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低用量ピルの副作用をわかりやすく解説。副作用からわかるあなたに適切なピルとは?

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クリニックなみなみ 院長 叶谷愛弓

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避妊や生理痛、PMS、ニキビの改善など様々な効果がある低用量ピル。

「低用量ピルを服用したいけど、副作用がこわい」「ピルの副作用ってどんな感じなの?」

このように、初めてピルを利用する方は副作用やデメリットが心配ですよね。
本記事では、副作用を中心に普段の月経やニキビ、むくみなどの症状から各低用量ピルの副作用との関係など詳しく解説します。

あなたが内服しているピルは適切なものを選べていますか?

低用量ピル(LEP)とは?

そもそもピルはエストロゲンとプロゲステロンという二つのホルモンを含有し、避妊目的にアメリカで開発された薬です。
当初は主に静脈血栓症をはじめとした副作用(胃腸障害なども)が非常に多く報告されたために避妊などの効果をしっかり残しつつ、副作用を抑える目的でこれらのホルモンの量を低用量に調整したものが低用量ピル、LEP(low dose estrogen-progestin)です。

OCとの違いは?

どちらもピルです。OCはOral Contraceptiveの略称で、日本語訳では経口の避妊薬という意味です。
ホルモン量が調整していないものをそもそもOCとよんでいましたが、近年ではホルモン含有量が減ったOCも出ており、OCは避妊目的のみで使用するもの(保険適応なし)、LEPは月経困難症などそのほか症状に用いるもの(保険適応あり)ものとして区別して使用方法で区別するようになりました。どちらも避妊効果はあります。

低用量ピルを服用するメリット・効果

LEPは月経困難症子宮内膜症の治療や症状緩和の目的で使用されます。
またそもそもLEP全てに避妊効果はあるため月経困難症、子宮内膜症でLEPを内服している方は避妊の効果もあります。
避妊、PMS(月経前症候群)の改善、肌荒れの改善、月経移動などにも効果があるのですが、これらは保険適応でピルを使用して治療するものではないためこれら目的のためにLEPを使用することはありません。OCの処方となります。

低用量ピルの主な副作用やデメリット

低用量ピルの副作用は重大なものとマイナートラブルに分けて考えると良いです。

低用量ピルの副作用

重大なもの
血栓塞栓症

そのほかの頻度が高い副作用
頭痛・偏頭痛
悪心・嘔吐
乳房の張り
不正出血
乳房痛
下腹部痛



などがメインの副作用として報告があります。

これらは主に低用量ピルの成分であるエストロゲンプロゲステロンの作用によるものです。
低用量ピルは薬の種類によって含まれるエストロゲン、プロゲステロンの種類、その量が異なるため副作用の種類、発現率も実は異なります。

効果も重要ですが、その人の既往歴やいつもおこる副作用との関係から最も適切な低用量ピルの種類を選択するのが本来は重要です。

血栓症は重大な副作用で、ピルに副作用では常に問題、話題になるものですが、そのほかのよく起こる副作用も内服を継続するには大切なポイントと考えています。偏頭痛・頭痛が起こりやすいもの、乳房が張りやすいもの、下腹部痛が出やすいものなど実は低用量ピルと一概に言っても細かく異なります。レディースクリニックなみなみではそこまでこだわってピルの処方を行っています。


実際に低用量ピルの各薬剤ごとの副作用の発現率をまとめています。

ルナベルLD
フリウェルLD
ルナベルULD
フリウェルULD
ジェミーナヤーズヤーズフレックス
偏頭痛・頭痛15.5 %15.5 %11.2 %41.0 %25.5 %
悪心・嘔吐17.9 %17.9 %10.4 %29.8 %20.8 %
乳房の張り5 %以上5 %以上
下腹部痛5 %以上5 %以上20.3 %
不正出血60.0 %81.1 %72.9 %25.4 %23.7 %
凝固異常20.2 %5 %以上

