レディースクリニック なみなみ

40代で尿漏れがひどいとお悩みの方へ|原因・骨盤底筋トレーニング・受診の目安まで徹底解説

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クリニックなみなみ 院長 叶谷愛弓

執筆者兼監修者プロフィール

レディースクリニックなみなみ
院長 叶谷愛弓

東大産婦人科に入局後、長野県立こども病院、虎の門病院、関東労災病院、東京警察病院、東京都立豊島病院、東大病院など複数の病院勤務を経てレディースクリニックなみなみ院長に就任。

資格

  • 医学博士
  • 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
  • FMF認定超音波医
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  • 40代以上の女性の約半数が尿漏れを経験しており、決してあなただけの悩みではありません​。出産や加齢で骨盤底筋がゆるむことなどが主な原因です。
  • 「尿漏れがひどい」状態でも改善は可能です。 骨盤底筋トレーニング(いわゆるケーゲル体操)を正しく行えば、約50~70%の症状改善が期待できます。
  • 最新の治療法も登場しています。 例えばレーザーによるインティマレーザー治療や、電磁刺激で骨盤底筋を鍛えるエムセラといった機器を早めに取り入れることで、高い改善効果が得られるケースもあります。手術をしなくても治療の選択肢が広がっています。
  • 日常生活に支障を来す場合は早めに専門医へ相談を。 尿漏れで終日ナプキンやパッドが手放せない、週に何度も漏れてしまうといった場合は、我慢せず受診しましょう​。適切な治療で将来的な悪化を防ぎ、快適な生活を取り戻せます。

40代に差し掛かり、「最近尿漏れがひどくなってきた…このまま悪化するの?」「私だけこんな思いをしているの?」と不安に感じていませんか。実は40代以上の女性の約44%が尿漏れを経験しているとのデータがあり、尿漏れは決して珍しいことではありません。くしゃみや笑った拍子に思わず漏れてしまうとショックですが、「もう年だから仕方ない」とあきらめる必要はありません。結論から言えば、適切な対策を行えば40代でも尿漏れは改善可能です。骨盤底筋トレーニングなどのセルフケアで良くなるケースが多く、症状が強い場合も医療機関で受けられる治療法がいくつもあります。

本記事では、40代女性に多い尿漏れがひどくなる背景や原因から、骨盤底筋トレーニングの方法、受診の目安、さらに薬物療法・インティマレーザー・手術など専門的な治療法まで詳しく解説します。恥ずかしい悩みかもしれませんが、正しい知識と対策で改善できますので、ぜひ参考にしてください。

目次
  1. 1 40代で尿漏れがひどくなるのはなぜ?背景にある原因
  2. 2 骨盤底筋のゆるみと尿漏れの関係:支える力の低下が引き起こすもの
  3. 3 3. 「尿漏れ、病院に行くべき?」受診の目安とタイミング
  4. 4 4. 自分でできる尿漏れ改善セルフケア:骨盤底筋トレーニングの方法
    1. 4.1 骨盤底筋トレーニング(ケーゲル体操)の基本ステップ
    2. 4.2 トレーニング成功のポイントと注意点
    3. 4.3 生活習慣の見直しも効果あり
  5. 5 5. 尿漏れを改善する医療的な治療法【薬物療法・デバイス・手術など】
    1. 5.1 5.1 薬物療法:尿失禁に効果のあるお薬は?
    2. 5.2 5.2 補助デバイスによる骨盤底筋トレーニング:エムセラなど
    3. 5.3 5.3 レーザー治療:切らない尿漏れ治療「インティマレーザー」
    4. 5.4 5.4 手術療法:根本的に治すスリング手術など
  6. 6 6. まとめ|恥ずかしがらず適切な対策で快適な毎日を取り戻そう
  7. 7 子宮がん検診の痛みに関するよくある質問
    1. 7.1 40代で急に尿漏れがひどくなったのはなぜですか?
    2. 7.2 自宅でできる一番簡単な尿漏れ対策は何ですか?
    3. 7.3 どのタイミングで婦人科や泌尿器科を受診すればいいですか?
    4. 7.4 エムセラ(電磁刺激治療)は痛いですか?効果はどれくらい期待できますか?
    5. 7.5 インティマレーザー治療は手術ですか?ダウンタイムはありますか?
    6. 7.6 薬で尿漏れは治りますか?
    7. 7.7 手術は怖いのですが、スリング手術ってどんなものですか?

