妊娠すると女性の身体にはいろいろな変化が現れます。
特におりものが変化したことから妊娠を疑ったり、妊娠初期のおりものの変化が異常なのか普通のことなのか不安になったりといった相談が多いです。
妊娠以外にもおりものの状態が変化することがあり、場合によっては感染症が原因の場合もあります。
本記事では、妊娠初期のおりものの特徴を生理前と比較し、また妊娠以外で生じるおりものの変化についてまとめました。
おりものがいつもと違う、妊娠したか不安といった場合は参考にしてください。
おりものの特徴と働きを解説
①:おりものとは?
おりものは医学的には帯下(たいげ)と言います。
卵管から腟前庭にかけて、の分泌液が排出されてくるものです。汗腺、皮脂腺、バルトリン腺といった分泌や、卵管や子宮頸管からの粘液が働きを終えて体外に排出されていくものです。正常でも生じるものです。これらはエストロゲンの影響を強く受けているため、生理周期や妊娠によるホルモンバランスの変化で性質が変化します。
正常のおりものは少し甘酸っぱい匂いがあり、すこしだけ白みがかったような色の状態が一般的に正常です。
②:自浄作用がある?
腟、腟前庭部はこれらの分泌物と常在菌といって正常でも腟内の環境のバランスを整えてくれている善玉菌のデーデルライン桿菌(かんきん)が酸性に保ってくれることで、外部からその他の細菌が侵入しないように調整されています。
デーデルライン桿菌が乳酸を作り出している作用によってこの環境が保たれています。
③:受精のサポート
エストロゲンの量が増加する排卵期にはおりものの量が増え、性状も少しサラサラした感じに変化します。この変化が起きることで精子の侵入を助ける上に、細菌の侵入を防いでいます。
見た目も透明でよく伸びる感じがあります。
おりものは女性ホルモンの影響で変化する
①:妊娠による変化
妊娠初期からエストロゲンの量は妊娠していない時期に比較すると増加している状態が継続します。エストロゲンの増加によって、おりもの自体の量も増加し、排卵期と同じように少し白っぽくさらっとてよく伸びるような性状が続きます。着床後に少し出血することもあり、その時には胎児に影響があるわけではないですが、おりものも少しピンク色から褐色に変化したりする場合もあります。においは酸っぱくなることが多いです。
②:生理周期による変化
エストロゲンの減少に伴って、量が減少し粘り気はさらに強くなり色調も少し黄色っぽい感じに変化します。生理前から、経血が混じることでピンク色になることもあります。においは酸性度が増すので酸っぱくなります。
③:加齢による変化
40代からエストロゲンの量が徐々に減少していくにつれ、おりものの量も徐々に減少していきます。閉経後には極端におりものの量は少なくなり、一般的に閉経から3年程度経つとおりものもほぼなくなります。
注意が必要なおりものの特徴は?
妊娠によるおりものの変化は劇的には変化しないと思ってもらって良いです。上記で説明した通りで量の増加、性状がサラサラに、匂いが少しキツくなる程度です。以下に挙げる変化は妊娠によるおりもの変化ではあまり見られないのでその場合も早めに検査を受診しましょう。
①:白くボロボロしたおりもの
少し白くなる変化は排卵期などにも起こりますが、ポロポロした感じには要注意です。カンジダ症が考えられます。
ただし腟カンジダ症は性感染症とは限りません。免疫力が低下したり、洗浄を行いすぎたりすると腟環境のバランスが悪くなって、カンジダ症になります。妊娠初期にも胎児のために免疫力が低下するためカンジダになることが少なからずあります。
②:黄・黄緑・茶色のおりもの
淋菌感染症の可能性があります。女性は自覚症状を起こさないことがあるので注意が必要です。
淋菌感染症の場合はおりものの量も普段よりは増加することが多いです。感染した状態での性交渉では3割弱が相手に感染させてしまうほど感染力が高いので疑わしい時は必ず検査してくださいね。
クラミジア感染症の可能性があります。
クラミジア感染症では一般的におりものの量が増えて、排尿時や性交時に疼痛が生じます。しかし症状がない人もいるのでおりものの変化だけでもクラミジア感染症の可能性は十分あるのです。男女ともに将来的に不妊の可能性にもなったりするので早めに治療を受けましょう。
③:灰色っぽくて生臭いおりもの
魚のにおいのようなものはアミン臭とよびます。細菌性膣炎に特徴的なにおいです。
炎症が起きているわけではなく、疼痛や痒みなどはあまりないことが多いです。デーデルライン桿菌の働きが低下して、酸性環境が崩れると最近感染が起きてしまいます。性交渉の後なども精液でアルカリ性になりやすいため、細菌性膣炎が起こりやすくなります。
④:緑・黄・茶色で泡立つ、においがきついおりもの
泡立つようなおりものの場合にはトリコモナスという原虫に感染して起こるトリコモナス症の可能性があります。すこしにおいます。
性感染症ではなく、公衆浴場などでも映ることもあるため、性交渉がなくてもおりものに変化がある場合はこちらが考えられるかもしれません。症状としてはかゆみを伴うことが多いです。
⑤:水っぽいおりもの
クラミジア感染症の可能性があります。
クラミジア感染症では一般的におりものの量が増えて、排尿時や性交時に疼痛が生じます。しかし症状がない人もいるのでおりものの変化だけでもクラミジア感染症の可能性は十分あるのです。男女ともに将来的に不妊の可能性にもなったりするので早めに治療を受けましょう。症状としてはかゆみを伴うことが多いです。
⑥:茶褐色・黒褐色のおりもの
閉経後に多いです。卵巣機能低下によってエストロゲンが減少することで起きる変化です。卵巣摘出などを行った後にもエストロゲンの量が減少しますので似たような症状が起きます。腟内でデーデルライン桿菌が働きにくくなってしまうため、酸性の環境が崩れ、細菌感染を虹的に起こしやすくもなってしまいます。
この時期にはホルモン療法や、レーザー治療などで腟環境を改善することもできるので我慢は不要です。
当院の性感染症の症状解説のページはこちら
おりものの変化には要注意!
