執筆者兼監修者プロフィール
東大産婦人科に入局後、長野県立こども病院、虎の門病院、関東労災病院、東京警察病院、東京都立豊島病院、東大病院など複数の病院勤務を経てレディースクリニックなみなみ院長に就任。
資格
- 医学博士
- 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
- FMF認定超音波医
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クラミジア感染症は、自覚症状がほとんどないまま進行することが多い性感染症です。国内で最も多い性感染症とされ、とくに10代後半から20代の女性に多くみられます。気づかないうちに感染が続くと、卵管などに炎症が広がり、将来の不妊や子宮外妊娠の原因になることがあると報告されています。だからこそ「症状がないから大丈夫」と考えず、心配なときは検査を受けることが大切です。
「おりものが少し増えた気がする」「パートナーが感染していた」「妊娠を考えているけれど大丈夫かな」——そんな不安をお持ちの方に向けて、この記事では次のことがわかります。
- クラミジア感染症とはどんな病気か(なぜ気づきにくいのか)
- 女性に出やすい症状と、放置したときのリスク
- 検査の方法と、結果が出るまでの流れ
- 治療の進め方(なぜパートナーも一緒に治療するのか)
- 妊娠・不妊との関係と、予防のポイント
- よくあるご質問(無症状でも検査すべき?/パートナーへの伝え方 など)
クラミジア感染症とは
クラミジア感染症(性器クラミジア感染症)は、クラミジア・トラコマティスという細菌によって起こる性感染症です。性交渉のほか、オーラルセックスなどでも感染し、咽頭(のど)に感染することもあります。症状が比較的軽く、自覚されにくいことから感染が長引きやすく、その間に気づかないうちにパートナーへうつしてしまうこともあると考えられています。
国内で最も多い性感染症
- 日本国内の性感染症のなかで最も多いとされています
- とくに16〜25歳の若い女性で感染者が多く、20代でピークを迎えると報告されています
- 多くが無症状のまま広がるため、「気づかない感染」が拡大の背景にあると考えられています
主な症状|「無症状」が最大の特徴
クラミジア感染症の女性では、子宮頸管(子宮の入り口)に炎症が起こることが最も多いとされています。ただし、その多くははっきりした症状が出ません。症状が出る場合でも軽いことが多く、見過ごされやすいのが特徴です。
- 水のように透明で、さらっとしたおりものが増える
- 性交渉のあとに少量の出血がみられる
- 軽い下腹部の違和感
おりものの変化は、ほかの腟炎でもよくみられます。気になる変化があるときは、おりものの変化やデリケートゾーンのかゆみもあわせて確認し、自己判断で様子を見すぎないことが大切です。
放置するとどうなる?|不妊・子宮外妊娠のリスク
無症状だからと感染を放置すると、菌が子宮から卵管へと上に広がる(上行感染)ことがあります。これにより、次のような状態を招く可能性があると報告されています。
- 子宮内膜炎・卵管炎(付属器炎):強い下腹部痛や発熱をともなうことがあります
- 卵管性不妊:卵管に炎症や癒着が起こり、将来の妊娠がしにくくなることがあります
- 子宮外妊娠:卵管のダメージにより、子宮の外で妊娠が成立してしまうリスクが高まると考えられています
- 肝周囲炎(フィッツ・ヒュー・カーティス症候群):右上腹部の痛みとして現れ、若い女性の急な上腹部痛の原因になることがあります
このように、クラミジア感染症は「症状がないこと」がかえってリスクにつながります。妊娠を考えている方はもちろん、そうでない方も、早めに見つけて治療することが将来の体を守ることにつながります。
他の性感染症・腟炎との見分け方
おりものの変化は、クラミジア以外のさまざまな感染でもみられます。見た目やにおいだけで自己判断するのは難しいため、あくまで目安として参考にし、気になるときは検査を受けることが大切です。
| 原因 | おりものの特徴 | かゆみ |
|---|---|---|
| クラミジア | 水様・透明でさらっとした帯下(無症状も多い) | 少ない |
| 淋菌 | 膿のような黄色い帯下、症状が強め | 少ない |
| カンジダ | 白く酒かす状・ヨーグルト状 | 強い |
| 細菌性腟症 | 灰白色で魚のようなにおい | 軽い〜なし |
| トリコモナス | 黄色く泡立った帯下 | 強い |
とくにクラミジアと淋菌は同時に感染していることが2〜3割程度あると報告されているため、どちらか一方が疑われる場合は両方を調べることが勧められます。
のど(咽頭)のクラミジアについて
オーラルセックスの機会が増えていることから、のど(咽頭)に感染するクラミジアも増えていると報告されています。咽頭のクラミジアも多くは無症状で、のどの違和感程度のことがほとんどです。性器の検査では見つからないこともあるため、心配な場合はのどの検査もあわせて相談するとよいでしょう。
- 性器だけでなく、のど・肛門にも感染することがあります
- 自覚症状が乏しいため、感染に気づきにくい点は性器の場合と同じです
- パートナー間でうつし合うことがあるため、心配な場合は範囲を広げて検査します
検査方法|何を調べる?
