執筆者兼監修者プロフィール
東大産婦人科に入局後、長野県立こども病院、虎の門病院、関東労災病院、東京警察病院、東京都立豊島病院、東大病院など複数の病院勤務を経てレディースクリニックなみなみ院長に就任。
資格
- 医学博士
- 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
- FMF認定超音波医
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妊娠初期につらかった「つわり」がようやく落ち着いたと思っていたのに、妊娠後期になって再び吐き気や胃もたれ、胸やけがあらわれる——そんな経験に戸惑う妊婦さんは少なくありません。これは俗に「後期つわり」と呼ばれることがあり、医学用語では「後期妊娠悪阻(あくそ)」と表現されることもあります。初期のつわりとは原因や対処の考え方が少し異なる場合があり、多くは赤ちゃんが下がってきて出産が近づくころに自然と軽くなっていく傾向があるとされています。この記事では、後期つわりとはどのようなものか、考えられる原因や時期、ご自宅でできる対処の工夫、そして受診を考えたほうがよいサインについて、産婦人科の一般的な考え方にもとづいて整理します。なお、症状の感じ方には大きな個人差があり、ここでの内容は一般的な情報です。気になる症状があるときは自己判断せず、かかりつけの医療機関にご相談ください。
この記事でわかること
- 「後期つわり」とは何か、初期のつわりとの違い
- 後期に吐き気や胃もたれが起こりやすいと考えられる一般的な理由
- いつごろまで続きやすいか、軽くなりやすい時期の目安
- ご自宅でできる対処の工夫(食べ方・姿勢・生活面)
- 注意したい症状と、受診を考えるサイン
- よくあるご質問への回答
「後期つわり」とは?初期のつわりとの違い
「後期つわり」は正式な病名ではなく、妊娠後期(おおむね妊娠28週以降)に再びあらわれる吐き気・胃もたれ・胸やけ・げっぷ・みぞおちの不快感などをまとめて指す通称として使われることが多い言葉です。「後期悪阻」「逆つわり」などと呼ばれることもあります。妊娠初期のつわりが一段落して安定期に入り、食欲が戻っていた方が、お腹が大きくなってきたころに再び胃の不調を感じはじめる、というのが典型的な流れです。
初期のつわりと後期つわりでは、症状の出方や背景に違いがあると考えられています。初期のつわりは妊娠初期のホルモン変化が大きく関係しているとされ、空腹時の強い吐き気や、においへの敏感さ、特定の食べ物が受けつけないといった形であらわれやすい傾向があります。一方で後期つわりは、大きくなった子宮が胃を押し上げて圧迫することによる物理的な影響が関わりやすいとされ、食後の胃もたれや胸やけ、少し食べただけでお腹がいっぱいに感じるといった症状として感じられることが多いといわれます。とはいえ症状の感じ方には個人差が大きく、初期と後期で「同じような吐き気」が出る方もいれば、後期にはじめて胃の不快感を感じる方もいます。どちらにも当てはまらない感じ方をすることもあり、一概には言えません。
後期つわりの主な症状
後期つわりとして感じられる症状には、次のようなものがあります。あらわれ方や強さには個人差があり、すべてが出るわけではありません。
- 胸やけ・みぞおちの焼けるような不快感(食後や横になったときに強くなりやすい)
- 胃もたれ・もたれ感(食べたものがなかなか消化されないように感じる)
- 吐き気や、ときに嘔吐
- げっぷ、酸っぱいものがこみ上げる感じ(逆流のような感覚)
- 少し食べただけで満腹になり、たくさん食べられない(早期満腹感)
- 食欲の低下や、特定のにおい・味への敏感さ
これらは多くの場合、体の生理的な変化にともなう一時的な不快感と考えられ、お産が近づくにつれて落ち着いていくことが多いとされています。ただし、後述するように強い症状が続く場合や、ほかの気になる症状をともなう場合には、別の原因がないかを確認するために受診をおすすめします。
後期つわりが起こる原因(一般的に考えられること)
