執筆者兼監修者プロフィール
東大産婦人科に入局後、長野県立こども病院、虎の門病院、関東労災病院、東京警察病院、東京都立豊島病院、東大病院など複数の病院勤務を経てレディースクリニックなみなみ院長に就任。
資格
- 医学博士
- 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
- FMF認定超音波医
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スターフォーマーについて調べると「効果がない」という言葉を目にすることがあります。効果の感じ方には個人差があり、適応の見極めと回数設計が結果を大きく左右します。本記事では、当院で実際に治療を行った症例の経過を、担当した産婦人科専門医(院長)がカルテ記録に基づいてご紹介します。
※掲載症例はご本人の同意を得て、個人が特定されない形で記載しています。治療効果には個人差があり、本記事は特定の効果を保証するものではありません。
この記事でわかること
- 「効果がない」と言われることがあるのは、なぜか
- 効果が出やすいケースと、出にくいケースの違い
- 当院で治療した症例の実際の経過(治療前後の評価つき)
- その症例から言えることと、言えないこと
- 効果を何で測るのか(ICIQ-SF という物差し)
- 仕組みについて報告されていること
- 治療内容・費用・リスク・禁忌・薬機法上の位置づけ
「効果がない」と言われることがあるのは、なぜか
検索して不安になった方に、まず率直にお伝えします。この治療は、誰にでも同じように働くものではありません。「効果がない」という声が出る背景には、大きく3つの理由があると考えています。
理由1:症状のタイプが、この治療の向く相手ではない
尿もれにはタイプがあります。くしゃみ・咳・運動で漏れる腹圧性尿失禁は骨盤底筋の支持力低下が背景にあり、筋肉に働きかけるこの治療が向きます。一方、急に強い尿意が来て間に合わない切迫性尿失禁は膀胱側の問題が中心で、薬物療法が治療の柱になります。
タイプを確かめないまま受けると、「通ったのに変わらない」という結果になりえます。女性の尿漏れの原因や種類もあわせてご覧ください。
理由2:程度が、筋肉へのアプローチで届く範囲を超えている
骨盤底の支えが大きく崩れ、臓器がはっきり脱出している状態では、筋肉を鍛えても押し戻すことはできません。骨盤臓器脱が進んでいる場合は、手術を含めた別の検討が必要になります。この治療は「支える力を底上げする」もので、崩れた構造を元に戻すものではありません。
理由3:回数と間隔が足りていない
筋肉のトレーニングである以上、1回で変わるものではありません。一般に週1〜2回のペースで計6〜8回を1クールとし、その後にメンテナンスを行う設計が取られます。途中で間隔が空いたり、回数の途中でやめたりすると、判断できるところまで到達しません。
効果が出やすいケース/出にくいケース
| 出やすいと考えられるケース | 出にくい・別の方法が要るケース |
|---|---|
| くしゃみ・咳・運動でもれる(腹圧性) | 臓器がはっきり脱出している骨盤臓器脱 |
| 産後、骨盤底のゆるみが残っている | 切迫性の症状が中心(急に強い尿意で間に合わない) |
| 自分では骨盤底筋をうまく動かせない | 神経の病気が背景にある排尿障害 |
| 体操を続けたが手ごたえが乏しい | 禁忌に該当する(下記「治療の内容・費用」参照) |
| 軽度の骨盤臓器脱で、進行を抑えたい | 回数を通う時間が取れない |
この振り分けは診察で行います。ご自身の症状がどちらに当たるかは、症状の出方だけでは判断がつかないことが多いため、受ける前に確かめることをおすすめします。
症例1:40代・腹圧性尿失禁
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 背景 | 40代・経腟分娩2回 |
| 主訴 | 走る・ジャンプなどの動作で尿もれ |
| 治療前評価 | ICIQ-SF 15点 |
| 治療内容 | スターフォーマー 8回(週1〜2回ペース) |
| 治療後評価 | 最終施術の1ヶ月後に評価:ICIQ-SF 9点 |
| 有害事象 | 施術後1〜2日の軽い筋肉痛様症状。無処置で自然に消失 |
担当医コメント:治療前 ICIQ-SF 15点が、8回終了1ヶ月後には9点へ減少しました。治療前に使用していた尿吸収パッドは、より吸収量の少ないサイズへ変更が可能となり、日常生活面での改善が認められた症例です。
この症例から言えること、言えないこと
症例の紹介は、良く見える部分だけを切り取ることもできてしまいます。そうならないよう、この1例で何が言えて、何が言えないのかをはっきりさせておきます。
- 言えること:この方については、8回の治療後にスコアが下がり、パッドのサイズを小さくできた。有害事象は軽度で、処置なく消えた
- 言えないこと①:1例です。他の方に同じ変化が起きるとは言えません
- 言えないこと②:スコアが下がった要因が治療だけかは、この記述からは分けられません(生活の変化や自宅での体操の併用も影響しえます)
- 言えないこと③:1ヶ月後の評価であり、その先どれだけ続くかはこの症例からは分かりません
