レディースクリニック なみなみ

妊娠初期のつわり徹底ガイド:症状の特徴とピーク時期、効果的な対処法まで

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クリニックなみなみ 院長 叶谷愛弓

執筆者兼監修者プロフィール

レディースクリニックなみなみ
院長 叶谷愛弓

東大産婦人科に入局後、長野県立こども病院、虎の門病院、関東労災病院、東京警察病院、東京都立豊島病院、東大病院など複数の病院勤務を経てレディースクリニックなみなみ院長に就任。

資格

  • 医学博士
  • 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
  • FMF認定超音波医
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  • 妊娠初期のつわりは多くの妊婦さんが経験する一般的な症状で、主にホルモン変動により起こります。
  • つわりが始まる時期は妊娠5〜6週頃、ピークは8〜11週に現れやすく、ほとんどは妊娠16週頃までに治まることが多いです​。
  • 主な症状には吐き気・嘔吐、匂いに敏感になる、食の好みの変化、胃の不快感、唾液過多、強い眠気や疲労感、感情の起伏などがあります。症状の出方や重さには個人差があります。
  • 適切な対処法を取ればつわりの症状を和らげることができます。例えば、食事内容を工夫する(ビタミンB6を含む食品や消化によい食品を摂る等)、こまめに水分補給する、ツボ押し(後述)や十分な休息を取るなどです。必要に応じて医師による治療やサポートも利用できます。
  • つわりがつらいときは決して我慢せず周囲に助けを求めましょう。妊娠初期のつわりは一時的なものであり、いずれ落ち着いてきます。赤ちゃんへの影響も心配しすぎないで大丈夫です(重症例でも赤ちゃんの発育に差はありません

妊娠初期につわりの症状が出てくると、「こんなに気持ち悪くて赤ちゃんは大丈夫?」「いつまで続くの?」と不安になりますよね。食べ物の匂いで吐き気がしたり、何もせずともムカムカしたり…多くの妊婦さんが同じようなつらさを経験しています。結論から言えば、妊娠初期のつわりはよくある症状で、ほとんどの場合心配いりません。つわりは赤ちゃんが順調に育っている証拠とも言われ、実際に妊婦さんの約7〜8割が経験するとされています​。とはいえ症状の程度には幅があり、日常生活に支障をきたすほど重い場合もあります。

妊娠初期のつわりはいつから始まりいつまで続くのか、そしてつわりを和らげ乗り切るにはどう対処すればよいかを知っておくことは、とても大切です。つわりのピーク時期や典型的な症状、効果的な対処法や妊婦さんからよくある質問への回答まで、産婦人科医監修のもと詳しく解説します。知識を身につけ実践できる対策を試すことで、不安を減らし妊娠初期のつらい時期を乗り越えていきましょう。

妊娠初期には、出血以外にもさまざまな症状や体調の変化が現れます。妊娠初期症状」についてまとめた以下の記事も合わせて参考にしてください👇️。

目次
  1. 1 妊娠初期のつわりはいつから?ピークと終わりの時期
  2. 2 妊娠初期のつわりの主な症状チェック
    1. 2.1 吐き気や嘔吐
    2. 2.2 匂いに敏感になる(匂いつわり)
    3. 2.3 嗜好の変化(食べ物の好みの変化)
    4. 2.4 腹部の不快感・膨満感(胃のむかつき)
    5. 2.5 唾液が大量に出る(よだれづわり)
    6. 2.6 強い疲労感・眠気(眠りづわり)
    7. 2.7 感情の変化・イライラ
  3. 3 つわりの原因とは?
  4. 4 つわりの早い人の特徴は?個人差がある?
  5. 5 つわりの症状を和らげるには?対処法まとめ
    1. 5.1 吐きつわりの対処法
    2. 5.2 食べづわりへの対処法
    3. 5.3 匂いつわりの対処法
    4. 5.4 眠りづわりへの対処法
    5. 5.5 よだれづわりへの対処法
    6. 5.6 イライラ・頭痛への対処法
  6. 6 妊娠初期のつわり中におすすめの食べ物・栄養補給のコツ
  7. 7 妊娠初期のつわりに関するよくある質問
    1. 7.1 吐きづわりが赤ちゃんに影響することはありますか?
    2. 7.2 なんとなく気持ち悪い…これは妊娠初期のつわりでしょうか?
    3. 7.3 つわりの吐き気は一日中続くものですか?
    4. 7.4 つわりが軽い・重いで赤ちゃんの健康状態に違いがありますか?
    5. 7.5 つわり以外で、妊娠初期に注意すべき症状はありますか?
    6. 7.6 重度のつわり(妊娠悪阻)だと命に関わることはありますか?
  8. 8 まとめ:妊娠初期のつわりは無理せず工夫して乗り越えよう

