
執筆者兼監修者プロフィール
東大産婦人科に入局後、長野県立こども病院、虎の門病院、関東労災病院、東京警察病院、東京都立豊島病院、東大病院など複数の病院勤務を経てレディースクリニックなみなみ院長に就任。
資格
- 医学博士
- 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
- FMF認定超音波医
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- 産後の尿もれ(尿漏れ)は珍しくなく、約3割の女性に起こります。主な原因は出産による骨盤底筋のゆるみや損傷、神経へのダメージなどです。
- 多くの場合、産後数週間~数ヶ月で自然に改善し、90%以上の方は1年以内に症状が軽快します。しかし個人差があり、一部では1年以上続くケースもあります。
- 骨盤底筋トレーニング(ケーゲル体操)を毎日続けることで、尿もれの改善が期待できます。適切に行えば症状が約50~70%改善するとの報告もあります。
- さらに当院で実施しているインティマレーザー治療(レーザーによる膣治療)や、エムセラ(電磁刺激による骨盤底筋トレーニング機器)などをできるだけ早期に用いると、高い改善効果が得られます。
- 産後3ヶ月を過ぎても尿もれが続く、日常生活に支障がある場合は早めにご相談ください。適切な治療介入によって将来的な悪化を防ぎ、快適な生活を取り戻せます。
産後、くしゃみや咳の拍子に思わず尿が漏れてしまい、「このままずっと治らないの?」「私だけかな?」と不安になる方も多いですよね。出産後のデリケートなお悩みは人に相談しにくく、一人で抱え込んでしまいがちです。しかしご安心ください。結論から言えば、産後の軽い尿もれはよくある症状で、ほとんどの場合は時間とともに改善します。 実際、産後直後~数日間に尿もれを経験する女性は約3割おり、その多くは産後数ヶ月以内に自然に良くなっていきます。産後に体が回復する過程で、徐々に骨盤底の筋肉や靭帯の張りが戻り、膀胱や尿道を支える力が回復してくるとともに、尿もれも改善していくケースが大半です。とはいえ、すべての方が完全に自然治癒するわけではなく、中には産後半年~1年を過ぎても尿もれに悩まされるケースもあります。特に症状が強い場合や長引く場合は、早めに適切な対策を講じることが大切です。本記事では、産後の尿もれが起きる原因や症状の自然経過、そして改善するための具体的な方法について、産婦人科専門医の視点から詳しく解説します。産後の尿もれに悩む方が一日も早く安心して過ごせるよう、ぜひ参考にしてくださいね。
産後に尿もれが起きる原因とは?
産後の尿もれの主な原因は、妊娠・出産による骨盤底のダメージです。 妊娠中、胎児の成長とともに大きくなる子宮を支えるため、骨盤底筋群や靭帯に大きな負荷がかかります。さらに出産直前にはエストロゲンやリラキシンといったホルモンの作用で骨盤の靭帯がゆるみ、赤ちゃんが産道を通りやすいよう体が変化します。こうした妊娠中からの骨盤底のゆるみに加え、実際の分娩時には赤ちゃんが産道を通過する圧力によって、骨盤底筋群やその周囲の組織(膀胱や尿道を支える支持組織)が大きく伸展・損傷します。特に経腟分娩(自然分娩)の場合、赤ちゃんの頭が骨盤底を押し広げる際に尿道周囲の筋肉や神経が圧迫されて損傷を受け、出産後に尿道を締める力(括約筋機能)が一時的に低下してしまいます。その結果、咳やくしゃみ、赤ちゃんの抱っこなどでお腹にグッと力が入ったときに尿が漏れやすくなるのです。これは医学的に腹圧性尿失禁と呼ばれるタイプの尿もれで、産後の女性によくみられます。
