トップコラム / 不妊治療の医療費控除と高額療養費

Column

不妊治療の医療費控除と高額療養費は、
どのようなしくみですか

高額療養費は健康保険の制度で、1か月の自己負担が上限額を超えた分が戻ります。医療費控除は税の制度で、1年間に支払った医療費をもとに所得税の控除を受けます。国税庁は、医師による診療等の対価として支払う不妊症の治療費と人工授精の費用を、医療費控除の対象としています。窓口も、健康保険と所轄の税務署(確定申告)の2つに分かれます。領収書は捨てずに保管してください。

ここでは制度のしくみだけを書いています。払い戻しや控除の額は人によって違いますので、個別の判断は、加入している健康保険や税務署にお尋ねください。

高額療養費と医療費控除は、
何が違いますか?

高額療養費は健康保険の給付で、医療費控除は所得税の控除です。窓口が違い、数える期間も違います。

2つの制度の違い(厚生労働省・協会けんぽ・国税庁の案内より)
項目高額療養費医療費控除
どんな制度か自己負担が上限額を超えた分が支給される支払った医療費をもとに、所得税の所得控除を受ける
数える期間同じ月ごと1月1日から12月31日までの1年間
手続きの窓口加入している健康保険所轄の税務署(確定申告)

2つは別の制度ですが、つながっている部分があります。国税庁の案内では、医療費控除の計算で、健康保険などから支給される高額療養費を「保険金などで補てんされる金額」として差し引きます。先に高額療養費の支給を確かめておくと、確定申告の準備が楽になります。

不妊治療のどこまでに保険が使えるかは、不妊治療の保険はどこまで使えますかで説明しています。

高額療養費は、
どのように計算されますか?

同じ月に支払った保険診療の自己負担が、年齢と所得で決まる上限額を超えたかどうかで見ます。

厚生労働省の説明では、高額療養費は、医療機関や薬局の窓口で支払う医療費が上限額を超えたときに、超えた額を支給する制度です。上限額は年齢や所得に応じて定められています。金額は、加入している健康保険の案内でご確認ください。

協会けんぽは、計算のしかたを次のように案内しています。

  • 自己負担額は医療機関ごとに計算し、同じ医療機関でも入院と外来は別に計算する
  • 処方せんで薬局から受け取った薬の自己負担は、処方せんを出した医療機関の分に合わせて計算する
  • 同じ月に世帯で複数の人が受診したときなどは、自己負担を世帯で合算できる(70歳未満の方は、一定額以上の自己負担に限る)

協会けんぽの案内では、保険外併用療養費の差額部分や、入院時の食事療養費などの自己負担は対象になりません。計算のもとになる総医療費は「保険適用される診察費用の総額」です。自費で受ける検査や先進医療の技術料のように保険が使えない費用は、この総医療費に入りません。そのため、高額療養費で見るのは保険診療の自己負担の部分です。

治療が何か月も続くと、
負担は変わりますか?

直近12か月に高額療養費の対象になった月が3か月以上あると、4か月目から上限額がさらに下がります。

この仕組みは「多数回該当」と呼ばれています。協会けんぽによると、多数回該当は同じ保険者での療養に適用され、健康保険が変わったときなどは月数が通算されません。

厚生労働省によると、令和8年8月から制度が変わり、月ごとの上限額が一人当たり医療費の伸びに応じて改定されたうえで、年単位の上限額(年間上限)が新たに設けられました。ここでいう「年間」は、8月から翌年7月までです。見直しの説明には、主に療養期間が短い方に追加の負担をお願いすることも書かれています。見直し後の月ごとの金額も、加入している健康保険の案内で確かめてください。協会けんぽは、年間上限額による払い戻しの申請を令和9年8月から始めると案内しています。

体外受精では、採卵や胚移植など段階ごとに費用がかかり、治療が何か月かにわたることもあります。どの月にいくら支払ったかを控えておくと、健康保険に問い合わせるときに役立ちます。

窓口での支払いを、
はじめから抑えることはできますか?

