新
監修:城南レディースクリニック品川 院長 岩﨑 信爾(日本生殖医学会認定 生殖医療専門医/日本産科婦人科学会認定 産婦人科専門医)
最終更新:2026年9月19日
この記事は一般的な医学情報をまとめたものです。個別の診断・治療方針は診察のうえでご説明します。
出典
一般社団法人 日本生殖医学会「生殖医療Q&A:Q14.受精卵の凍結保存とはどんな治療ですか?」
一般社団法人 日本生殖医学会「生殖医療Q&A:Q12.体外受精とはどんな治療ですか?」
厚生労働省保険局医療課「令和6年度診療報酬改定の概要(医科全体版)」(PDF)
公益社団法人 日本産科婦人科学会「不妊症」