クラミジア感染症の確定診断には、菌の遺伝子を調べる核酸増幅検査(PCRなど)が用いられます。感度・特異度が高く、第一選択とされています。
| 検査 | 検体 | 特徴 |
|---|---|---|
| 核酸増幅検査(PCR等) | 子宮頸管のぬぐい液・尿・咽頭など | 第一選択。高い精度で診断できる |
| 抗原検査 | 子宮頸管のぬぐい液 | 補助的に用いられる |
| 抗体検査(血液) | 血清 | 過去の感染の手がかり。治った確認には用いない |
クラミジアは淋菌との同時感染が2〜3割程度みられると報告されているため、淋菌やHIV、梅毒などの検査もあわせて勧められることがあります。不妊治療を始める際のスクリーニング項目にも含まれます。
治療|パートナーも一緒に
クラミジアの治療には抗菌薬を用います。重要なのは、クラミジアにはペニシリンなどのβラクタム系の抗菌薬が効かないという点です。これは菌の構造の違いによるもので、マクロライド系・キノロン系・テトラサイクリン系といった種類の薬が使われます。
| 薬の種類 | 主な使われ方 |
|---|---|
| マクロライド系(アジスロマイシン等) | 単回または数日間の内服。妊娠中・授乳中にも用いられる |
| キノロン系・テトラサイクリン系 | 状況に応じて。妊娠中・授乳中は使用できないものがある |
- パートナーの同時治療が欠かせません。症状の有無にかかわらず、二人で治療しないと「ピンポン感染(再感染)」を繰り返してしまいます
- 治療が完了するまでは性交渉を控えるか、コンドームを使用しましょう
- 治ったかどうかの確認(再検査)は、治療終了から3週間以降に核酸増幅検査で行います。抗体検査は治癒判定には使えません
妊娠とクラミジア
妊娠中にクラミジアに感染していると、出産時に産道で赤ちゃんに感染し、新生児結膜炎や新生児肺炎を起こすことがあると報告されています。そのため妊婦健診でも検査が行われ、感染が分かった場合は赤ちゃんに影響の少ないマクロライド系の薬で治療します。妊娠を希望している方は、不妊の予防という意味でも、妊活の準備段階で一度検査を受けておくと安心です。
妊娠中の治療では、お母さんと赤ちゃんの両方の安全に配慮して薬を選びます。自己判断で市販薬を使ったり治療をためらったりせず、医師の指示に沿って治療を進めることが大切です。治療後は、ほかの感染と同じく一定期間をおいてから治癒の確認を行います。
予防と受診の目安
- 性行為の最初から最後までコンドームを使用することが、予防の基本です
- 新しいパートナーができたとき、パートナーが感染と分かったときは検査を検討しましょう
- おりものの変化・不正出血・下腹部痛が続くときは受診をおすすめします
- 妊活を始める前のブライダルチェックの項目としても勧められています
- 過去に骨盤内の炎症や性感染症にかかったことがある方も、一度確認しておくと安心です
「症状がないのに受診するのは気が引ける」と感じる方もいますが、無症状のうちに見つけて治療できることが、クラミジア検査の大きな意味です。気になることがあれば、どうぞ気軽にご相談ください。
また、クラミジアは一度治療しても、パートナーが未治療だったり新たな感染があったりすると、くり返しかかることがあります。予防の基本はコンドームの正しい使用ですが、「症状がないから感染していない」とは限らない点を知っておくことが大切です。とくに10代後半〜20代は感染が多い年代とされているため、心配な機会があったときには、一つの安心材料として検査を活用するとよいでしょう。検査は短時間ででき、尿や綿棒でのぬぐい液など、体への負担の少ない方法で行えます。
クラミジアと不妊|なぜ卵管が傷つくのか
クラミジアが将来の妊娠に影響することがあるのは、感染が子宮の入り口から奥へと広がっていく「上行感染」が背景にあると考えられています。卵管は、卵子と精子が出会い、受精卵が子宮へ運ばれる細い管です。ここに炎症が起こると、内側が傷ついたり、周囲と癒着したりして、卵子や受精卵の通り道が狭くなることがあります。
- 卵管が詰まる・狭くなることで、受精卵が子宮にたどりつけず卵管性不妊の原因になることがあります
- 卵管の途中で受精卵が着床してしまう子宮外妊娠のリスクが高まると報告されています
- こうした変化は強い症状がないまま進むことがあるため、「気づいたら不妊検査で指摘された」というケースもあります