- 言えないこと④:ゼロになったわけではありません。15点が9点になった、という変化です
「漏れがまったくなくなる」ことをお約束することはできません。目標を「生活で困らない状態にする」に置くほうが、現実的で、達成できることも多いと感じています。
効果は何で測るのか — ICIQ-SF という物差し
「効果があった/なかった」を感覚だけで判断すると、日によって揺れて分からなくなります。そこで当院では、ICIQ-SF(国際尿失禁会議尿失禁質問票 短縮版)という質問票を用いて、治療前と治療後を同じ物差しで比べています。
- 尿もれの頻度・1回あたりの量・生活への支障の程度を点数化する
- 点数が高いほど困りごとが大きい
- 治療前後で同じ質問に答えるので、変化の向きと大きさが数字で見える
上の症例で「15点 → 9点」と書いているのは、この物差しでの変化です。数字にしておくと、「なんとなく良くなった気がする」で終わらせずに済み、次にどうするかも決めやすくなります。効果が乏しければ、続けるより方針を見直す判断ができます。
点数が下がっても「まだ漏れます」とおっしゃる方はいます。逆に、点数はあまり変わらないのに「外出が怖くなくなった」と言われることもあります。数字と実感の両方を伺いながら、続けるかどうかを一緒に決めています。
仕組みについて報告されていること
スターフォーマーが用いる高強度の磁気刺激(HITS/HIFEM)は、コイルから発生する磁場によって体内に電流を誘導し、運動神経を介して骨盤底筋に収縮を起こす技術です。服を着たまま座って受けられ、自分の意思では動かしにくい深部の筋肉にも働きかけられる点が特徴とされています。
- Samuels らの多施設前向き研究(2019):尿失禁のある女性75名に週2回×3週間の計6回を施行し、治療後3か月時点で ICIQ-SF スコアの改善とパッド使用量の減少が報告されています
- Silantyeva らの比較試験(2021):経産婦を対象に高強度磁気刺激と電気刺激を比較し、骨盤底機能障害スコア(PFDI-20)で磁気刺激側の優位性が報告されています
- 『女性下部尿路症状診療ガイドライン[第2版]』:腹圧性尿失禁に対する骨盤底筋訓練は推奨グレードA。この治療は、その骨盤底筋訓練を高強度に実現する位置づけです
いずれもこの機器そのものを当院で検証したものではなく、同じ技術についての報告です。実際にどうなるかは個人差があり、適応の見極めが前提になります。
治療の内容・費用
- 治療内容:高強度テスラ磁気刺激(HITS)による骨盤底筋の他動的トレーニング。服を着たまま椅子型の機器に約30分座って行います
- 費用(税込・自由診療):1回 22,000円 / 6回コース 118,800円 / 8回コース(標準・メーカー推奨) 158,400円
- 主なリスク・副作用:施術後1〜2日の軽い筋肉痛様症状など。重篤な副作用の報告はまれですが、施術前に医師がご説明します
- 禁忌:妊娠中・心臓ペースメーカー等の電子インプラント・IUD/ミレーナ留置中・照射部位の金属インプラント・悪性腫瘍治療中・重度心疾患/てんかん 等
- 薬機法上の位置づけ:スターフォーマー(FOTONA社)は国内未承認の医療機器です。同じ治療目的で国内承認された医療機器はありません。医師が診察のうえ適応を判断し、医師管理のもとで施術します
よくある質問(FAQ)
「スターフォーマーは効果がない」と書かれているのを見ました。本当ですか?
「誰にでも効かない」わけでも、「誰にでも効く」わけでもありません。向く相手がはっきりしている治療です。くしゃみや運動でもれる腹圧性のタイプで、程度が軽度から中等度であれば選択肢になります。逆に、急な尿意が中心の切迫性が主体の方、臓器がはっきり脱出している方では、この治療だけで解決するのは難しく、別の方法を先に検討します。「効果がない」という感想の多くは、タイプや程度が合っていなかったか、回数の途中で判断されたケースではないかと考えています。当院では、受ける前に診察でタイプと程度を確かめ、向かないと判断した場合はそうお伝えします。
何回くらいで変化を感じますか?
筋肉のトレーニングですので、1回では変わりません。一般に週1〜2回のペースで計6〜8回を1クールとし、その終了後に評価します。上でご紹介した症例では、8回終了の1ヶ月後に ICIQ-SF が 15点から9点へ変化していました。ただし感じ方には個人差が大きく、途中の回で「変わらない」と判断するのは早いと考えています。反対に、決めた回数を終えて評価しても手ごたえが無い場合は、量を増やすより見立てそのものを見直す段階だとお伝えしています。
エムセラとの違いは何ですか?
どちらも高強度の磁気刺激で骨盤底筋に収縮を起こす機器で、服を着たまま椅子に座って受けられる点は共通です。開発元・刺激の方式・1回の時間・推奨回数などに違いがありますが、大切なのは機種選びよりも、その尿もれがどのタイプかを見極めることだと考えています。詳しくはエムセラとスターフォーマーの違いで比較表とともに解説しています。なお、どちらも国内では承認を受けていない医療機器で、自由診療となります。
自宅での骨盤底筋トレーニングは、やめてよいのですか?
