
執筆者兼監修者プロフィール
東大産婦人科に入局後、長野県立こども病院、虎の門病院、関東労災病院、東京警察病院、東京都立豊島病院、東大病院など複数の病院勤務を経てレディースクリニックなみなみ院長に就任。
資格
- 医学博士
- 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
- FMF認定超音波医
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低用量ピルの飲み忘れは誰にでも起こり得ることです。特に一時的に服用を中止する休薬期間の明けにうっかり忘れてしまうケースが多く、普段きちんと飲めている人でも珍しくありません。ここでは「ピルの飲み忘れは何時間まで大丈夫か?」という疑問について解説していきます。また、飲み忘れたタイミング別の対処法や、避妊効果への影響、妊娠の可能性などについても詳しく説明します。産婦人科監修の信頼できる情報をもとに、正しいピルの飲み方も確認しましょう。
低用量ピルを飲み忘れた!タイミング別の対処法
ピルの飲み忘れに気づいたタイミングによって対処法が異なります。基本的な考え方としては、予定の服用時間からどの程度遅れたかでリスクが変わります。一般に、12時間以内の遅れであれば誤差の範囲内とされ、すぐに忘れた分を飲めば避妊効果への影響はほとんどありません。一方、12時間を超えて24時間以内(約1日遅れ)の場合は「1日飲み忘れ」に相当し、適切に対処すれば引き続き避妊効果を維持できますが注意が必要です。2日以上連続で忘れた場合は避妊効果が大きく低下するため、その周期での避妊は保障されなくなります。以下ではケースごとに正しい対処法を解説します。
1日飲み忘れて、次の日の服用時刻前に気付いた場合
前日のピルを1回分飲み忘れ、翌日の通常の服用時間になる前に気付いた場合は、思い出した時点で速やかに忘れた分(1錠)を服用してください。例えば毎晩21時に飲んでいる人が、翌日の夕方までに飲み忘れに気付いたようなケースです。気付いた時に前日分を飲んだら、その日の定時(通常の服用時刻)になったら予定どおり当日分のピルを服用します。多少短い間隔で2錠飲む形になりますが問題ありません。
この対処を行えば、1日分の飲み忘れであっても避妊効果は基本的に維持されます。WHOでも、1〜2日分のピルの飲み忘れであれば気付いた時にすぐ服用するよう指導しても問題ないとされています。1錠程度の飲み忘れであればホルモン量の不足をすぐ補えるため、適切にリカバリーすれば妊娠予防効果はほぼ持続すると考えられます。
1日飲み忘れて、次の日の服用時刻に気付いた場合
前日のピルを1錠飲み忘れたことに、ちょうど翌日の通常服用時刻になって気付いた場合も対処はほぼ同じです。この場合、前日分と当日分の2錠をまとめて同時に服用します。例えば毎晩21時に飲む人が、その21時になって初めて前日の分を忘れていたと気付いたケースです。その場で2錠を一緒に飲んでください。1日に2錠服用しても健康上の問題はないことが報告されており、低用量ピル2錠分のエストロゲン量は中用量ピル1錠相当で安全域に収まります。したがって慌てずに2錠まとめて飲んでください。
2錠同時に飲んだ後は、その後の服用スケジュールをずらす必要はありません。翌日以降も通常どおり1日1錠ずつ決まった時間に服用を続けましょう。1日程度の飲み忘れであれば以上の対応で避妊効果は維持できます。ただし、休薬期間(プラセボ期間)直前や直後のタイミングで飲み忘れた場合は注意が必要です。休薬前後の飲み忘れでは、服用再開後7日間連続で正しく飲むまでは避妊効果が低下するリスクがあります。特にシート最終週(休薬直前)に飲み忘れた場合は後述の対処(休薬期間を設けず次のシートを開始する措置)も検討してください。
2日飲み忘れて気付いた場合
2日連続でピルを飲み忘れていた場合(48時間以上未服用)は、残念ながらその時点でその周期の避妊効果はほぼ失われると考えましょう。2日分の飲み忘れに気付いた段階で、とりあえず直近の飲み忘れ分の1錠を服用すること自体は問題ありません。しかし既に排卵が再開している可能性が高く避妊効果が大きく低下しているため、そのシートでの服用は中止し、一度消退出血(生理)が来るのを待ってから新しいシートで再開する方法が推奨されます。