40代で尿漏れがひどくなるのはなぜ?背景にある原因

40代女性に尿漏れ(尿失禁)が増える主な原因は、骨盤底筋のゆるみです。​骨盤底筋とは骨盤の底で膀胱や子宮、直腸などを下から支えるハンモック状の筋肉群のこと。正常に働いていれば、腹圧(お腹に力が入ったときの圧力)がかかっても膀胱や尿道をしっかり支え、尿漏れを防いでくれます。しかし加齢や出産などを契機に骨盤底筋が弱くゆるむと、くしゃみ・咳・ジャンプなどちょっとお腹に力が入った拍子に尿道を締めきれず尿が漏れてしまうのです​。このタイプの尿漏れを医学的には「腹圧性尿失禁」と呼びます。

骨盤底筋がゆるむ要因として、出産の影響は特に大きいです。妊娠・経膣分娩で骨盤底の筋肉や靭帯が大きく伸ばされると、一部は損傷したり元の締まりが弱くなったりします​。出産直後は約3割の女性に尿漏れが起こりますが、多くは数ヶ月以内に自然と改善します​。とはいえ、出産を経験した方は将来的にも骨盤底筋がゆるみやすく、産後に一旦良くなった人でも40歳を過ぎて再びひどくなるケースもあります。特に高齢出産や複数回の出産をしている場合、ダメージが蓄積して筋力が回復しにくい傾向があります​。

さらに更年期(閉経前後の40~50代)も尿漏れ悪化の転機となりえます​。女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が急激に減少すると筋肉量や骨量も低下し、代謝が落ちて太りやすくなります​。筋力低下と肥満による負荷増加が重なることで、骨盤底筋は一層ゆるみやすくなるのです。また、女性ホルモン低下により尿道や膣の粘膜が萎縮すると、尿道の閉じる力も弱まり尿失禁につながりやすくなります。このように更年期は尿漏れが起こりやすい時期ですが、誰もが通る道ですから「年だから仕方ない」と放置せず、きちんと対策すれば予防・改善が可能です​。

なお、尿漏れには腹圧性尿失禁以外に「切迫性尿失禁」(急に強い尿意を催しトイレまで間に合わず漏れるタイプ)や「混合性尿失禁」(上記二つが混在)もあります​。40代では腹圧性が多いものの、切迫性(過活動膀胱による尿失禁)が見られる方もいます。切迫性尿失禁は膀胱の過剰な収縮が原因で、骨盤底筋のゆるみとは直接関係しません。本記事では主に腹圧性尿失禁を念頭に解説しますが、「トイレが近くて漏れてしまう」という切迫性の症状が強い場合は過活動膀胱の治療(膀胱訓練や飲み薬など)も有効です​。いずれにせよ、まずは原因に合った対策を取ることが大切です。

<主な尿漏れ(尿失禁)の原因・リスク要因>

  • 骨盤底筋のゆるみ・損傷(妊娠・経膣分娩、加齢、肥満など)​
  • 腹圧のかかる習慣(重い物を日常的に持つ仕事、慢性的な便秘によるいきみ、咳喘息・季節性アレルギーによる頻繁な咳くしゃみ)​
  • 女性ホルモン低下(更年期における筋力低下・粘膜萎縮)​
  • 膀胱や尿道自体のトラブル(過活動膀胱による急な尿意、尿道の手術既往や神経障害など)

骨盤底筋のゆるみと尿漏れの関係:支える力の低下が引き起こすもの

上記の通り、40代女性の尿漏れでは骨盤底筋のゆるみが大きな原因となっています。骨盤底筋は普段意識することが少ない部分ですが、排尿・排便をコントロールし、臓器を正しい位置に保つ重要な役割を担っています​。この筋肉群が弱まると、腹圧がかかった際に膀胱や尿道をしっかり支えられず、尿道が開いた状態になってしまいます​。結果、笑ったり咳をしただけでも尿がチョロッと漏れてしまうのです。

