卵子凍結は、
何歳までに受けるものですか?
学会の指針では、採卵するときの年齢を「36歳未満が望ましい」としています。
日本生殖医学会の2018年の指針では、がんの治療などの医学的な理由がない卵子凍結について、対象を成人した女性としています。年齢は「未受精卵子等の採取時の年齢は、36歳未満が望ましい」と書かれています。目安にしているのは、卵子を採るときの年齢です。
指針では「望ましい」という言葉で年齢の目安を示しています。当院で卵子凍結を受けられるのは39歳までです。36歳を過ぎてからのご相談でも、卵巣の状態を検査で確かめて、その結果を見ながら、受けるかどうかを一緒に決めます。
目安があるのは、卵子が年齢とともに変わっていくからです。何が変わるのかは「年齢によって、卵子の何が変わるのですか?」でまとめています。
年齢によって、
卵子の何が変わるのですか?
数が減ることと質が変わることの2つです。
日本生殖医学会の解説によると、卵子は胎児のときにもう作られています。女性は生まれたときに、約200万個の卵子のもと(卵母細胞)を持っています。思春期までに30万個程度に減り、その後も年齢とともに減っていきます。37歳を過ぎると減り方が速くなります。
質の変化として同学会が挙げているのは、卵子の染色体の異常です。卵子ができるまでの分裂の過程で、年齢とともに染色体分配エラーが起こりやすくなると考えられていて、流産や胎児の染色体異常の原因になります。同学会の解説には「卵子の質の低下を防ぐ方法はないのが現状」ともあります。
日本産科婦人科学会の説明でも、女性は30歳を過ぎると妊娠する力(妊孕性)が下がり始め、35歳を過ぎるとその低下が速まります。原因として、卵子の数と質の低下のほかに、子宮筋腫や子宮内膜症などの病気が増えることも挙げています。
卵巣に残っている卵子の数の目安はAMH検査で調べられますが、卵子の質までは分かりません。検査で分かる範囲はAMH検査でわかること・わからないことで取り上げています。
凍結した卵子は、
採ったときの年齢のままですか?
採ったときの卵子の質を保ったまま、妊娠の可能性を残せます。融解したあとにすべての卵子が使える状態とは限らず、妊娠・出産をするからだの年齢も進みます。
卵子凍結は、採卵した卵子を凍らせて、将来使うときまで保管しておく方法です。日本生殖医学会は、若いうちに保存した卵子を本人が年齢を重ねてからも使え、若い卵子の質を保ったまま妊娠の可能性を残せる方法として紹介しています。
同学会の指針では、凍結した卵子を使うときに「加齢による周産期リスクの上昇を十分に考慮する」ことを求めています。卵子を若いうちに凍結していても、妊娠して出産するのは、そのときの年齢のからだです。妊娠・出産にともなうリスクは、使うときの年齢で考える必要があります。
凍結しても、年齢の影響をすべて先へ送れるわけではありません。いつごろ使うことになりそうかも、あわせて考えておいてください。パートナーがいる方は、早めに話し合っておくことを学会も勧めています。
卵子凍結で、
将来の妊娠は約束されますか?
約束されるものではありません。卵子凍結は、将来の選択肢を残しておく方法です。
凍結した卵子を使うときは、融解して体外受精の流れのなかで受精させ、育った胚を子宮に戻すことを検討します。その途中の段階ごとに、先へ進めないことがあります。
- 採卵しても、卵子の成熟度によっては、すべてを凍結できないことがあります
- 融解したときに、使える状態にない卵子があります
- 精子と合わせても受精しないことや、胚が育たないことがあります
日本生殖医学会の指針は、凍結の前に医療機関が説明することを挙げています。予想される成績とリスク、保存期間と破棄の手続き、凍結した卵子を使う治療のくわしい内容、将来妊娠する可能性と妊娠したときの安全性、そして費用です。
当院では最初の相談で方法・費用・リスクをお話しし、受けるかどうかはそのあとで決めていただきます。採卵できる個数や卵子の状態は、年齢によって差があります。
卵子凍結のデメリットには、
何がありますか?
