レディースクリニック なみなみ

更年期の性交痛のお悩み、痛みの原因や症状、対策方法を丁寧に解説

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クリニックなみなみ 院長 叶谷愛弓

執筆者兼監修者プロフィール

レディースクリニックなみなみ
院長 叶谷愛弓

東大産婦人科に入局後、長野県立こども病院、虎の門病院、関東労災病院、東京警察病院、東京都立豊島病院、東大病院など複数の病院勤務を経てレディースクリニックなみなみ院長に就任。

資格

  • 医学博士
  • 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
  • FMF認定超音波医
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  • 更年期における性交痛(性行為時の痛み)は珍しくない悩みで、多くは女性ホルモン(エストロゲン)の低下による膣の乾燥・萎縮が原因です。
  • 適切な対策を行えば、更年期の性交痛は改善が期待できます。潤滑ゼリーの活用やホルモン補充療法(HRT)、さらに インティマレーザー と呼ばれる最新のレーザー治療など、症状に応じた治療法があります。
  • 痛みが強かったり長引く場合、子宮内膜症や感染症など更年期以外の原因が隠れていることもあります。我慢せず専門医に相談することが大切です。

更年期に入ってから性行為の際に痛みを感じるようになると、「自分だけなの?」「女性としてもう終わりなの?」と不安になる方も多いですよね。誰にも言えず一人で悩んでいる方も少なくありません。結論から言えば、更年期の性交痛はよくある症状であり、その多くはエストロゲン低下による膣の乾燥や萎縮が原因です。適切な治療やケアを行えば痛みの改善が期待できますので、決してあきらめないでください。実際、潤滑ゼリーの使用やホルモン療法、レーザー治療によって「性行為時の痛みが軽くなった」という患者様はたくさんいらっしゃいます。一方で、痛みが強かったり他の症状を伴う場合には、子宮内膜症や感染症など更年期以外の原因が隠れている可能性もあります。我慢を重ねるほど不安も大きくなり悪循環に陥りがちですから、早めに専門医に相談して原因に合った対処をすることが大切です。

本記事では、更年期によって起こりうる性交痛の原因や症状について、比較的よくあるケースから注意すべきケースまで順番に詳しく解説します。それぞれの原因ごとに現れる症状の特徴や効果的な対処法・治療法も説明しますので、ご自身の症状を照らし合わせながら「この痛みはどう対処すべきか」を判断する一助にしてください。

性交痛とは?

性交痛とは、性行為に伴って起きる痛みのことです(挿入の前後を含めて痛みが生じる場合があります)。性行為の最初だけ断続的に痛む場合もあれば、行為中ずっと痛みが持続する場合もあります。痛みを感じる部位は、人によって外陰部から膣にかけての入口付近であったり、子宮の入り口に近い部分であったり、下腹部の深い部分であったりさまざまです。また、若いときから性交痛を強く感じていた方もいれば、当初は痛みがなかったのに年齢とともに徐々に痛みが増してくる方もいます。ここでは更年期に伴って新たに性交痛が出てきた場合に絞って、その原因や対策を説明していきます。

ここでは各項目についてエビデンス(治療効果の証拠)も提示しながら説明していきます。文献部分はとばして読んでしまっても構いません。

近年、「GSM(閉経関連尿路生殖器症候群)」という概念が提唱されました。名前の通り、閉経に伴って生じるさまざまな症状の総称です。この中に性交痛も含まれています。閉経期に向かってエストロゲンの分泌量が減少すると、膣粘膜が萎縮したり膣の分泌機能が低下するため、膣が物理的刺激に対して弱くなって性交痛が起こりやすくなります。GSMという概念を理解し、「年だから仕方ない」と諦めずに適切に対応することで、更年期の性交痛も改善が見込めます。

