
執筆者兼監修者プロフィール
東大産婦人科に入局後、長野県立こども病院、虎の門病院、関東労災病院、東京警察病院、東京都立豊島病院、東大病院など複数の病院勤務を経てレディースクリニックなみなみ院長に就任。
資格
- 医学博士
- 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
- FMF認定超音波医
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閉経前後から「腟が乾く」「性交時に痛い」「トイレが近い・尿が漏れる」などの悩みはありませんか?
それは閉経によるホルモン低下が原因のGSM(閉経関連尿路性器症候群)かもしれません。GSMは更年期以降の女性に起こりやすい腟や外陰部、尿路の不調の総称です。
本記事ではGSMの定義や症状・原因、診断方法、そしてホルモン補充療法から最新のインティマレーザー治療まで、医学的根拠に基づいて分かりやすく解説します。デリケートな悩みだからと我慢せず、ぜひ参考にしてみてください。
GSMとは?
GSMの定義と概要
GSM(Genitourinary Syndrome of Menopause)とは、「閉経後尿路性器症候群」とも呼ばれ、閉経による女性ホルモン低下に伴って生じる腟や尿路の様々な症状を指す用語です。
従来は「萎縮性腟炎」や「膣萎縮」「尿路萎縮」などと呼ばれていましたが、症状が腟だけでなく尿路にも及ぶことから、2014年に国際女性性機能学会(ISSWSH)と北米更年期学会(NAMS)によりGSMという包括的な名称が提唱されました。▶
主な症状ですが、腟の乾燥感や萎縮、性交痛、外陰部のかゆみ・灼熱感、頻尿・尿失禁など多岐にわたります。これらの症状は閉経に伴うエストロゲン(女性ホルモン)低下が直接の原因で起こります。
GSMは更年期以降の女性に非常によくみられる症候群です。研究によれば閉経後女性の50〜70%が程度の差はあれGSMの症状を経験していると報告されています。一方で、恥ずかしさや「年のせいだから仕方ない」という思いから受診せず放置されがちで、実際には十分に診断・治療されていないのが現状です。しかし、適切な治療により症状は改善できるので、産婦人科、泌尿器科で相談してください。
閉経と女性ホルモンの関係
閉経とは卵巣の働きが停止し月経が永久に止まることで、日本人女性の平均的な閉経年齢は50歳前後です。閉経が近づくと卵巣から分泌されるエストロゲンという女性ホルモンが急激に減少します。エストロゲンは女性の体を若々しく保つ重要なホルモンで、月経周期の調節だけでなく腟や外陰部、尿道や膀胱の粘膜を健康に維持する役割を担っています。そのため閉経によってエストロゲンが欠乏すると、これら尿路生殖器に次第に変化が起こるのです。
エストロゲン低下による代表的な変化は、腟粘膜の菲薄化(ひはくか)と乾燥です。腟の粘膜は厚みと弾力を失い、粘液の分泌が減って潤いが少なくなります。また腟内の自浄作用を担う乳酸菌などの善玉菌が減少し、腟のpHは酸性(正常)から中性〜アルカリ性に傾きます。その結果、腟粘膜は防御機能が低下して炎症を起こしやすくなり、ヒリヒリしたりかゆみを感じたりするようになります。
同時に、尿道や膀胱周辺の組織も萎縮し弱くなります。尿道粘膜が薄くなることで尿道括約筋の機能が低下し、咳やくしゃみで尿が漏れやすくなったり、膀胱を支える骨盤底の組織が衰えることで膀胱が下がり頻尿や残尿感が生じることもあります。つまり閉経によるホルモン低下がGSMの諸症状の根本原因なのです。
GSMの症状は閉経後徐々に進行する傾向があります。ホットフラッシュ(ほてり)などの更年期症状は次第に落ち着いていくのに対し、GSMの症状は放置すると自然には改善せずむしろ悪化しやすいことがわかっています。ある研究では閉経1年後の女性の65%にGSM症状がみられたのに対し、閉経後6年では84%に増加していたとの報告があります。このように時間経過とともに症状が強まりやすく、性交渉や排尿など日常生活の質(QOL)に与える影響も大きくなるため、早めに対処することが大切です。
GSMの症状と原因
GSMでは腟や外陰部、尿路に様々な不調が現れます。ここでは代表的な症状を4つ取り上げ、その内容と起こる原因を解説します。当てはまる症状がないかチェックしてみましょう。
① 腟の乾燥・萎縮