具体的には、飲み忘れによる出血が始まったらその周期のピル服用を一旦終了し、出血初日~5日目の間に新しいシートの服用を開始します。新しいシートを開始したら、7日間連続でピルを正しく服用し終えるまでは性交を控えるかコンドームなど他の避妊法を併用してください。2日以上連続で飲み忘れた場合、少なくとも1週間は避妊効果が不十分な状態となるためです。
なお、仮に2日分の飲み忘れに気付いた段階で残りのピルを飲み続けたい場合(生理を早めたくない場合)は、飲み忘れた前日分の1錠だけ服用し、あとのスケジュール通りに続ける方法もあります。この場合でも次の7日間は必ず他の避妊法を併用してください。ただし2日以上の飲み忘れでは高い確率で排卵が起こり得ることから、リスク回避のためには一度ピルを中止して仕切り直す方が確実です。心配な場合は産婦人科医に相談して指示を仰ぐようにしましょう。
3日以上飲み忘れて気付いた場合
3日以上連続でピルを飲み忘れてしまった場合、ほとんどの場合その時点で消退出血(生理)が始まってしまいます。3日分もホルモン補充が途絶えると子宮内膜が剥がれ落ちて出血が起こるためです。もし飲み忘れによってすでに出血(生理様の出血)が来てしまった場合、今使っているピルシートの残りはもはや有効でないので、そのシートでの服用を中止してください。そして出血開始日を1日目として、新たに別のシートを使い始めるようにします。基本的には次の生理初日からピルを再開する形です。
新しいシートを開始した後は、7日間連続でピルを服用し終えるまでは避妊効果が安定しない可能性があります。そのため開始直後の1週間は性交渉を避けるか、コンドームなど他の避妊法を必ず併用してください。これは2日以上の飲み忘れに対する一般的な注意点と同様です。
もし3日以上の飲み忘れに気付いた時点でまだ出血が起きていない場合でも、避妊効果は失われていると考えて同様の対応をとるべきです。場合によってはその後出血が始まるでしょう。まとめると、3日以上連続で飲み忘れた場合は現在の服用サイクルはリセットし、新しいサイクルに切り替えて再スタートする必要があるということです。
飲み忘れた日がわからない場合
「気付いたらピルが何錠か余っている…」「いつ飲み忘れたのか記憶が曖昧」という場合もあるかもしれません。このように飲み忘れた日や回数が定かでない場合は、自己判断で適当に服用を再開したり中止したりせず、一度処方元の医療機関に相談することをおすすめします。飲み忘れの状況が不明な場合、下手に続けても避妊効果を過信できず、逆に中断すると望まない出血を起こす可能性もあります。
基本的には「飲み忘れが3日以上あったもの」とみなして対応することになりますが、安全のための判断を仰いでください。医師に相談すれば現在の状況を踏まえた最善の対処法(必要なら新しいピルの処方や緊急避妊の検討など)を提案します。
レディースクリニックなみなみのアフターピルのページはこちらピルの飲み忘れで想定できるリスク
ピルの飲み忘れによって起こりうるリスクには、以下のようなものがあります。
避妊失敗による妊娠の可能性
最大のリスクは、望まない妊娠につながる可能性です。飲み忘れなど不適切な使用を含めた場合のピルの年間妊娠率は約5〜9%と報告されています避妊成功率約99%のピルでも飲み忘れによって約90%前後に低下するとされています。特に2日以上連続で忘れると排卵が再開し、妊娠リスクが高まります。
不正出血(予期しない出血)
飲み忘れによってホルモン血中濃度が低下すると、子宮内膜が部分的に剥がれて少量の出血(不正出血)が起きることがあります。本来は休薬期間やプラセボ期間に起こる消退出血(生理)ですが、ホルモン補充が途絶えることで予定外のタイミングで出血するリスクが生じます。特にシート後半(3週目)での飲み忘れ時に起こりやすいとされています。このような不正出血自体は一時的な現象であり、量も少ないことがほとんどです。
生理が予定より早く来てしまう
飲み忘れが連続したり頻繁に起これば、ピルで抑えていたはずの月経が通常通り来てしまうこともあります。例えば3日以上連続で飲み忘れると、体内ではもはや「ピルを飲んでいない状態」となり、自然の月経周期に戻って排卵・月経が起こります。その結果、本来の休薬週より前に生理が始まり、予定していた月経移動などの計画が狂ってしまう可能性があります。この場合は先述のとおりそのシートでの服用を中止し、新しいシートで仕切り直す必要があります。思いがけず生理が来てしまうのは煩わしいだけでなく、避妊という点でもその周期は無防備になるので注意が必要です。
ピルを飲み忘れて不正出血がきたらどうする?