妊娠初期のつわりはいつから?ピークと終わりの時期

妊娠初期(妊娠13週6日まで)はホルモンバランスの大きな変化により体調が不安定になりがちな時期です。この妊娠初期に多くの女性がつわり症状を経験します。つわりの出現時期や持続期間には個人差がありますが、一般的には妊娠5週目頃から症状が出始め、8〜11週頃に症状が強くなりやすく、妊娠16週前後までには落ち着いていくケースが多いです​。ちょうど妊娠3〜4ヶ月頃(安定期に入る頃)になると、嘘のように吐き気が引いて食欲が戻る方がほとんどでしょう。

こうした時期的な変化は、hCGホルモン(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)の血中濃度の変動と深く関係しています。hCGは妊娠初期に急激に増えるホルモンで、この濃度上昇に伴って吐き気などつわり症状も強まり、hCGがピークを迎える時期につわりもピークを迎えやすいとされています​。その後、胎盤が完成に近づきhCG濃度の上昇が落ち着いてくると、つわり症状も次第に軽快していきます。

なお、「つわりはいつからいつまで続くのか」はよく聞かれる質問ですが、上述の通り多くは妊娠初期におさまります。ただし個人差が大きく、中には妊娠中期以降まで長引くケースや、一度治まった後にぶり返すケースもあります。つわりの終了時期には幅があることを念頭に置き、無理のない範囲で対処していきましょう(※詳しくは別記事「つわりはいつまで?原因・時期別の対策と体験談まで」も参照👇️)。

妊娠初期のつわりの主な症状チェック

つわりの症状や辛さの感じ方は人それぞれですが、典型的によくみられる症状があります。まずは妊娠初期のつわりにみられる主な症状をチェックしてみましょう。当てはまるものが多いほど、まさに「つわり真っ最中」と言えるかもしれません。

  • 吐き気や嘔吐 – 胸や喉のむかつき、実際に吐いてしまうこともある
  • 匂いに敏感になる – 特定の匂いに強い不快感や吐き気を催す
  • 嗜好の変化 – 食べ物や飲み物の好みが急に変わる(食べられなくなる・逆に欲しくなる)
  • 腹部の不快感や膨満感 – 胃もたれや胃痛、消化不良によるお腹の張り
  • 唾液が異常に増える – 絶えず唾液が湧いて気持ち悪さが増す(よだれづわり)
  • 強い疲労感や眠気 – 日中も眠く倦怠感が抜けない(眠りづわり)
  • 感情の不安定(イライラ) – ちょっとしたことで苛立ったり落ち込んだりする
  • 頭痛がひどくなる – ホルモン変化や睡眠不足で頭痛が増悪する

吐き気や嘔吐

つわりの代表的な症状が吐き気です。朝起き抜けや空腹時にムカムカし始め、そのまま嘔吐してしまうこともあります。程度の差こそあれ、多くの妊婦さんが多少なりとも吐き気を経験すると言っても過言ではありません。特に「吐きづわり」と呼ばれるタイプの妊婦さんは、常に胃がむかついて食べ物を受け付けにくく、水すら吐いてしまうケースもあります。

吐き気が強く食事もままならないと心配になりますが、軽度〜中等度のつわりであれば赤ちゃんの発育に影響はありません​。

ただし、水分すら摂れない・一日中嘔吐が続くといった場合は脱水症状に陥る恐れがあり注意が必要です。脱水により血液が濃く粘調になってしまうと、血栓(血のかたまり)ができやすくなります。妊娠中はもともと血栓症のリスクが高まっており、血栓が肺に詰まる肺塞栓症など重大な合併症につながる可能性があります​。

「水分が全くとれない」「嘔吐が続き体重が激減している」といった場合は我慢せず産婦人科を受診してください。

このような場合は受診が必要です。我慢せず産婦人科医に相談してください!