更年期性交痛の症状

更年期におこる性交痛は痛みの部位で大きく2つに分けられます。
入口付近(大陰唇、小陰唇、陰核)、腟入口の手前側の痛みと、腟奥のお腹の奥の方の痛みの2つです。

①:外陰部、腟入口の痛み
②:腟奥の痛み

それぞれの痛みの特徴を見ていきましょう。

外陰部・腟入口の痛み

更年期の性交痛の多くはこの部分の痛みです。
外陰部、腟入り口(腟前庭部)はエストロゲンの影響を強く受けています。そのため、更年期になるとエストロゲンの量が減少するため、粘膜の萎縮が起こったり、腟の伸縮が悪くなったり、腟の潤滑液の分泌が悪くなったりします。
これらによって、挿入時にスムーズにはいらない、行為中もなかなかスムーズにならないなどの症状がでます。
デリケートゾーンの洗浄を過度にし過ぎることで腟粘膜の環境が悪くなることで、萎縮が早くなる方もいます。

一般に「更年期症候群」とは45歳から55歳前後に起こるホルモンバランスの変化による様々な不調を指します。しかし膣の環境次第では、更年期に入る前の40代前半頃から同様の性交痛の症状が出る方もいます。当院ではエビデンスに基づいて積極的にこの分野の治療を行っていますので、お一人で悩まずにご相談くださいね。

腟奥の痛み

腟奥の痛みは行為中に、お腹に響くような痛みとして感じられることが多いです。
腟奥の粘膜萎縮、腟奥にある子宮などの萎縮でこの部分の痛みが起こることがあります。
エストロゲンの低下に伴って、腟入り口の粘膜がまず最初に萎縮し、その後萎縮が進行するにつれて腟奥の部分の粘膜萎縮も起こります。
また、子宮内膜症、子宮と骨盤に炎症が起こっている(クラミジア感染症など)場合などにもお腹に響くような痛みを感じることがあります。

更年期性交痛の原因

性交痛の原因は以下のようなものが挙げられます。

  • ①:GSM(閉経後尿路性器症候群:閉経後エストロゲン低下に伴う腟周りのかゆみや違和感、繰り返す膀胱炎などの尿道の症状
  • ②:子宮内膜症や子宮筋腫
  • ③:お産(多産)に伴う腟の萎縮
  • ④:精神的な影響

GSM(閉経後尿路性器症候群)

GSMは厳密には閉経後の症候のことをいいますが、エストロゲンが低下することによって生じる症候のことですので更年期周辺の腟萎縮に伴う性交痛の原因にもなります。
性交痛だけではなく、性交渉時以外にも普段から外陰部にかゆみや違和感を感じやすくなったなという場合はGSMの可能性が非常に高いです。
子宮入り口付近に痛みが強い場合はこの、GSMによる粘膜萎縮の可能性が高いです。

子宮内膜症や子宮筋腫

子宮内膜症によって子宮の可動性が悪くなることなどで痛みが生じます。子宮後方から直腸前面のダグラス窩という部分に内膜症ができると痛みが生じやすくなります。性交渉時の体位によって痛みの感じ方が違って、奥の方が痛く感じる場合は子宮内膜症の可能性もあります。
子宮筋腫はエストロゲンの低下に伴って縮小することがほとんどですが、閉経が遅い方はそもそもエストロゲンにさらされている期間が長くなるため、子宮筋腫が大きくなりやすい傾向にあります。その場合はある程度の大きさになると痛みとして感じる場合もあります。

お産(多産)に伴う腟の萎縮

お産は女性の体にかなり大きな負担になります。
会陰切開などをすることで、物理的に腟の粘膜にも損傷が起きる場合もありますし、産後の授乳期にはプロラクチンというホルモンが多く分泌されます。この時期にはホルモンの影響で腟粘膜に痛みが生じやすくなるとも言われています。
多産であればあるほど腟にも萎縮が起きやすいとも言われています。

精神的な影響

器質的な原因を述べてきましたが、此らの原因に加えて、精神的な影響も大いにあることがわかっています。
性交痛は1回起こってしまうと、次も痛いのではないかなどと不安になってしまうことで悪いサイクルができてしまいます。
あまり我慢して性交渉を行わず、痛みを感じ始めたら早めに専門医に相談してみると良い対策を教えてもらえるはずです。

