レディースクリニック なみなみ

性交痛 | 腟入り口の痛み【6つの原因と解消法】

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クリニックなみなみ 院長 叶谷愛弓

執筆者兼監修者プロフィール

レディースクリニックなみなみ
院長 叶谷愛弓

東大産婦人科に入局後、長野県立こども病院、虎の門病院、関東労災病院、東京警察病院、東京都立豊島病院、東大病院など複数の病院勤務を経てレディースクリニックなみなみ院長に就任。

資格

  • 医学博士
  • 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
  • FMF認定超音波医
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腟入り口の性交痛にお悩みではありませんか?

性交時の入り口の痛みは、女性にとって大きな悩みの一つです。性交痛(dyspareunia)とは性交中に生じる痛み全般を指しますが、特に挿入時の腟入り口付近で痛みを感じるケースは珍しくありません。その原因は実にさまざまで、身体的な要因から心理的な要因まで幅広く存在します。

本記事では、入り口の性交痛が起こる原因や症状について詳しく解説し、自分でできる対策法や医療機関での治療法をご紹介します。ぜひ参考にしてください。

腟入り口の痛みはなぜ起こる?性交痛の6つの原因

腟の入り口に痛みを感じる性交痛には、以下のような原因が考えられます。それぞれの原因に合った対処をすることで、痛みの軽減や解消が期待できます。

① 潤滑不足(乾燥)による痛み

性交痛の原因で最も多いのが、腟のうるおい不足、つまり十分に濡れていない状態での挿入による摩擦です。性的興奮が高まっていなかったり前戯が不十分だったりすると、腟粘膜が潤わず挿入時にヒリヒリとした痛みを感じます。また、ストレスや緊張によって潤滑液の分泌が低下してしまうこともあります。潤滑不足による痛みは、十分な前戯や潤滑剤の使用で改善する場合が多いです。

② 心理的要因・膣痙攣

心因性の問題で性交痛が起こるケースもあります。過度の不安や恐怖心、過去の嫌な経験などによりセックスへの緊張が強いと、腟周囲の筋肉が無意識に収縮してしまい(いわゆる膣痙攣)、挿入時に強い痛みを生じることがあります。性交に対する不安感や嫌悪感が原因となる場合は少なくなく、実際に性暴力などのトラウマがきっかけで痛みが出ることもあります。このような心理的要因による痛みの場合、パートナーとの信頼関係を築き安心して臨める環境作りや、必要に応じてカウン セリングなどで心のケアを行うことが大切です。

③ 腟の構造的要因

身体的な要因として、腟の入口が狭いことや処女膜が硬いことによって痛みが生じるケースがあります。性交未経験や経験の少ない女性では、腟口がまだ十分に柔軟でないため挿入時に痛みを感じることがあります。また、先天的に処女膜が厚かったり、小さい頃からタンポンなどを使用してこなかった場合も、初めての挿入時に強い痛みを伴うことがあります。こうした場合、潤滑剤を使ったり段階的にならしていくことで改善することもありますが、処女膜強靭症などの場合には医療的処置で痛みが解消できる場合もあります。

④ 感染症や炎症による痛み

腟や外陰部の感染症・炎症が原因で痛みが出ることもあります。例えば、カンジダ膣炎や細菌性腟炎などにより腟粘膜が炎症を起こしていると、挿入時に焼けるような痛みを感じることがあります。また、性感染症では性器クラミジア感染症や性器ヘルペスなどが性交痛の原因となることがあります。

⑤ 婦人科系疾患による痛み

子宮や卵巣など骨盤内の病気が原因で性交痛が起こることもあります。代表的なのは子宮内膜症で、病変が腟の奥だけでなく入口付近にも影響している場合には挿入時にも痛みを感じることがあります(性交痛の原因として子宮内膜症の関与は比較的多いとされています)。また、子宮筋腫や卵巣嚢腫など骨盤内の腫瘍が大きくなって圧迫感を生じている場合や、過去の手術や分娩による腟周囲の瘢痕組織が痛みを引き起こすケースも考えられます。これらの場合、疾患そのものの治療(手術や薬物療法)を行うことで性交痛が改善する可能性があります。

