化学流産(生化学的妊娠)とは、
どのような状態ですか
尿や血液の検査で妊娠反応が陽性になったあと、超音波で胎嚢が見える前に、月経のような出血が起きて終わった状態を化学流産といいます。学会の説明では特に治療は必要なく、日本では妊娠や流産の回数に数えません。3回以上繰り返すときは、不育症に準じて原因を調べるよう提言で勧められています。回数にかかわらず、不安があればご相談ください。
妊娠反応が出たあとの出血は、それだけで化学流産とは決められません。出血が続くときや、お腹の痛みが強いときは、ご自身で判断せず医療機関にご連絡ください。
化学流産(生化学的妊娠)とは
どのような状態ですか?
妊娠反応が出たあと、超音波で胎嚢が見える前に、月経のような出血で終わった状態をいいます。
日本産科婦人科学会の説明では、「生化学的妊娠」は、尿や血液の検査で妊娠反応が陽性になったものの、超音波検査で着床の部位(胎嚢)を確認する前に、月経のような出血が起こって流産してしまった状態です。一般に「化学流産」と呼ばれているのは、この状態のことです。
妊娠検査薬を使っていなければ、いつもの月経との区別はつきにくいと思います。妊娠反応を見ていたから気づいた、という方もいらっしゃいます。
呼び方は、学会でも議論があります。「不育症管理に関する提言2025」によると、生化学的妊娠は、血液や尿からhCG(妊娠によって分泌されるホルモン)が検出されるものの、超音波で胎嚢が確認されない状態を指す言葉です。流産や妊娠の終わりを示す意味合いを含まないため、日本不育症学会は「生化学的流産」という呼び方を提唱しています。
治療は必要ですか?
特に治療は必要ありません。
日本産科婦人科学会の解説には、生化学的妊娠について「特に治療は必要ありません」とあります。
妊娠反応が出たあと、胎嚢が見える前に出血があっても、それだけで化学流産とは決められません。同学会は、妊娠に関連する出血の原因として、流産のほかに異所性妊娠(受精卵が子宮の内側以外の場所に着床した状態)なども挙げています。妊娠反応が出ていて、出血が続くときやお腹の痛みが強いときは、ご自身で判断せず医療機関にご連絡ください。
同学会は、妊娠の初期に月経より多い出血や強い腹痛があるときは、夜間や休日でも産婦人科に連絡するよう案内しています。
当院に通院中の方は、診療時間内はお電話(03-3440-5562)でご連絡ください。診療時間外は、当院公式LINEのメッセージ、または公式WEBサイトのお問い合わせフォームからご連絡いただけます(順番に確認してご返信します)。緊急の場合や症状が重い場合は、お近くの救急医療機関にご相談ください。
流産の回数に
数えますか?
日本では、妊娠や流産の回数に数えません。
日本産科婦人科学会の解説には「日本では、生化学的妊娠を妊娠や流産の回数に含めていません」とあります。流産を2回繰り返した「反復流産」や、3回以上繰り返した「習慣流産」を数えるときも、生化学的妊娠は含めません。
「不育症管理に関する提言2025」でも、不育症の診断で過去の流産の回数を数えるとき、生化学的妊娠は算定しません。産科婦人科の用語集にも、生化学的妊娠は習慣流産や不育症を診断する根拠にしない、と書かれています。
国際的には考え方が分かれています。提言によると、欧州生殖医学会(ESHRE)は2022年のガイドラインで、生化学的妊娠も繰り返す流産の定義に含める立場をとっています。提言は、日本の学会の定義は変えずに、臨床的な流産の回数とは別に「生化学的妊娠◯回」と書き添えることを勧めています。
診察のときは、超音波で妊娠が確認されたあとの流産と、生化学的妊娠とを分けてお話しいただけると助かります。覚えている範囲で構いません。
原因は分かりますか?