実際、女性は男性より尿漏れしやすい体の構造をしています。男性の尿道は前立腺を経てS字に折れ曲がり全長約20cmあるのに対し、女性の尿道はまっすぐで長さわずか3~4cmしかありません​。さらに尿道のすぐ後ろには膣があり、この膣やその周囲組織が緩むと膀胱の出口(膀胱頸部)をしっかり固定できなくなります​。簡単に言えば、女性はもともと尿道を支える構造的な余裕が小さいため、少し筋肉や靭帯がゆるむだけで尿漏れが生じやすいのです。

40代は筋力低下やホルモン変化が本格化する時期であり、出産歴がある方は骨盤底へのダメージも蓄積しています。そのため「少し緩んだ程度」でも症状として表れやすく、尿漏れが顕在化しやすい年代と言えるでしょう。特に腹圧性尿失禁(SUI)は40~50代女性に多く見られるタイプで、日常生活で腹圧がかかる以下のような場面で起こります​

  • くしゃみ・咳をしたとき(風邪やアレルギーの時期など要注意)
  • 大笑いしたとき(楽しいはずがヒヤッと…という経験はありませんか)
  • 重い荷物を持ち上げたとき(買い物袋や子どもを抱えた瞬間など)
  • 走ったりジャンプしたとき(運動や階段の上り下りで漏れることも)
  • 急に立ち上がったとき(立ちくらみと共に思わず漏れる場合も)

上記のような状況で尿漏れが生じる場合、骨盤底筋のゆるみ・低下が原因の腹圧性尿失禁である可能性が高いです。一方で「トイレに行こうと思った途端に間に合わず漏れる」「水音や冷えで急に尿意が来る」といった場合は切迫性尿失禁の傾向があります​。切迫性の場合、骨盤底筋よりも膀胱自体の過敏さが原因なので、対策も少し異なります(※切迫性の対策は後述の薬物療法の項で触れます)。まずは自分の尿漏れがどういう状況で起きるか観察し、原因に合ったケアをすることが大切です。

いずれにせよ、骨盤底筋のゆるみが関与する尿漏れであれば、次章で述べる骨盤底筋トレーニングが改善のカギとなります。​まずは自分でできる対策から始め、様子を見るのがおすすめです。

3. 「尿漏れ、病院に行くべき?」受診の目安とタイミング

「多少の尿漏れで病院に行っていいのかしら…」と迷っている方も多いかもしれません。尿漏れはデリケートな問題だけに、なかなか受診の踏ん切りがつかないですよね。しかし以下のチェックポイントに当てはまる場合は、我慢せず専門医に相談することをおすすめします。

  • 週に何度も尿漏れが起きる:「たまに」ではなく頻繁に症状がある場合。特にここ1~2ヶ月で漏れの頻度や量が増えているなら要注意です。
  • ナプキンやパッドが手放せない:日常的に軽失禁パッドや尿漏れパンツを使用しないと不安なレベルの場合。​漏れが怖くて外出や運動を控えているなら生活の質が落ちています。
  • 尿意切迫や頻尿を伴う:我慢できない尿意(切迫感)や1日に何十回もトイレに行く頻尿があり、生活に支障が出ている場合​。過活動膀胱の治療が必要なこともあります。
  • 産後半年以上経っても改善しない:出産直後の尿漏れが1年近く経っても良くならず続いている場合​。自然回復が見込めない可能性があり、治療介入を検討します。
  • 血尿や痛みを伴う:尿漏れと共に血が混じる、排尿時に痛み・違和感がある場合。泌尿器系の他の疾患(尿路感染症や結石など)の可能性もあるため要検査です。

上記のようなケースでは、一人で抱え込まず専門の医師に相談しましょう。特に「パッドやおむつを1日中つけている」「1日に何枚も交換する」ほどのひどい尿漏れであれば、恥ずかしがらず早めに受診してください​。恥ずかしい気持ちになるのは自然なことですが、医師は日常的にこうした相談を受けていますし、適切な対応策が必ずあります。「これくらい我慢しよう…」と無理を重ねるほど、筋力低下が進んで将来的に悪化する恐れもあります。逆に言えば、早めに対策すれば将来の重症化を防げるのです​。