腟の乾燥はGSMの中で最も頻度が高い症状です。閉経後の女性の約9割が腟の乾燥を自覚すると報告されており、そのうち約7割では中等度〜重度の乾燥感を訴えています。具体的には、「腟がうるおわずカサカサする感じ」「性交時に十分濡れない」「おりものの量が減った」などと表現されます。また粘膜が薄いために性交時や検査時に出血しやすいこともあります。
乾燥の原因は前述の通り、エストロゲン低下による腟粘膜の萎縮です。腟壁の厚みが減り、粘膜のひだも消失して、粘液の分泌も少なくなります。その結果、腟内は常に潤い不足で粘膜表面は細かいヒビ割れが起きたり炎症を起こしやすい状態になります。さらに腟内環境の変化で雑菌が繁殖しやすくなると、おりものの異常や臭いが発生することもあります。乾燥と萎縮が強いと、何もしていなくてもヒリヒリした刺激感を覚える場合もあります。
腟の乾燥・萎縮が進むと、後述する性交痛や感染症リスクの増大など他の症状にもつながるため注意が必要です。閉経後しばらくしてから徐々に進行するケースが多く、特に閉経後数年で「最近なんだか腟が潤わなくなった」と感じる方が増えます。腟の乾燥は加齢による自然な変化ではありますが、放置せず保湿ケアや治療を行うことで改善可能です。
② 排尿トラブル(頻尿・尿もれ)
閉経後に増える排尿トラブルもGSMの症状の一つです。具体的には頻尿(トイレが近い)、尿意切迫感(急に我慢できないような強い尿意)、尿失禁(尿もれ)などが挙げられます。「咳やくしゃみで尿が漏れる」「夜間に何度もトイレに起きる」といった症状に悩む方もいるでしょう。GSM患者の約3割が排尿時の痛み(排尿痛)や切迫性尿失禁など何らかの尿路症状を訴えていたとされています。
また、繰り返す尿路感染(膀胱炎)も閉経後に増える症状の一つです。
これらの排尿トラブルの原因にも、やはりエストロゲン低下による組織の萎縮が関与しています。尿道や膀胱周囲の粘膜・支持組織にはエストロゲン受容体があり、ホルモン低下でそれらが弱くなると尿道の閉まりが悪くなって尿が漏れやすくなります(腹圧性尿失禁といいます)。また膀胱を支える骨盤底筋群が緩み、膀胱が下がって刺激に弱くなることで過活動膀胱(頻尿・尿意切迫)のような症状が出ることもあります。腟や尿道の粘膜バリアが弱まることで細菌が侵入しやすくなり膀胱炎を繰り返す方もいます。
なお、閉経後に起こる尿失禁は軽度であれば骨盤底筋トレーニング(いわゆるケーゲル体操)やエストロゲン腟錠の使用などで改善することもありますが、重度の場合は外科的治療(中部尿道スリング手術など)が必要になるケースもあります。まずは婦人科や泌尿器科で原因を評価し、適切な対処法を相談するとよいでしょう。
いずれにせよ「年だから仕方ない…」と諦めず、治療により生活の質を上げることが可能です。
③ 性交痛と腟の不快感
性交痛(性交時の痛み)も更年期以降の女性に非常によくみられる症状です。特に閉経後に顕著になる性交痛の主原因が、このGSMによる腟の乾燥と萎縮です。性交時に十分な潤いが得られず腟粘膜が薄いままだと、挿入時に強い摩擦や刺激を受けて痛みを感じます。多くの場合、「腟の入り口付近がしみるように痛い」「挿入のたびにヒリヒリする」といった訴えがあり、ひどい時には出血を伴うこともあります。また性交後に腟の違和感や灼熱感がしばらく残るケースもあります。GSMの女性では性交時の潤滑低下(濡れにくさ)と性交痛が非常に高頻度で報告されており、この世代の女性の90%が潤滑低下を、80%が何らかの性交痛を経験しているとされています。
性交痛が続くと、「性行為が怖い」「また痛くなるのではと不安で集中できない」など心理的な負担も大きくなります。その結果、性交渉の頻度が減ったり性的欲求の低下(セックスレス)につながることもあります。実際に閉経後の性交痛は夫婦間の問題や女性の自己肯定感の低下を招きやすく、QOLへの影響が大きい症状です。
「年齢的に性交痛は仕方ない」と我慢せずに潤滑剤の活用や医療機関での治療を検討しましょう。
④ 外陰部のかゆみ・痛み
閉経後に外陰部(陰部)にかゆみやヒリヒリ感を覚える女性も少なくありません。腟だけでなく陰裂部や陰唇、陰核周辺といった外陰部の皮膚・粘膜もエストロゲン低下の影響を受けており、皮膚が薄く乾燥してデリケートになります。その結果、軽い刺激でもかぶれや炎症を起こしやすくなり、慢性的なかゆみや痛みにつながります。実際、閉経後女性の約6割が外陰部のかゆみ・灼熱感を自覚するとの調査もあります。
