子宮筋腫の痛みは？痛みの特徴や治療が必要なケースを解説

子宮筋腫による痛みは、多くの女性が悩む症状の一つです。子宮筋腫は30代～40代の女性に多くみられる良性の腫瘍で、症状がない場合もありますが、月経痛など痛みを引き起こすことがあります​。本記事では、子宮筋腫による痛みの特徴や、治療が必要なケース、痛みに関するよくある質問について、最新の医学的エビデンスに基づき分かりやすく解説します。信頼できる情報をもとに、つらい痛みへの対処法を一緒に考えていきましょう。

子宮筋腫の痛みの特徴は？

子宮筋腫が原因で起こる痛みには、いくつか特徴的なパターンがあります。特に次のような場面で痛みが強くなることが知られています。

生理時に下腹部痛が強くなる

子宮筋腫があると、生理のときの下腹部痛（月経痛）が普段より強くなる傾向があります​。子宮筋腫そのものは良性腫瘍ですが、子宮内膜に近い場所に筋腫がある場合（粘膜下筋腫など）、月経時の出血量が増えたり月経期間が延長したりすることがあります​。出血量が多いと子宮が強く収縮し、血液や血の塊を排出しようとするため、生理痛が激しく感じられる原因になります。また、生理が終わった後も痛みが数日残るケースもあります。これは大量の出血による子宮収縮や、筋腫による子宮の緊張が続くためと考えられます。通常の生理痛より明らかに強い痛みや鎮痛剤が効きにくい痛みがある場合、子宮筋腫が関与している可能性があります。

生理以外の時期に下腹部痛や腰痛を感じる

子宮筋腫による痛みは、生理中だけでなく生理以外の時期にも現れることがあります。特に筋腫が大きく育つと、常に下腹部に圧迫感や重い痛みを感じたり、腰痛として現れたりすることがあります​。大きな筋腫は周囲の臓器を圧迫し、膀胱が圧迫されれば頻尿や尿意切迫（我慢できない強い尿意）を引き起こし、直腸が圧迫されると便秘やお腹の不快感の原因にもなります​。こうした圧迫症状に伴い、下腹部の鈍い痛みや違和感が生理でない時期にも続くことがあります。

さらに、子宮の外側に茎状に飛び出した筋腫の場合、筋腫が捻じれて血流が遮断され、突然激しい急性の痛みを生じることがあります​(茎捻転といいます)。このような急な強い痛みが起きた場合は「筋腫が捻転した」可能性があり、緊急の対応が必要です。いずれにせよ、生理以外の時期に下腹部痛や腰痛が続く場合は放置せず婦人科を受診しましょう。

性行為の際に痛みを感じる場合がある

子宮筋腫の位置や大きさによっては、性行為中に痛み（性交痛）を感じることもあります。例えば、子宮の入口付近や腟側に近い場所に筋腫があると、性交時に刺激されて下腹部痛を生じることがあります。また、大きな筋腫があると骨盤内が圧迫されている状態のため、深い挿入時に圧迫痛や違和感を覚えることがあります​。性交時の痛みが毎回起こるようであれば、我慢せず医師に相談してください​。性交痛は筋腫以外にも子宮内膜症など他の婦人科疾患でも見られる症状ですので、原因をきちんと調べて対処することが大切です。

子宮筋腫の変性痛はどんな痛み？

変性痛（へんせいつう）とは、子宮筋腫が「変性」と呼ばれる状態になったときに生じる痛みのことです。子宮筋腫は筋肉と繊維組織からなる腫瘍で、急激に大きくなった場合などには筋腫への血流が追いつかず、一部の組織が壊死（細胞が死んでしまうこと）して変性を起こすことがあります​。この変性が起きると周囲に炎症が生じ、強い痛みを引き起こします。変性痛は通常の生理痛と異なり、持続的で鋭い痛みとして感じることが多く、その痛みは変性が続く限り持続します​。

