黄体機能不全とは、
どのような状態ですか
黄体機能不全は、排卵のあとにできる「黄体」から出る黄体ホルモン(プロゲステロン)が足りず、受精卵を迎えるための子宮内膜の準備が十分に進まないと考えられる状態です。基礎体温の高温期が短いことがきっかけで指摘されることがあります。ただ、基礎体温だけで決まるものではありません。排卵後の時期のホルモン検査などをあわせて確かめ、背景に排卵の不調がないかも見ていきます。
検査の結果の意味は、ほかの検査とあわせて診察でご説明します。
黄体とは、
何をしているのですか?
排卵のあとの卵巣にでき、黄体ホルモンを出して子宮内膜を整えます。
卵巣の中で育った卵胞から卵子が出ていくことを排卵といいます。卵子が出たあとの卵胞は「黄体」に変わり、黄体ホルモン(プロゲステロン)を出します。日本産科婦人科学会は、不妊症の検査で測るホルモンの一つとして、卵巣から出る黄体ホルモン(プロゲステロン)を挙げています。
黄体ホルモンには、体温を上げる働きがあります。排卵を境に基礎体温が低い時期(低温期)から高い時期(高温期)へ移るのは、このためです。日本生殖医学会は、月経周期が25日〜38日型で基礎体温が二相性であれば、排卵が起こっていると考えられると説明しています。
排卵してから次の月経が来るまでの時期を「黄体期」と呼びます。基礎体温でいえば、おおむね高温期にあたります。
黄体の働きが足りないと、
なぜ妊娠に関わるのですか?
受精卵が着床しにくくなったり、妊娠が続きにくくなったりすると考えられているからです。
受精卵(胚)が子宮の内膜にくっつくことを着床といい、着床できれば妊娠の成立です(日本産科婦人科学会)。黄体ホルモンは、着床に向けて子宮内膜を整え、妊娠が始まったあとも内膜を保つ役割を担っています。
黄体ホルモンが足りないと内膜の準備が十分に進まず、着床しにくくなったり、流産につながったりすることがあると、不妊治療の専門書では説明されています。
ただし、黄体機能不全が見つかったからといって、それだけで妊娠しにくい理由が説明できるとは限りません。ほかの検査とあわせて見ます。
高温期が短いと言われたら、
黄体機能不全ですか?
基礎体温だけでは決まりません。ひとつの目安です。
日本産科婦人科学会は、基礎体温をつけると排卵しているかどうか「おおよその見当」が付くと説明しています。基礎体温は、排卵の有無や黄体期の長さを知る手がかりになりますが、あくまで見当です。
専門書では、基礎体温の高温期が10日未満と短い場合に、黄体機能不全を疑う目安の一つとしています。一方で、体温は測る時刻や眠りの深さでもぶれますし、周期ごとに変わります。1周期だけ短かったからといって、そう決まるわけではありません。
反対に、きれいな二相性に見えても、卵胞から卵子がうまく出ていないことがあります。そのため、超音波検査で卵胞の様子を見ることも組み合わせます。体温表の読み方そのものは基礎体温の記事にまとめています。
黄体機能不全は診断そのものが難しく、はっきりした診断の基準が定まっていないとされています。高温期の短さを指摘されても、慌てずにご相談ください。
どのような検査で
確かめますか?
排卵後の時期に血液検査で黄体ホルモンを測り、基礎体温や超音波検査とあわせて見ます。
日本生殖医学会は、ホルモンの値は月経周期で変わるため、ホルモン検査は月経中や排卵後の黄体期に複数回行うと説明しています。黄体ホルモンは、排卵後の時期に測ってはじめて意味がわかる値です。
- 基礎体温:高温期の長さや体温の上がり方を見る手がかり
- 血液検査(ホルモン検査):黄体期の黄体ホルモンの値などを調べます
- 超音波検査:卵胞の育ち方や排卵の様子、子宮内膜の状態を見ます
黄体期の中ごろに黄体ホルモン(プロゲステロン)の値を測り、2〜3回続けて10ng/mL未満なら、黄体機能不全を疑う目安の一つとされています。ただし、これらの値が妊娠のしやすさと必ずしも結びつかないことも報告されています。値はひと周期の中でも変わるので、測った日や回数をふまえて読みます。
当院で受けられる検査の内容と時期は不妊検査に載せています。保険が使える検査と自費になる検査があり、どちらになるかは検査ごとに診察でご説明します。基礎体温表をつけている方は、初診のときにお持ちください(初めての方へ)。
背景には、
どのような原因がありますか?
