
執筆者兼監修者プロフィール
東大産婦人科に入局後、長野県立こども病院、虎の門病院、関東労災病院、東京警察病院、東京都立豊島病院、東大病院など複数の病院勤務を経てレディースクリニックなみなみ院長に就任。
資格
- 医学博士
- 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
- FMF認定超音波医
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- 妊娠初期の出血は全妊婦さんの約2〜3割(4人に1人程度)に見られる比較的よくある症状で、その多くは生理現象である着床出血です。
- 着床出血は生理(月経)よりも出血量が少なく色も薄いのが特徴で、通常1〜3日ほどで自然に止まり、強い痛みを伴うこともありません。
- 妊娠初期の軽い出血があっただけで直ちに「流産」が確定するわけではなく、その後問題なく出産に至るケースも多々あります。実際、統計では妊娠初期に出血を経験した妊婦さんの約半数は最終的に無事出産に至っています。
- 一方、腹痛を伴う鮮血の大量出血は妊娠初期 不正出血とも呼ばれ、子宮外妊娠(異所性妊娠)や切迫流産など注意が必要な異常の可能性があります。
- 生理2日目以降のような多めの出血や強い下腹部痛がある時は、夜間でも迷わず医療機関に連絡・受診しましょう。逆にごく少量の出血だけで痛みもない場合は過度に慌てず安静に過ごし経過を観察することも大切です。
妊娠初期はわからないことも多く、不安になりやすい時期です。不正出血とは本来、生理以外のタイミングで起こる異常な出血全般を指す言葉ですが、妊娠中の出血は少量でも通常は起こらないものなので広い意味では「不正出血」に当たります。ただし、妊娠初期に起こる出血のすべてが危険なわけではありません。実際には妊娠初期の出血の多くは着床に伴う生理的なもので、大きな問題を起こさない場合がほとんどです。一方で注意すべき異常な出血も存在します。本記事では、妊娠初期に見られる出血の種類や原因、対処法について網羅的に解説し、着床出血とその他の不正出血の違いや、受診の目安も詳しく説明します。
妊娠初期には、出血以外にもさまざまな症状や体調の変化が現れます。「妊娠初期症状」についてまとめた以下の記事も合わせて参考にしてください👇️。
妊娠初期に出血は大丈夫?
妊娠初期の出血は珍しいことではない
妊娠初期に少量の出血が起こること自体は決して珍しくありません。妊娠に気づく前後の時期に出血を経験する妊婦さんは約20〜30%(5人に1〜2人)にのぼり、多くは深刻な異常ではありません。出血の量や状態(色・質感)は原因によって様々ですが、出血したからといってすぐに流産が決まるわけではないので、まずは落ち着くことが大切です。実際、妊娠初期に出血を経験したケースでも約半数はその後順調に妊娠が継続している方がほとんどです。まずは出血の様子を注意深く観察し、慌てずに対処しましょう。
とはいえ、妊娠中に出血が起これば誰でも心配になるものです。普段のちょっとした不正出血(生理不順時の出血など)と同じ程度の少量の出血でも、「本当に大丈夫なのかな?」と不安になるのは自然な反応でしょう。大切なのは、どのような出血であれば心配ないのかと、どういった出血は注意が必要なのかを知っておくことです。その見極めに役立つポイントを、以下で順に説明していきます。
妊娠初期の出血の多くは「着床出血」
妊娠初期に起こる出血原因として最も多いのが着床出血です。着床出血とは、受精卵が子宮内膜に着床する際に起こる少量の出血のことです。妊娠3〜4週頃(ちょうど次の生理予定日と同じ時期)に起こることが多く、妊娠した女性の20〜30%程度にみられる現象です。
受精卵が子宮内膜にもぐり込む際に子宮のごく小さな血管が傷つき、その出血が体外に出てきたものが着床出血です。生理のタイミングと重なるため、妊娠に気づいていない場合は生理と勘違いしやすい出血でもあります。実際、着床出血が起こる時期・症状は生理に似ていることがありますが、その出血量や期間は生理よりかなり軽微です。
着床出血はごく少量のためナプキンがほとんど汚れないかおりものシートで足りる程度で、色はピンク色や薄茶色であることが多く、1〜2日から長くても数日以内に自然に止まります。また生理痛のような強い痛みは通常ありません(感じても軽い違和感程度です)。このように、生理と比べて量が少なく短期間で終わるのが着床出血の特徴です。
なお、着床出血が起こるのは一部の妊婦さんだけです。着床出血がなかったからといって異常ではありませんし、逆に着床出血があったからといって必ず正常妊娠が継続するとも限りません。あくまで「起こることもある現象」ですが、妊娠超初期のサインの一つとして知っておくと良いでしょう。生理予定日前後に「いつもと違う少量の出血」があった場合、妊娠の可能性を考えてみてもよいかもしれません。
着床出血のチェックリスト
- 最終月経から約6〜12日後の出血
- 量が非常に少ない(通常の生理より明らかに少ない)
- 色がピンクか薄い茶色、または薄い赤色
- 1〜2日程度で収まる
- 強い痛みを伴わない(軽い不快感程度)
- 出血が断続的
- 予定の生理日より早い
- 最近の妊娠の可能性がある
当はまるものが多ければ多いほど着床出血の可能性が高いです。
妊娠初期の出血が続いても無事出産できるケースが多い?流産の可能性は?
