「くしゃみをした際に尿漏れをしてしまう」
「トイレに行く機会が多くなった」
のように、尿漏れや尿意でお困りではありませんか?
尿もれは女性にとっては一般的で、多くのかたが悩んでいる症状です。レディースクリニックなみなみでも数多くのご相談を受けております。
本記事では、女性の尿漏れの原因・種類・治療方法について解説します。
尿漏れにお悩みの方は、ぜひ最後までご覧ください。
尿漏れ・尿失禁とは?
尿漏れは自分で尿を出したいわけではないのに尿が漏れてしまうことを指します。一時的なもの、長期間持続するものがあります。
女性は尿道が男性よりも短い関係でそもそも構造的に尿漏れが起こりやすく、また出産などで尿漏れのリスクが上がることもわかっています。そのため年齢が上がるにつれて多くの女性が尿もれの症状を経験します。
原因は様々で、やはり原因によって治療方法も大きく異なってきます。
ここでは女性に多い尿漏れについて尿もれの種類や原因、治療方法を説明していきます。
女性の尿漏れの主な原因
女性に多い尿漏れの原因は
・骨盤底筋の緩み(筋力低下)
・妊娠、出産の影響
・精神的な影響
です。順番に説明してきますね。
骨盤底筋の緩み
女性の骨盤の下部には骨盤底筋といって、ハンモック状の筋肉が存在しています。これらの筋肉は骨盤内の臓器、膀胱、子宮といった臓器を下から支えているのみならず、排尿や排便をコントロールする役割を担っています。
骨盤底筋はその名の通り筋肉なのでそもそも加齢自体で徐々に萎縮していき、機能が衰えていきます。
また、姿勢、腹圧、体重増加、妊娠・出産、周囲の組織の萎縮などによっても筋肉が萎縮するため、女性は日々骨盤底筋が緩むリスクにさらされているといっても過言ではありません。
妊娠・出産
妊娠・出産自体でも尿もれは起こります。
妊娠時に増加する黄体ホルモンは骨盤底筋を緩める作用があるため、妊娠初期に尿漏れが起こることもあります。ただしこの場合は一時的な尿漏れのことが多いです。
また、出産自体で直接尿道が傷ついたり、骨盤底の筋肉がダメージを受けるため産後には尿漏れが起こりやすくなります。
最近では無痛分娩が多くなってきており、出産時間の長時間化、鉗子分娩の確率も増えるためさらに妊娠後に尿漏れの方が増えている印象があります。
上記の理由で経産婦さんは出産のイベントで骨盤底筋がダメージを受けていることが多く、出産回数が多くなるほど妊娠中に赤ちゃんが少し大きくなってお腹の圧が高くなると尿漏れを起こしやすくなります。
精神的な要因
ストレスや緊張も尿漏れの原因となることもあります。
特定の環境下で尿漏れが起こりやすくなったり、特定の時間(夜間など)に尿漏れがおこり安くなることもあります。
いずれにしても器質的な(上記で説明したような)原因や要素がないかどうかをしっかり鑑別することが大切です。
あなたは尿漏れ?セルフチェックリスト
尿もれかどうかチェックしてみましょう!
- 咳、くしゃみ、大笑いをした時にもれる
- 重いものを持った時にもれる
- 走ったり、ジャンプした時にもれる
- トイレを見るとトイレに行きたくなる
- 水の音を聞くとトイレに行きたくなる
- 夜間にトイレにおきる
- 黙っていても尿がもれる
1〜3にチェックがついた方はこのあと説明する腹圧性尿失禁の可能性があります。
4、5にチェックがついた方は切迫性尿失禁の可能性があります。
6のかたは夜尿症の可能性があります。
7のかたは溢流性尿失禁の可能性があります。
尿もれのリスクもチェックしてみましょう!
- 妊娠出産経験がある
- 更年期かなと思う症状がある
- すでに閉経している
- 体重が増加した
- 運動習慣がない
- 重いものを持ったり、持ち上げたりすることが多い
- 日頃から便秘気味
- おふろで空気が漏れたり、水が入ったりすることがある
こちらは数が多ければ多いほど単純に尿もれのリスクが高くなります。
現在尿もれが起こっていない方でもハイリスクの方もいるのでその方は日頃から尿もれ予防を気を付けることが大切です!