学会の解説では、早い時期の流産でいちばん多い原因は、赤ちゃん側の染色体の異常です。
日本産科婦人科学会の説明では、妊娠12週未満の流産でいちばん多い原因は赤ちゃんの異常です。受精卵ができる段階で、流産することがすでに決まっていたことになります。赤ちゃんの染色体の異常は「ほとんどが偶然のできごと」です。
この説明は、妊娠12週未満の流産全体に当てはまるものです。生化学的妊娠が起きるたびに原因を確かめる方法は、学会の資料でも示されていません。
「不育症管理に関する提言2025」は、流産や死産を「何か悪いことをしたから」と受け止めてしまいやすいとして、そうではないと伝えることが必要だと書いています。どう受け止めればよいか分からないときは、そのお気持ちも診察でお聞かせください。
次の妊娠は、
いつから考えてよいですか?
学会は流産全般について、次の妊娠まで期間を空ける必要はないとしています。
日本産科婦人科学会によると、前回の流産から次の妊娠までの間隔が短くても、流産の確率は高まりません。流産のあとに、わざわざ避妊の期間をとる必要はありません。
流産のあとは気分が落ち込みやすく、不安も強くなります。同学会は、気持ちが落ち着くまで次の妊娠を少し待つことも、あってよいと書いています。次をいつにするかは、急いで決めなくて構いません。
不妊治療中の方は、次の周期の進め方を診察でご相談ください。体外受精では、胚移植のあとに妊娠判定をします(当院では移植の9日後)。治療の流れは体外受精のページにまとめています。一度お休みしてから再開することもできます。お休みの間も、それまでの経過は記録に残しています。
繰り返す場合は、
どうすればよいですか?
3回以上繰り返すときは、不育症に準じて原因を調べることが勧められています。
「不育症管理に関する提言2025」は、生化学的妊娠を3回以上繰り返す場合を「反復生化学的妊娠」とし、不育症に準じた原因の検索を推奨しています。あわせて、これまで回数に数えてこなかったため、繰り返すことの意味についての研究は進んでいなかった、とも書いています。
不育症は、同じ提言で「流産あるいは死産が2回以上ある状態」と定義されています。すでにお子さんがいる方も当てはまりますし、流産が続いていなくても同じです。この回数にも、生化学的妊娠は数えません。
当院では、不育症の検査とご相談をお受けしています。流産の回数やいまの状況にかかわらず、受けるかどうか決めていない段階でもご相談ください。検査の内容は不育症のページに載せています。
妊娠を望んでいて、まだ受診したことがない方は、不妊治療は、いつから始めればよいですかで受診を考える時期の目安を取り上げています。
よくある質問
妊娠反応が出たあとに出血しました。受診したほうがよいですか?
妊娠反応が出たあとの出血は、それだけで化学流産かどうかを決められません。出血が多いときや腹痛が強いときは、夜間や休日でも産婦人科へ連絡するよう学会は案内しています。治療中の方は、通っている医療機関にご連絡ください。
化学流産は、流産の回数に入りますか?
日本では、生化学的妊娠は妊娠や流産の回数に含めていません。不育症の診断で回数を数えるときも、算定しません。
手術や薬による治療は必要ですか?
学会の説明では、特に治療は必要ありません。出血や痛みが続くときは、ほかの原因のこともあるのでご相談ください。
何回続いたら相談したほうがよいですか?
提言では、3回以上繰り返すときに、不育症に準じて原因を調べることが勧められています。回数にかかわらず、気になるときはご相談ください。
次の周期に妊娠を目指してもよいですか?
学会の説明では、流産全般について、次の妊娠まで間隔を空ける必要はないとしています。気持ちが落ち着くまで待つのも構いません。
妊娠しているかどうかの確認だけで受診できますか?
当院でお受けできる内容は状況によって変わります。まずはお電話でお問い合わせください。
受診や通院のそのほかの質問は、よくある質問のページにまとめています。
監修・更新
監修:城南レディースクリニック品川 院長 岩﨑 信爾(日本生殖医学会認定 生殖医療専門医/日本産科婦人科学会認定 産婦人科専門医)
最終更新:2026年9月19日
この記事は一般的な医学情報をまとめたものです。個別の診断・治療方針は診察のうえでご説明します。
出典
公益社団法人 日本産科婦人科学会「流産・切迫流産」
公益社団法人 日本産科婦人科学会「異常子宮出血と不正性器出血」
「不育症管理に関する提言」改訂委員会「不育症管理に関する提言2025」(PDF)