□ 水分をまったくとることができない
□ 常に吐き気があり、毎日嘔吐している
□ 尿の回数が減った
□ 5%以上体重が減った

つわりの時期は脱水になりやすい?血栓症に注意しましょう。

妊娠中は、出血に備えるために生理的に血液中の凝固因子(血を固まらせるための因子)を増やすため血栓症を引き起こしやすくなっています。加えて脱水状態が続くと、血液の粘度が増加して、血栓が形成されるリスクが高まります。足にできることが多い血栓ですが、肺にまで到達し肺の血管を詰まらせる肺塞栓症を引き起こすこともあります。肺塞栓症は死亡することもある大変怖い病気です。ぐったりして横になっていることが多くなり下肢の血流が滞ることも、血栓症や肺塞栓症のリスクとなります。嘔吐を繰り返し水分摂取も全くできない場合は血栓症の観点からも点滴治療を検討すべきです。また、横になっていたとしても下肢のマッサージや足首を回す運動など血流が滞らないような対策をとりましょう。弾性ストッキングを履くこともお勧めです。

匂いに敏感になる(匂いつわり)

妊娠初期(特に妊娠6〜12週頃)には、特定の匂いに極端に敏感になる妊婦さんが多くいます。普段は気にならない食品や料理の匂い、台所や冷蔵庫の匂い、洗剤や柔軟剤・香水の匂いなど、様々な匂いが突然ダメになることがあります。ひどい場合は旦那さんの体臭ですら受け付けなくなることもあるほどです。これらの匂い刺激が引き金となって吐き気を催すケースも少なくありません。

匂いに敏感になる原因は明確には解明されていませんが、妊娠初期のホルモン変化や防衛反応(胎児を有害物質から守るため匂いに敏感になるという説)などが関与していると考えられています。嗅覚過敏とも呼ばれるこの症状は、多くの場合つわりのピークを過ぎると落ち着いていきます。それまでは「自分は今、匂いに敏感なんだ」と割り切って、苦手な匂いから可能な限り遠ざかる工夫をしましょう(対処法は後述します)。

たべものご飯のたけるにおい、生の魚や肉のにおい、揚げ物のにおい
そのほかたばこ、汗の匂い、シャンプー・リンス、生ゴミ、香水、ヘアワックス

嗜好の変化(食べ物の好みの変化)

妊娠すると味覚・嗜好が変化することもよく知られています。妊娠前は大好きだった食べ物が急に「受け付けない…」と感じたり、逆に普段あまり好んでいなかった物が無性に食べたくなったりすることがあります。「妊娠したら酸っぱいものが食べたくなる」という話を聞いたことがあるかもしれません。実際、妊娠初期には酢の物や梅干し、柑橘類など酸味のあるものばかり欲しくなるという声も多いです。

嗜好の変化もホルモンの影響や体が必要とする栄養素の変化によるものと考えられています​。例えば急に肉が食べられなくなるのは、つわり期にタンパク質よりも炭水化物中心のエネルギー補給に偏る傾向があるためとも言われます。一方でフルーツばかり欲しくなるのはビタミン不足を補おうという体の反応かもしれません。このように身体が求めるものに素直に従って食べられるものを食べることも、つわり期は大切です。ただし極端に偏った食事は栄養バランスを崩すので、可能な範囲で構いませんから少しずつ色々な食品を摂るよう意識しましょう。

腹部の不快感・膨満感(胃のむかつき)

妊娠初期には胃腸の調子が乱れやすく、胃もたれや膨満感、胃痛などお腹の不快感を訴える人もいます。これは妊娠によるホルモンバランスの変化、特にプロゲステロン(黄体ホルモン)の増加が一因です。プロゲステロンには筋肉を緩める作用があり、胃腸の動き(消化管の蠕動運動)が鈍くなるため消化不良や胃酸の逆流が起こりやすくなります​。その結果、少量食べただけでもすぐ胃がいっぱいになった感じがしたり、げっぷや胃酸のこみ上げで胸焼けすることがあります。

胃の不快感を少しでも和らげるには、できるだけ胃に負担をかけない食生活を心がけることが重要です。具体的には、一度にたくさん食べず少量の食事を何回にも分けて摂るようにします。油っこい料理や香辛料の効いた刺激物、消化に時間がかかる繊維の多い食品は避け、消化の良いあっさりした物を選ぶようにしましょう​。このような工夫でかなり胃のムカムカが軽減されることがあります。

唾液が大量に出る(よだれづわり)

妊娠初期には妙に唾液の分泌が増えることがあります。いわゆる「よだれづわり」と呼ばれる症状で、常に口の中に唾液が溜まって気持ち悪く感じたり、頻繁に唾を吐きたくなったりします。

なぜ唾液が増えるのかも明確には分かっていませんが、妊娠に伴うホルモン(エストロゲンやプロゲステロン)の変化で唾液腺が刺激されるためと考えられています​。

唾液量が増えると口内の不快感が強まり吐き気も悪化することがあります。食事中や会話中に唾液が気になってしまい辛いという方もいるでしょう。ただしこの症状も妊娠中期に入る頃には治まることが多いようです​。それまではガムを噛んで飲み込む回数を増やしたり、ペットボトル等でこまめに吐き出す、口をゆすいでさっぱりさせるなどの対処でしのぎましょう(後述の対処法も参考にしてください)。