マイナ保険証を使うか、前もって「限度額適用認定証」の交付を受ける方法があります。

協会けんぽの案内によると、限度額適用認定証は、医療機関の窓口で支払う金額を自己負担限度額までに抑えるための証明書です。マイナ保険証を使うときは申請が要らず、オンライン資格確認によって限度額の情報が医療機関に伝わります。ただし、医療機関がオンライン資格確認を導入していることが前提です。

認定証を使うときは、前もって申請します。協会けんぽは、申請書を受け付けた月より前の月の認定証は出せないので、日程に余裕を持って出すよう案内しています。所得の区分によっては、別の申請書が要ることもあります。

手続きのしかたは、加入している健康保険(協会けんぽ・健康保険組合・国民健康保険など)によって違います。当院の窓口での取り扱いは、受付でお尋ねください。

不妊治療の費用は、
医療費控除の対象になりますか?

国税庁は、不妊症の治療費と人工授精の費用(医師による診療等の対価として支払うもの)を対象としています。

国税庁の案内では、医療費控除の対象になる医療費として、医師による診療や治療の対価、治療に必要な医薬品の購入の対価などが挙げられています。健康診断の費用は、原則として含まれません。

診療を受けるための通院費も対象です。タクシー代は含まれません(電車やバスが使えないときは対象です)。自家用車で通院するときのガソリン代や駐車場の料金も含まれません。

国税庁の質疑応答事例には、一般的な回答であり、具体的な事例では回答と異なる課税関係が生じることがあると添えられています。体外受精や、自費で受ける検査・卵子凍結などの費用が当てはまるかは、国税庁の案内か所轄の税務署でお尋ねください。

医療費控除の額は、1年間に支払った医療費から、保険金などで補てんされる金額と10万円(その年の総所得金額等が200万円未満の方は、その5パーセント)を差し引いて計算します(上限200万円)。生計を一にする配偶者や親族のために支払った医療費も対象です。

確定申告では、
何を準備しますか?

領収書をもとに「医療費控除の明細書」を作り、確定申告書に添付します。

01 領収書を集める

その年の1月1日から12月31日までに支払った医療費が対象です。まだ支払っていない医療費は、実際に支払った年の対象になります。

02 明細書を作る

領収書から「医療費控除の明細書」を作ります。健康保険から届く医療費通知を添付すると、明細書に書く手間が減ります。国税庁の「医療費集計フォーム」や「確定申告書等作成コーナー」も使えます。

03 申告する

明細書を添えた確定申告書を、所轄の税務署に出します。

04 領収書を保管する

確定申告期限等の5年後までは、税務署から領収書の提示や提出を求められることがあります。

当院の領収書も申告に使いますので、捨てずに保管してください。当院での費用は費用についてに載せています。

よくある質問

体外受精の費用も、医療費控除の対象になりますか?

国税庁は不妊症の治療費と人工授精の費用を対象としています。個々の治療が当てはまるかは、所轄の税務署にお尋ねください。

高額療養費は、どこに申請しますか?

加入している健康保険です。協会けんぽなら、ご加入の都道府県支部に申請書を出します。

高額療養費で戻ったお金は、医療費控除でどう扱いますか?

健康保険から支給される高額療養費は、支払った医療費から差し引いて計算します。

通院の交通費も、医療費控除に入りますか?

診療を受けるための通院費は対象です。電車やバスが使えるときのタクシー代や、自家用車のガソリン代・駐車場代は含まれません。

夫婦の医療費は、まとめて申告できますか?

生計を一にする配偶者のために支払った医療費は、医療費控除の対象になります。詳しくは税務署にお問い合わせください。

領収書は、いつまで保管すればよいですか?

確定申告期限等から5年を経過する日までは保管してください。この間、税務署から提示や提出を求められることがあります。

監修・更新

監修:城南レディースクリニック品川 院長 岩﨑 信爾(日本生殖医学会認定 生殖医療専門医/日本産科婦人科学会認定 産婦人科専門医)
最終更新:2026年9月19日
この記事は一般的な医学情報をまとめたものです。個別の診断・治療方針は診察のうえでご説明します。

出典

厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
全国健康保険協会「高額療養費」
全国健康保険協会「限度額適用認定証」
国税庁「不妊症の治療費・人工授精の費用」
国税庁 タックスアンサー「医療費を支払ったとき(医療費控除)」
国税庁 タックスアンサー「医療費控除の対象となる医療費」
いずれも2026年9月17日に確認しました。

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