レディースクリニック なみなみ

AMH検査とは?妊娠の可能性を知るための重要な指標を徹底解説

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クリニックなみなみ 院長 叶谷愛弓

執筆者兼監修者プロフィール

レディースクリニックなみなみ
院長 叶谷愛弓

東大産婦人科に入局後、長野県立こども病院、虎の門病院、関東労災病院、東京警察病院、東京都立豊島病院、東大病院など複数の病院勤務を経てレディースクリニックなみなみ院長に就任。

資格

  • 医学博士
  • 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
  • FMF認定超音波医
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AMH検査は採血のみで行えるシンプルな検査で、生理周期の影響を受けにくいため基本的にはいつでも受けることが可能です。結果は数日~1週間程度で判明し、値を専門医が評価することで現在の卵巣の状態を評価します。妊娠を希望する方だけでなく、「将来のために自分の卵子の残り数を知っておきたい」という方にも役立つ検査です。

それでは、AMH検査で具体的に何がわかり、どのように活用できるのかを詳しく解説していきます。

AMHについて

AMH検査とは

「AMH検査」とは、血液中のAMH(抗ミュラー管ホルモン)値を測定する検査です。AMHは卵巣内で育ちつつある卵胞から分泌されるホルモンで、その濃度によって卵巣に残っている卵子の数(卵巣予備能)の目安がわかります。女性は生まれたときに持っている原始卵胞(将来成熟する卵子のもと)は加齢とともに減少し、AMH値も思春期をピークに年齢とともに少しずつ低下していきます。この検査によって、自分の卵巣年齢や将来の妊娠の可能性を把握することができます。

AMH検査によって得られる主な情報は、「卵巣予備能」、つまり現在卵巣にどのくらいの卵子が残っているかの推定値です。この値から妊娠の可能性との関係卵巣の予備能の評価、さらには不妊治療への活用について知ることができます。それぞれ詳しく見てみましょう。

妊娠の可能性との関係

AMH値は卵子の残存数を反映するため、一般的に値が高いほど卵子の数が多く、値が低いと卵子の数が少ないことを意味します。卵子の数が多ければ妊娠できる期間も長い傾向がありますが、AMH値が高いからといって必ずしも妊娠しやすいとは限りません。一方、値が低くても必ずしも自然妊娠ができないわけではありません。

実際の研究でも、AMH値が低い女性でも一定期間内の妊娠率が必ずしも低下しないことが報告されています。また、低AMH(例えば1ng/mL未満)の女性は通常範囲のAMH値の女性に比べて自然妊娠の確率がやや低下するという報告もありますが、その差は僅かであるとされています。つまり、AMH値は妊娠「しやすさ」の一部を示す指標ではありますが、決定打ではないのです。

なぜなら、妊娠には卵子の(染色体の正常さや受精能力)や精子の状態、子宮の環境、排卵やホルモンバランスなど様々な要因が影響するからです。AMH検査で卵子の「量」の目安はわかりますが、「質」は反映されません。したがって、AMH値が一つの目安にはなるものの、この数値だけで将来の妊娠の可能性が確定するわけではないことに注意が必要です。

卵巣の予備能の評価

AMH検査最大の目的は、卵巣の予備能(残りの卵子数)を評価することです。卵巣予備能が高い(卵子数が多い)場合、今後もしばらくは排卵が安定的に続くと考えられます。逆に卵巣予備能が低下している場合、閉経までの残り時間が短くなってきている可能性があります。

AMH値は卵巣年齢の指標とも呼ばれ、自身の年齢に対して卵巣の状態が若いか老化が進んでいるかを知る材料になります。例えば、20代・30代前半の平均的なAMH値は3~5ng/mL前後ですが、同じ年齢でもAMH値が非常に低ければ卵巣の老化が進んでいる可能性があります。また、値が極端に高い場合は多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の可能性も考えられます。