つわりの時期は消化器症状(きもちわるさや、食べ物やにおいに関する症状)がどうしても多くなります。これらの症状が出ない人のほうが珍しいくらいなので、症状が出ても当たり前と思って準備しておいて、うまく対応して乗り切ることが大切です。症状が重くなった際には我慢せず、点滴で栄養補給するなど産婦人科医に頼ってくださいね!

強い疲労感・眠気(眠りづわり)

妊娠初期〜中期にかけて、とにかく眠くて仕方がないという妊婦さんも多いです。日中もぼーっとしてしまったり、家事や仕事の合間につい居眠りしてしまうことも。これは妊娠に伴い黄体ホルモン(プロゲステロン)が急増するためとされています​。プロゲステロンには体をリラックスさせ眠気を誘う作用があるのです。また、妊娠によって身体が大量のエネルギーを消費することや、血圧低下など循環変化も重なり、極度の倦怠感・疲労感を感じやすくなります。

俗に「眠りづわり」とも呼ばれるこの症状は、妊娠中期以降になると落ち着いてくる場合がほとんどです​。眠くなるのは体が休息を欲している正常な反応ですから、無理に抵抗せず眠れるときに寝てしまいましょう。妊娠中はできるだけ十分な睡眠時間を確保し、体力を温存することが大切です。

感情の変化・イライラ

妊娠初期は心身ともに不安定になりがちで、情緒が乱高下しやすい時期でもあります。普段は気にならない些細なことで突然涙が出てきたり、かと思えば理由もなくイライラしたり…。これもホルモンの影響で、エストロゲンとプロゲステロンが急激に変動することで気分に波が生じてしまうのです​。妊娠前の月経前でもホルモン変動により情緒不安定になることがありますが、妊娠中はその変化がさらに大きくなるため自分でも抑えられない感情の揺れが起こってしまいます。

こうした精神的な症状もつわり期間中によくみられるものです。「なんだかいつもイライラして自己嫌悪…」という妊婦さんもいるでしょう。しかし妊娠初期につらいのはあなただけではありません。うまくいかない自分を責めず、「今はがんばるのをお休みする時」と割り切ってできるだけリラックスして過ごしてください​。気分転換になることを見つけたり、家族や友人に話を聞いてもらうだけでも心が軽くなるものです。またパートナーや職場の理解・支援も大切です。周囲の人は妊婦さんの情緒不安定を責めたりせず温かく見守ってあげてくださいね。

つわりの原因とは?

そもそもつわりはなぜ起こるのでしょうか。
つわりの主な原因は妊娠初期のホルモンバランスの変化にあります。
hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)、エストロゲン、プロゲステロンという名前のホルモンの量が大きく変わるためです。

ホルモンの種類ホルモンの役割つわりの症状
hCG妊娠6~8週までの妊娠維持に促進的に働きます脳の嘔吐中枢を直接刺激し、つわりを引き起こす
エストロゲン胎芽の発育とともに子宮を増大させ、子宮への血流を増加させて胎児に栄養が行き渡らうよう助けます嗅覚が敏感になり、通常は問題とならない匂いが強く感じられるようになる
プロゲステロン基礎体温を上げ、子宮内膜を安定化させる働きがあります消化管の筋肉をリラックスさせ、胃の内容物の逆流や消化速度の低下を引き起こす

いずれのホルモンも妊娠には不可欠なホルモンではあるので、これらを理解して体の変化にうまく対応しましょう。
女性では普段から働いてくれているホルモンなのですが、普段とバランスや量が急激に変化するために症状が出てしまうのです。

つわりの早い人の特徴は?個人差がある?