一方、分娩方法が帝王切開であった場合は骨盤底へのダメージが比較的少ないため、経腟分娩に比べて産後の尿もれリスクは低くなります。実際、帝王切開は産後の尿失禁に対する保護因子であると報告されています。しかし、妊娠中に骨盤底にかかった負荷や出産後のホルモン変化は帝王切開でも存在するため、帝王切開で出産しても尿もれが全く起こらないわけではありません。 加えて、妊娠・出産前から骨盤底の筋力が弱い方や、年齢(高齢出産)による組織の脆弱性がある方は、帝王切開後でも尿もれを経験する可能性があります。
また、産後に起こる尿もれには、腹圧性尿失禁だけでなく切迫性尿失禁(尿意を感じてトイレに行くまでに漏れてしまうタイプ)が含まれる場合もあります。出産に伴う骨盤内の神経機能の一時的な乱れや、膀胱粘膜の萎縮(授乳によるエストロゲン低下など)が原因で膀胱そのもののコントロールがうまくいかなくなり、急に尿意を催して間に合わないといった症状が起こることがあります。産後は腹圧性と切迫性が混在した「混合性尿失禁」になるケースも少なくありません。 特に産後すぐは骨盤底筋も弱り膀胱の知覚も過敏になりがちなので、くしゃみでも漏れるしトイレも近い、といった二重の悩みを抱えることもあります。
さらに、産後の尿もれが起こりやすくなるリスク要因として、出産時の状況や母体の背景も知られています。具体的には、
- 巨大児の出産(赤ちゃんの体重が4kg以上)
- 難産や分娩時の医療介入(吸引分娩・鉗子分娩による産道損傷、会陰切開による組織ダメージ)
- 分娩時間の長時間化(特にいきみ時間が長引くと神経へのダメージが蓄積します)
- 経産婦であること(出産回数が多いほど骨盤底へのダメージの累積があります)
- 高齢出産(一般に35歳以上。加齢により組織の弾力が低下し回復力も落ちるため)
などが挙げられます。つまり、出産による骨盤底への物理的ストレスが大きいほど、また回復力が低下する要因を持つほど、産後の尿もれは起こりやすくなります。
産後の尿もれ、いつまで続く?自然経過について
産後の尿もれの多くは時間の経過とともに自然に改善します。 個人差はありますが、産後直後にみられる尿もれは日を追うごとに軽減し、産褥期(産後6~8週)を過ぎる頃にはかなり落ち着くケースが一般的です。実際、「大きくなった子宮やゆるんだ靭帯は産後元に戻り、90%以上の妊産婦の尿失禁は1年以内に軽快する」という報告もあります。別の調査では、妊娠中に尿もれがあった女性のうち産後1年まで尿もれが持続した人は約5%程度だったともされています。このように軽度の尿もれであれば産後数週間〜数ヶ月で自然に治ることが多く、1年後まで残るケースはごく一部です。
とはいえ、産後の尿もれが改善するスピードや最終的に症状が消失するかどうかは、人それぞれの回復力や骨盤底の状態によります。出産から数ヶ月経っても骨盤底筋の緩みが十分に改善しない場合や、上述したようなリスク要因がある場合、尿もれ症状が長引くことがあります。産後3ヶ月を過ぎても日常的に尿もれが続くようであれば、自然に治る可能性は低くなると考えましょう。 実際、産後3ヶ月の時点で尿失禁があった女性の約73%は、その6年後も何らかの尿失禁症状が持続していたとの報告があります。このデータは、産後早期に残った尿もれを放置すると、そのまま慢性化し中高年になっても悩まされる可能性が高いことを示唆しています。
以上のことから、産後の尿もれがなかなか改善しない場合は早めに対策を取ることが重要です。 産後1~2ヶ月の段階で少しずつ良くなっているのであれば経過観察でもよいですが、産後3ヶ月を過ぎても大きな改善が見られなかったり、むしろ悪化している場合は、積極的に治療やトレーニングを取り入れていきましょう。その際、次に述べるような骨盤底筋トレーニングなどのセルフケアをまず行い、それでも難しければ医療機関で専門的な治療を検討するのが理想です。早めに対処することで、産後の育児生活を快適に過ごせるだけでなく、将来の尿失禁悪化(例えば更年期以降の腹圧性尿失禁や骨盤臓器脱)の予防にもつながります。
産後の尿もれを改善する方法
