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女性のための頻尿対策ガイド:原因、治療、そして予防まで

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クリニックなみなみ 院長 叶谷愛弓

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院長 叶谷愛弓
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「最近、トイレの回数が多い気がする」
「夜中に何度も目が覚めてトイレに行ってしまう」

このような悩みをお持ちの女性は、少なくありません。もしかしたら、あなたは「頻尿」かもしれません。

頻尿は、日常生活に大きな影響を与え、ストレスや不安に繋がることがあります。しかし、適切な知識を得て、原因や治療法を理解することで、症状を改善し、快適な日々を送ることが可能です。

この記事では、女性の頻尿に焦点を当て、その原因から治療法、そして予防策まで、網羅的に解説していきます。専門用語はできるだけ分かりやすく説明し、女性が安心して読める内容を目指しました。ぜひ最後まで読んで、頻尿に対する理解を深め、積極的に対策を始めてみて下さい。

ひん尿は男女ともに年齢と共に罹患率が非常に高くなる症状です。特に女性は出産や更年期などのイベントによっても症状が悪化したりします。我慢できるうちはまだ良いのですが、早めの治療の方が治りやすいため正しい対処法・治療方法を学んでください。

頻尿とは?その症状と原因を理解しましょう

頻尿とはどんな症状?

頻尿とは、通常よりもトイレの回数が多い状態を指します。具体的には、1日8回以上トイレに行ったり、夜間に2回以上トイレに起きてしまう場合などが頻尿に該当します。
頻尿は、年齢を重ねるごとに増加する傾向にあり、特に女性では、男性よりも多く見られます。
頻尿の症状は人によって異なり、以下のような症状が挙げられます。

  • トイレの回数が明らかに増える
  • 夜中に何度も目が覚めてトイレに行く
  • トイレに間に合わない
  • 尿意を感じても、実際には少量しか尿が出ない
  • 尿意が頻繁に起こる

これらの症状に心当たりがある方は、一度医療機関を受診することをおすすめします。

頻尿の原因:女性特有の事情も詳しく解説します

頻尿の原因は、加齢、妊娠・出産、更年期、膀胱の病気など、様々な要因が考えられます。ここでは、特に女性に多く見られる頻尿の原因について詳しく解説していきます。

①加齢による変化

加齢に伴い、膀胱の筋肉が衰えたり、尿道がゆるんだりすることで、頻尿が起こりやすくなります。また、高齢になると、膀胱の容量が減少し、少量の尿でも尿意を感じやすくなります。

加齢による頻尿は男女ともに守られる症状ですが、特に女性で顕著にみられます。これは、女性は男性よりも膀胱の容量が小さいことや、妊娠・出産を経験することで、膀胱の筋肉が弱くなりやすいことが原因と考えられています。

②妊娠・出産

妊娠中は、子宮が大きくなることで膀胱が圧迫され、頻尿が起こりやすくなります。また、妊娠ホルモンの影響で、膀胱の筋肉が弛緩することも、頻尿の一因となります。

出産後も、膀胱の筋肉の回復に時間がかかるため、頻尿が続くことがあります。また、出産時に会陰部を切開した場合、尿道がゆるんでしまい、頻尿が起こりやすくなることもあります。

③更年期

更年期には、女性ホルモンの分泌量が低下するため、膀胱の筋肉が衰えやすくなります。また、骨盤底筋が弱くなることで、尿道がゆるんでしまい、頻尿が起こりやすくなります。

更年期は、ホルモンバランスが大きく変化する時期であり、様々な身体的・精神的な変化が起こります。頻尿もその一つであり、更年期に悩む女性の多くが、頻尿の症状を経験していると言われています。

④膀胱の病気

膀胱炎、膀胱結石、膀胱腫瘍などの膀胱の病気も、頻尿の原因となります。膀胱炎は、細菌が膀胱に感染することで起こる炎症で、頻尿、排尿痛、残尿感などの症状がみられます。膀胱結石は、膀胱の中に結石ができて、尿の流れを妨げることで、頻尿、排尿痛、血尿などの症状を引き起こします。膀胱腫瘍は、膀胱の内側に腫瘍ができたもので、頻尿、血尿、排尿痛などの症状がみられます。

膀胱の病気が原因で頻尿が起こっている場合は、適切な治療が必要です。早期に治療を開始することで、症状の悪化を防ぎ、完治の可能性が高まります。

⑤その他の原因

頻尿の原因には、膀胱の病気以外にも、以下のようなものが挙げられます。

  • 神経系の病気(脳卒中、脊髄損傷、多発性硬化症など)
  • 糖尿病
  • 甲状腺機能亢進症
  • 心不全
  • 利尿剤などの薬剤の服用
  • カフェインやアルコールの過剰摂取
  • ストレス
  • 水分摂取量が多い

頻尿と尿失禁は違うの?