閉経後は恥毛も量が減り(白髪化することも)外陰部の保護クッションが少なくなるため、下着との擦れなど些細な刺激でも痒く感じたりヒリヒリ痛むことがあります。また腟と同様に外陰部のpH環境も変化し、刺激に敏感になります。ときに更年期以降に増える皮膚疾患(外陰掻痒症や扁平苔癬、萎縮性苔癬など)が隠れている場合もあるため、かゆみが強い時は自己判断せず医師に相談して適切な診断を受けることも重要です。
GSMの診断方法
GSMは産婦人科の専門医、泌尿器科の専門医でもGSMという概念をよく知らなかったり、治療法の的確なアドバイスができない場合も多々あります。ぜひ、GSMの診察経験の多いクリニックなどの受診をおすすめします。
(1)問診、(2)診察、(3)ホルモン検査などによって診断を行います。GSMは症状が多岐にわたるため、他の病気との鑑別も含めて総合的に判断することが非常に大切です。
① 医師による問診
「いつごろから腟の乾燥や痛みを感じ始めたか」「症状の程度(生活に支障があるか)」「尿漏れや頻尿の有無」「性交渉の状況(痛みの程度や潤滑の状態)」などを質問します。月経の最終日はいつ頃か、閉経している場合は閉経年齢、過去に婦人科手術歴があるか、現在ホルモン補充療法などの治療を受けているか、といった婦人科的な既往歴も重要なポイントです。
加えて、膣剤や潤滑ゼリーなどご自身で試した対処法があればその効果も確認します。恥ずかしい内容かもしれませんが、遠慮せず正直に伝えることで適切な診断と治療方針につながります。レディースクリニックなみなみでは多くのGSMの患者さんの話を聞いており、デリケートな悩みもしっかり受け止めますので安心してお話しください。
② 婦人科検診・超音波検査
外陰部や腟の状態を視診し、粘膜の萎縮具合や炎症の有無、分泌物の状態などを確認します。GSMでは腟粘膜が淡白色で薄くなり、潤いが減っている所見が典型的です。また必要に応じて膣鏡診で腟壁の様子や子宮頸部も観察します。
内診では子宮や卵巣の大きさ・圧痛の有無なども触診します。さらに当院では適宜、経腟超音波検査も合わせて行い、子宮内膜の厚さや卵巣に異常がないかを確認します。閉経後に少量でも出血がある場合は、内膜ポリープや子宮体がんなどが隠れていないか超音波でチェックすることが重要です。また膀胱や尿道周囲の構造も観察できるため、骨盤臓器脱の有無(膀胱瘤〈りゅう〉や子宮脱)についても評価します。
状況によっては腟分泌物の検査を行うこともあります。乾燥やかゆみの原因としてカンジダ腟炎や細菌性腟炎など感染症が疑われる場合、綿棒でおりものを採取して顕微鏡検査をすることがあります。GSMと感染症が合併しているケースもあるため、必要に応じて検査します。
③ ホルモン値の検査
必要に応じて血液中のホルモン値検査を行います。エストロゲン(E2)や卵胞刺激ホルモン(FSH)の値を測定し、更年期以降にみられるホルモン状態かを確認します。閉経後であればE2が低くFSHが高値になります。すでに明らかに閉経している年齢の方では必須ではありませんが、50歳未満で閉経が疑われる場合(早期閉経や卵巣不全の疑い)や、ホルモン補充療法を行うか検討する際の指標として測定することがあります。
また場合によっては甲状腺ホルモンなど他の内分泌系の検査を行うこともあります(甲状腺機能低下症でも腟の乾燥症状が出ることがあるため)。しかし基本的にGSMは問診と診察で診断可能であり、ホルモン検査は補助的な位置づけです。
GSMの治療法
GSMの症状はホルモン低下が原因で起こるため、治療の基本は不足したエストロゲンを補うことです。その上で、症状の程度や患者さんの希望・体質に応じてホルモン補充療法(HRT)以外の方法も組み合わせます。具体的な治療法としては以下のようなものがあります。
① ホルモン補充療法(HRT)
ホルモン補充療法(HRT)は、減少した女性ホルモンを薬剤で補充する治療です。更年期の全身症状(ほてり・発汗、不眠など)に対する治療としてよく知られていますが、GSMの治療においても基本となる第一選択治療です
特にエストロゲンを腟に局所投与する治療(エストロゲン腟錠やクリーム、リング挿入など)は、腟や外陰部の萎縮を直接的に改善する効果が高く、「GSM治療のゴールドスタンダード(標準治療)」と位置付けられています。
腟へのエストロゲン補充療法を行うと、萎縮していた腟粘膜や外陰部皮膚が次第に厚みと潤いを取り戻します。数週間の継続使用で腟のpHも正常化し、乾燥感やかゆみ、性交痛が軽減していきます。