産後の尿もれを改善するために有効な方法として、以下のようなアプローチがあります。
骨盤底筋トレーニング(骨盤体操)
骨盤底筋トレーニングは、自分でできる最も基本的な尿もれ改善法です。出産で弱ってしまった骨盤底の筋肉を鍛え直すことで、膀胱や尿道を支える力を高め、尿もれを起きにくくします。【骨盤底筋トレーニングの目的】は、緩んだ骨盤底筋を引き締めて、尿道括約筋のサポート力を向上させることにあります。
やり方は難しくありません。肛門や膣を「キュッと締める」動きを繰り返すだけです。お尻や太ももの力は使わず、肛門・膣まわりだけを意識して締めるのがコツです。イメージが掴みにくい場合は「オナラを我慢する」「尿を途中で止める」感覚を思い出すと良いでしょう。実際の排尿中に尿を止めてみるのは最初の一回だけにして、コツが掴めたら排尿とは関係ない時に運動してくださいね。具体的には、息を吐きながら肛門と膣をギューッと5秒程度締め、その後ゆっくり緩めるという収縮運動を繰り返します。これを1セット10回程度、朝昼晩など1日数回行いましょう。初めはうまく力を入れられなくても大丈夫です。毎日続けることで少しずつ筋力が戻り、産後数ヶ月かけて徐々に改善が感じられるはずです。
産後すぐは会陰切開の傷や筋肉痛で痛みがあるかもしれませんが、痛みが落ち着いたらできる範囲で早めに始めることをおすすめします。 入浴後や就寝前などリラックスした状態で行うと筋肉を意識しやすいでしょう。骨盤底筋トレーニングは場所を選ばず座ったままでも横になってでもできますので、赤ちゃんのお世話の合間に「ながら運動」として取り入れてみてください。ポイントは毎日コツコツ継続することです。一度に長時間やる必要はありませんので、スキマ時間に何度も思い出して行う習慣をつけましょう。
この骨盤底筋トレーニングは産後の尿失禁に対する第一選択の治療法でもあります。ガイドラインでも産後の女性にはまず骨盤底筋訓練を指導するよう推奨されており、その効果は多くの研究で支持されています。適切に行えば、腹圧性尿失禁の女性の約50~70%で症状の改善がみられたとの報告もあります(骨盤底筋訓練のみで完治するケースも少なくありません。逆にトレーニングを怠ると、潜在的な骨盤底の弱さが残ったままとなり、更年期以降に再度尿もれに悩まされるリスクが高まります。そういった意味でも、産後の今の時期にしっかり骨盤底を鍛えておくことは将来の自分への投資になります。
インティマレーザー治療とは?
骨盤底筋トレーニングは有効ですが、「自分で頑張って鍛えてみたけれど効果が感じられない」「根本的にゆるんだ組織を引き締めたい」という場合には、インティマレーザー治療という選択肢があります。当院でも導入しているこの治療は、特殊なレーザーを膣内および外陰部に照射し、組織の再生を促すことで尿もれを改善するものです。
具体的には、Fotona社のEr:YAG(エルビウムヤグ)レーザーを膣の中全周に照射します。レーザーの熱刺激により膣粘膜のコラーゲン生成が活性化され、萎縮した組織が厚みと弾力を取り戻します。膣壁がふっくら厚くなることで膣のゆるみが改善し、それと同時に膣壁に隣接する尿道周囲の支持組織も強化されます。その結果、尿道が締まりやすくなり、尿失禁の症状が軽減されるという仕組みです。いわば、出産で伸びきってしまった骨盤底の組織に「レーザーでハリを与える治療」と言えるでしょう。
インティマレーザーの長所は、メスを使わない切らない治療であることです。施術時間はわずか15~30分程度、麻酔の必要もなく、施術中の痛みもごく軽い温熱感を感じる程度です(個人差はありますが、多くの方は「少し温かさを感じる」くらいで終わります)。従来の膣レーザー治療(CO2レーザーなど)に比べて表面を傷つけない非侵襲的アプローチのため、ダウンタイム(回復に要する時間)がほとんどないのも特徴です。施術直後から普通に歩いて帰宅でき、その日から入浴や日常生活も問題なく送れます。産後の忙しい育児の合間でも受けやすい治療と言えるでしょう。