やめないほうがよいと考えています。機器での治療は「自分では正しく動かしにくい筋肉を、他動的に強く収縮させる」もので、ご自身のトレーニングと置き換わるものではありません。両方を組み合わせるほうが相性がよく、当院でも併用をおすすめしています。やり方は骨盤底筋トレーニングの正しいやり方にまとめています。なお、締める練習ばかりに偏ると排尿・排便がしにくくなることがあるため、緩める側も意識してください。
痛みはありますか。仕事帰りでも受けられますか?
磁気による刺激は、電気刺激と違って皮膚表面の痛みがほとんどないとされています。強さは最小から少しずつ上げていきますので、強すぎると感じたら途中でもお伝えください。服を着たまま椅子に座って約30分で、施術後の生活に制限はありません。上の症例のように、施術後1〜2日ほど軽い筋肉痛のような感覚が残る方はいらっしゃいますが、通常は自然に消えていきます。
保険は使えますか。費用はいくらかかりますか?
この治療は公的医療保険の適用外(自由診療)です。費用は税込で1回 22,000円、6回コース 118,800円、8回コース(標準)158,400円です。ただし尿もれ・骨盤臓器脱・産後の症状についての初回の診察は保険診療で行えます。まず保険の範囲で状態を確かめ、そのうえで自由診療を検討するかどうかを決めていただけます。他院を含めた料金の相場はスターフォーマーの料金相場で整理しています。
まとめ
- 「効果がない」という声の背景には、タイプが合っていない・程度が範囲を超えている・回数が足りていないの3つがある
- 向くのは腹圧性で軽度〜中等度。臓器がはっきり脱出している場合や切迫性が主体の場合は、別の方法を先に検討する
- 当院の症例では、8回終了1ヶ月後に ICIQ-SF が 15点 → 9点に変化し、パッドのサイズを小さくできた
- ただし1例であり、他の方に同じ変化が起きるとは言えません。要因の切り分けも、その後の持続も、この症例からは分かりません
- 効果は感覚でなく ICIQ-SF のような物差しで、治療前後を同じ基準で比べる
- 国内未承認の医療機器を用いる自由診療。禁忌・リスク・費用を確認したうえで、適応は診察で判断します
「効果がないなら受けたくない」というお気持ちは当然だと思います。だからこそ、受ける前に向いているかどうかを確かめるところから始めてください。東京・目黒のレディースクリニックなみなみでは、尿もれのタイプと程度を診察で評価したうえで、この治療が選択肢になるかをご説明します。尿もれのご相談もあわせてご覧ください。
監修:レディースクリニックなみなみ 院長 叶谷愛弓(産婦人科専門医・医学博士)
自分でのトレーニングが続かない方へ ― 座るだけの骨盤底筋トレーニング
骨盤底筋トレーニング(ケーゲル体操)は有効な方法ですが、「正しく収縮できているか分からない」「忙しくて続かない」という声も多くあります。
当院では、服を着たまま椅子に座るだけで骨盤底筋に高強度の磁気刺激を与え、収縮運動を起こす「スターフォーマー」による治療を行っています。1回20分程度・週1〜2回の通院で、ご自身のトレーニングでは動かしにくい筋肉まで働きかけます。
- こんな方に:くしゃみ・咳・運動での尿もれ(腹圧性尿失禁)、産後の骨盤底のゆるみ、頻尿が気になる方
- 料金:1回 22,000円/8回セット 158,400円(税込・自由診療)
- 腟側の組織に働きかけるインティマレーザーとの併用プラン(10%オフ)もあります
スターフォーマーは国内では医薬品医療機器等法上の承認を受けていない医療機器です(医師の判断のもと個人輸入により導入・自由診療)。効果には個人差があり、適応は診察で判断します。
執筆者兼監修者プロフィール
東大産婦人科に入局後、長野県立こども病院、虎の門病院、関東労災病院、東京警察病院、東京都立豊島病院、東大病院など複数の病院勤務を経てレディースクリニックなみなみ院長に就任。
資格
- 医学博士
- 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
- FMF認定超音波医
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参考文献
- Samuels JB, et al. Safety and Efficacy of a Non-Invasive High-Intensity Focused Electromagnetic Field (HIFEM) Device for Treatment of Urinary Incontinence. Lasers in Surgery and Medicine. 2019;51(9):760-766.
- Silantyeva E, et al. A Comparative Study on the Effects of High-Intensity Focused Electromagnetic Technology and Electrostimulation for the Treatment of Pelvic Floor Muscles and Urinary Incontinence in Parous Women. Female Pelvic Medicine & Reconstructive Surgery. 2021;27(4):269-273.
- 女性下部尿路症状診療ガイドライン[第2版]. 日本排尿機能学会・日本泌尿器科学会編, リッチヒルメディカル (2019).



「効果がないと書かれていたので迷っていました」とおっしゃる方が本当に多いです。向く方と向かない方がはっきりある治療なので、まず診察でタイプと程度を確かめさせてください。合わないと判断したら、そうお伝えします。