つわりは個人差が非常に大きいです。
つわりの開始が早い人は、個人の体質や遺伝的要素に深く関連していることが多いと言われています。

・過去に妊娠経験があって重いつわりを経験している方
・多胎妊娠の方

は、症状が早く・強く出る傾向があります。
特にホルモンバランスの急激な変化を起こしやすい人・敏感な体質の人は、妊娠初期から症状が現れやすいです(hCGの研究が最近でも行われています)。
睡眠不足や疲労、ストレス、不安、便秘などもつわりを悪化させる可能性があります。妊娠後は、周囲のサポートを得ながら十分に休息し、食事の取り方の工夫をすることでつわりの症状を軽減しましょう。また、お仕事をされている方で毎日出勤するのが辛い場合は、医師に相談し、母性健康管理指導事項連絡カードを書いてもらうことで、必要な措置について事業主に申し出ることもできます。辛い時には無理をせず、休むようにしましょう。

つわりの症状を和らげるには?対処法まとめ

妊娠初期のつわりを軽減する対処法はいくつかあります。つわりそのものを完全になくす特効薬は現状ありませんが、それぞれの症状に合わせて工夫することでかなり楽になるケースが多いです​。ここでは代表的な「症状別つわり対処法」を表にまとめ、その後にポイントごとに詳しく説明します。

症状主な対処法・工夫
吐きつわり少量ずつ摂取する。炭酸水や氷、アイスなどでも良いので口にできるものを探す。食べ物が逆流する時には、からだの左を下にして横になったり、体を起こしたりして休む。
たべつわり空腹にならないように、枕元にビスケットやグミなど軽くつまめる食べ物をおいておく。満腹は避け、食べたいものを少しずつ摂取する。
匂いつわり良好な換気を心がけ、心地よい香りのアロマを使用する。お弁当やお総菜を利用したり、匂いの少ない食材を選んだり、冷ましてから食べる。マスクを着用する。
眠りつわり日中に短時間の昼寝を取る、就寝前にリラックスタイムを持つ、快適な寝室環境を整える。
よだれつわり定期的に口をすすぐ、ガムを噛むことで唾液の分泌をコントロールする、水分を少量ずつ頻繁に摂取する。
いらいら、頭痛ストレスを減らす活動を見つける、適度な運動を心がける、十分な休息を取る、痛みがひどい場合は医師に相談。

つわりの症状自体を劇的に改善する方法や薬は現状の医学ではないのが実情です。ただし、それぞれの症状は皆さん工夫して乗り越えられるものなのですこし具体的に見ていきましょう。

吐きつわりの対処法

「吐きづわり」で一番大切なのは、胃に何も入っていない時間をなるべく作らないことです。空腹になると胃酸だけが分泌されてさらに気持ち悪くなってしまいますから、食べられるタイミングで消化の良い物を少しずつ口に入れるようにしましょう​。おにぎりやうどん、雑炊、ヨーグルト、ゼリー、果物など胃に優しいものをあらかじめ小分けに用意しておき、食べたいと思えたときにすぐ摂れるようにしておくと良いです​。吐いてしまっても構いません。「出せるだけ出したらまた食べればいいや」くらいの気持ちで、少量ずつ何度もチャレンジすることが大事です。

また、脱水を防ぐため水分補給も重要です。水やお茶が飲めない場合は炭酸水やスポーツドリンク、氷をなめるなど自分が受け付けそうな方法で水分を摂りましょう​。

吐き気そのものを和らげる工夫として、酸味のあるものや香りの強いハーブを試す方法もあります。例えばレモンや梅干しの酸っぱさは口当たりがサッパリして食欲を増進させてくれますし、ミントや生姜(ジンジャーティーやジンジャーエール)などは胃の調子を整える効果が期待できます​​。実際に生姜はつわり症状の緩和に有効であるとの研究報告もあり、欧米のガイドラインではビタミンB6と並んで推奨されているほどです​。飲み物にすりおろし生姜を加えたり、生姜キャンディーを舐めてみるのも良いでしょう。

嘔吐で胃酸が逆流すると口の中が酸性になり歯のエナメル質が傷みやすいので、吐いた後は水やうがいで口をすすいでおくと歯を守れます(歯磨きは吐いた直後は避け、少し時間をおいてからの方がエナメル質を傷つけにくいです)。吐き気が収まらないときは、無理に動かず身体の左側を下にして横になるか、上半身をやや起こした姿勢で休むと楽になることがあります。胃の内容物が逆流しにくくなる姿勢なので試してみてください。

食べづわりへの対処法

お腹が空くと気持ち悪いタイプの「食べづわり」は、常に何か口にしていれば吐き気が紛れる一方で、食べ続けることで体重増加が気になるケースもあります。対応のコツは**「ちょこちょこ食べ」と「空腹ゼロ」です。まず朝起きたら、起き上がる前に枕元に用意しておいたビスケットやクラッカー、キャンディーなどを口に入れましょう​。夜中にトイレへ起きたときや少し目が覚めたときにも、ひと口なにか食べておくと朝まで楽になります。「え、夜中に食べたら太るのでは?」と思うかもしれませんが、食べづわりの場合は空腹による吐き気を防ぐ方が優先です。1回に食べる量がごくわずかであれば問題ありません。日中もできれば2時間おきくらいに何かしら口に入れるようにします​。