からだへの負担と費用がかかり、保管を続ける手間もあります。
卵巣を刺激するお薬を使い、採卵の処置を受けます。卵巣過剰刺激症候群(OHSS)、採卵のときの出血や感染、周囲の臓器の損傷、麻酔にともなうリスクがあります。
公的医療保険が使えない自費診療です。将来、凍結した卵子を使うときにも、あらためて費用がかかります。
保管は1年ごとに更新の手続きがあり、保管を続ける間は保管料がかかります。氏名・住所・電話番号などが変わったときは、お知らせください。
凍結した卵子を使っても、妊娠に至らないことがあります。使うときの年齢によって、妊娠・出産にともなうリスクも変わります。
リスクの内容は、卵子凍結のページの「リスク・副作用」にくわしくまとめています。
凍結した卵子は、
いつまで保管できますか?
当院で保管できるのは、凍結保存した日から50歳の誕生日までです。
日本生殖医学会の指針では、保管する医療機関が、本人に保存を続ける意思があるかを定期的に確かめることを望ましいとしています。あわせて、本人から破棄の意思が示された場合や本人が亡くなった場合は破棄することも定めています。本人が生殖可能な年齢を過ぎた場合は、通知したうえで破棄できます。
指針では、凍結した卵子の売買や譲渡は認められていません。本人の生殖以外の目的で使うこともできません(本人が破棄を希望し、研究への利用を許諾した場合の手続きを除きます)。
当院での保管は、1年ごとに更新の手続きがあります。やり方は診察のときにご案内します。
費用や東京都の助成は、
どこで確認できますか?
当院の費用は診療内容と費用のページに載せています。東京都の助成は、都の案内をご覧ください。
採卵から凍結までの費用の目安、保管料、使うときの金額は、卵子凍結と費用についてに載せています。
東京都には、加齢などで妊娠する力が下がることを心配して行う卵子凍結に、費用を助成する事業があります。当院は東京都卵子凍結助成対象医療機関です。対象となる条件、助成の金額、申請の期限は、年度によって見直されることがあります。東京都福祉局の案内で、そのときの内容をご確認ください。
すでに妊娠を望んでいて、なかなか妊娠しないことが気になっている方は、不妊治療は、いつから始めればよいですかをご覧ください。
よくある質問
36歳を過ぎていても受けられますか?
学会の指針には、採卵するときの年齢は36歳未満が望ましいと書かれています。当院で卵子凍結を受けられるのは39歳までです。実際に受けられるかどうかは、検査の結果を見て決めます。
何個の卵子を凍結すればよいですか?
採卵できる個数は年齢や卵巣の状態によって違うので、何個凍結できるかはお約束できません。
AMHの値で、受けるべきかどうか分かりますか?
AMHは卵巣に残っている卵子の数の目安で、卵子の質は分かりません。ほかの検査の結果とあわせて考えます。
パートナーがいなくても受けられますか?
お話をうかがってから、受けていただけるかどうかを決めます。まずはお問い合わせください。
凍結した卵子を、ほかの人に譲ることはできますか?
できません。日本生殖医学会の指針は、凍結した卵子の売買や譲渡を認めていません。
受けるかどうか決めていなくても、相談できますか?
ご相談いただけます。方法・費用・リスクをお話ししてから、受けるかどうかを決めていただけます。
監修・更新
監修:城南レディースクリニック品川 院長 岩﨑 信爾(日本生殖医学会認定 生殖医療専門医/日本産科婦人科学会認定 産婦人科専門医)
最終更新:2026年9月19日
この記事は一般的な医学情報をまとめたものです。個別の診断・治療方針は診察のうえでご説明します。
出典
一般社団法人 日本生殖医学会「倫理委員会報告『未受精卵子および卵巣組織の凍結・保存に関する指針』」(2018年)
一般社団法人 日本生殖医学会「生殖医療Q&A:Q24.加齢に伴う卵子の質の低下はどのような影響があるのですか?」
公益社団法人 日本産科婦人科学会「不妊症」
東京都福祉局「事業の概要|卵子凍結に係る費用の助成」