どの診療科を受診すればいいの?という疑問もあるでしょう。尿漏れの場合、泌尿器科や女性専門の骨盤底外来のほか、産婦人科でも対応しています​。女性の尿トラブルは泌尿器科と婦人科の境界領域なので、どちらでも基本的には構いません。最近は「女性泌尿器科」「骨盤底筋リハビリ外来」など、女性の尿失禁を専門に診るクリニックも増えています。受診先に迷う場合は、お近くの総合病院に問い合わせてみたり、口コミで評判の良いクリニックを探してみると良いでしょう。当院(レディースクリニックなみなみ)でも尿漏れに関するご相談を多数お受けしていますので、悩んだときは遠慮なくご相談くださいね。

受診すると具体的に何をするの? 初診ではまず問診で症状や生活状況を詳しく伺い、必要に応じて尿検査や膣・腹部の診察、超音波検査などで原因を調べます​。その上で症状や原因に合わせた治療計画を立てていきます。腹圧性尿失禁が中心なら骨盤底筋トレーニング指導がまず行われますし、切迫性尿失禁があればお薬の処方が検討されます​。痛みを伴う検査や治療は基本的にありませんので、リラックスして受診してください。

「まだそこまで深刻ではないけど、将来ひどくならないか心配…」という段階なら、次章のセルフケアから始めてみましょう。それでも不安な場合は、相談だけでも受診してみる価値がありますよ。

4. 自分でできる尿漏れ改善セルフケア:骨盤底筋トレーニングの方法

症状が軽いうちに対処すれば、尿漏れは改善が期待できます​。最も効果的なセルフケアが骨盤底筋トレーニング(いわゆるケーゲル体操)です。骨盤底筋は意識して鍛えれば筋力アップが可能で、適切に行えば約7割の人で尿漏れ症状が改善したとの報告もあります​。ここでは骨盤底筋トレーニングの基本的なやり方とポイントを解説します。

骨盤底筋トレーニング(ケーゲル体操)の基本ステップ

  1. 鍛える筋肉を意識する: まず骨盤底筋を正しく認識しましょう。方法の一つは、トイレで排尿を途中で一旦止めてみることです。​尿を止めたときにキュッと締まるのが骨盤底の筋肉。ただし実際のトレーニング中に尿を止める必要はありません。この感覚を目安に、鍛えるべき筋肉をイメージします(お尻や太ももの筋肉ではない点に注意)。
  2. 骨盤底筋を締める: 仰向けや椅子に座った姿勢で楽に力を入れられる体勢を取ります。ゆっくり息を吐きながら、先ほど意識した骨盤底の筋肉を5~10秒程度ギューッと締め続けます。お尻やお腹に力を入れず、膣や肛門を引き上げるようなイメージで締めるのがコツです。顔や肩の力は抜き、呼吸は止めないようにしましょう。
  3. 力をゆるめる: 5~10秒締めたら、今度は5~10秒かけてフッと完全に力を抜きます。一気に抜くより、ゆるやかに緩めるのがポイントです。筋肉がふわっと元に戻る感覚を意識してください。
  4. 繰り返す: 締める⇔ゆるめるを1セットとし、10回繰り返し行います。​これを1日に3セット(朝・昼・晩など)行うのが目標です。慣れてきたら立った姿勢でもできるようにしてみましょう。最初はうまく力を入れられないかもしれませんが、続けるうちにコツが掴めてきます。

骨盤底筋トレーニングは毎日コツコツ続けることが大切です。早ければ4~6週間で効果を感じ始める人もいますが、大きな改善実感には約3ヶ月程度かかることもあります​。途中で諦めず継続しましょう。また、自己流ではなく専門家の指導を受けると効果的です。​理学療法士や看護師による指導のもとで行った方が改善率が高いとの報告もあります​。産婦人科や泌尿器科で骨盤底筋訓練用のパンフレットをもらえたり、リハビリ指導を受けられる場合もあります。不安な方は遠慮なく医師に相談してみましょう。

