不妊治療で双子(多胎)になるのは、
どのようなときですか
双子などの多胎妊娠は、排卵誘発剤で卵胞がいくつも育ったときや、体外受精で複数の胚を移植したときに起こることがあります。日本生殖医学会の説明では、多胎妊娠はお母さんにも赤ちゃんにも負担が大きく、妊娠高血圧症候群もそのひとつとされています。当院では卵胞の育ち方を確かめながら薬を調整し、移植する胚は原則1個にしています。
多胎妊娠とは、
どのような妊娠ですか?
双子や三つ子のように、一度に2人以上の赤ちゃんを妊娠することです。
日本生殖医学会は、体外受精の説明のなかで、多胎妊娠を「妊娠・分娩における母児リスクが高くなる」ものとして挙げています。お母さんと赤ちゃんの両方に関わるので、不妊治療では多胎を防ぐ工夫をしてきました。
不妊治療で多胎になるのは、
どのようなときですか?
排卵誘発で卵胞がいくつも育ったときと、体外受精で複数の胚を移植したときです。
日本生殖医学会によると、薬で卵胞がいくつも育つと、多胎妊娠や卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスクが高まります。卵巣を直接刺激する注射薬(ゴナドトロピン製剤)はよく効くぶん、こうしたリスクも高くなります。タイミング法や人工授精で排卵誘発剤を使うときも同じです。
2個以上の胚を移植すると、双子以上の妊娠になることがあります。
排卵誘発剤の種類と働きはタイミング法や人工授精のページに、体外受精のリスクは体外受精のページの「リスク・副作用」にあります。
多胎妊娠には、
どのようなリスクがありますか?
お母さんにも赤ちゃんにも、妊娠と出産の負担が大きくなるとされています。
そのひとつが妊娠高血圧症候群です。日本産科婦人科学会は、妊娠高血圧症候群になりやすい方として、糖尿病や高血圧がある方、年齢が高い方などとあわせて「双子などの多胎妊娠」を挙げています。
妊娠高血圧症候群は、妊娠中に血圧が高くなる病気です。同学会によると、重症になるとお母さんにけいれん発作(子癇)や脳出血、肝臓や腎臓の機能障害といった重い合併症が起こることがあります。赤ちゃんにも、発育が遅れる(胎児発育不全)、胎盤が子宮からはがれる(常位胎盤早期剥離)といった影響が出ることがあります。
同学会は、妊婦健診をきちんと受けて、早めに見つけて治療することが何より大事だとしています。むくみや頭痛、めまい、目が見えにくいといった症状には気をつけてください。
厚生労働省の副作用対応マニュアルによると、卵巣過剰刺激症候群は妊娠していると重くなったり長引いたりしやすくなります。
当院では妊婦健診はお受けしていないので、妊娠されたあとの経過は、出産される施設で診ていただきます。
排卵誘発剤を使うとき、
多胎をどう避けますか?
卵胞の育ち方を確かめながら、薬を使うかどうか、どの薬をどのくらい使うかを決めます。
厚生労働省のマニュアルによると、注射薬を使う治療で卵巣過剰刺激症候群を防ぐには、薬の使い方の工夫が要ります。一度にたくさんの卵胞が育つこと(多発排卵)を、できるだけ減らすためです。卵胞の育ち方を見ながら注射薬を少しずつ増やす方法や、リスクが高い方には刺激の弱い薬を選ぶ方法が挙げられています。
同じマニュアルには、卵胞がたくさん育ったときは、排卵を促すhCG製剤を使わずに見送ることも大切だと書かれています。ここに挙げたのはOHSSを防ぐ方法ですが、卵胞がたくさん育つと多胎も起こりやすくなります。
その周期をどうするか、排卵誘発剤をどう使うかは、卵胞の育ち方を見て決めます。
体外受精では、
移植する胚の数をどう決めますか?
当院では原則1個とし、条件によって2個までの移植を検討します。
日本生殖医学会によると、胚の凍結保存は、もともと双子や三つ子などの多胎妊娠を防ぐために取り入れられた方法です。一度の採卵でたくさんの胚ができても、移植する胚を1個にして残りを凍結しておけば、多胎妊娠のリスクを抑えられると説明されています。
凍結しておいた胚は、順番に移植へ使えます。採卵した周期には移植せず、できた胚をすべて凍結して別の周期に移植する方法(全胚凍結)も広く行われています。
ただ、凍結したものを融かすときに、胚がだめになってしまうことがあります。
当院では、移植する胚は原則1個です。35歳以上の方や、2回以上続けて妊娠に至らなかった方などは、2個までの移植を検討します。3個以上の胚を移植することはありません。治療の流れは体外受精のページにあります。
治療の前に、
何を話しておくとよいですか?
治療を始める前に、多胎の可能性とOHSSのことをお話しします。
厚生労働省のマニュアルには、排卵誘発剤を使った治療で三つ子の妊娠と重い卵巣過剰刺激症候群が重なった例が載っています。この例をふまえて、排卵誘発の前に多胎やOHSSのことをよく説明しておくべきだと書かれています。
治療の前に、次のことをお話しします。
- 排卵誘発剤を使うかどうか、使うならどの種類か
- 体外受精で、移植する胚の数をどう考えるか
- 胚を凍結するときの保存と手続き
- おなかの張りなど、すぐに連絡したほうがよい症状
気になることは、その場で聞いていただいて構いません。
よくある質問
不妊治療をすると、双子になりやすいのですか?
排卵誘発で卵胞がいくつも育ったときや、複数の胚を移植したときに多胎になることがあります。治療では、そのリスクを抑えるように進めます。
移植する胚の数は、どう決めますか?
当院では、移植する胚は原則1個です。35歳以上の方や、2回以上続けて妊娠に至らなかった方などは、2個までの移植を検討します。3個以上の胚を移植することはありません。多胎のリスクと、年齢やこれまでの経過をふまえて、診察でご相談します。
タイミング法や人工授精でも、多胎になりますか?
排卵誘発剤で卵胞がいくつも育つと、その可能性があります。卵胞の育ち方を見ながら、薬の使い方を決めます。
排卵誘発剤は、必ず使うのですか?
排卵の状態によって使うかどうかを決めます。使わずに進める場合もあります。
胚を1個ずつ移植すると、採卵を何度もすることになりませんか?
一度の採卵でできた胚を凍結しておけば、順番に移植に使えます。ただし、融かすときに胚がだめになることもあります。
多胎妊娠では、どんなことに気をつけますか?
妊娠高血圧症候群になりやすいとされています。妊婦健診を定期的に受けてください。むくみや頭痛などの症状があれば、早めにご相談ください。
監修・更新
監修:城南レディースクリニック品川 院長 岩﨑 信爾(日本生殖医学会認定 生殖医療専門医/日本産科婦人科学会認定 産婦人科専門医)
最終更新:2026年9月19日
この記事は一般的な医学情報をまとめたものです。個別の診断・治療方針は診察のうえでご説明します。
出典
日本生殖医学会「生殖医療Q&A:Q12.体外受精とはどんな治療ですか?」
日本生殖医学会「生殖医療Q&A:Q9.排卵誘発薬にはどんな種類がありますか?」
日本生殖医学会「生殖医療Q&A:Q14.受精卵の凍結保存とはどんな治療ですか?」
日本産科婦人科学会「妊娠高血圧症候群」
厚生労働省「重篤副作用疾患別対応マニュアル 卵巣過剰刺激症候群(OHSS)」