赤字は比較的多いもの
青字は比較的少ないもの
ー は添付文書の頻度が多い副作用には記載なし

血栓症は重大な副作用で、ピルに副作用では常に問題、話題になるものですが、そのほかのよく起こる副作用も内服を継続するには大切なポイントと考えています。偏頭痛・頭痛が起こりやすいもの、乳房が張りやすいもの、下腹部痛が出やすいものなど実は低用量ピルと一概に言っても細かく異なります。レディースクリニックなみなみではそこまでこだわってピルの処方を行っています。

各薬剤ごとにエストロゲン、プロゲステロンの種類、含有量が異なることで特徴が変わってきます。
それぞれ、どのような方に適しているのか細かくみていきましょう。

ルナベルLD、フリウェルLD

第一世代の低用量ピルです。
価格が非常に安く、導入しやすいメリットがあります。また、目立った副作用が多くないのも特徴です。
デメリットとしてはプロゲステロンの種類がノルエチステロン(NET)のため、男子ホルモン作用があるため、ニキビなどが悪化する可能性がそのほかの低用量ピルよりは高くなっています。

ルナベルULD、フリウェルULD

第一世代の低用量ピルです。
ルナベルLD、フリウェルLD同様、価格が非常に安く、導入しやすいメリットがあります。また、目立った副作用が多くないのも特徴です。
デメリットとしてはプロゲステロンの種類がノルエチステロン(NET)のため、男子ホルモン作用があるため、ニキビなどが悪化する可能性がそのほかの低用量ピルよりは高くなっています。
LD(Low Dose)とULD(Ultra Low Dose)はエストロゲンの含有量が異なり、ULDの方が少ないです。
そのため上記表(添付文書から)では頭痛などの副作用が同じ数値となっていますが、ULDの方が実臨床では少なくなっており、より副作用を気にする場合はULDを処方します。

ジェミーナ

第二世代の低用量ピルです。
上記表で分かる通り、頭痛などの副作用がかなり少ないピルです。
約3ヶ月間の連続投与が可能であり、月経痛や出血が起こる日数を減らせる上、子宮内膜症への治療効果が高いとされています。
その代わり、第一世代のピルよりは値段が3倍ほどになります。

ヤーズ

第四世代の低用量ピルです。
プロゲステロンの種類が、DRSP(ドロスピレノン)です。子宮内膜症や月経困難症に用いられるジェノゲストと同様に、男性ホルモン作用が全くないプロゲステロンのため、ニキビがある方には相性が非常に良いです。また、抗ミネラルコルチコイド作用があるため、むくみがある人にも相性が良いピルです。
男性ホルモンが含まれていない分、意欲減退、制欲低下や抑うつ傾向になる場合もあるので注意は必要です。
ヤーズの価格を抑えたジェネリックが、ドロエチです。成分は同じためヤーズを用いるのであればドロエチを使うことが最近は多いです。

ヤーズフレックス

第四世代の低用量ピルのフレックス投与(4ヶ月の連続投与)版です。
ヤーズと同じように、男性ホルモン作用がないこと、また長期投与のため、子宮内膜症やチョコレート嚢胞の方にも相性が良いピルです。内服方法が違うだけで、含有されているホルモンの種類と量はヤーズと全く変わりありません。
低用量ピルの中で価格は一番高くなっています。

血栓症はどのくらい起こりやすいの?

エストロゲンに血栓を作る作用があり、エストロゲンの含有量が多いと血栓症のリスクも上がると考えて良いです。
そのため、世代が新しくなればなるほど、エストロゲンの含有量は少なくなるので、血栓症のリスクは少なくなります。
また、ピルの非使用者の血栓症のリスクは1-5/10,000人で,ピル服用で約2倍に血栓症のリスクが上昇すると言われています。
しかしこの数字は実はそれほど高い数字ではありません。妊婦さんは5-20/10,000人、産後の褥婦さんは40-65/10,000人と妊娠・出産期にはかなり血栓症のリスクが高いことがわかります。妊産婦さんはピル服用者よりも発症頻度はかなり高率なのです。

血栓症の症状は?