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トレーニング成功のポイントと注意点

  • 他の筋肉はリラックス: お腹・お尻・太ももには力を入れず、骨盤底の筋肉だけを動かす意識を持ちましょう​。最初は難しいですが、慣れると骨盤底だけギュッと締める感覚が分かってきます。
  • 呼吸を止めない: 力むときに息を止めてしまうと、かえって腹圧が高まり尿漏れにつながります。ゆっくり呼吸しながら行いましょう。
  • 回数より質を重視: たくさんやれば早く良くなるというものではありません。筋肉にも休息が必要です。​無理に何十回も行うと筋疲労で逆効果になることも。1日30~50回程度を目安に継続してください。
  • 習慣に取り入れる: 「朝起きてすぐ」「通勤電車の中で」「寝る前にベッドで」など、毎日の習慣と結びつけると継続しやすくなります。周りに気付かれずできるのもケーゲル体操の良いところです。
  • 結果を焦らない: 1~2週間で効果を感じなくても普通です。3ヶ月ほど続けても改善がなければ、他の治療法も併用を検討しましょう​。逆に少しでも漏れにくくなってきたらトレーニングの成果ですので、自信を持って続けましょう。

生活習慣の見直しも効果あり

骨盤底筋トレーニングと合わせて、日常生活の工夫でも尿漏れは軽減できます。例えば体重管理は重要です。肥満は骨盤底への負荷を増やすため、適正体重の維持を目指しましょう。実際、体重を減らしただけで尿失禁が改善したという研究もあります。また、慢性的な咳がある方は禁煙や喘息・アレルギー治療で咳症状を抑えることも大切です。便秘しがちな方は食物繊維や水分を十分に摂取し、排便時にいきまないよう心がけましょう。

切迫性尿失禁の傾向がある場合は、カフェインやアルコールの摂取を控えめにすると症状が和らぐことがあります。これらは膀胱を刺激して尿意を強める作用があるためです。夕方以降の水分摂取量を調整してみるのも一案ですが、極端な我慢は膀胱容量を低下させ逆効果なので注意してください。

吸水パッドの活用も適切に: 尿漏れ対策用のパッドやパンツは心理的安心にもつながります。上手に利用しつつトレーニングを続け、徐々に使わなくても平気になることを目指しましょう。ただしパッドに頼りきりでトレーニングを怠ると筋力低下が進みかねません。あくまで補助的な位置づけと考えると良いでしょう。

これらのセルフケアを実践しても「効果が感じられない」「もっと根本的に治したい」という場合、次に紹介する医療機関での治療を検討してみてください。最近はメスを使わない画期的な治療も登場しており、驚くほど症状が軽くなるケースもあります​。

5. 尿漏れを改善する医療的な治療法【薬物療法・デバイス・手術など】

セルフケアで改善が不十分な場合や、症状が重い場合には医療機関で受けられるさまざまな治療法があります。ここでは、主な治療オプションとして薬物療法, 骨盤底筋トレーニングの補助デバイス, レーザー治療(インティマレーザー), 手術療法の順に紹介します。それぞれ対象となる尿失禁のタイプや効果が異なりますので、医師と相談しながら最適な方法を選びましょう。

5.1 薬物療法:尿失禁に効果のあるお薬は?

切迫性尿失禁(過活動膀胱)がある場合、まず検討されるのが薬物療法です。膀胱の過剰な収縮を抑える薬を内服することで、尿意切迫感や頻尿・尿漏れを改善できます。代表的な薬剤は抗コリン薬(膀胱の筋肉にあるムスカリン受容体をブロックし収縮を抑制)やβ3作動薬(膀胱の筋肉を弛緩させる)です。これらは過活動膀胱の治療薬として広く使われており、切迫性尿失禁の症状を和らげる効果が期待できます​。実際、「くしゃみで漏れる」という腹圧性の症状には効きませんが、「急にトイレ!となって漏れる」という切迫性の症状には薬でかなり改善するケースも多いです。症状にあわせて医師が適切な薬を処方します。