具体的には、AMH値がおおよそ2~6ng/mL程度であれば年齢相応の範囲とされ、妊孕性(にんようせい:妊娠する力)は実年齢相当と考えられます。一方、6ng/mL以上と高すぎる場合にはPCOSのように卵胞数が多すぎる状態が疑われます(月経不順など症状がある場合は専門治療を検討)。2ng/mL未満と低い場合は、同年代の平均より卵子数が少ない可能性が高く、0.5ng/mL未満であれば早発卵巣不全(若年性の卵巣機能低下)の可能性もあります。このように、AMH値から卵巣予備能の程度を把握し、必要に応じて早めに対策を講じることができます。

不妊治療への活用

AMH検査は不妊治療においても重要な指標として活用されています。まず、体外受精(IVF)や顕微授精など高度生殖医療を行う際、AMH値によって排卵誘発の方法や使用する薬剤量の検討材料とします。AMHが高めの方は卵巣刺激に対して卵胞がたくさん育つ可能性があるため、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)を避けるため慎重な投薬計画が必要です。一方、AMHが低い方は強めの刺激を行っても採れる卵子の数が少ない可能性があり、治療回数を増やすことや早めのステップアップ(治療法を変更すること)を検討する材料となります。
「妊娠できる残り期間」をある程度推測し、タイミング法や人工授精から早めに体外受精に進むなど、患者ごとに最適な治療計画を立てやすくなると言われています。

AMH検査の費用と保険適用について

AMH検査を受けるにあたり、気になるのはその費用や保険が使えるかどうかではないでしょうか。ここでは、AMH検査の大まかな費用の目安保険適用の有無について説明します。

費用の目安

AMH検査の費用は受診する医療機関や地域によって多少異なりますが、自費診療(保険適用外)の場合、一般的な相場は5,000~8,000円前後です。この金額には採血代や検査解析費用が含まれます。プレコンセプションチェックや妊活のために自主的にAMHを測定する場合、多くはこの自費扱いとなります。

一方で、不妊治療の一環として医師が必要と判断した場合には、条件付きで保険が適用されるケースがあります。例えば、体外受精など高度不妊治療を行う目的でのAMH測定は保険適用となり、自己負担3割で受けられます。保険適用となった場合、患者さんの負担額は医療機関にもよりますが1,500~2,000円程度(3割負担の場合)と大幅に安くなります。

2024年の制度改定により、体外受精に進んでいない一般不妊治療の段階でも、6ヶ月に1回はAMH検査が保険で受けられるよう拡大されました。このため、不妊症と診断され治療中の方であれば、タイミング法や人工授精の段階からでも保険でAMH検査が受けられる可能性があります。

保険適用の有無

基本的な考え方としては、「不妊治療の必要性があると医師が判断した場合」には保険で行える可能性があるということです。

具体的には、2022年4月以降の不妊治療の保険適用拡大により、女性の年齢が43歳未満で不妊治療を開始する場合、AMH検査が治療方針決定の目的であれば保険適用が認められました。さらに2024年6月からは、体外受精に進んでいない一般不妊治療の段階の患者さんについても、半年に一度まで保険でAMH検査を受けられるようになっています。このように公的保険の適用範囲が拡充されつつあるため、以前より経済的負担を抑えて検査を受けられるケースが増えています。

一方で、ブライダルチェックや卵子凍結希望者のスクリーニング目的など、不妊治療とは直接関係ない目的でAMH検査を希望する場合は保険が使えません。

AMH検査はどこで受けられる?