⑥ ホルモン変化(更年期・産後など)による痛み

女性ホルモン(エストロゲン)の低下も腟入り口の痛みの大きな原因となります。更年期に差し掛かかると卵巣機能の低下によりエストロゲン分泌が減少し、腟や外陰部の組織が萎縮・乾燥して薄く脆くなります。その結果、潤滑液の分泌量も減少するため、挿入時に摩擦で痛みを生じたり、ヒリヒリ感やかゆみなど不快症状が現れます。一方、産後もホルモンバランスの急激な変化があります。特に授乳中はエストロゲンが抑制されるため、一時的に更年期のような低エストロゲン状態となり腟の乾燥が起こりやすくなります。加えて、出産時の会陰裂傷や会陰切開の傷跡が引きつれたり、「また傷が開くのでは」という不安から筋肉が強張ってしまうことも産後の性交痛の一因です。更年期や産後のホルモン変化による痛みには、潤滑ゼリーの使用やホルモン療法などで改善が期待できます。

以上のように、腟入り口の痛みには様々な原因があります。複数の要因が重なっているケースもあるため、「自分の場合はどれだろう」と思い当たる原因がある方も、一度医師に相談して正確な原因を見極めてもらうことが大切です。

【自分でできる】腟入り口の性交痛の改善法

痛みを和らげるために、自分でできる対処法を3つご紹介します。いずれも手軽に始められる方法ですので、できることから試してみましょう。

①:潤滑剤を活用する

性交時の乾燥による痛みには、潤滑剤(潤滑ゼリー)の使用が効果的です。ドラッグストアなどで市販されている潤滑ゼリーを挿入前に腟や外陰部に塗布することで、摩擦を減らし痛みを軽減できます。実際、産婦人科の現場でも潤滑ゼリーの使用が推奨されており、手軽に購入できるリューブゼリーなどがよく用いられています。特に更年期や産後で腟が乾燥しやすい方は、潤滑剤を積極的に活用すると良いでしょう。使用時は刺激の少ない水溶性のものを選び、必要に応じて適宜追加しながら行うと安心です。

②:パートナーと相談する

痛みを我慢して無理に性交を続けると、さらに恐怖や緊張が増して悪循環に陥ってしまうことがあります。大切なのは、パートナーに痛みの存在を理解してもらい、二人で解決策を探ることです。一人で抱え込まずに、「挿入時に痛い」「もう少しゆっくり進めてほしい」など率直に気持ちを伝えてみましょう。例えば前戯の時間を長くして十分にリラックスしてから挿入してもらったり、体位を工夫して自分が痛みをコントロールしやすい姿勢(女性上位など)をとるなど、協力して対処することができます。パートナーとの話し合いによって安心感が生まれ、緊張が和らぐことで潤滑も改善し痛みが軽減するケースもあります。

③:緊張や不安を和らげる環境を作る

精神的なリラックスは性交痛の緩和にとても重要です。ストレスや不安が強いと潤滑不良や筋肉の強張りを招き痛みが悪化しやすいため、できるだけリラックスできる環境作りを心がけましょう。例えば、部屋の照明を落として落ち着いた雰囲気にする、体が冷えて緊張しないよう室温を適度に上げておく、お風呂上がりで体が温まった状態で行う、好きな音楽をかける、十分な時間的余裕を持つ等、自分が安心できるシチュエーションを整えてみてください。リラックスできているときは自然と筋肉の力も抜け、痛みに対して敏感になりにくくなります。緊張せずに済む環境であるほど、性交時の痛みも和らぐ可能性が高まります。

【医療機関で】腟入り口の性交痛の改善法

自分で工夫しても改善しない痛みや、明らかに何らかの病気が原因と思われる性交痛の場合、医療機関での治療が有効です。婦人科では原因に応じた適切な治療法が提供可能です。ここでは代表的な治療法を3つご紹介します。