一方、腹圧性尿失禁に対する決定的な内服薬は残念ながら現在ありません。​腹圧性は骨盤底筋や尿道括約筋そのものの機能低下が原因なので、「緩んだ骨盤底筋を強くする薬」は存在しないのです​。かつては尿道を締める交感神経に作用する薬(β2作動薬のクレンブテロール等)や抗うつ薬のデュロキセチンなどが試みられたこともありますが、いずれも決め手に欠け日本では積極的に使われていません。また、更年期以降の方にはエストロゲンの局所投与(膣錠や軟膏)で尿道粘膜を改善し症状緩和を図ることもありますが、単独で劇的に効くわけではありません。腹圧性尿失禁の場合、基本は先述の骨盤底筋訓練を継続し、それでも難しい場合に次項のようなデバイス治療や手術を検討する形になります。

5.2 補助デバイスによる骨盤底筋トレーニング:エムセラなど

自分で行う骨盤底筋トレーニングに加えて、専門クリニックでは機器を用いた骨盤底リハビリを受けることもできます。その代表が**「エムセラ(EMSella)」と呼ばれる電磁刺激による治療用椅子です​。エムセラは椅子の形をした装置に衣服を着たまま座るだけで治療が完了します。一体どのような仕組みかというと、椅子に内蔵されたコイルから高強度の焦点式電磁(HIFEM)エネルギーが発生し、骨盤周囲に強力な磁場を与えます。すると自分の意思とは無関係に骨盤底筋が収縮し、30分の治療で約11,000回もの骨盤底筋運動に相当する刺激を与えることができるのです​。自力のケーゲル体操では鍛えにくい深部の筋肉まで効率よく収縮させられるため、短期間で骨盤底筋の筋力アップと尿漏れ改善が期待できる画期的な機器と言えます​。

エムセラの効果は研究でも確認されています。産後女性を含む骨盤底機能不全の患者95人を対象にした比較研究では、従来の電気刺激よりエムセラの電磁刺激治療の方が骨盤底筋力の改善幅が大きく、自己評価による症状改善スコアも有意に高かったと報告されています​。客観的な筋電図計測でも、エムセラ群では骨盤底筋の最大収縮力が平均48~59%向上したのに対し、従来の電気刺激群では7~36%の向上に留まったとのことです​。このように非侵襲的(からだを傷つけない)な磁気刺激療法は、安全かつ効果的に弱った骨盤底筋を鍛え直せる手段として注目されています。

エムセラ治療は、産後の方から更年期世代の方まで幅広く実施しています。「自分で頑張ってトレーニングしたけれど効果を感じられない」「忙しくて運動する時間がない」という場合に取り入れていただくと、より早く確実な改善が得られるでしょう。痛みはほとんどなく、椅子に座っているだけなので体への負担もありません。通常、週に1~2回ペースで数回行うと効果が現れ始めます。もちろん個人差はありますが、「くしゃみしても漏れなくなった!」「夜間のトイレ回数が減った」など嬉しい声もいただいています。骨盤底筋体操を続けても改善しないときは、エムセラのような最新デバイスの力を借りるのも一つの方法です。今や尿漏れは我慢せず治せる時代ですので、遠慮なくご相談くださいね​。

5.3 レーザー治療:切らない尿漏れ治療「インティマレーザー」

「骨盤底筋体操を頑張ってみたけど効果が感じられない」「根本的にゆるんだ組織を引き締めたい」という場合、インティマレーザー治療という選択肢もあります​。これは当院でも導入している最新の治療法で、特殊なレーザー光を膣内および外陰部に照射し、組織の再生を促すことで尿漏れを改善するものです​。

インティマレーザーの長所は、なんと言ってもメスを使わない「切らない治療」であることです​。施術時間はわずか15~30分程度で、麻酔の必要もなく、施術中の痛みもごく軽い温かさを感じる程度(個人差はありますが「少し温かいかな?」といった感覚)です​。従来の膣レーザー治療(CO2レーザー等)に比べて粘膜の表面を傷つけない非侵襲的アプローチのため、ダウンタイム(施術後の回復時間)がほとんどないのも特徴です​。施術直後から歩いて帰宅でき、その日から入浴や通常の生活も問題なく送れます。忙しい40代女性でも受けやすい治療と言えるでしょう。