医療機関で検査

AMH検査は基本的に産婦人科クリニックや不妊治療専門クリニックで受けることができます。

初めて受ける場合は、不妊治療の経験が豊富なクリニックやレディースクリニックを選ぶと安心です。医師が結果をもとに今後のアドバイス(例えば「卵巣年齢がやや高めなので早めの妊活を」など)をしてくれます。また最近では、自治体や企業が実施する妊活セミナーブライダルチェックの一環としてAMH検査を提供しているケースもあります。

検査キット

忙しくて病院に行く時間が取れない場合や、気軽に自宅で調べてみたいという方向けに、郵送型のAMH検査キットも登場しています。これは自宅で指先から少量の血液を採取し、指定の検査機関に送付することでAMH値を測定できるサービスです。日本初の卵巣年齢セルフチェックキット「F check」などが代表例で、価格は2万円前後でやや高めですが、自宅で完結できる手軽さがあります。

検査キットを利用する場合でも、結果は数日から1~2週間ほどでオンラインなどで確認でき、医師のコメント付きでフィードバックされるサービスもあります。ただし、キットによる自己検査はあくまで現状を知る目安です。結果が気になる場合は最終的に医療機関で再検査したり、専門医に相談したりすることをおすすめします。

経口避妊薬(ピル)を服用中の方は、キットの説明にもあるように服用を中断して1ヶ月以上経ってから検査をする必要があります。ピル等のホルモン剤は一時的にAMH値を低下させることが知られており、正確な値を得るために間隔をあけることが推奨されます。

AMH検査を受けるベストタイミングと年齢別の平均値

AMH検査は基本的にいつ受けても結果に大きな差が出ないとされています。これはAMH値が月経周期に左右されにくいホルモンだからです。しかし、強いて言えば検査を受ける年齢的なタイミングや、知っておきたい年齢別の平均値について理解しておくと、自分の結果をより客観的に捉えられるでしょう。

年齢によるAMH値の変化

女性の卵巣内の卵子数は年齢とともに減少していくため、AMH値もそれに伴って徐々に低下します。一般に20代前半~半ばでAMHはピークに近い値を示し、その後はゆるやかに下降し、35歳前後から低下のスピードが速まると言われます。閉経に近づく40代後半ではAMHはほぼ検出されないレベルまで下がります。

  • 20代前半~20代後半: 平均約4~5 ng/mL程度(ピーク値)
  • 30代前半: 平均約3~4 ng/mL
  • 30代後半: 平均約2 ng/mL台
  • 40~42歳: 平均約1 ng/mL台
  • 43歳以上: 1 ng/mL未満が多い

重要なのは、「同じ年齢でも個人差が非常に大きい」という点です。したがって、平均値はあくまで目安として捉え、自分のAMH値が年齢相応かどうかの参考にしましょう。

理想的なAMH値

「理想的なAMH値」と聞くと、多ければ多いほど良いように思うかもしれません。しかし、AMHには適正な範囲があり、人によって最適値は異なります。基本的には年齢相応の範囲内にあることが望ましいとされます。

具体的には、20~30代で2~6 ng/mL程度のAMH値であれば概ね安心材料と言えるでしょう。この範囲であれば卵巣年齢は実年齢相当で、特段の異常はないと考えられます。一方、6 ng/mL以上の高値は前述したPCOSの可能性もあるため、生理不順など症状がある場合には注意が必要です。逆に2 ng/mL未満は卵巣予備能が低下気味である可能性があります。特に若いのに極端に低い場合(例えば20代で1未満など)は、早めに婦人科で相談し将来の妊娠計画を立てた方が良いでしょう。

自分の年齢の中央値に近い値であればひとまず安心と言えます。値だけに一喜一憂せず、必要なら専門家とともに解釈するようにしましょう。

AMHが低い場合の対処法

不妊治療の検討

AMHが低いと判明した場合、年齢や状況によっては早めに不妊治療を検討することが選択肢の一つです。特に「まだ若いから大丈夫」と思っていた方が予想外に低い値だった場合、妊娠を望むタイミングを前倒しにしたり、専門クリニックで詳しい評価を受けたりすることをおすすめします。

具体的には、タイミング法や人工授精など比較的体への負担が少ない治療から開始しつつ、必要に応じて体外受精へのステップアップを検討します。AMH値が著しく低い場合、卵巣予備能がさらに低下する前に体外受精で卵子を確保しておく方が良いケースもあります。医師と相談し、どの段階から治療を始めるかを決めましょう。