血栓症の症状

A:abdominal pain (激しい腹痛)
C:chest pain(激しい胸痛,息苦しい,押しつぶされるような痛み)
H:headache(激しい頭痛)
E:eye / speech problems(見えにくい所がある,視野が狭い,舌のもつれ,失神,けいれん,意識障害)
S:severe leg pain(ふくらはぎの痛み・むくみ,握ると痛い,赤くなっている)


これらが血栓症の代表的な症状です。
一つでも当てはまる症状がある場合は我慢せずに産婦人科を受診しましょう。
また、内服を止めるのも大切です。

血栓症は重大な副作用ですが、そこまで恐れる必要はありません。
定期的に産婦人科で診察を受けていただければ副作用のフォローも必ず産婦人科医が行なっているので心配ないですよ。
一方であまりに診察がおろそかなオンライン診療での長期継続処方では便利な反面危険な部分もあるのでうまく使いましょう。

女性に多いがんとの関係は?

エストロゲンを含有することから、エストロゲンと関係のある女性に多いがんとの関係もわずかに言われています。
しかし、現在のところこれらのがんが明らかに増加するという見解があるわけではないです。

低用量ピルの子宮頸がんへの影響は?

ガイドライン上では、長期間の服用で子宮頸癌発症リスクを増加させる可能性があるとはされています(エビデンスレベルC)。
一方で、有意差がないという研究解析もあります。理由としては、子宮内膜のターンオーバーが長くなるため、すでに感染したHPV(ヒトパピローマウイルス)の排除率が低下するため持続感染が増加するなどと言われています。
また、内服中止後10年で被使用者と同じリスクになることもわかっています。

低用量ピルの乳がんへの影響は?

乳癌発症リスクを増加させる可能性があるとされています(エビデンスレベルC) 。
ただし、リスクはわずかに増加した、有意差なしなど研究多数あり一定の見解は今のところありません。.
エストロゲンの容量依存的にリスクが増えるのではないかとされています。
乳がん罹患中には念の為使用を控えます。

まとめ:低用量ピルは副作用の点からも自分に合ったものを選択しましょう。

低用量ピルの重大な副作用は血栓症ですが、血栓症の発症確率はそこまで高いものではないため、過剰に恐れなくて良いです。定期的な診察をしっかり婦人科で評価してもらい、血栓症のリスク管理を行いましょう。
また、そのほか生活に関わるような副作用には薬によって細かい違いがあることがわかりました。
自分の普段の生理周期などとの関係、ニキビがひどくなりやすい、むくみがひどくなりやすい、頭痛が酷いなどとの関連から適切な低用量ピルを選べるとより楽な生活が送れると思います。

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よくある質問

低用量ピルの飲み始めによくある副作用は何ですか?

飲み始めに起こりやすいのはマイナートラブルと言ってよく起こりやすい副作用です。
具体的には頭痛、吐き気・嘔吐、乳房の張り・乳房痛、不正出血などです。多くは3ヶ月程度内服継続することで体が慣れてきれ起きなくなります。

低用量ピルを再開するときにも、副作用は出ますか?

再開時もマイナートラブルは起きることがありますが、全くの初回の時よりは軽度で済むことがほとんどです。

ピル内服で太ると言われていますが大丈夫ですか?

よく言われていますが、ピルの副作用、作用で体重が増えることはありません。
太る作用はピルに含まれているエストロゲン、プロゲステロンともにありません。

規則正しく来ていた服用後の月経様の出血が起こりません。どうしたらいいですか?

低用量ピルを内服すると子宮内膜を薄く保つようになるので出血が起こらなくなることはあります。ただし、飲みわすれが多い場合は妊娠の可能性も考えて妊娠検査薬を行うようにしましょう。

低用量ピルを服用中に異常出血が続いています。どうしたらいいですか?

低用量ピルは特に最初のシートの使用中に、偽薬や休薬期間じゃなくても出血することがあります。継続すればおさまることが多いですが、気になる場合は一度処方された医師に相談しましょう。

低用量ピルの副作用が出やすい人の特徴はありますか?

タバコを吸う人や太っている人、年齢が40歳を超える人、血栓症の家族歴がある方は血栓症のリスクが高まります。
そのほかのマイナートラブルははっきりどういう人が副作用が増えるというエビデンスはありません。

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