①:原疾患の治療(感染症や炎症の治療)

痛みの原因となっている病気がある場合は、まず必ず治療します。例えば、腟カンジダ症細菌性腟炎など腟の感染症があれば抗真菌薬や抗生物質で治療を行います。性感染症が原因の場合も、原因病原体に合わせた薬物療法が必要です。適切な治療をしない限り、感染症が原因の性交痛は解消しないため、まずは検査を受けて治療を行うことが重要です。また、子宮内膜症子宮筋腫などが痛みの原因であれば、それらの疾患に対する治療(薬物療法・手術など)を進めます。子宮内膜症による性交痛には病巣そのものの治療が必要ですが、症状緩和策として低用量ピルの服用が有効な場合もあります。基礎疾患の治療をきちんと行うことで、結果的に性交痛も改善していくケースが多いです。

②:インティマレーザーでの治療

潤滑不足や腟粘膜の萎縮が原因の性交痛に対しては、比較的新しい治療法としてインティマレーザーがあります。インティマレーザーは腟内に特殊なレーザーを照射し、粘膜下層のコラーゲン産生を促すことで腟組織にハリと潤いを取り戻す治療です。従来のレーザー治療と異なり粘膜表面を傷つけない方式のため痛みやダウンタイムが少なく、安全に受けられるのが特徴です。実際に、閉経後の萎縮性膣炎(GSM)に伴う性交痛の患者に対してレーザー治療を行った研究では、治療後12か月にわたり全ての患者で「腟の乾燥」と「性交痛」の症状が有意に改善したとの報告があります。副作用も重篤なものは報告されず治療満足度は非常に高かったとされています。このようにエビデンスも出てきており、特に更年期以降の乾燥による痛みでホルモン療法が難しい場合などに選択肢となる治療です。ただし保険適用外の自費診療である点には留意が必要です。

③:ホルモン補充療法(HRT)

更年期や産後などエストロゲン低下が原因の腟入り口の痛みに対しては、ホルモン補充療法(HRT)が有効です。エストロゲンを補充することで萎縮した腟粘膜が厚みと潤いを取り戻し、性交時の痛みや乾燥感が大きく改善します。具体的には、更年期の方で全身症状(ほてりや発汗など)もある場合は飲み薬や貼り薬など全身投与のHRTを行い、性交痛が主症状の場合は腟錠や腟クリームといった局所エストロゲン療法が用いられます。日本ではエストリオール腟錠が保険適用で処方可能であり、腟に挿入して粘膜の状態を改善していきます。局所療法は全身への影響が少なく安全性も高い治療です。

腟入り口の性交痛への対策のコツ

性交痛への対策を効果的に行うために、知っておいてほしいポイントをお伝えします。

①:痛みを一人で抱え込まない

性交痛はデリケートな悩みのため、誰にも相談できず一人で我慢している女性は少なくありません。しかし、痛みをひとりで抱え込む必要はまったくありません。実際、海外の調査では更年期以降の女性の約44%が性交痛に悩んでいるにもかかわらず、そのうち約70%もの人がその問題を医療者に相談していなかったという報告があります。痛みを我慢して性生活を避けたり黙って耐えたりすると、心身のストレスが蓄積しQOL(生活の質)も低下してしまいます。性交痛は決して恥ずかしいことではなく、多くの女性が経験しうる症状です。我慢せず、まずはパートナーや信頼できる友人に打ち明けてみたり、婦人科で相談したりする勇気を持ってください。専門家に相談すれば、適切な対処法や治療法で痛みが和らぐ可能性が高いです。

②:定期的な婦人科検診を行う

日頃から自分の体の状態を把握しておくことも、性交痛対策の一つです。年に一度は婦人科で検診を受け、子宮頸がん検診や腟の状態のチェックを行いましょう。定期検診を受けておくことで、異常の早期発見だけでなく、自分では気づかない軽度の炎症や萎縮のサインを指摘してもらえることもあります。また、ホルモンバランスの乱れや更年期の兆候がないかを確認することで、将来起こりうる性交痛への予防策を早めに講じることも可能です。普段から婦人科に通っておけば、いざ痛みが出たときにも相談しやすくなります。「特に異常がなくても婦人科に行っていいの?」と思うかもしれませんが、定期的に検診を受けることは女性の健康管理においてとても大切です。