後期つわりがなぜ起こるのか、はっきりと一つに特定できるわけではありませんが、一般的には次のような要因が複合的に関わっていると考えられています。
大きくなった子宮による胃の圧迫
妊娠後期は子宮が大きく上方に広がり、すぐ上にある胃が押し上げられて圧迫されやすくなると考えられています。胃が圧迫されると、入る容量が小さくなって少量で満腹になりやすく、また食べたものが停滞して胃もたれやもたれ感につながりやすいといわれます。横になると圧迫が変化して胸やけを感じやすくなることもあります。
ホルモンの影響による消化のはたらきの変化
妊娠中はホルモンの影響で胃や腸の動きがゆるやかになりやすく、また胃の入り口(噴門)がゆるみやすくなるため、胃の内容物が食道側へ逆流しやすくなる傾向があるとされています。これが胸やけや酸っぱいものがこみ上げる感覚の一因と考えられています。
食事のとり方や姿勢などの生活要因
一度にたくさん食べる、脂っこいものや刺激の強いものをとる、食後すぐ横になる、といった習慣は、胃もたれや胸やけを感じやすくする要因になり得ます。お腹が大きくなって前かがみの姿勢が増えることも、胃への負担に影響することがあります。これらは生活の工夫で和らげられる部分でもあります。
なお、ここで挙げたものはあくまで一般的に考えられている要因であり、感じ方や程度には大きな個人差があります。症状の背景は人によって異なるため、つらいときは自己判断で原因を決めつけず、医療機関にご相談ください。
いつまで続く?軽くなりやすい時期の目安
「後期つわりはいつまで続くのか」は多くの妊婦さんが気にされる点です。一般的には、赤ちゃんが骨盤のほうへ下がってきて、子宮による胃の圧迫がやわらぐ出産間近の時期になると、胃の不快感が軽くなっていくことが多いとされています。出産が近づくにつれて「急に食べやすくなった」と感じる方もいます。
ただし、これはあくまで傾向であり、いつ軽くなるか・どの程度続くかには個人差があります。出産直前まで胃もたれが続く方もいれば、比較的早く落ち着く方もいます。「いつまでに必ず治る」とは言い切れないため、つらさが続くときや日常生活に支障が出るときは、我慢せずにかかりつけ医に相談することが大切です。症状を和らげる工夫や、ほかの原因がないかの確認につながります。
自宅でできる対処法・楽にする工夫
後期つわりの不快感は、食べ方や姿勢などのちょっとした工夫でやわらぐことがあります。すべての方に同じように効くわけではありませんが、無理のない範囲で試してみてください。
少量をこまめに(少量頻回食)
一度にたくさん食べると胃に負担がかかりやすいため、1回の量を減らして回数を増やす「少量頻回食」が役立つことがあります。1日3食にこだわらず、4〜6回に分けて少しずつ食べると、満腹による苦しさやもたれ感を抑えやすくなります。
消化に良いもの・刺激の少ないものを選ぶ
脂っこいもの、揚げ物、香辛料の強いもの、酸味や炭酸の強いものは、胸やけや胃もたれを感じやすくすることがあります。おかゆ、うどん、よく煮た野菜、豆腐、白身魚など消化にやさしいものを中心にし、ゆっくりよく噛んで食べると胃への負担を抑えやすくなります。
食後すぐ横にならない・姿勢を工夫する
食後すぐに横になると逆流による胸やけを感じやすくなることがあるため、食べてから少し時間をおいてから休むようにすると楽なことがあります。就寝時に上半身をやや高くして寝る、前かがみの姿勢を避けるといった工夫が役立つ場合もあります。締めつけの強い衣服を避けることも一案です。
水分補給と休息
吐き気が強くて食事が進みにくいときも、水分はこまめにとることを心がけてください。一度に飲むとつらい場合は少しずつ口に含むようにします。また、疲れやストレスが症状を強く感じさせることもあるため、無理をせず休息をとることも大切です。市販の胃薬などを自己判断で使う前には、念のためかかりつけ医や薬剤師に確認すると安心です。
受診の目安・注意したいサイン