この時期の変化は匂いが変でもホルモンバランスによる変化で問題がないので通常心配はないのですが、細菌性膣炎の可能性もあるため注意は必要です。心配であれば産婦人科で検査を行いましょう。
妊娠中は赤ちゃんのために免疫力が低下するためガンジダ膣炎になりやすいです。
これらの変化は検査しないとわからないので我慢せず産婦人科に相談してください。
おりもの以外の妊娠初期症状とは?
妊娠初期にはおりもの以外にもホルモンバランスの変化によって様々な症状が出ます。
代表的な症状をいかに列挙しておきます。
①:おりものの量・色・状態がいつもと違う
②:腹痛や張りなど腹部の違和感がある
③:少量の出血がある
④:眠気が強い・常に眠い
⑤:倦怠感や頭痛がある
⑥:便秘や下痢が増える
⑦:頻尿になる
⑧:食欲が異常にある/なくなる
⑨:口内炎や肌荒れが増える
⑩:においを過敏に感じるようになる
⑪:胃もたれや吐き気が増える
⑫:胸が張る/ちくちくと痛みを感じる
⑬:むくみが出る
⑭:情緒が不安定になる
⑮:イライラしたり気分が落ち込んだりする
⑯:熱っぽい
⑰:ふらつきやめまいを感じる
⑱:むくみやすくなる
⑲:体温が高くなる
⑳:唾液・鼻水が増える
㉑:腰痛がある
㉒:生理が始まらない
おりものがいつもと違うときの対処法
おりものの変化は検査しないとわかりません。産婦人科で検査をしてもらいましょう。
感染が疑われなくて、妊娠初期のおりものの正常な変化の場合はおりもの自体の検査は行わない場合もありますが、妊娠時に感染症があると後々母体と胎児へ影響があるリスクがあるため、おりものも検査することが多いです。
検査自体は綿棒で拭ったものを培養検査に出すだけですので、痛みもないですしすぐに終わります。
妊娠による変化ではなく、感染症だけであると判断される場合は検査結果が出る前に内服薬で治療を開始することもあります。
妊娠初期のおりものに関するよくある質問
妊娠初期におりものが全くない/少なくなることはある?
これはほとんどありません。むしろ妊娠初期には必ずホルモン量が増加しているのでおりものは基本増加します。おりものの量が普段から多めの人で変化に気づきにくい人はいます。
妊娠初期のおりものの変化はいつまで続く?
妊娠中はしていない時と比較するとずっと量が多い状態が継続します。
さらさらした性状で量も増えるため、おりものシートなどで対応される方が多いです。
おりものが不快なときはどうしたらいい?
生理用品、おりものシートなどをうまく使用しましょう。吸収ショーツなども最近多く販売されていますが、ショーツ内での雑菌の繁殖が問題になることが多いのであまりお勧めしません。こまめにシートなどを変えるのが一番良いです。
まとめ:おりものがいつもと違うときは医師に相談しましょう
妊娠かな?おりものに変化があると思った場合には迷わず産婦人科を受診しましょう。
妊娠による変化なのか、感染症による変化なのかは実は非常にわかりにくいです。
また、おりものの量や性状は人によって差があるものなので自分だけと思わずに専門家に相談してみてくださいね。
おりもの自体はまったく悪いものではないですし、その量や性状には個人差があります。
ホルモンバランスや、デーデルライン桿菌のバランスなどで常に変化はするものです。普段と明らかに違う変化を伴った場合には要注意ですので産婦人科で相談をしましょう。