尿道や膀胱にもエストロゲンが作用するため、繰り返す膀胱炎の予防や過活動膀胱の改善効果も期待できます(ただし腹圧性尿失禁への効果は限定的です)エストロゲン腟錠は低用量で全身への移行がごくわずかなため副作用が少なく安全性が高いことが確認されており長期にわたって使用することも可能です。
エストロゲン補充の方法には、経口薬(錠剤)やパッチ剤による全身投与もあります。ただ、経口やパッチのエストロゲンは全身の更年期症状には有効な一方、腟や尿路の萎縮には十分な効果を及ぼさないことが多いためGSMの治療目的であれば局所療法が推奨されます。閉経後の女性に対する腟エストロゲン療法の有効性・安全性は多くの研究で支持されており、「中等度以上のGSMには第一選択となる治療法」とするエビデンスもあります

なお、乳がんや子宮体がんなどエストロゲン依存性の腫瘍の既往がある方では、ホルモン補充療法の適応は慎重に判断されます。そのような場合でも医師とリスク・ベネフィットを検討します。エストロゲン療法が難しい場合には、後述するレーザー治療など非ホルモン療法が有力な選択肢となります。
② 腟用保湿剤・潤滑剤
腟用保湿剤や潤滑剤は、ホルモンを含まない対症療法としてGSMの改善に役立ちます。市販品も多く、手軽に始められるメリットがあります。
まず潤滑剤(いわゆる潤滑ゼリー)は、水溶性・シリコン系・オイル系など様々なタイプがありますが、いずれも使用直後に腟を滑らかにし、性交時の痛みや摩擦を軽減する目的で用います。性交痛に悩む方には必須とも言えるアイテムで、一つ常備しておくと安心です。
一方、腟用保湿剤は日常的に腟内に適量塗布して使用するもので、お肌の保湿クリームの腟バージョンのようなイメージです。週に数回程度、就寝前などに継続使用することで、腟粘膜に潤いを与え普段から乾燥を緩和します。保湿剤にはヒアルロン酸など粘膜に付着して水分を保持する成分が含まれており、腟のpHを若年期に近い状態に整える作用もあります
生活習慣とGSMの関係
生活習慣の面では適度な性交渉や膣の刺激を維持することも腟粘膜の柔軟性維持に役立つとされています可能な範囲でパートナーとのスキンシップを続けることも腟の血流促進に有益です。
また、禁煙も大切です。喫煙はエストロゲン代謝を促進し萎縮を進めるため、GSMの症状悪化因子となります。
③ インティマレーザー治療
インティマレーザーは、婦人科領域の最新治療である腟粘膜のレーザー照射治療です。当院でも導入している治療法で、メスを使わずにレーザー光で腟や外陰部の組織を若返らせることができます。具体的には、特殊なエルビウムYAGレーザーを腟内や尿道口周辺に照射することで、粘膜下層のコラーゲン生成を促進し、萎縮した組織をふっくらと再生させる効果があります。表面を傷つけずに熱エネルギーを届けるため痛みが少なくダウンタイムも短いのが特徴です。
インティマレーザー治療により期待できる効果は多岐にわたります。まず、腟の乾燥感・違和感・痛みといったGSMの主要症状が劇的に改善します
「痛みのないレーザー治療」と言われており、治療を受けた患者さんの多くが「想像より楽だった」とおっしゃいます。施術後のダウンタイム(回復期間)もほとんどありません。入浴やシャワーは当日から可能で、激しい運動も問題ありません。ただし性交渉だけは3日間ほど控える必要があります。
エストロゲンを使わないのでホルモン補充療法が受けられない方にも適応できる点も大きなメリットです。乳がん治療後などでホルモン剤が使えない方のGSM症状にも、有効な治療オプションとなります。また、一度の治療で効果を実感しやすいのも特徴です。一般に1回のレーザー照射で5〜7割程度の症状改善が得られると言われており、その後数回繰り返すことでさらに改善度が高まります。複数の臨床研究でも、レーザー治療後に乾燥や性交痛、かゆみ、尿症状などが有意に改善したとの結果が示されており、従来のエストロゲン療法に代わる有望な選択肢として注目されています。当院でも導入以来、多くの患者様が「腟の違和感がなくなった」「尿漏れが改善した」といった効果を実感されています。
GSMで婦人科を受診する目安
デリケートな症状ゆえに受診をためらう方も多いGSMですが、以下のような場合は婦人科受診を検討しましょう。
- 腟の乾燥や性交痛がつらく、性交渉が困難になっている。潤滑剤を使っても痛みが強い。