つまり、一度変性痛が始まると、数日から1〜2週間程度は痛みが続く場合があります。痛みの強さから「筋腫が破裂したのでは？」と心配になる方もいますが、破裂ではなく筋腫の組織が部分的に壊死している状態です。発熱を伴うこともありますが、細菌感染による熱ではなく炎症反応による一時的な発熱です。

変性痛が起こりやすい状況として、妊娠中が挙げられます。妊娠中は女性ホルモン（エストロゲン）の分泌が増えるため筋腫が大きくなりやすく、とくに妊娠中期（妊娠20週前後）に筋腫の変性が起きて強い痛みが発生することがあります​。
妊娠中は筋腫に対する積極的な手術治療が原則できないため、痛み止めを使いながら安静にして経過をみる保存的治療が行われます。妊娠されていない場合でも、大きな筋腫では同様に変性を起こすことがあり、その場合も基本的には安静と鎮痛剤など対症療法で経過をみます。変性痛は時間とともに徐々に治まっていきますが、あまりに痛みが強いときは早めに受診し、痛み止めの処方や必要な対処をしてもらいましょう。

そもそも子宮筋腫とは？

子宮筋腫（しきゅうきんしゅ）とは、子宮の筋肉の壁にできる良性の腫瘍です。がん（悪性腫瘍）ではないため命に関わるものではありませんが、場所や大きさによっては様々な症状を引き起こします​。発症頻度は高く、30歳以上の女性の約3割に子宮筋腫があるとも言われています​。子宮筋腫は女性ホルモン（エストロゲン）の影響で大きくなる性質があり、閉経後は徐々に小さくなることが分かっています​。原因は完全には解明されていませんが、エストロゲンにさらされる期間が長いほど発生しやすい傾向があり、家族歴（母親や姉妹が筋腫持ち）も一因とされています。

粘膜下筋腫

子宮の内腔（子宮内膜側）に向かって筋腫が育つタイプです。小さい筋腫でも月経量を増やし、生理痛を強くする傾向があります。不妊や流産の原因になりやすいことも特徴です。

筋層内筋腫

子宮の筋肉の壁の中にできる筋腫で、最も一般的なタイプです。サイズが大きくなると子宮全体が大きく腫れ、過多月経（月経量過多）や下腹部の張り感、痛みを引き起こすことがあります。

漿膜下筋腫

子宮の外側に向かって育つ筋腫です。お腹の中に瘤（こぶ）ができるようなイメージで、非常に大きくなることもあります。このタイプは月経異常が起こりにくく、無症状のことも多いですが、あまりに巨大化すると周囲の臓器を圧迫して下腹部の痛みや圧迫症状（膀胱や直腸への圧迫による症状）を生じます​。また、前述のように茎状に育った漿膜下筋腫は捻転による激痛を起こすこともあります。

子宮筋腫の痛み以外の症状

子宮筋腫があると、痛み以外にもいくつかの症状が現れることがあります。主な症状は次の通りです。

月経過多（過多月経）・月経が長引く

筋腫があると月経の出血量が非常に多くなったり、月経期間が普段より長く続いたりすることがあります​。特に粘膜下筋腫は小さくても過多月経を起こしやすいです​。大量の出血により貧血（鉄欠乏性貧血）になる女性も少なくありません​。貧血になると疲れやすさ、動悸、息切れ、めまいなどの症状が出て生活に支障をきたすことがあります。

不正出血

生理期間でないのに出血が起こることがあります​。筋腫が大きく子宮内膜を圧迫・刺激すると、子宮内膜が剥がれて生理以外の出血（不正出血）を引き起こす原因になります。少量のシミ程度から、生理並みの出血まで程度は様々です。