尿漏れは上述の通りかなり多くの女性が経験し、悩んでいる症状ですが、20%弱のかたは誰にも相談できずにいます。
症状が進行するとなかなか対応も難しいですが、症状の初期であれば、このあと説明するいろいろな治療法があるので相談しやすいクリニックで相談してくださいね。
尿漏れの種類
尿漏れには原因がそれぞれあって、一つの原因で尿漏れが起きている状態と、複数の原因が重なって尿もれが起きている状態が生じます。女性は年齢が上がるにつれ、いろいろな原因のリスクが増えるため複数の原因で尿もれが起きていることが多いです。
ここでは尿漏れの種類ごとにみていきましょう。
腹圧性尿失禁
女性に特に多い尿失禁の種類です。30代で30%、40代ではなんと50%近くがこの症状を経験していると言われています。
腹圧が高くなった時に圧に耐えきれなくなった膀胱から尿がもれます。
具体的には、トイレで息んだ時、重いものを持った時、走ったりジャンプしたり、階段を登ったりした時、笑ったりくしゃみをした時には腹圧が上昇します。これらの時に尿が漏れる症状がある方は腹圧性尿失禁の診断となります。
主に骨盤底筋の緩みでこの症状が出ます。
もう少し細かい原因を説明すると、尿道の出口をうまく開け閉めしてくれる肛門挙筋、尿道括約筋というものがあるのですが、これらの筋肉は周囲の靭帯や組織と絶妙に連携されており、このバランスが悪くなることで腹圧がかかった時にうまく尿道括約筋が尿を抑えることができなくなってしまいます。
切迫性尿失禁
急にトイレに行きたくなってトイレに行く前に間に合わなくて漏れてしまうような状態のことをいいます。
通常はある程度まで尿が溜まっても膀胱が収縮することを抑えられるのですが、なんらかの原因で膀胱が収縮しやすくなってしまう(過活動膀胱)状態になります。原因としては脳梗塞や、脊髄損傷などによって神経と膀胱の伝達がうまくいかなくなるようなことがありますが、一般の生活ではこれは当てはまりません。多くは加齢や、肥満、便秘、水分の摂りすぎもリスクとなります。男性では前立腺肥大も原因となります。
混合性尿失禁
文字通り、複数の尿失禁の原因が合わさっている状態のことで、腹圧性尿失禁と、切迫性尿失禁の両方の要素がある場合のことを言います。女性では腹圧性尿失禁の次に多いと言われています。
女性ではどの尿失禁が多いのでしょうか?
女性に多いのは圧倒的に腹圧性尿失禁です。
日本国内での報告でも、尿失禁の49%が腹圧性尿失禁、29%が混合性尿失禁、21%が切迫性尿失禁となっています(文献はこちら)。エストロゲンの関係、妊娠出産のイベントなど女性には避けられない原因が背景にあるので納得ですね。
溢流性(いつりゅうせい)尿失禁
こちらは男性に多い尿失禁の種類です。
背景に尿を出したいのに出せない要素があって、溜まり切った尿が徐々に漏れ出てくるような状態のことを言います。
ほとんどの原因は前立腺肥大で、前立腺が肥大することで閉塞性尿路障害と言って、尿が出しにくい状態になって膀胱内に尿が溜まっていき、溜まり切って限度を超えたところで自分の意思に反する形で尿が漏れてきてしまうと言った状態です。
女性では直腸がんや子宮がんなどの術後に排尿障害が起きていて、尿の排出がうまくいかない場合に起こったりします。
上記の原因がほとんどになるので、女性ではあまり多くはありません。
機能性尿失禁
排尿機能は正常なのに尿失禁してしまうことをいいます。
主に認知症が背景にあることが多く、排尿機能の異常ではなく、認知機能が低下することでトイレで排尿を行えない状態です。
そのほか、極度に足腰が弱くなってトイレが間に合わないばあいも機能性尿失禁に含まれます。
尿漏れに対する治療法・ケア方法
女性に多い尿漏れ、尿失禁を説明してきました。
それぞれ原因が違うため、治療方法も異なってきます。
まずは担当医と原因をはっきりさせた上で、治療法を選択していきましょう!