気になる効果ですが、インティマレーザーは軽度~中等度の産後尿失禁に対して有効であることが、国内外の研究で示されています。 例えば2019年の研究では、エルビウムヤグレーザー治療を受けた女性41人のうち約75%にあたる31人で、6ヶ月後に尿もれ症状の明確な改善が認められました。さらに、レーザー照射後は超音波検査で膀胱頸部(膀胱の出口)の可動性が減少しており、これはレーザーによって尿道の支持構造が強化されたことを意味します。副作用も一時的な軽い違和感程度で、安全で効果的な治療と結論づけられています。こうしたエビデンスから、インティマレーザーは「手術はまだ考えられないけれど積極的に治したい」という産後の尿もれ患者さんにとって有望な選択肢となっています。
なお、インティマレーザーの効果は個人差がありますが、多くの場合1回の施術でも一定の改善が見られます。症状に応じて数ヶ月おきに2~3回程度の施術を行うことで、より安定した効果を得られるとされています。当院でもインティマレーザーの施術実績が豊富にあり、お一人おひとりの産後の状態に合わせて適切にご提案していますので、興味のある方はぜひご相談くださいね。
その他の治療法(薬物療法、物理療法)
骨盤底筋体操やレーザー治療のほかにも、産後の尿もれ改善に役立つ方法はいくつかあります。ここでは薬を使う治療(薬物療法)と、機器を使った治療(物理療法)を簡単にご紹介します。
薬物療法
尿もれの種類に応じて、内服薬や局所薬を用いる方法です。まず、咳やくしゃみで漏れる腹圧性尿失禁に対しては、根本治療となる薬は多くありませんが、海外ではデュロキセチン(商品名サインバルタ等)という薬が使用されることがあります。デュロキセチンは抗うつ薬の一種ですが、神経伝達物質であるノルアドレナリンやセロトニンの再取り込みを阻害する作用を利用して、尿道括約筋の収縮力を高める効果があります。臨床試験ではデュロキセチン投与により尿失禁エピソードの頻度が有意に減少したとの結果が出ています。ただし、副作用として吐き気や眠気などが比較的高頻度に見られ、長期的な安全性の懸念から、日本において産後の腹圧性尿失禁でデュロキセチンを使うことは一般的ではありません(欧州ではストレス尿失禁の適応薬になっています)。一方、急に尿意をもよおして漏れてしまう切迫性尿失禁や、頻尿・尿意切迫感を特徴とする過活動膀胱(OAB) の症状がある場合には、膀胱の過剰な収縮を抑える薬が有効です。代表的なのは抗コリン薬(ベシケア、デトルシトール、ウリトス等)やβ3作動薬(ベタニスなど)で、膀胱の平滑筋に作用して尿意を落ち着かせます。これらは授乳中は母乳への影響を考慮して慎重に判断する必要がありますが、症状が強い場合には産後でも使用可能な場合がありますので、主治医に相談してみましょう。また、産後の授乳期はエストロゲン低下により膣や尿道の粘膜が萎縮しがちです。その結果、尿道周囲の組織支持力が落ちたり膀胱粘膜が過敏になって切迫性の症状が出ることがあります。このような場合には局所用のエストロゲンクリームや膣錠を用いて粘膜の萎縮を改善する治療もあります。低用量であれば全身への移行も少なく授乳中でも使いやすいため、特に産後〜更年期にかけての女性の尿トラブルに広く用いられています。
物理療法(機器によるトレーニング)
自分で行うトレーニングが難しかったり、より集中的に骨盤底筋を鍛えたい場合には、専門の機器を使った物理療法も有効です。近年注目されているのが、椅子に座るだけで骨盤底筋を強化できるエムセラ(EMSella)という装置です。エムセラは高強度焦点式電磁(HIFEM)という技術を用いた治療機器で、椅子の形をした装置に衣服を着たまま腰かけると、骨盤周囲に強力な磁場が発生し、意識せずとも骨盤底筋が収縮します。30分ほど座っているだけで、およそ1回につき約11,000回もの骨盤底筋収縮運動に相当する刺激を与えることができるとされています。自分でケーゲル体操を行うのと比べて、より深部の筋肉まで効率よく収縮させられるため、短期間で筋力アップと尿もれ症状の改善が期待できます。