食事というより「おやつ」や「軽食」を繰り返す感覚で、常に胃に物が入っている状態を保つイメージです。その代わり一度にドカ食いはしないよう注意しましょう。満腹になるとかえって気持ち悪くなる場合もあります​。食べたいと思えるものを少しずつ、ゆっくり噛んで味わってください。炭水化物に偏りがちな人は、後述するビタミンB6やタンパク質なども意識できるとベターです。

匂いつわりの対処法

「匂いつわり」で辛いのは、自分ではどうにもできない匂いの刺激ですよね。まず基本は苦手な匂いを徹底的に避けることです。例えば通勤電車の化粧品や体臭の匂いが辛ければ、マスクにハッカ油やレモンなど自分の好きな香りを一滴つけておくとかなり楽になります。料理中の匂いがダメな場合は、調理自体をお休みしましょう。外食やお惣菜、ミールキットの利用も立派な対策です​。食べ物は冷ますと匂いが和らぐので、いったん冷ましてから食べるのもおすすめです​。

夫や家族に調理を代わってもらえるならお願いし、あなたは別室で待機して出されたものを食べるくらいで良いのです。

室内では換気扇や空気清浄機をフル稼働させ、苦手な匂いの元は早めに処分しましょう。ゴミ出しや生ゴミの処理も周囲に頼んでください。逆にリラックスできる好きな香りを活用するのも手です。レモングラスやラベンダーなど妊娠中でも使えるアロマを炊いたり、ハーブティーを淹れて香りを楽しむと、不快な匂いを忘れられるかもしれません。ただし妊娠中は使えないアロマオイルもあるので、アロマ専門店や医師に確認してくださいね。

眠りづわりへの対処法

「眠りづわり」の対策はシンプルで、とにかく眠ることに尽きます。強い眠気に抗うのは逆効果です。職場であれば昼休みに15〜20分ほど机に伏せて目をつぶるだけでも脳がスッキリしますし、在宅勤務なら合間に短い仮眠を取り入れましょう。どうしても日中に眠れない環境なら、夜はいつもより早めに就寝してください。家事が途中でも「赤ちゃんのため」と割り切って寝てしまいましょう。疲労や睡眠不足は他のつわり症状(吐き気や頭痛)も悪化させてしまいます​。

寝つきを良くする工夫としては、就寝前のスマホ・パソコンを控え、ぬるめのシャワーやストレッチでリラックスする習慣が効果的です。寝室の室温や明るさ、寝具の肌触りなども見直してみましょう。「眠気が酷くて仕事にならない…」という場合は、決して無理をせず産婦人科で相談してみることも大切です。母性健康管理措置として主治医に「母性健康管理指導事項連絡カード」を書いてもらえば、勤務先へ勤務時間の短縮や休職など必要な措置を申し出ることができます​。

つわりの辛さは立派な休職理由になりますので、一人で抱え込まず活用してください。

よだれづわりへの対処法

「よだれづわり」は周囲には理解されにくいものの、本人にとっては常に口の中が気持ち悪く吐き気も誘発される厄介な症状です。対処の基本は唾液をこまめに処理することに尽きます。まず、定期的に口をすすぐ習慣をつけましょう​。

水でもお茶でも良いので30分おきくらいにうがいをすると口内がさっぱりします。ミント系のマウスウォッシュを薄めて使うのもスッキリ感が得られます。飲み込めそうならそのまま飲んで水分補給にしてしまってもOKです。

またガムを活用するのもおすすめです​。ガムを噛むと唾液の分泌が促進されますが同時に嚥下(飲み込む動作)も増えるので、だらだら唾を垂らすよりは処理しやすくなります。キシリトールガムや妊婦向けタブレットなど色々試してみてください。とはいえどうしても飲み込めないほど多い場合は、ペットボトルや紙コップ等を携帯して随時吐き出してしまいましょう。家にいるときは洗面所にティッシュを敷いたゴミ箱を置いて吐き捨てる方もいます。人目が気になる職場などではハンカチを当ててトイレに駆け込むなど工夫が必要ですが、「つわりで唾液が増えてしまって…」と事情を話せば理解してもらえるはずです。同じ姿勢でいると唾液が溜まりやすいので、軽く体を動かしたり姿勢を変えるのも多少効果があります。