更年期性交痛の検査

婦人科受診時には、まず問診の内容が非常に重要になります。「どのようなタイミングで」「どのような痛みが出るのか」「いつから痛みが出始めたのか」「性交痛以外に気になる症状はあるか」など、詳しく状況をお伺いします。その上で内診膣鏡(膣鏡)検査により膣粘膜の萎縮の程度を観察します。粘膜の萎縮度合いがはっきりしない場合には、膀胱鏡を使用して膣粘膜の状態を詳しく確認することもあります。

更年期性交痛の治療法

なかなか最近まではっきりしなかった更年期の性交痛の治療法ですが、最近ではそもそも性交渉の年齢も高齢化してきていることから治療へのニーズも高まっています。

  • ①:潤滑剤を使用する
  • ②:ホルモン療法(HRT)を行う
  • ③:レーザー治療(インティマレーザー)を行う

この分野を専門的に治療できるクリニックはまだ多くありませんが、症状に詳しい専門医に相談してみましょう。ここからは各治療法について詳しく説明します。

潤滑剤の使用

潤滑剤には2種類あって、エストロゲンというホルモンが含まれているもの、そうでないものに大きく分けることができます。
エストロゲンは局所投与でも腟粘膜に作用するので、入っていないものよりは入っているものの方がおすすめです。
ただし、潤滑剤は持続的に効果があるものではないので、聖行為の時にうまくパートナーと使うことが大切です。実際はタイミングなどの問題で難しいところに使いづらさがありますね。

ホルモン療法(HRT)を行う

HRTとはHormone Replacement Therapyの略です。更年期にかけて減少するエストロゲンを外的に補充します。
内服薬、貼付薬、ジェルなどがあり、エストロゲンとプロゲステロンが入っているもの、エストロゲンだけのものなどがあります。
更年期症候群の全身症状がある場合にはHRTを行いますが、GSMの症状のみ(局所の症状のみ)の場合は腟剤飲みの投与を局所的に行います。エストロゲンが腟粘膜へ直接作用することで症状の緩和が見込めます。

レーザー治療(インティマレーザー)を行う

インティマレーザーというレーザー治療によって、GSMの多くの症状が改善できることがさまざまな臨床研究でも実証されています。性交痛のみならず、違和感や通常時の灼熱感などにもかなり効果的で、非常に良い治療です。
腟剤よりも効果が早く、腟剤でも効果が出なかったGSMや性交痛の方にも効果が高く、費用はややかかりますが適応をしっかり選ぶことで効果はかなり高いので専門施設でのカウンセリングからの治療がおすすめです。

腟HIFUやモナリザタッチと何が違うの?

簡単にいうと、レーザーの種類が異なり、効果のある部位が異なります。そのため症状によってどのレーザーが一番効果があるかが異なってきます。インティマレーザーはエルビウムYAGレーザーという非侵襲型のレーザーになります。
組織を完全に焼灼することなく(多くのCO2レーザー、モナリザタッチなどは組織を焼き切ってしまいます)、粘膜組織の再活性を促進します。そのためダウンタイムが非常に少ない点がモナリザタッチとは異なります。また、腟HIFUは粘膜組織には直接効果がない(メインは筋層に効果があります)のでGSMや性交痛にはあまり効果がないのが現状です。
インティマレーザーの性交痛、GSMに対する効果に関しては数多くのレベルの高い論文で証明されています。

性交痛という症状には様々な要因が関係しますが、中でも膣粘膜の萎縮・乾燥は大きな誘因の一つです。当院では更年期障害による性交痛についても、専門医が多角的な選択肢の中から適切な治療法を選んで対応しています。周囲に打ち明けにくいデリケートなお悩みだからこそ、早めに専門医に相談してみる方が安心ですよ。

インティマレーザー治療の料金

照射部位とレーザーの出力は年齢や症状に応じて変更するためどうしても料金に幅がございます。正確な料金を来院前に知りたい場合は公式LINEからお問い合わせをお願いいたします。

レディースクリニックなみなみの料金の特徴!