頻尿とよく混同されやすいものに、尿失禁があります。どちらも「トイレに行きたくなる」悩みですが、その原因や症状は異なります。
頻尿は、トイレの回数が多く、尿意を我慢するのが難しい状態を指します。一方、尿失禁は、自分の意思とは関係なく、尿が漏れてしまう状態を指します。
頻尿と尿失禁は、それぞれ異なる原因で起こるため、適切な治療法も異なります。そのため、自分の症状が頻尿なのか尿失禁なのかを正しく理解することが大切です。もし、どちらか分からない場合は、医療機関を受診し、医師に相談するようにしましょう。

過活動膀胱とは?

頻尿の症状がある場合によく聞く、過活動膀胱という言葉、頻尿とどのように異なるのか説明します。

過活動膀胱と頻尿の違いは?

「頻尿」という症状自体は上記で説明した通り、正確には尿の回数で定義されています。一方で、「過活動膀胱」は尿意切迫感という急に発生するこらえられない尿意を伴うことを示します。

頻尿:尿の回数が一定以上
過活動膀胱:尿意切迫感を必須症状とし、さらに頻尿や夜間頻尿を伴う症候群

つまり、
頻尿 + 尿意切迫感 ≒ 過活動膀胱
です。

頻尿自体はご自身のQOLが低下していなければ治療の必要がない場合もあります。一方で過活動膀胱は「トイレに間に合わない」、「間に合わなくて漏れてしまう」といった切迫した症状が伴うので、基本的には治療を行った方がいい状態と考えます。

過活動膀胱の原因は?

過活動膀胱の原因は神経因性と非神経因性に分けられます。脳血管障害、パーキンソン病、認知症などの神経疾患や、加齢、前立腺肥大症、骨盤底筋の弱化などが原因となりえます。原因に関しては頻尿と共通なことがほとんどです。

頻尿の治療法:適切な治療の選択で症状を改善しましょう

頻尿の治療法は、原因によって異なります。原因応じた適切な治療法を選択します。
頻尿の治療法には、大きく分けて、内服治療(薬物療法)、生活習慣改善(デバイスを用いない理学療法)、手術療法、新しいデバイスを使った理学治療などがあります。
内服と理学療法は基本の治療法ですのでまずは試してみましょう。

内服治療

薬物療法では、膀胱の筋肉の収縮を抑えたり、尿意を感じにくくしたりする薬剤を使用します。頻尿の原因や症状に合わせて、適切な薬剤が処方されます。

① 抗コリン薬
② β3受容体作動薬
③ α1遮断薬(男性の前立腺肥大が原因の場合)

薬物療法は、膀胱のムスカリン受容体に働きかけ膀胱の異常収縮を抑制する抗コリン薬と、膀胱のβ受容体に働きかけ暴行要領が溜まってきた際に弛緩しやすくするβ3受容体作動薬の二つの種類がメインとなります。抗コリン薬は眠気や口渇などの副作用が出る場合もあります。

生活習慣の改善

生活習慣改善は、頻尿の治療において非常に重要な要素です。生活習慣を見直すことで、頻尿の症状を改善できるだけでなく、再発を防ぐ効果も期待できます。

頻尿改善のための生活習慣改善には、以下のような方法があります。

  • 水分摂取量を調整する:水分を過剰に摂取すると、尿量が増えて頻尿が悪化することがあります。特に、寝る前の水分摂取は控えましょう。
  • カフェインやアルコールを控える:カフェインやアルコールは利尿作用があり、頻尿を悪化させる可能性があります。カフェインが含まれるコーヒー、紅茶、緑茶、チョコレート、エナジードリンクなどの摂取は控えましょう。アルコールも同様です。
  • 膀胱訓練を行う:膀胱訓練は、膀胱の容量を増やし、尿意の間隔を長くする訓練です。トイレに行きたいと感じても、少し我慢する訓練を繰り返すことで、膀胱の筋肉を鍛え、頻尿の改善に繋がります。
  • 骨盤底筋を鍛える:骨盤底筋は、膀胱や尿道を支える筋肉です。骨盤底筋を鍛えることで、尿道を締め付ける力が強くなり、頻尿や尿失禁の改善に繋がります。
  • ストレスを軽減する:ストレスは、頻尿を悪化させることがあります。ストレスをためないよう、ストレス解消方法を見つけて、心身のリラックスを心がけましょう。

これらの生活習慣改善を継続することで、頻尿の症状が改善されるだけでなく、健康な身体作りにも繋がります。

手術療法

内服治療や生活習慣改善で60−70%の方がある程度は効果が認められます。それでも効果が見られない場合、手術療法が検討されることがあります。手術療法は、頻尿の原因となる膀胱や尿道に直接作用させて症状改善を行います。