- 外陰部のかゆみやヒリヒリが続いている。市販薬で改善せず日常生活に支障がある。
- 尿漏れや頻尿が気になって外出や運動を控えている。くしゃみの度に尿が漏れるなど困りごとがある。
- 閉経後に少量でも出血があった。性交後や不意の出血は要注意(萎縮による出血もありますが、他の疾患の可能性もあります)。
これらに一つでも当てはまり、少しでも生活の質が落ちていると感じたら受診のサインです。GSMの症状は放っておいても自然には良くならないことが多いため、早めに専門医に相談して適切な対処をしましょう。「閉経期だから我慢するしかない」と思い込まず、更年期以降の女性の悩みを日々診ている婦人科であれば親身に対応してくれます。当院でも、症状に応じた最適な治療法をご提案しますので安心してご相談ください。
特に性交痛や尿失禁は他人に相談しづらい問題ですが、医師にとっては日常的によく耳にする相談です。恥ずかしがらず受診していただいて大丈夫です。適切な治療を受けることで「なんでもっと早く相談しなかったんだろう」と感じるほど楽になるケースも多々あります。
GSMについてよくある質問
GSMは何歳から発症する?
閉経後であれば何歳からでも発症し得ます。典型的には閉経後数年してから症状が目立ってくるケースが多いです。平均的な閉経年齢は50歳前後ですので、50代〜60代で症状に気づく方が多い印象です。ただし個人差があり、閉経直後の40代後半〜50代前半で強い症状が出る方もいれば、70代になってようやく自覚する方もいます。
GSMは閉経前の女性にも起こる?
閉経前でも体内のエストロゲンレベルが低下すればGSM様症状を生じることがあります。ただし通常の月経周期がある女性であればエストロゲンは保たれているため、GSMは心配ありません。もし閉経前なのに長引く腟の乾燥や痛み・かゆみがある場合は、婦人科を受診して原因を調べてもらいましょう。性感染症や他の腟炎・皮膚疾患など、別の原因が隠れている可能性もあります。
更年期の性交痛の原因は?
更年期(閉経前後)に性交痛が増える最大の原因は、エストロゲン不足による腟粘膜の萎縮(薄く弱くなること)と乾燥です。卵巣機能が低下すると、腟や外陰部の組織はエストロゲンの刺激を失い、粘膜が薄く血流も減り弾力が無くなってきます。
まとめ:GSMの症状に悩んだら専門医に相談しましょう
GSM(閉経関連尿路性器症候群)は、閉経に伴う女性ホルモン低下が原因で起こる腟や尿路の不調の総称です。腟の乾燥感や性交痛、外陰部のかゆみ、尿漏れなど、中高年の女性によくみられる症状が含まれます。決して特殊な病気ではなく、多くの女性が経験する可能性のあるごく一般的な症候群です。しかしデリケートな問題のため周囲に相談できず、一人で悩んでいる方も少なくありません。
GSMの症状は放っておいても自然に良くなることは少なく、むしろ閉経後の経過とともに悪化しうることがわかっています。
大切なのは、一人で我慢し続けないことです。年齢による変化とはいえ、QOLを下げてまで耐える必要はありません。婦人科医はこうした更年期以降の症状改善に精通していますので、遠慮なく相談してください。特に当院のように更年期医療やレーザー治療に力を入れているクリニックであれば、最新の知見に基づいた幅広い選択肢から最適な治療法をご提案できます。
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執筆者兼監修者プロフィール
東大産婦人科に入局後、長野県立こども病院、虎の門病院、関東労災病院、東京警察病院、東京都立豊島病院、東大病院など複数の病院勤務を経てレディースクリニックなみなみ院長に就任。
資格
- 医学博士
- 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
- FMF認定超音波医
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GSMは基本的には閉経後の症候群ですが、閉経前の女性でも卵巣機能の低下した状態(低エストロゲン状態)で類似の症状が出現することもあります。例えば若くして卵巣を摘出した場合や、出産後の授乳期、一部の治療(抗エストロゲン療法など)による一時的なホルモン低下でも、GSMに似た腟の乾燥や違和感を感じることがあります。ただし基本的には閉経後に生じるものがGSMとされています。