飲み忘れが原因で予定外の不正出血が生じてしまった場合の対処法です。まず少量の出血であれば慌てずに、引き続き忘れた分も含めてピルの服用を継続してください。ホルモンが中断した影響で一時的に出血しているだけなので、ピルの内服を続ければ徐々に出血は治まっていくと考えられます。途中で服用を中断すると余計に月経周期が乱れてしまうため、基本的には予定通り飲み続けることが対処の第一歩です。
例えば1日飲み忘れて少し茶色い出血が見られた場合でも、前述の方法で忘れた分を服用し、その後も毎日飲み進めましょう。体がホルモン環境に再び慣れれば不正出血は止まることがほとんどです。ただし、2日以上連続で飲み忘れた場合は避妊効果の低下と不正出血の両方が起こりやすいため、服用再開のタイミングや他の避妊策の必要性をしっかり判断することが大切です。
一方、なかなか出血が止まらない場合や出血量が多い場合、強い下腹部痛を伴う場合は注意が必要です。そのようなケースでは、飲み忘れによるホルモン変動だけでなく妊娠(特にごく初期の流産など)や子宮の病気の可能性も考えられます。産婦人科医に相談しましょう。
ピルを飲み忘れて生理きたらどうする?
飲み忘れが原因で予定より早く生理(月経)が来てしまった場合の対応です。例えば3日以上飲み忘れて本来はまだ実薬期間中なのに出血が始まってしまった、というケースでは、その出血は事実上生理が来てしまった状態とみなします。したがって現在服用中のピルシートは中止し、出血開始日を新たな「周期の1日目」としてカウントし直してください。
先述の通り、生理が来てしまった場合は次のシートを使って飲み直す必要があります。具体的には、出血が始まった日から5日以内であればその日から新しいシートの服用を開始します。いずれの場合も、新しいシートを始めて最初の7日間は他の避妊法を併用するようにしてください。

要するに、飲み忘れによって予定外の生理が来てしまったら、その時点でその周期のピル服用はリセットし、新しい周期として仕切り直すということです。こうしたケースでは面倒ですが次の月経開始日がずれる形になりますので、スケジュール管理に注意しましょう。なお、計画的に生理をずらす目的でピルを使っていた場合でも、飲み忘れによる予定外の出血が起きてしまったら計画は一旦リセットとなります。再度生理日を移動させたい場合は医師と相談し、新しいプランを立てる必要があります。
妊娠・出産を望む場合の対応
ここまでは妊娠を防ぐ観点でピルの飲み忘れ対策を述べてきましたが、反対に「ピルをやめて妊娠したい」という場合についても触れておきます。将来的に妊娠・出産を望む場合、低用量ピルの長期使用が妊娠に悪影響を及ぼす心配はほとんどありません。ピルを中止すればホルモンはすぐ体外に抜け、早ければ次の周期から排卵が再開します。
実際、ピル中止後の排卵・月経は多くの人で数週間〜3ヶ月以内に再開します。早い人では中止後わずか2週間〜1ヶ月ほどで排卵が起こります。
したがって、ピルの服用を中止した後に避妊効果が持続することはありません。ピルをやめた途端に避妊の効力は無くなるため、妊娠を望まない状況でピルを中断する場合には別の避妊法に切り替える必要があります。一方で「妊活」のためにピルをやめる場合は、特に待機期間を設ける必要はありません。ピル中止後すぐに妊娠しても健康上問題はなく、ピルの影響で胎児に悪影響が出ることもないとされています。
なお、ピルをやめるタイミングとしては飲みかけのシートがあれば最後まで飲み切ってから中止する方が月経管理はしやすいでしょう。途中でやめることも可能ですが、その場合は中止後2〜3日で消退出血が起こり、次の生理がいつ来るか読みづらくなります。妊娠を目指す場合、最初の自然周期の生理が来てからの方が排卵日を予測しやすいため、可能であれば一度生理を見送ってから本格的に妊活を始めることをおすすめします。いずれにせよ不安があれば産婦人科で相談し、妊娠準備に関するアドバイス(葉酸サプリの開始時期など)も受けておくと良いでしょう。
低用量ピルはいつから飲み始めるのが良い?