イライラ・頭痛への対処法

妊娠初期のホルモン変化によるイライラや気分の落ち込みには、「こうすれば治る」という特効薬はありません。ただ、ストレスを溜めない工夫は有効です。好きな音楽を聞いたり映画を観る、日記を書いて気持ちを吐き出す、マタニティヨガや散歩で体を動かすなど、自分なりの気分転換方法を見つけましょう​。

同じ妊婦仲間とおしゃべりするのも良いですね。周囲の人も、妊婦さんがリラックスできるよう家事負担を軽くしてあげたり積極的に話を聞いてあげてください。

頭痛もつわり期によくある症状です。ホルモンバランスや寝不足・ストレスなど様々な要因で緊張型頭痛や片頭痛が起きやすくなります。基本的な対処は上記と同じく休息とストレス軽減ですが、あまりに頭痛がつらいときは我慢せず産婦人科医に相談して鎮痛剤を処方してもらうことも検討しましょう​。

妊娠中でも使用可能なお薬(アセトアミノフェンなど)がありますので、「薬はダメ」と思い込みすぎなくて大丈夫です。特につわりで食事や睡眠が十分にとれていないときは頭痛も悪化しがちなので、まずは他の症状への対処を優先し、それでも続く痛みはお医者さんに頼るようにしてください。

体調がしんどいときのオンライン診療は非常に便利ですね。オンライン診療に対応しているかは産婦人科、妊婦健診を選ぶうえでは一つの目安になりますよ。当院ではつわりの診察・処方もオンライン診療に対応しています。ぜひご利用ください。

妊娠初期のつわり中におすすめの食べ物・栄養補給のコツ

妊娠初期は、つわりで思うように食事が摂れず、不安になる方も多いでしょう。つらいときは無理に食べようとせず、口にできそうなものを少量ずつ摂ってみましょう。例えば、果物やゼリー、温かいスープなど、さっぱりして喉越しの良い食べ物は比較的食べやすいでしょう。また、水分補給も忘れずに行い、脱水症状を防ぐことが大切です。なお、ビタミンB6を多く含むバナナや魚類などはつわりの軽減に有効とされています。

  • 葉酸が豊富な食べ物
  • ビタミンB6が含まれている食べ物
  • 食物繊維・脂肪が少ない消化に良い食べ物
  • タンパク質が多いもの

つわりの時期の食べ物については、より詳しく別の記事「つわり中のおすすめの食べ物と控えたほうがいい食べ物は?食事のコツを解説」で紹介していますのでぜひ確認して見てください👇️。

つわりは様々な症状があってなかなか良い治療がないとされていますが、レディースクリニックなみなみでは積極的に攻めのつわり治療を行っています。オンライン診療でも相談・治療可能なのでかかりつけの先生から安静にしてなどと言われただけで他に何かないの?と思っている妊婦さんはぜひご相談ください。

妊娠初期のつわりに関するよくある質問

吐きづわりが赤ちゃんに影響することはありますか?

一般的には、お母さんのつわりが赤ちゃんの発育に悪影響を及ぼすことはほとんどありません。多少食事が摂れなくても、妊娠初期の赤ちゃんは胎盤ではなく卵黄嚢から栄養をもらって成長しています​。そのためお母さんが一時的に栄養不足でも直ちに心配はいらないのです。実際、重度の吐きづわり(妊娠悪阻)で体重が妊娠前より5%以上減少した場合でも、赤ちゃんの出生体重などに有意な差はみられなかったとの研究報告があります​​。つわりがひどくても赤ちゃんはしっかり育ってくれますので、ご安心ください。

なんとなく気持ち悪い…これは妊娠初期のつわりでしょうか?

妊娠の可能性がある時期に「なんだか胃の調子がおかしい」という違和感を覚えたら、それはつわりの始まりかもしれません。多くの妊婦さんは妊娠5〜6週頃(生理予定日を1週間以上過ぎた頃)に、特定の匂いで吐き気を感じたり味覚の変化で妊娠に気づくことが多いです​。この時期はちょうど生理が来ないことに気づく頃とも重なるため、「もしや…?」と思ったらまず市販の妊娠検査薬を試してみましょう。消化不良かな?と内科を受診して妊娠が判明するケースもありますが、自宅で検査薬を使うのが一番手軽です。

つわりの吐き気は一日中続くものですか?