排卵がうまく起こっていないことが背景にある場合が多いとされています。
黄体は排卵した卵胞からできるので、卵胞がよく育たないと、黄体の働きも弱くなりやすくなります。専門書では、排卵の不調がある方は黄体機能不全を一緒に起こしやすいとされています。
日本生殖医学会は、排卵障害の原因として、高プロラクチン血症、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)、過度なストレス、短期間での大幅な体重の減少などを挙げています。黄体機能不全を疑うときも、こうした背景がないかを確かめます。
- プロラクチンの値(高プロラクチン血症の記事)
- 甲状腺の働き
- 月経周期の長さや、排卵の時期(排卵日の記事)
背景にある原因がわかれば、まずそちらへの治療を考えます。
治療は
どのように考えますか?
背景の原因への治療と、黄体ホルモンを補う方法があります。進め方は検査の結果を見て一緒に決めます。
一般的には、次のような考え方があります。
- 排卵の不調を整える:卵胞がよく育つように、排卵を助ける治療を考えます
- 背景の原因を治す:プロラクチンや甲状腺の値に異常があれば、その治療を行います
- 黄体ホルモンを補う(黄体補充):排卵後の時期に、お薬で黄体ホルモンを補います
体外受精などの生殖補助医療では、黄体ホルモンを補う「黄体補充」が治療の流れの中に組み込まれています。これは黄体機能不全と診断されたかどうかとは別の話です。厚生労働省の資料でも、不妊治療の保険適用にあたって、生殖補助医療における黄体補充に使うお薬が示されています。
黄体補充の方法や費用は、組み合わせる治療によって変わるため、診察で治療の計画と一緒にお話しします。排卵の時期を見きわめるタイミング法と組み合わせることもあります。
よくある質問
高温期が短い周期が1回ありました。受診したほうがよいですか?
基礎体温は周期ごとにぶれるので、1回だけで決まるものではありません。気になる周期が続く場合や、妊娠を望んでいてなかなか授からない場合は、体温表を持ってご相談ください。
基礎体温をつけていなくても検査できますか?
つけていなくても受診できます。排卵の様子は超音波検査や血液検査でも確かめます。体温表がある方は初診のときにお持ちください。
黄体ホルモンの検査は、周期のいつ受けますか?
排卵後の時期(黄体期)に測ります。月経周期の長さによって日が変わるので、受ける日は診察でご案内します。
黄体機能不全と言われたら、妊娠できないのですか?
そうとは限りません。黄体機能不全は診断そのものが難しく、ほかの原因とあわせて見る必要があります。背景の原因への治療や黄体ホルモンを補う方法など、検査の結果を見て進め方をご相談します。
黄体ホルモンを補えば、必ず妊娠しやすくなりますか?
必ずというものではありません。妊娠には、卵子や精子、卵管、子宮など多くの条件が関わります。ほかの検査の結果とあわせて、治療の進め方を決めます。
体外受精をすると、黄体ホルモンのお薬を使いますか?
体外受精などでは、胚移植のあとに黄体ホルモンを補うのが一般的です。使うお薬や期間は治療の内容によって変わるので、診察でご説明します。
監修・更新
監修:城南レディースクリニック品川 院長 岩﨑 信爾(日本生殖医学会認定 生殖医療専門医/日本産科婦人科学会認定 産婦人科専門医)
最終更新:2026年10月31日
この記事は一般的な医学情報をまとめたものです。個別の診断・治療方針は診察のうえでご説明します。
出典
一般社団法人 日本生殖医学会「生殖医療Q&A:Q4.不妊症の原因にはどういうものがありますか?」
一般社団法人 日本生殖医学会「生殖医療Q&A:Q7.不妊症の検査はどこで、どんなことをするのですか?」
田村 博史「Q1 黄体機能不全の判定はどのようにすればよいですか?」臨床婦人科産科 70巻4号(2016年4月)
公益社団法人 日本産科婦人科学会「不妊症」
厚生労働省「不妊治療に関する支援について」
黒田恵司・竹田省・田中温 編『データから考える 不妊症・不育症治療 改訂第2版』メジカルビュー社(2022)