エムセラの効果も研究で確認されています。産後女性を含む骨盤底機能不全の患者95人を対象に、電気刺激(従来法)と電磁刺激(エムセラ法)の効果を比較した研究では、エムセラによる治療群の方が骨盤底筋力の改善幅が大きく、症状改善の自己評価スコアも有意に高かったと報告されています。客観的な筋電図計測でも、エムセラ群では骨盤底筋の最大収縮力が平均48~59%向上したのに対し、電気刺激群では7~36%の向上に留まったとのことです。このように、エムセラなどの非侵襲的な磁気刺激療法は、産後の弱った骨盤底筋を効率よく鍛え直す画期的な手段といえます。
そのほかにも、専門の理学療法士による骨盤底リハビリテーション(骨盤底筋の動きをセンサーでモニタリングしながらトレーニングしたり、膣や肛門に電極を挿入して電気刺激を与える治療)や、膣に挿入して尿道や膀胱を物理的に持ち上げるペッサリーの装着(骨盤臓器脱の予防や軽減に用いられる器具で、腹圧性尿失禁の症状緩和にも有効な場合があります)など、症状や状況に応じた治療法があります。ただし、これらは専門医療機関での対応が必要ですし、産後すぐの時期であればまず自宅でできる骨盤底筋体操や生活改善を試み、それでも改善しない場合の次のステップとして検討すると良いでしょう。産後の尿もれは恥ずかしいことではなく、決して我慢する必要もありません。最近はこのように多彩な治療法がありますので、つらい症状に悩んだまま育児を頑張りすぎないでくださいね。
まとめ|早めの対策で快適な毎日を
産後の尿もれは決して珍しいことではなく、多くの女性が経験する可能性のある症状です。出産という大仕事を終えた後の体は思っている以上にダメージを受けており、骨盤底筋のゆるみもその一つです。幸い産後の尿もれの大半は時間経過や骨盤底筋トレーニングによって自然と良くなります。多少の尿もれがあっても、「今は身体の回復期間なのだ」と前向きに捉えてください。ただし、生活に支障をきたすほどの尿もれや、時間が経っても良くならない場合は、早めに対策を講じることで育児生活の負担を大きく減らすことができます。骨盤底筋体操を続けても改善しないときは、インティマレーザー治療やエムセラといった最新の治療法を取り入れることで驚くほど症状が軽くなるケースもあります。今や産後の尿もれは我慢せず治せる時代です。
毎日を快適に過ごすために、遠慮なく専門家の力を借りましょう。 私たちレディースクリニックなみなみでも、産後の尿もれに関するご相談を数多く受けており、骨盤底リハビリ指導やインティマレーザー治療などで多くの方が改善されています。産後のデリケートなお悩みも、女性医師・スタッフが親身に対応いたしますので、一人で抱え込まずにぜひご相談ください。早めのケアで、育児をもっと笑顔で楽しめるよう応援しています!
産後の尿漏れに関するよくある質問
産後の尿もれは自然に治るものですか?
はい、多くの場合は時間とともに自然に軽減・改善します。前述の通り、産後すぐに尿もれがあっても産後数ヶ月以内に治まるケースが大半です。実際、90%以上の女性は産後1年以内に尿もれ症状が消失または大幅に改善するとされています。ただし、自然に治るスピードや完治するかどうかには個人差があり、出産でのダメージが大きかった方や骨盤底の回復が遅れている方は、何もしないでいると症状が長引くこともあります。そのため、産後数ヶ月経っても尿もれが続く場合は、自然経過に任せきりにせず次の質問で述べるような対策を検討しましょう。
どのくらい尿もれが続いたら病院に相談すべきでしょうか?