下腹部のしこり・圧迫症状

大きな筋腫がある場合、下腹部にしこりが触れたり、お腹がポッコリ出てきたりすることがあります​。子宮筋腫は場合によっては妊娠中期相当（子宮底が臍の高さ）の大きさにまで育つこともあり、周囲の臓器を圧迫します。その結果、膀胱が圧迫されれば頻尿（トイレが近くなる）や排尿困難（尿が出にくい）を起こし、直腸が圧迫されれば便秘の原因となります​。また、腰の神経に触れると腰痛や下肢のしびれ・だるさを感じることもあります。

不妊・流産

筋腫の場所によっては妊娠に影響を及ぼすことがあります。子宮腔の中に突出するような筋腫（粘膜下筋腫など）は受精卵の着床を妨げたり、胚の発育を阻害して不妊症の原因になったり、流産・早産のリスクを高めたりすることが知られています​。レディースクリニックなみなみでも実際、子宮筋腫患者さんの中には筋腫の治療を行うことで妊娠しやすくなった例もあります。

子宮筋腫を治療する目安

「子宮筋腫がある」と診断されても、すべての筋腫に積極的な治療が必要なわけではありません​。筋腫の治療が必要かどうかは、大きさよりも症状の有無や程度によって判断されます​。以下のようなケースでは治療を検討します。

症状が強く日常生活に支障がある場合

月経痛や下腹部痛が強く鎮痛剤でも抑えられない、過多月経で貧血がひどく日常生活に影響が出ている、頻尿や便秘がつらい、といった場合は治療を検討します​。痛みが強い、または持続する場合や、筋腫による出血過多で生活の質が低下している場合、放置するメリットは少ないでしょう。

筋腫が大きい場合や急速に大きくなっている場合

筋腫のサイズが握りこぶし大以上（子宮が妊娠10週相当以上の大きさ）になるようなケースでは、症状がなくても治療を提案されることがあります。筋腫が巨大化するとごく稀にですが悪性腫瘍（子宮肉腫）の可能性も否定できなくなるためです。特に閉経後に筋腫が大きくなってきた場合や、短期間で急激に増大する場合は注意が必要です。

妊娠を希望している場合

不妊の原因となりうる粘膜下筋腫がある場合や、子宮腔を大きく変形させる筋層内筋腫がある場合には、将来の妊娠のために筋腫を小さくしたり摘出したりする治療が考慮されます。筋腫があることで流産や早産のリスクが高まると判断された場合も同様です。

その他特別なケース

筋腫が茎捻転や変性を起こして激痛の原因になっている場合、痛みのコントロールのために手術を検討することがあります。また、閉経が数年先に迫っている年代の方で中等度の症状の場合は、ホルモン療法で一時的に筋腫を小さくして閉経を迎えるのを待つ（閉経になれば自然と筋腫が縮小するため）という選択肢もあります。一方で、症状が全くない小さな筋腫については定期的に経過観察を行い、必要になった時点で治療する方針となることが多いです​。実際、筋腫の多くは良性であり1％未満のごく稀なケースでしか悪性化（肉腫化）しません​。症状がなければ無理に治療せずに様子を見ることも、安全な選択と言えます。ただし、症状が出てきたり筋腫が大きくなってきたりした場合には、早めに対処することが大切です。

子宮筋腫の痛みに関するよくある質問

まとめ：子宮筋腫の痛みがつらいときは婦人科を受診しましょう

子宮筋腫はとてもありふれた病気であり、多くの場合は良性で命に関わる心配はありません。しかし、筋腫による痛みや過多月経などの症状がつらいとき、それを放置する必要はありません。痛みで仕事や家事に支障が出たり、毎月憂うつな気持ちになるようであれば、一度婦人科を受診してみましょう。適切な検査を受ければ痛みの原因がはっきりしますし、治療によって症状を和らげることが可能です​。

子宮筋腫の痛みは、鎮痛剤やホルモン療法、必要に応じて手術で改善できます。信頼できる婦人科の医師と相談しながら、自分に合った対処法を見つけてください。

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  更新日：

  2025/03/01

  公開日：

  2025/02/10

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