PPOSとは、
どのような方法ですか?
体外受精の卵巣刺激のあいだに、黄体ホルモンの飲み薬で排卵を抑える方法です。
体外受精では、採卵の前に注射薬で卵巣を刺激して、複数の卵胞を育てます。日本生殖医学会はこれを「調節卵巣刺激」と呼んでいます。刺激の途中で排卵が起きてしまうと卵子を採れなくなるので、育てるお薬とは別に、排卵を抑えるお薬を使います。
排卵を抑えるお薬にはいくつか種類があり、そのひとつが黄体ホルモン(プロゲスチン)の飲み薬です。これを使う刺激の方法を、英語の頭文字からPPOSと呼びます。国内では、黄体ホルモン剤のジドロゲステロンに「調節卵巣刺激下における早発排卵の防止」という効能が認められています。
排卵誘発剤そのものの種類や、刺激の方法の考え方は、排卵誘発剤とは?にまとめています。
なぜ黄体ホルモンで
排卵を抑えられるのですか?
排卵の引き金になるホルモンの急な上昇(LHサージ)を、黄体ホルモンが抑えるためです。
卵胞が育つと、脳の下垂体から黄体形成ホルモン(LH)が一気に出て、これが排卵の引き金になります。この急な上昇をLHサージと呼びます。
ジドロゲステロンの添付文書では、黄体ホルモンがLHサージを抑えることが動物の実験で確かめられており、ジドロゲステロンも同じ働きで、刺激中の早すぎる排卵を防ぐと考えられる、と説明されています。
どのような流れで
進みますか?
月経のはじめから飲み薬を始め、採卵の前まで続けます。胚はすべて凍結し、移植は別の周期に行います。
ジドロゲステロンの添付文書では、早発排卵を防ぐ目的で使うときは、月経周期の2〜5日目から飲み始め、卵胞を成熟させる誘発の当日まで続けることになっています。そのあいだ、卵胞を育てる注射も並行して使います。
卵胞を育てるお薬と一緒に、黄体ホルモンの飲み薬を続けて排卵を抑えます。
卵胞が育ったら、卵胞を成熟させるお薬を使ってから採卵します。
育った胚はすべて凍結します。この周期には移植しません。
別の周期に子宮の準備を整えて、凍結した胚を移植します。
胚の凍結については受精卵(胚)の凍結、移植の流れは胚移植のページにあります。
なぜ新鮮胚移植が
できないのですか?
刺激のあいだ黄体ホルモンを使うため、その周期の子宮内膜が移植に向かない状態になるからです。
黄体ホルモンは、本来は排卵のあとに出て子宮内膜を変化させるホルモンです。刺激の段階から飲むと、採卵のころには内膜がすでに変化してしまっていて、その周期に胚を戻すのには向きません。
そのため、ジドロゲステロンの添付文書では、早発排卵を防ぐ目的では「新鮮胚移植を予定していない場合のみに用いること」とされています。2025年に改められた生殖医療ガイドラインも、PPOSを、凍結した胚を移植することを前提にした刺激の方法として位置づけています。
PPOSを選ぶと、採卵した周期に移植することはできません。移植は早くても次の周期以降になります。治療の日程を考えるときは、この点もあわせてご相談ください。
注射の使い方は
変わりますか?
排卵を抑えるお薬が飲み薬になります。卵胞を育てる注射は、ほかの方法と同じように使います。
排卵を抑える方法には、刺激の途中から排卵を抑える注射を加える方法(GnRHアンタゴニスト法)などもあります。PPOSでは、この役割を黄体ホルモンの飲み薬が担います。
一方で、卵胞を育てるための注射薬は、PPOSでも使います。注射の種類や回数は、卵巣の反応を見ながら決めるので、方法の名前だけでは決まりません。
どのような方に
使いますか?
凍結した胚を移植する予定の方が対象です。卵巣の状態や、これまでの経過を見て決めます。
2025年の生殖医療ガイドラインは、PPOSを使うと、GnRH製剤を使う方法より卵巣過剰刺激症候群(OHSS)が起こりにくいとしています。OHSSは、刺激で卵巣が腫れてお腹や胸に水がたまる状態で、症状や予防の工夫は卵巣過剰刺激症候群(OHSS)にまとめています。
ただ、どの刺激の方法にも向き不向きがあります。採卵した周期に移植したい方にはPPOSは使えません。卵巣の状態を調べる検査の結果や年齢、これまでの治療の経過を見ながら、診察で相談して決めます。
よくある質問
PPOSでは、何のために黄体ホルモンを飲むのですか?
卵巣を刺激しているあいだに、採卵の前に排卵してしまうのを抑えるためです。
PPOSで採卵した周期に、胚を移植できますか?
できません。できた胚はすべて凍結して、次の周期以降に移植します。
飲み薬はいつからいつまで飲みますか?
月経のはじめのころから飲み始め、卵胞を成熟させるお薬を使う日まで続けます。始める日は診察でお伝えします。
PPOSなら注射はいりませんか?
卵胞を育てる注射は使います。飲み薬に置き換わるのは、排卵を抑えるお薬の部分です。
飲み忘れたときはどうすればよいですか?
自己判断で飲む量を変えずに、当院にご連絡ください。
お薬の費用はどこで確認できますか?
保険で受ける採卵では、その前に使った排卵誘発のお薬の費用を、採卵とは別に計算します。当院の目安は費用についてに載せています。
監修・更新
作成:城南レディースクリニック品川
最終更新:2026年10月31日
この記事は一般的な医学情報をまとめたものです。個別の診断・治療方針は診察のうえでご説明します。
出典
医薬品医療機器総合機構「デュファストン錠5mg 医療用医薬品 詳細表示」(ジドロゲステロンの添付文書)
日本生殖医学会「生殖医療Q&A:Q12.体外受精とはどんな治療ですか?」
厚生労働省保険局医療課「令和4年度診療報酬改定の概要 不妊Ⅱ(各論)」
『産科と婦人科』93巻8号 特集「ガイドラインから学ぶ!生殖医療アップデート」診断と治療社(2026)