一度起きた卵管のダメージは元に戻りにくいこともあるため、「症状がない今のうちに検査・治療をしておく」ことが、将来の妊娠の可能性を守るうえで大切だと考えられています。妊活を意識し始めたタイミングは、検査を受ける一つのよい機会です。
パートナーへの伝え方と受診のすすめ
「感染がわかったとき、パートナーにどう伝えればいいのか」と悩む方は少なくありません。クラミジアは誰がいつ感染してもおかしくない、ありふれた性感染症です。どちらが悪いという話ではなく、お互いの体を守るために二人で治すもの、ととらえると伝えやすくなります。
- 「再感染を防ぐために、一緒に検査と治療を受けてほしい」と前向きに伝える
- パートナーは無症状でも感染していることが多いため、症状の有無で判断しない
- 受診先に迷うときは、まずご自身がかかった医療機関に相談すると、パートナーの受診先の案内を受けられることがあります
当院では、こうしたデリケートな問題にもプライバシーへ十分に配慮しながら対応しています。一人で抱え込まず、まずはご相談ください。
よくある質問(FAQ)
症状がないのですが、検査した方がいいですか?
クラミジアは無症状のことが多く、気づかないうちに進行して不妊などの原因になることがあります。新しいパートナーができたときや、パートナーが感染していた場合、妊娠を考えている場合は、症状がなくても検査をおすすめします。
パートナーにも伝えないといけませんか?
はい。パートナーが治療しないままだと再感染(ピンポン感染)を繰り返してしまうため、症状の有無にかかわらず、二人そろって治療することが大切です。お互いの体を守るためにも、検査・治療を一緒に受けることをおすすめします。
妊娠したいのですが、クラミジアの既往は影響しますか?
過去の感染で卵管に炎症や癒着が残っていると、妊娠しにくくなることがあると考えられています。不妊治療を始める際のスクリーニングにも含まれる項目です。妊活の準備段階で一度相談しておくと安心です。
抗生物質を飲み終わったら、すぐ性交渉してよいですか?
治療が完了し、パートナーの治療も終わるまでは控えるか、コンドームを使用してください。自己判断で再開すると、再感染や、まだ治っていない相手へうつすおそれがあります。
治ったかどうかは、どうやって確認しますか?
治療終了から3週間以降に、核酸増幅検査(PCRなど)で再検査して確認します。血液の抗体検査は過去の感染の手がかりにはなりますが、治ったかどうかの判定には使えません。
市販のペニシリン系の薬で治せますか?
クラミジアにはペニシリンなどのβラクタム系の抗菌薬は効きません。マクロライド系などの適切な薬を、医師の診断のもとで使用する必要があります。自己判断での内服は避け、受診してご相談ください。
まとめ
クラミジア感染症は、国内で最も多い性感染症でありながら、自覚症状がほとんどないまま進行しやすい病気です。放置すると卵管などに炎症が広がり、将来の不妊や子宮外妊娠の原因になることがあると報告されています。だからこそ、無症状のうちに見つけて治療することにこそ意味があります。治療は適切な抗菌薬で行い、パートナーと一緒に治すこと、治療後3週間以降に治癒を確認することが大切です。
「おりものが気になる」「パートナーが心配」「妊娠を考えている」——どんなきっかけでも構いません。レディースクリニックなみなみでは、検査から治療、パートナーへの受診のご案内まで、プライバシーに配慮しながらサポートしています。検査は体への負担が少なく、結果に応じて適切な治療をご提案します。気になることがあれば、一人で悩まず、どうぞお気軽にご相談ください。
執筆者兼監修者プロフィール
東大産婦人科に入局後、長野県立こども病院、虎の門病院、関東労災病院、東京警察病院、東京都立豊島病院、東大病院など複数の病院勤務を経てレディースクリニックなみなみ院長に就任。
資格
- 医学博士
- 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
- FMF認定超音波医
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参考文献
- 病気がみえる vol.9 婦人科・乳腺外科 第2版(MEDIC MEDIA, 2018)
- 日本性感染症学会「性感染症 診断・治療ガイドライン2020」
- 日本産科婦人科学会「産婦人科診療ガイドライン 婦人科外来編2023」