一つの目安は産後3ヶ月です。産後直後の尿もれは珍しくないので、まずは産褥期(6~8週)の間ゆっくり体を休めつつ骨盤底筋体操などを行い経過を見てください。それでも産後3ヶ月を過ぎても明らかな改善が見られない場合は、一度産婦人科や泌尿器科で相談すると良いでしょう。また、3ヶ月を待たずとも、産後すぐから大量の尿が漏れて日常生活に支障を来すような場合(例えばパッドが手放せない、外出もはばかられる程度の尿失禁)は、早めに受診してください。尿もれ自体は命に関わる症状ではありませんが、放置すれば育児のストレスを増やすだけでなく、長期的な骨盤底障害のリスクとなる可能性があります。
帝王切開で出産したのに尿もれするのはなぜですか?
帝王切開は経腟分娩と比べて骨盤底へのダメージが少ないため、尿もれのリスクは低減しますが、それでも妊娠中の骨盤底への負荷や分娩前後のホルモン変化は共通して存在するため、尿もれが起こることがあります。 妊娠中に骨盤底筋や靭帯がかなり緩んでいた場合や、赤ちゃんの体重が大きかった場合、あるいは高齢出産で組織の回復力が落ちていた場合など、帝王切開後でも尿失禁を生じる要因はいくつかあります。実際、初産を帝王切開にしても将来の尿失禁(中高年期の腹圧性尿失禁など)を完全に防げるわけではありません。帝王切開で産んだ方も、産後は経腟分娩の方と同様に骨盤底ケアをしっかり行うことが大切です。
日常生活でできる尿もれ予防・改善策はありますか?
はい、生活習慣を工夫することで尿もれの予防や改善に役立ちます。まず基本は先述した骨盤底筋トレーニングを習慣にすることです。加えて、産後しばらくは極力骨盤底に負担をかけない生活を心がけましょう。具体的には、重い物を持ち上げない、長時間立ちっぱなしや激しい動きを避ける、便秘をしないよう食物繊維や水分を十分摂ってお通じを整える(便秘でいきむと骨盤底に負荷がかかります)、などが大切です。咳やくしゃみが出るときは事前に軽く膣を締めておく癖をつけると漏れにくくなります。体重が増えすぎるとそれだけ骨盤底への圧力が増すため、適度な産後ダイエットで妊娠前の体重に戻す努力も有効です(無理なダイエットは禁物ですが、授乳や軽い運動で徐々に絞っていきましょう)。
産後に治った尿もれが、将来また再発・悪化することはありますか?
残念ながらあり得ます。 産後に一旦は尿もれが治まったとしても、加齢やホルモン変化により将来的に再び症状が出るケースがあります。特に、更年期(閉経前後)の時期は女性ホルモンの低下や筋力低下に伴い、骨盤底の潜在的な弱さが表面化しやすくなります。実際、産後尿もれが改善した女性でも、出産で受けた骨盤底へのダメージが完全には元通りにならず潜在的な脆弱性が残っている人がいて、そうした人は50歳前後で尿失禁の症状が再燃する傾向があります。将来もし尿失禁の症状が出てしまっても、骨盤底筋トレーニングやレーザー治療、手術など選択肢は年代問わずありますので、決して「あの時の出産のせいだ…」と悲観しすぎず、その時はその時で適切に対処すれば大丈夫です。
当院の「インティマレーザー」のページもぜひご覧ください。他の効果や適応についても紹介しています👇️
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執筆者兼監修者プロフィール
東大産婦人科に入局後、長野県立こども病院、虎の門病院、関東労災病院、東京警察病院、東京都立豊島病院、東大病院など複数の病院勤務を経てレディースクリニックなみなみ院長に就任。
資格
- 医学博士
- 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
- FMF認定超音波医
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