① ボツリヌス毒素膀胱壁内注射療法
ボツリヌス療法とはボツリヌストキシンという毒素を膀胱鏡という内視鏡を用いて膀胱の壁に注射する方法です。ボツリヌスによって膀胱が弛緩し、頻尿や尿もれを改善させる効果があります。しわを伸ばし、若返りをする注射と同じ原理です。局所麻酔で行うので痛みはあまりありません。
行っている施設が非常に少ないのが難点です。
② 仙骨神経刺激療法
仙骨神経刺激療法は膀胱に分布する仙骨神経を非常に弱い電流で刺激し、頻尿や尿もれを改善させる治療です。ペースメーカーのようなデバイスを皮下にを埋め込み、電流や刺激の頻度を調整します。
こちらも行っている施設が非常に少ないです。

新しいデバイスを使った理学治療

近年では、頻尿の治療法として、新しいデバイスを使った理学治療も注目されています。Dfreeといって膀胱内の尿量を可視化することで意識的にトイレの回数を調整、我慢するトレーニングを行うことで頻尿を改善していく方法です。

新しいデバイスを使った理学治療は、手術療法に比べて、身体への負担が少なく、副作用のリスクも低いというメリットがあります。また、自宅でも簡単にできる治療法で、低下した機能をトレーニングのように回復していくような意味合いがあるのですぐに効果は出ないものですが根本的な治療になる可能性があり期待されています。

抗生物質の内服しすぎは良くない?

最近では抗生物質の内服が一般的になって来ていることで、抗生物質に耐性のある原因菌(耐性菌)の出現が問題視されています。
頻繁に抗生物質を内服することは二つの点でよくないです。
① 耐性菌の出現
② 正常細菌叢(善玉菌)の死滅
本来常在菌と言ってバランスを整えてくれている善玉菌まで影響も受けるため膀胱炎の原因菌である大腸菌が繁殖しやすい環境ができてしまいます。
頻繁に繰り返す膀胱炎の場合は、むやみやたらと抗生剤を内服するのではなく、常在菌叢(そう)の正常化のためにエビデンスのある乳酸菌サプリなどを内服した方が良い場合もあります。

再発性尿路感染症との関連

最新の研究により、再発性尿路感染症(再発性ぼうこう炎)と頻尿の間に密接な関連があることが明らかになってきました。
ぼうこう炎などの感染症を繰り返し発症することで、膀胱内に非常に感度の高い神経細胞が過剰に増殖し、この神経細胞の過剰増殖が、ぼうこう炎治療後も続く骨盤部の痛みや違和感、頻尿の原因となっている可能性があることがわかってきました。
膀胱炎を繰り返すこと自体が頻尿を増加させる悪いサイクルになってしまうので、できる限り膀胱炎を起こしにくい日常のケアや治療が大事になってきます。

頻尿と過活動膀胱の有病率

下部尿路症状(LUTS)には頻尿が含まれており、年齢とともに有病率が大幅に増加する傾向が見られます。
20歳以上: 77.9%
40歳以上: 82.5%
一方、過活動膀胱(OAB)の有病率は
20歳以上: 11.9%
40歳以上: 13.8%
となっています。20歳以上の日本人の約1,300万人が過活動膀胱に罹患していると推定されています。
頻尿、過活動膀胱共にかなりの数の方が悩まれている疾患、症状であることがわかります。

頻尿に関するよくある質問

頻尿は治るものなの?

頻尿は、原因によって治療方法が異なります。原因によっては、薬物療法や生活習慣改善などで症状が改善することもあります。しかし、原因が特定できない場合や、原因が治らない病気の場合には、完治が難しいこともあります。

頻尿の治療は、症状を改善し、生活の質を向上させることが目的です。医師と相談しながら、自分に合った治療法を選択し、積極的に治療に取り組むことが大切です。

頻尿の治療費はどのくらいかかるの?

頻尿の治療費は、原因や治療法によって異なります。薬物療法の場合には、薬代が主な費用となります。生活習慣改善の場合には、費用はかかりません。手術療法の場合には、手術費用や入院費用などが発生します。

頻尿の治療費は、医療機関によって異なります。また、医療保険の適用範囲も、治療法によって異なります。治療費については、事前に医療機関に問い合わせて確認することをおすすめします。

何科に相談したらいいの?

頻尿や過活動膀胱ともに外科的な治療まで必要になる方はかなり少数です。
それ以外の方は、産婦人科や泌尿器科で相談していただくと良いです。おすすめは、両方の科を関連づけて診療できる病院がいいです。

まとめ|頻尿の原因と治療法、そして予防策を理解しよう

この記事では、主に女性の頻尿の原因から治療法、そして予防策まで、幅広く解説しました。頻尿は放置すると、生活の質を大きく低下させる可能性があります。適切な知識を得て、積極的に対策することで、快適な毎日を送ることができるでしょう。

気になる症状がある場合は、一人で悩まず、医療機関を受診することをおすすめします。

当院では、泌尿器科疾患にも精通した産婦人科専門医が、患者さま一人ひとりの症状に合わせた丁寧な診療を行っています。頻尿でお悩みの方は、レディースクリニックなみなみにお気軽にご相談ください。

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