腹圧性尿失禁の場合
骨盤底筋の緩みが一つの原因となっているため、骨盤底筋体操という筋トレが非常に有効です。
筋トレはすぐには効果が出る物ではないので即効性には乏しいですが、日常的に行うことで必ず効果が出ると考えても良いです。
EMS(Electrical Muscle Stimulation)の仕組みを使って、外的に筋肉を刺激することで筋肉を強化します。国内でも自費診療になりますが、エムセラやスターフォーマーと言った椅子型の機械にのって、筋肉を刺激する治療方法があります。
またインティマレーザーという膣粘膜の再生を促すレーザー治療も効果があります。
いずれの治療も単回の治療ではあまり効果がないため、複数回の治療と骨盤底筋体操の組み合わせが重要になってきます。
切迫性尿失禁の場合
切迫性尿失禁の原因となっているものを徹底的に取り除いていくことが治療につながります。
水分の摂りすぎであれば水分摂取のリズムや量を調整する、肥満や便秘があればそれらに対して治療を行うなどです。
女性は美容をきにするあまり、水分をかなり多く摂取していることがよくあります。また、水分を摂取する際にも利尿作用ができるだけないものを摂取するなどの工夫もできるでしょう。ルイボスティーなどは非常に利尿作用が強いので尿もれの原因にもなりえますよ。
混合性尿失禁の場合
混合性の場合は、上記の二つの原因に対しての治療を組み合わせていくことになります。ですので、診断が一番重要です。
複数の原因がありそうであれば、それらに対して一つずつ丁寧に対策していくことが重要です。
なかなか長期戦になることも多く、排尿日誌(日本排尿機能学会より)などの記録をつけてもらって効果が少しずつ出ていることを実感しながら治療を続けてい区こともございます。
溢流性(いつりゅうせい)尿失禁の場合
なかなか対応が難しいのが現状です。
男性の前立性肥大が原因の場合は前立腺の治療を先行します。内服薬や、場合によっては内視鏡での手術も適応になります。
女性の子宮がんや直腸がんの術後の場合は治療が非常に困難であり、尿道カテーテルでの自己排尿などを指導して行うことになります。
機能性尿失禁の場合
こちらもご自身では治療が難しいです。
認知症などの場合は周囲の方が排尿のリズムをうまくつかんであげて、トイレに誘導してあげます。
トイレを諦めて、簡単にオムツに移行してしまうと認知症の進行が早くなってしまったり、排尿機能の衰えが急激に進んでしまう可能性もあるので、根気強くサポートしてあげる必要が出てきます。
女性の尿もれ、尿失禁は腹圧性の要素が非常に多くを占めている関係からしっかり原因を突き止めて治療することで対応できることがわかります。
女性泌尿器科を専門にしている医院は全国的に少ないのが現状ですが、産婦人科や、女性泌尿器科のクリニックを探して受診してみてくださいね。
女性の尿漏れに関してよくある質問
何科を受診すればいいのでしょうか?
女性泌尿器科、産婦人科いずれの科でも対応が可能です。
HPに診療内容があるか確認してみてください。女性の尿もれは原因が産婦人科的なものと泌尿器科的なものに横断することが多いのでそのようなクリニックがおすすめです。
20代なのに尿漏れがあります。
20代でも10%程度の方は尿もれの症状があると言われています。
出産後などにはそれほど珍しくないです。尿もれがある20%のかたは相談できずにいるので、症状が悪化する前にクリニックを探してみましょう。
お風呂から出ると水が出るのは関係がありますか?
おゆもれ、空気漏れと言われる症状です。
尿が漏れているわけではないですが、腟の緩みが出ている状態なので尿もれも起こりやすくなっている可能性があります。
一度産婦人科を受診して、腟の状態を確認してもらうと良いでしょう。
まとめ:尿漏れは早期からの対応が大切です。
女性に多い尿もれの種類、原因、治療方法に関して解説しました。
当院にも多くの尿もれの患者さんが来院されますが、男性の多い泌尿器科などであまり丁寧に問診や検査を行われていない方が多い印象もあります。
尿もれはある意味女性の生活習慣病のようなものとも言えるくらい一般的なものですので、相談しにくい一面もありますが、悩まずにまずは相談していただいて一緒に治療していきましょう。
無痛分娩で尿漏れが非常に増えている印象があります。
無痛分娩も悪い選択肢とは一概にいえないため、分娩後にはしっかり自分の体をケアして骨盤底筋の機能をできるだけ出産前の状態に戻そう!と努力することが大切ですよ。