インティマレーザーは比較的効果が持続しやすい治療ですが、それでも1年半から2年程度経過するとどうしても効果が減弱します。当院では治療を受けやすくして、継続することが何よりも大切と考えているので、メンテナンス治療(4回目以降の治療)に関しては割引価格(15%off)で提供して継続的にかかりやすくしています。

治療内容価格(消費税込)
腹圧性尿失禁(骨盤臓器脱)1回¥121,000
腹圧性尿失禁(骨盤臓器脱)3回セット¥330,000
GSM(閉経後尿路性器症候群) 1回¥55,000 – ¥88,000
GSM(閉経後尿路性器症候群) 3回セット¥150,000 – ¥237,600
腟引き締め 1回¥88,000
外陰部ホワイトニング(小陰唇) 1回¥88,000
外陰部ホワイトニング(小陰唇) 2回¥158,400
外陰部ホワイトニング(大陰唇) 1回¥44,000
外陰部ホワイトニング(大陰唇) 3回¥118,000
肛門(Oライン)1回¥44,000
肛門(Oライン)3回¥118,000
鼠径部(太ももの付け根)1回¥44,000
鼠径部(太ももの付け根)3回¥118,000
座骨部(お尻のあたり)1回¥44,000
座骨部(お尻のあたり)3回¥118,000
乳輪 1回¥44,000
乳輪 3回¥118,000
小陰唇以外の部位への照射+美白剤 1回¥66,000
小陰唇以外の部位への照射+美白剤 3回¥140,800
メンテナンス施術(原則4回目以降)一律15%引き

当院は全国的にもインティマレーザーの治療経験が多いです。
ただし、高価な治療ですので適応をかなり厳密に絞っています。インティマレーザーに関してさらに詳しく知りたい方はこちらから(インティマレーザーの尿もれや黒ずみへの治療効果は?料金や副作用について解説

更年期の性交痛に関するよくある質問

更年期の症状がないのに性交痛があるのですが、どうすれば良いですか?

更年期症候群のその他の症状(代表的なホットフラッシュなど)が軽度でも、性交痛やGSMの症状が強く出てしまう方も中にはいらっしゃいます。更年期の症状の出方は人それぞれなので、性交痛がメインのこともございます。まずは状況を把握するためにご相談ください。

性交痛はどこが痛みますか?

多くの方は腟の手前(外陰部、腟前庭)が痛むことが多いです。
中には奥の方(子宮、下腹部)が痛む方もいます。その場合は更年期の問題というよりも、子宮内膜症やクラミジア感染症が隠れている場合もあります。できるだけ我慢せずに相談してみましょう。

性交痛の治療は保険適応になりますか?

HRTの腟錠(エストリオール錠)は保険適応になります。
それ以外の潤滑剤や、インティマレーザーの治療は自費診療になります。
まずは保険適応でできる治療から始めて、効果を見てレーザー治療などを考える順序が多いですよ。
中には効果の即効性、利便性を優先して保険治療と自費治療を組み合わせて行うこともあります。

更年期の性交痛は治らないこともありますか?

完全に治らない方も中にはいますが、原因をしっかり突き止めて治療をすることでかなりの数の方がそれなりの症状改善を認めています。相談しにくい症状だからこそ初めから専門医に相談しましょう。

まとめ:更年期の性交痛は治療方法が複数ある

更年期の性交痛に関して解説しました。

エストロゲンの低下に伴って性交痛が出現するということがよくわかります。女性ホルモンは偉大です。
プライベートな症状で、なかなか相談できないものではありますが、原因がはっきりわかって、状況もしっか理と把握できれば治療方法は複数あります。

何科に相談すればいいのかも難しい症状ですが、産婦人科、女性泌尿器科の専門医でこの分野の治療もしっかり行なっている医院で相談することがおすすめですよ。

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クリニックなみなみ 院長 叶谷愛弓

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院長 叶谷愛弓

東大産婦人科に入局後、長野県立こども病院、虎の門病院、関東労災病院、東京警察病院、東京都立豊島病院、東大病院など複数の病院勤務を経てレディースクリニックなみなみ院長に就任。

資格

  • 医学博士
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