精子凍結とは、
どのような方法ですか?
精子を凍らせて保存し、あとの治療で使えるようにしておく方法です。
凍結の手順は、日本生殖医学会が示しています。精液と凍結保護剤を混ぜて細い管(ストロー管)に入れ、液体窒素の蒸気のなかで凍らせます(厚生労働省の診療報酬改定の資料)。
精子の凍結保存は、50年以上前からある方法です。いまは不妊治療を中心に、多くの施設で行われています(日本生殖医学会・2003年の見解。当時の名称は日本不妊学会)。
凍結した精子は、融解して体外受精・顕微授精などの治療に使います。どの方法で受精させるかは、精子の状態などを見て決めます。
どのようなときに
精子凍結を使いますか?
使うのは、主に次の3つのときです。
精液の中に精子が見つからないときは、精巣の中から精子を探す手術(精巣内精子採取術)をして、見つかった精子を顕微授精に使います。採った精子や、数がとても少ない精子を、治療に使うときまで凍結しておくことがあります。
悪性腫瘍の治療などで精子をつくる力(造精機能)が落ちるおそれがあるときは、治療の前に精子を凍結して残せます(学会の見解)。病気の治療との兼ね合いは、その治療を担当する医師と相談しながら考えます。
医療上の必要がなく、ご本人の都合で凍結することもあります。このときは保険の扱いが変わります。
男性不妊の手術は、当院では行っていません。手術が必要と分かったときは、泌尿器科などの医療機関をご紹介します。男性側の検査は不妊検査にまとめています。
保険で精子凍結ができるのは、
どのような場合ですか?
体外受精・顕微授精に使う目的で、精巣内精子か高度乏精子症の射出精子を凍結する場合です。
令和6年度の診療報酬改定で「精子凍結保存管理料」が新しくできました。対象になるのは、不妊症の患者さんとパートナーから採った精子のうち、精巣内精子採取術で得た精巣内精子と、高度乏精子症の方の射出精子です。どちらも、体外受精・顕微授精に使うときに限られます。
| 凍結する精子・理由 | 扱い |
|---|---|
| 精巣内精子採取術で得た精巣内精子 | 保険の対象(体外受精・顕微授精に使う目的の場合) |
| 高度乏精子症の方の射出精子 | 保険の対象(同上) |
| 医療上の必要がなく、ご本人の都合でする凍結 | 選定療養。保険適用外で自己負担 |
保険で凍結したときは、始めたときの管理料に加えて、凍結の開始から1年を過ぎて保管を続けるなら、1年に1回、維持管理料がかかります。妊娠などで治療をお休みしている間の保管費用と、ご希望でほかの医療機関へ移すときの費用は、自己負担です。
改定の前は、体外受精・顕微授精の前にする精子の凍結保存の費用は、体外受精・顕微授精の管理料に含まれていました。令和6年度の改定で、条件に当てはまる精子凍結は、別の費用として計算されるようになりました。当院の料金は費用についての「精子凍結」に載せています。
凍結の前に、
どのような手続きがありますか?
文書と口頭で説明を受け、文書で同意してから凍結します。
凍結の前には、凍結した精子を使って治療をするときのリスクや気をつけることまで含めて、文書と口頭でご説明し、同意書をいただいてから凍結します(日本生殖医学会・2006年の報告)。保険で凍結するときも、文書で同意をいただき、その文書をカルテに添付することになっています。
病気の治療の前に凍結するときは、次のことをご説明します(2003年の見解)。
- 病気の治療と、精子をつくる力の低下との関係
- 精子の凍結保存の方法と成績
- 凍結した精子の保存期間と廃棄
- 凍結した精子を使った生殖補助医療で予想される成績と副作用
- 費用
未成年の方は、ご本人と親権者の両方の同意をいただいてから凍結します(2003年の見解)。
凍結した精子は、
いつまで保管できますか?
学会の報告は、保存期間を「精子の由来する本人が生存している期間」としています。
この報告では、凍結を続けるお気持ちとご本人のご無事を、施設が定期的に確かめることを勧めています。2003年の見解では、ご本人から廃棄の申し出があったときや、ご本人が亡くなったときは、凍結した精子を廃棄します。第三者に提供することもできません。
地震や火災、液体窒素の不足などで凍結した精子が使えなくなったときに備えて、施設の責任の範囲を文書にしておくことも勧められています(2006年の報告)。
当院で何年保管できるか、どう更新するかは、診察でご説明します。
採卵の日に来院が難しい場合は、
どうすればよいですか?
採卵の日に来られそうにないときは、早めにご相談ください。
当院では、ご自宅で採った精液での人工授精・体外受精にも対応しています。ご自宅が遠いと難しいこともあるので、診察でご相談ください。
前もって精子を凍結しておきたいときは、それが保険の対象になるか、選定療養として自己負担になるかも含めて、診察でご確認ください。
診療時間と行き方は院内・アクセスに載せています。
よくある質問
精子凍結は保険で受けられますか?
精巣内精子と高度乏精子症の射出精子を、体外受精・顕微授精に使う目的で凍結するなら保険の対象です。医療上の必要がなく、ご本人の都合で凍結するときは選定療養となり、保険は使えず自己負担になります。
保管を続けるにも費用がかかりますか?
かかります。保険の場合も、凍結の開始から1年を過ぎると、1年に1回の維持管理料がかかります。当院の金額は費用についてに載せています。
何年保管できますか?
学会の報告は、保存期間を本人が生存している期間としています。当院での保管の期間や更新のしかたは、診察でお話しします。
ほかの医療機関で凍結した精子を移せますか?
移せます。担当医にお話しいただくか、お電話でご相談ください。保険で凍結した場合も、移送の費用は自己負担です。
凍結した精子を、ほかの人に提供できますか?
できません。学会の見解は、凍結した精子を第三者に提供することを認めていません。
本人が亡くなった場合、凍結した精子はどうなりますか?
学会の見解では、ご本人が亡くなったときは、凍結した精子を廃棄することになっています。
監修・更新
監修:城南レディースクリニック品川 院長 岩﨑 信爾(日本生殖医学会認定 生殖医療専門医/日本産科婦人科学会認定 産婦人科専門医)
最終更新:2026年9月19日
この記事は一般的な医学情報をまとめたものです。個別の診断・治療方針は診察のうえでご説明します。
出典
一般社団法人 日本生殖医学会「『医学的介入により造精機能低下の可能性のある男性の精子の凍結保存』に関する日本不妊学会の見解」(2003年)
一般社団法人 日本生殖医学会「倫理委員会報告『精子の凍結保存について』」(2006年)
厚生労働省保険局医療課「令和6年度診療報酬改定の概要(医科全体版)」(PDF)
公益社団法人 日本産科婦人科学会「不妊症」