個人差がありますが、ピーク時には一日中続く人もいます。特に妊娠8〜9週のあたりは症状が重くなりやすく、朝から晩まで船酔いのような気持ち悪さが続く方も珍しくありません​。朝だけでなく夜まで吐き気が続く「昼夜問わずつわり」は、決してめずらしいことではないのです。ずっと気持ち悪い状態が続くと精神的にも参ってしまいますよね。しかし「自分だけこんなに辛いのでは?」と孤独に思いつめないでください。妊婦さんの中には同じように一日中つらい思いをしている方もちゃんといます。「休めるときには横になって体を休める」「吐き気止めの薬を処方してもらう」など、対処法がありますのであまりに苦しいときはぜひ産婦人科医に相談しましょう​。

つわりが軽い・重いで赤ちゃんの健康状態に違いがありますか?

つわりの重さと赤ちゃんの健康状態には明確な関係はありません。つわりが重いほど「赤ちゃんが元気」とか「ホルモン値が高い」という話もありますが、医学的には決着がついていません​。一部には、つわりの重症度は体質や遺伝的要因に関連すると言われるものの、未だに詳しいメカニズムは解明されていないのです​。多胎妊娠(双子以上)や前回の妊娠でつわりが酷かった人はまた重くなりやすい傾向がありますが、いずれの場合も赤ちゃんの発育良否とは無関係です​。つわりが軽いからといって赤ちゃんに問題があるわけでは決してありませんし、逆につわりが重いから赤ちゃんが特別丈夫というわけでもありません。

つわり以外で、妊娠初期に注意すべき症状はありますか?

出血や激しい腹痛には注意が必要です。妊娠初期には少量の出血が起こることがあります。これは胎盤が形成される際に、絨毛(胎盤の元になる組織)が子宮内膜に入り込んで血管が破れるためと考えられており、少量であれば問題にならないことがほとんどです​。しかし、生理2日目以上の量の出血が続く場合や、強い下腹部痛を伴う場合は流産や子宮外妊娠などの可能性があります​。このような症状があれば放置せずすぐ医療機関を受診しましょう。

重度のつわり(妊娠悪阻)だと命に関わることはありますか?

現代の医療において、妊娠悪阻(重症つわり)による死亡例はほとんどありません。かつては栄養失調や脱水で命に関わることもありましたが、今は点滴や入院管理が確立しています。統計上、入院が必要な重症妊娠悪阻になるのは妊娠の0.5〜2%程度といわれます。このごく一部のケースにおいても、適切に治療すれば命にかかわる事態は極めてまれです。ただし、栄養が全く取れない状態が続くと母体に危険な合併症が起こる可能性があります。例えば前述の肺塞栓症(脱水と血栓)、重度のビタミンB1欠乏によるウェルニッケ脳症(神経障害)などです​。命に直結するケースはほぼ無いとはいえ、放置すれば重篤な状態になり得ますから、そこまで我慢してはいけません。

まとめ:妊娠初期のつわりは無理せず工夫して乗り越えよう

妊娠初期のつわりは人それぞれ症状も異なりますが、少しでも楽にするための対処法はいくつか存在します。この記事で紹介したように、食事・休息・ツボ押しなどできる範囲で色々試してみて、自分に合った対策を早めに見つけることが大切です。つわりは本当につらいものですが、必ず終わりが来る一時的な症状です。今はしんどくても、妊娠中期以降になればスッと嘘のように楽になることも多いので、希望を持ってくださいね。

身体的にも精神的にもボロボロになりがちな妊娠初期ですが、ぜひ周囲の協力を積極的に得てください。家族や職場の理解を得ることで、つわり期間を乗り切る負担は格段に軽くなります。「つらい」と声に出して言うことも大事です。そして決して自分ひとりで抱え込まないでください。どうしてものときは、医療の力に頼ってくださいね。

当院では妊婦健診時はもちろん、健診と健診の合間でも助産師・医師によるLINE相談やオンライン診療で妊婦さんをサポートしています​。

つわりがつらい時期も「ひとりじゃない」と感じられるような体制を整えていますので、不安なことや困ったことがあればいつでも気軽にご相談ください。一緒に妊娠初期を乗り越えていきましょう。あなたと赤ちゃんの健やかな毎日を応援しています!

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妊娠初期全体の症状や流れを把握しておくことも不安解消に役立ちます。妊娠初期症状のまとめ記事」で全体像に目を通しておきましょう👇️

クリニックなみなみ 院長 叶谷愛弓

執筆者兼監修者プロフィール

レディースクリニックなみなみ
院長 叶谷愛弓

東大産婦人科に入局後、長野県立こども病院、虎の門病院、関東労災病院、東京警察病院、東京都立豊島病院、東大病院など複数の病院勤務を経てレディースクリニックなみなみ院長に就任。

資格

  • 医学博士
  • 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
  • FMF認定超音波医
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