気になる効果ですが、インティマレーザーは軽度~中等度の腹圧性尿失禁に対して有効であることが国内外の研究で示されています。例えば2019年の研究では、エルビウムヤグレーザー治療(インティマレーザーの一種)を受けた女性41人中約75%にあたる31人で、6ヶ月後に尿漏れ症状の明確な改善が認められました​。さらにレーザー照射後の超音波検査では膀胱頸部(膀胱の出口)の可動性が減少しており、これはレーザーによって尿道の支持構造が強化されたことを意味します​。副作用も一時的な軽い違和感程度で、安全で効果的な治療と結論づけられています​。つまり、レーザー照射で膣壁のコラーゲン産生が促され組織がふっくら厚く強くなることで、膀胱と尿道の角度が正常な位置に戻り、尿漏れしにくくなるわけです​。メスを入れず身体への負担が少ないため、「手術はまだ考えられないけれど積極的に治したい」という40代以降の尿漏れ患者さんにとって有望な選択肢と言えるでしょう。

インティマレーザーの効果には個人差がありますが、多くの場合1回の施術でも一定の改善が見られます​。症状に応じて数ヶ月おきに2~3回程度施術を行うことで、より高い持続的な効果が期待できます​。当院でも実施していますが、「くしゃみしてもほとんど漏れなくなった」「夜間のトイレ回数が減った」といった喜びの声が聞かれます。切らない治療とはいえ専門的な施術ですので費用は自費診療になりますが、入院や麻酔のリスクを避けて手軽に受けられる尿失禁治療として満足度の高い治療法です。

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5.4 手術療法:根本的に治すスリング手術など

保存的な治療で改善が難しい重度の腹圧性尿失禁には、手術が選択肢となります。近年は「中部尿道スリング手術(TVT手術など)」と呼ばれる比較的低侵襲な手術が標準的です​。これは、合成樹脂製の細いテープを尿道の中部にU字にかけて吊り上げ、ゆるんだ尿道を下から支える方法です​。腹圧がかかっても尿道がしっかり閉じるよう支えを補強するイメージで、通常30分ほどで完了し入院も短期間で済みます。スリング手術は尿失禁手術の第一選択(ゴールドスタンダード)とされており、世界中で実施されています​。

気になる成功率ですが、中部尿道スリングは80~90%の患者で尿失禁が大きく改善するとの報告があります​。20年以上の長期データでも有効性と安全性が確認されており、多くの方にとって根治的治療になり得ます。ただし手術には麻酔や多少のダウンタイムが伴い、また将来の膀胱鏡検査や分娩に影響する可能性もゼロではありません。そのため、「そこまで生活に支障はない軽度の尿漏れ」という場合にいきなり手術を勧められることは通常ありません。まずは骨盤底筋訓練やペッサリー・レーザーなどの保存的療法を試し、それでも「とんでもない尿漏れになってきた」と感じる場合に手術を検討するのが一般的です​。

スリング手術以外には、コラーゲンなどの注入療法(尿道壁にボリューム物質を注射して尿道を狭める)や膀胱頸部挙上術(コルポサスペンション)などもあります。注射療法は体への負担が少ない反面、効果が一時的で再注入が必要になることが多いです​。一方の膀胱頸部挙上術は開腹または腹腔鏡で膀胱と尿道の接合部を縫い上げ固定する手術で、スリング普及前によく行われていました。現在は侵襲が大きいため、他の治療が無効な一部のケースを除き第一選択とはなっていません​。

また、尿失禁に骨盤臓器脱(子宮脱や膀胱瘤など)を合併している場合は、骨盤臓器脱手術と同時に尿失禁手術を行うこともあります​。例えば子宮脱や膀胱瘤の手術で骨盤底を修復する際に、一緒にスリングを入れておく、といった対応です。同時手術によって将来的な尿失禁発症リスクを下げる効果が期待できます。

手術は最終手段ではありますが、適応があれば恐れる必要はありません。 スリング手術は短時間で済み効果も高く、術後数日で日常生活に復帰できるケースがほとんどです​。実際、「もっと早く受ければ良かった」との声もあるほど生活の質が向上します。ただし前述のように他の治療法も年々進歩していますから、「絶対手術しか治らない」というわけでもありません。医師と十分に相談し、ご自身にとってベストな治療を選んでくださいね。