③:悩みや不安がある場合は早めに婦人科で相談する

「痛みがあるけど、受診するほどではないかな…」と様子見してしまう方もいますが、性交痛に関する悩みや不安は早めに専門医に相談しましょう。性交痛、特に腟入り口の痛みは非常にデリケートな内容であり、話しづらいと感じるかもしれません。相談しやすい雰囲気のクリニックや信頼できる医師を見つけておくことも大切です。リラックスできる環境でじっくり話を聞いてもらえれば、それだけで安心につながることもあります。医師にはプライバシーを守る義務がありますので、遠慮せずに痛みの程度や感じている不安を伝えてください。早期に相談すれば、その分早く適切な対処ができますし、深刻な原因が隠れている場合には早期発見・治療にもつながります。

腟入り口の性交痛に関するよくある質問

更年期に性交痛は多いですか?

はい、更年期の女性には性交時に痛みを感じる方が少なくありません。更年期ではエストロゲンの分泌低下により腟粘膜が萎縮し乾燥しやすくなるため、挿入時の摩擦によって痛み(萎縮性腟炎による性交痛)を生じることがあります。実際、閉経後の女性の約半数が腟の乾燥感を自覚し、4割以上が性交痛を経験するとされています。こうした症状は閉経関連泌尿生殖器症候群GSM)と総称されるもので、ホルモン補充療法や潤滑剤の使用によって改善が期待できます。一人で悩んでいる方も多いのですが、適切な治療で良くなるケースが多いので、遠慮なく婦人科で相談してください。

ピルの服用中に腟入り口に性交痛を感じることはある?

あります。低用量ピルを長期間服用していると、体内のエストロゲンが抑えられた状態が続くため、若い方でも一時的に更年期のような低エストロゲン状態になることがあります。その結果、腟の粘膜が薄く乾燥しやすくなり、潤い不足による痛みを感じることがあります。同様にピルの影響で腟内の環境変化が起こり、カンジダ腟炎などの感染症にかかりやすくなることで痛みが生じる場合もあります。ピル服用中に性交痛が続く場合は、自己判断で中止せずまず処方医に相談しましょう。必要に応じてピルの種類を変更したり、一時的に休薬する、潤滑剤を使うなどの対策が検討されます。ピルは正しく使えば安全で有用な薬ですが、体調の変化には注意を払い、気になる症状は早めに医師に伝えることが大切です。

まとめ:腟入り口の性交痛のお悩みは婦人科に相談しましょう

腟入り口の性交痛は、潤滑不足や心理的緊張といった比較的対処しやすい原因から、感染症や婦人科疾患、ホルモン変化によるものまで、さまざまな要因で起こり得ます。痛みを感じたときは無理に我慢せず、一度立ち止まって原因を考えてみましょう。そして、自分でできる潤滑対策やリラックス法を試してみても改善しない場合や、明らかに異常が疑われるときには、早めに婦人科を受診することをおすすめします。
性交痛に悩んでいるのはあなただけではありませんし、恥ずかしいことでもありません。専門家の力を借りながら、パートナーと協力して、痛みのない快適な性生活を取り戻していきましょう。

性交痛は実は更年期以降の女性の半数近くが経験している症状です。症状のある7割の方が誰にも相談できていないというデータがあります。
痛みは我慢せず、まずはパートナーや信頼できる方に打ち明けてみてください。そして、ぜひ1回は婦人科検診を受けることをお勧めします。「受診するほどでもないかな…」と躊躇される方も多いのですが、早めの相談で改善できることがたくさんありますよ。
プライバシーには十分配慮していますので、些細な不安でもお気軽にご相談ください。

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