ピルの飲み始めは生理開始日(月経第1日目)からが最適とされています。月経が始まったタイミングで服用を開始すると、体内のホルモン変化にスムーズに移行でき、その初日から避妊効果が得られます。実際、月経初日から服用し始めた場合は1シート目の1日目から妊娠予防効果が発揮されることが確認されています。
一方、月経開始からかなり日数が経って(例えば生理終了後に)飲み始めた場合、7日間連続で服用するまでは避妊効果が安定しないため、その間の性交では必ず他の避妊法を使う必要があります。初めてピルを処方する際には医師から開始日について説明があるはずですが、もし生理不順で開始日が判断しづらい場合は「はっきりした出血が始まった日」を起点に飲み始めて、最初の2週間は念のため他の避妊法も併用すると安心です。
なお、出産直後や流産後など特殊な状況での開始時期については個別の指示があります。産後は通常、産褥期を経てからピル開始となります(授乳中はミニピルなど別タイプを選ぶ場合も)。また他の避妊方法から切り替える場合も、方法によって開始タイミングが異なります。いずれの場合も必ず産婦人科医の指示に従いましょう。
低用量ピルの飲み忘れに関するよくある質問
ピルを飲み忘れたらどうすればいいですか?
飲み忘れに気付いたらすぐ1錠飲み、次回からは通常通りの時間に飲みましょう。
ピルは何時間以内の飲み忘れなら大丈夫ですか?
12時間以内の飲み忘れであれば避妊効果はほぼ維持されます。
ピルを1日飲み忘れた場合はどうすればいいですか?
気付いた時に忘れた分を1錠飲み、その後は通常通り服用を続けましょう。1日程度の飲み忘れなら避妊効果への影響は少ないです。
ピルを2日飲み忘れた場合はどうすればいいですか?
2日飲み忘れたら、気付いた時に2錠服用し、以降は通常通り服用を続けましょう。特にシート1週目の飲み忘れは妊娠リスクが高いので注意しましょう。
ピルを3日以上飲み忘れた場合はどうすればいいですか?
3日以上飲み忘れたら、現在のシートでの避妊効果はなくなります。一旦服用を中止し、新しいシートに切り替えて、以後7日間はコンドームを併用しましょう。
ピルの飲み忘れで妊娠する可能性はありますか?
1回の飲み忘れで妊娠する可能性は低いですが、シート1週目や2日以上の飲み忘れでは妊娠リスクが高まります。
ピルを飲み忘れた日に性行為をしたら妊娠しますか?
妊娠の可能性があります。特にシート1週目や2日以上飲み忘れた場合は避妊効果が大幅に低下するため、緊急避妊ピル(アフターピル)の検討も必要です。
ピルの飲み忘れ後は何日間避妊が必要ですか?
飲み忘れ後は少なくとも7日間、コンドームなど他の避妊法を併用しましょう。
ピルの飲み忘れで生理や不正出血が起きたらどうすればいいですか?
飲み忘れでホルモンバランスが乱れると、生理や不正出血が起きることがあります。ただしそのままピルを飲み続ければたいてい治まります。
ピルの飲み忘れを防ぐにはどうしたらいいですか?
毎日決まった時間に飲む習慣をつけ、アラームやアプリ、ピルケースなどで忘れない工夫をしましょう。
まとめ:着床出血の量や期間に以上を感じたら産婦人科に相談を
低用量ピルは避妊効果を保つため毎日同じ時間に服用することが大切です。万が一飲み忘れても、適切な対応を取ればそのまま継続でします。24時間以上服用が遅れたり複数日飲み忘れたりすると避妊効果が低下する可能性があるため、その場合は飲み忘れた分を直ちに服用し、一定期間コンドームを併用する・必要に応じアフターピルを検討するなど追加の避妊対策が必要です。記事では低用量ピルの正しい服用方法と飲み忘れ時の対処法を解説しており、適切な対応で予期せぬ妊娠リスクを最小限に抑えられます。
レディースクリニックなみなみでも、ピルの飲み忘れ、ピル全般に対するご相談を随時受け付けています。ピルを飲み忘れて再開などに迷って不安なときは、どうぞお早めにご来院ください。専門の医師があなたの状況に合わせて適切にアドバイスいたします。
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執筆者兼監修者プロフィール
東大産婦人科に入局後、長野県立こども病院、虎の門病院、関東労災病院、東京警察病院、東京都立豊島病院、東大病院など複数の病院勤務を経てレディースクリニックなみなみ院長に就任。
資格
- 医学博士
- 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
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以上のように、ピルを飲み忘れると避妊の失敗(妊娠)と予期しない出血という2点のリスクが主に問題となります。不正出血や予定外の生理は体調上大きな害はありませんが、避妊効果が落ちているサインでもあります。妊娠を望まない場合は、飲み忘れに気付いた段階から適切な対策を講じることがとても重要です。