6. まとめ|恥ずかしがらず適切な対策で快適な毎日を取り戻そう

40代で尿漏れに悩む女性は決して少なくありません。しかし適切な対策を講じれば、多くの場合で症状は改善し得ることをお伝えしてきました。骨盤底筋トレーニングなどのセルフケアで約半数以上の方が改善を実感できますし​、さらにエムセラやインティマレーザーといった新しい治療法の助けを借りれば、手術をしなくても快適な生活を取り戻せるケースも増えています​。尿漏れは放っておくと心身の負担になるだけでなく、将来的に悪化して治療が大掛かりになる可能性もあります。ですから、「まだ大丈夫かな…」と先延ばしにせず、できることから早めに対策することが肝心です。

恥ずかしさから誰にも言えず、一人で抱え込んでしまう女性も多い尿漏れの悩み。しかし、今や尿漏れは「治せるもの」になっています。当院でも尿失禁に対する骨盤底リハビリやインティマレーザー治療を提供し、これまで多くの患者様の笑顔を取り戻してきました。大切なのは勇気を出して一歩踏み出すことです​。ぜひ遠慮なく専門家の力を借りて、快適な毎日を取り戻してくださいね。あなたの一歩を応援しています!

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子宮がん検診の痛みに関するよくある質問

40代で急に尿漏れがひどくなったのはなぜですか?

出産による骨盤底筋へのダメージや、40代以降の女性ホルモン(エストロゲン)減少による筋力・粘膜の変化が主な原因です。くしゃみや咳などで腹圧がかかると支えが弱くなり尿が漏れやすくなります。

自宅でできる一番簡単な尿漏れ対策は何ですか?

骨盤底筋トレーニング(ケーゲル体操)が最も効果的です。膣や肛門の締める感覚をつかみ、5~10秒締めて5~10秒緩める動作を1日3セット(各10回)続けてみてください。

どのタイミングで婦人科や泌尿器科を受診すればいいですか?

  • 週に何度も尿漏れが起きる
  • パッドやショーツが手放せない
  • 急な尿意(切迫性)がある
  • 出産後半年以上改善しない
  • 血尿や排尿時の痛みがある

上記に当てはまる場合は早めの受診をおすすめします。

エムセラ(電磁刺激治療)は痛いですか?効果はどれくらい期待できますか?

痛みはほとんどありません。椅子に座るだけで高強度の磁場が骨盤底筋を自動的に収縮させ、約11,000回分のトレーニング効果があります。週1~2回の治療で多くの方が2~4回目から漏れの軽減を実感しています。

インティマレーザー治療は手術ですか?ダウンタイムはありますか?

メスを使わないレーザー治療です。施術時間は15~30分、麻酔不要で痛みもごく軽い温かさ程度。ダウンタイムはほぼなく、当日から入浴や通常の生活が可能です。軽度〜中等度の尿漏れに有効です。

薬で尿漏れは治りますか?

切迫性尿失禁(急な尿意で漏れるタイプ)には抗コリン薬やβ₃作動薬などの薬物療法が効果的です。腹圧性尿失禁(くしゃみ・咳で漏れるタイプ)自体を直接改善する内服薬はなく、骨盤底筋トレーニングなど保存的療法が基本となります。

手術は怖いのですが、スリング手術ってどんなものですか?

中部尿道スリング手術は細いテープを尿道にかけて支える方法で、30分ほどで終了・短期入院でOK。80~90%の高い成功率があり、根本的な改善を目指せます。術後の痛みや回復も比較的早いのが特徴です。

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院長 叶谷愛弓

東大産婦人科に入局後、長野県立こども病院、虎の門病院、関東労災病院、東京警察病院、東京都立豊島病院、東大病院など複数の病院勤務を経てレディースクリニックなみなみ院長に就任。

資格

  • 医学博士
  • 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
  • FMF認定超音波医
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  診療時間

住所 東京都目黒区目黒1丁目6−17
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東急目黒線「目黒」駅 徒歩4分
診療時間 月・火・木・金 
午前 9:00-13:00 午後 14:20-19:20
土・日 
午前 9:00-13:00 午後 14:20-17:00
休診日 水・祝