多くの後期つわりは生理的な変化によるもので、工夫しながら様子をみられることが多いとされています。しかし、なかには別の病気が隠れているサインとして注意したい症状もあります。次のような場合には、自己判断で様子をみすぎず、早めにかかりつけの医療機関に相談・受診してください。
- 水分もとれないほど吐き気・嘔吐が強い、何度も嘔吐する
- 体重が減ってきている、ほとんど食べられない状態が続く
- 尿の量が減る、立ちくらみがするなど脱水が疑われるとき
- 強い頭痛、目がチカチカする・かすむ、急なむくみをともなう(妊娠高血圧症候群などとの鑑別が必要な場合があります)
- みぞおちや右上腹部の強い痛みが続く
- 発熱や下痢をともなう、嘔吐物に血が混じる
- 胎動がいつもより少ない・感じにくいと感じる
とくに、強い頭痛・視界の異常・急なむくみなどが胃の不快感とあわせてみられる場合は、妊娠後期に注意が必要な妊娠高血圧症候群などとの関連を確認するためにも、ためらわず連絡することが大切です。「ただの後期つわりだから」と思い込まず、気になる症状があるときは、レディースクリニックなみなみでも遠慮なくご相談ください。受診の際は、いつから・どんな症状が・どのくらい続いているかをメモしておくと、診察がスムーズになります。
よくある質問(FAQ)
後期つわりは妊娠後期に必ず起こりますか?
いいえ、すべての方に起こるわけではありません。妊娠後期に胃もたれや胸やけ、吐き気を感じる方もいれば、まったく感じない方もいます。症状の有無や程度には大きな個人差があり、後期に何も症状がなくても心配はいりません。気になる場合はかかりつけ医にご相談ください。
後期つわりと初期のつわりは何が違いますか?
初期のつわりは妊娠初期のホルモン変化が大きく関係するとされ、空腹時の吐き気やにおいへの敏感さとしてあらわれやすい傾向があります。後期つわりは、大きくなった子宮が胃を圧迫することなどが関わりやすいとされ、食後の胃もたれや胸やけ、早く満腹になるといった形で感じられることが多いといわれます。ただし感じ方には個人差があります。
後期つわりはいつまで続きますか?
一般的には、赤ちゃんが下がってきて子宮による胃の圧迫がやわらぐ出産間近の時期に軽くなっていくことが多いとされています。ただし続く期間には個人差があり、「いつまでに必ず治る」とは言い切れません。つらさが続く場合は無理をせず医療機関にご相談ください。
自宅でできる対処法はありますか?
一度の量を減らしてこまめに食べる「少量頻回食」、消化に良く刺激の少ないものを選ぶ、食後すぐに横にならない、就寝時に上半身をやや高くする、水分をこまめにとる、といった工夫が役立つことがあります。効果には個人差があるため、無理のない範囲でお試しください。
市販の胃薬を使ってもよいですか?
妊娠中は使用できる薬とそうでない薬があり、自己判断での服用はおすすめできません。胃の不快感がつらいときは、市販薬を使う前にかかりつけの産婦人科医や薬剤師に相談してください。妊娠の経過に合わせて、安全に使える対処を一緒に考えます。
どんなときに受診したほうがよいですか?
水分もとれないほど吐き気・嘔吐が強い、体重が減ってきている、脱水が疑われる、強い頭痛や視界の異常・急なむくみをともなう、みぞおちや右上腹部の強い痛みが続く、胎動が少ないと感じる、といった場合は早めの受診をおすすめします。とくに頭痛・むくみ・視界の異常は妊娠高血圧症候群などとの鑑別が必要なことがあるため、ためらわずご連絡ください。
執筆者兼監修者プロフィール
東大産婦人科に入局後、長野県立こども病院、虎の門病院、関東労災病院、東京警察病院、東京都立豊島病院、東大病院など複数の病院勤務を経てレディースクリニックなみなみ院長に就任。
資格
- 医学博士
- 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
- FMF認定超音波医
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参考文献
- 病気がみえる vol.10 産科 第2版(MEDIC MEDIA, 2018)
- 日本産科婦人科学会「産婦人科診療ガイドライン 産科編2023」