また、卵子凍結(卵子の保存)も低AMHの場合に検討されることがあります。現時点ですぐ妊娠を希望していなくても、将来に備えて若いうちに卵子を凍結保存しておくという選択肢です。卵子は若いほど質が良く、数も確保しやすいので、卵巣予備能が残っているうちに保存することで、将来の妊娠の可能性を残しておくことができます。ただし費用や手間もかかるため、カウンセリングを受けて慎重に判断しましょう。

サプリメントなど

「AMHを上げるサプリ」「卵巣機能に効く漢方」などの情報も見られますが、現時点でAMH値自体を明確に改善できるサプリメントや漢方薬はないとされています。卵子の数は女性が一生のうちに持てる分が出生時にほぼ決まっており、特殊な治療や生活改善でその数自体を増やすことはできないためです。

ただし、卵巣機能が低下した人に対して、妊娠率向上を目的にDHEA(デヒドロエピアンドロステロン)というサプリメントを用いる試みや、コエンザイムQ10など抗酸化作用のあるサプリを卵子の質改善目的で摂取するケースはあります。DHEAは副腎ホルモンの前駆物質で、一部の研究では服用により採卵できる卵子数や胚の質が向上したとの報告があります。しかし、効果には個人差があり、誰にでも有効とは限らないため、自己判断での摂取は避け、できれば医師に相談してください。

AMH検査についてよくある質問

ピルを服用しているとAMH値に影響はありますか?

ピルなどのホルモン避妊薬はAMH値に影響を与えることが知られています。具体的には、ピル服用中のAMH値は一時的に低めに出る傾向があります。研究によれば、ピルを内服している女性のAMH値は非服用時に比べて平均で20~30%程度低下するとのデータがあります。そのため、ピルを長期間服用している場合、AMH検査を行っても本来の卵巣予備能より低い値が出てしまう可能性があります。正確な評価のためには、可能であればピルの服用を中止して1~2ヶ月経過した時点でAMH検査を受けることが望ましいでしょう。

AMH検査の結果が悪かったら妊娠できないのでしょうか?

AMH値が低いということは卵子の残り数が少ないことを意味しますが、逆に言えば「まだ少ないながらも卵子は残っている」ということです。妊娠には排卵される卵子が一つあれば成立し得ますので、たとえ卵子の在庫が少なくても毎月排卵が起きているうちは自然妊娠のチャンスがあります。実際に、AMH値が非常に低い(例えば0.1~0.2ng/mL台)といった女性でも自然妊娠・出産に至った例は珍しくありません。

急激に激しい下腹部の痛みが発生した場合、どうすれば良いですか?

急に激しい痛みが起こり、吐き気、発熱、意識の混濁などの症状が伴う場合は、虫垂炎、卵巣捻転、尿管結石など緊急性の高い疾患が疑われます。自己判断せず、すぐに救急外来などを受診してください。早期の診断と治療が重要ですので、異常を感じたら速やかに医療機関へ相談してください。

まとめ:AMH検査で妊娠への不安を解消し、将来の計画を立てましょう

AMH検査は、自分の卵巣にどれだけの卵子が残っているかを知る手がかりとなる重要な検査です。妊娠適齢期の女性にとって、将来の妊娠計画を立てる上で「卵巣年齢を把握する」ことは大きなメリットになります。たとえ今すぐ妊娠を望んでいなくても、AMHの数値を知っておくことで体のタイムリミットを意識し、ライフプランを前向きに考える材料にできるでしょう。

レディースクリニックなみなみではAMH検査結果を踏まえ、あなたの気持ちに寄り添いながら今後の選択肢を一緒に考えます。早め早めの情報収集と行動が、将来「知らなかった…」「もっと早くしておけば…」と後悔しないためのポイントです。

AMH検査を上手に活用して、漠然とした不安を具体的なプランに変えていきましょう。 自分の卵巣の状態を知ることは決して怖いことではなく、未来の自分へのエールです。適切な知識とサポートを得て、納得のいく人生設計・妊活計画を立てていきましょう。

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