妊娠初期に出血があると「赤ちゃんに何かあったのでは?」「このまま流産してしまうのでは?」と不安になるものです。確かに、後述するように流産の兆候として出血が起こるケースもあります。しかし出血=即流産というわけではありません。例えば、初期に出血を経験した妊婦さんのうち約50%は流産に至らず妊娠が継続したとのデータがあります。
裏を返せば約半数は残念ながら流産となってしまうものの、半数は無事に出産できているということです。したがって、妊娠初期に出血を経験しても必ずしも妊娠継続が不可能になるわけではなく、その後問題なく赤ちゃんが育つケースも十分にあり得ます。
実際、少量の着床出血や一時的な不正出血だけで、その後胎児の成長に影響なく経過する妊婦さんも多くいます。「出血=流産」と早合点して深く落ち込む必要はありません。特に心拍が確認できる前の時期(妊娠超初期)の出血については、医療介入によって流産を完全に防ぐことは難しいのが現状です。
仮に流産に至る場合でも、それは受精卵側の要因(染色体異常など)によるケースが大半であり、母体の行動ではどうにもできない場合がほとんどです。逆に言えば、出血しても赤ちゃんに生命力があればちゃんと育ってくれることも多いのです。
もちろん、出血が続く間は不安だと思いますし、実際に注意を払うべき症状もあります(後述の「受診の目安」を参照)。不安な気持ちは一人で抱え込まず、かかりつけ医に相談して経過観察や必要な検査を受けましょう。経腟超音波検査などで胎児や子宮の状態を確認すれば、原因や今後の見通しがある程度わかります。医師の指示のもと適切に対処すれば、たとえ妊娠初期に出血があった場合でもその後無事に出産に至る可能性は十分に残されています。
着床出血以外の妊娠初期の不正出血の7つの原因
上述の通り、妊娠初期にみられる出血の多くは心配のいらない着床出血です。しかし、それ以外にも妊娠初期に起こりうる出血(妊娠初期の不正出血)の原因は複数存在します。ここからは、着床出血以外で妊娠初期に起こり得る主な出血原因について詳しく解説します。大きく分けると、原因は妊娠に直接関連するもの(胎児や胎盤の異常など)と、妊娠に直接は関係しないもの(子宮頸部〔しきゅうけいぶ〕=子宮の入り口からの出血など)に分類できます。妊娠初期の不正出血の原因を正しく知っておくことで、もしもの時にも落ち着いて対処しやすくなるでしょう。
①:絨毛膜下血腫
絨毛膜下血腫は、胎児を包む絨毛膜(将来胎盤になる膜)の下に出血が溜まった状態のことです。簡単に言えば、着床時にできた出血のかたまりが子宮内に残っているケースです。
本来このような出血(血腫)は自然に子宮内に吸収されていきますが、血腫の量が多かったり吸収に時間がかかったりすると、エコー検査で確認できるほどの溜まり(血の塊)として残ることがあります。絨毛膜下血腫があると、その血腫から少しずつ出血が外に出てきて茶色い出血がダラダラと続く原因になります。これは胎盤が完成する前の妊娠初期によく見られる現象です。
絨毛膜下血腫自体は珍しいものではなく、大きさも様々です。血腫が小さい場合は特に治療をしなくても自然に吸収されてなくなり、妊娠へ影響しないことも多いです。ただし血腫が大きい場合、妊娠継続に影響する(流産や胎盤剥離につながる)可能性が指摘されており、注意深い経過観察が必要です。症状としては少量の茶色〜暗赤色の出血が断続的に続く程度で、強い腹痛を伴うことはあまりありません。治療法は確立していませんが、医師からは安静指示が出されることがあります(無理をすると血腫が拡大する可能性があるためです)。いずれにせよ、妊娠初期のエコー検査で「血の塊が見える」と言われた場合は絨毛膜下血腫を疑われたと考え、医師の指示に従いましょう。安静に過ごしつつ定期的に診察を受け、血腫が大きくなっていないか、赤ちゃんの心拍に問題がないかを確認していくことになります。
②:異所性妊娠(子宮外妊娠)
異所性妊娠(子宮外妊娠)とは、本来受精卵が着床すべき子宮内膜ではない場所(卵管や卵巣、子宮頸管、腹腔内など)に受精卵が着床・発育してしまった状態です。もっとも多いのは卵管で起こるケースで、卵管妊娠とも呼ばれます。異所性妊娠では子宮内に正常に着床していないため、絨毛(胎盤のもとになる組織)がきちんと根付かずに出血しやすくなります。その結果、妊娠初期に生理が来ないのに不正出血がだらだら続くといった症状が現れます。
妊娠検査薬では陽性になるものの子宮内エコーで胎嚢が確認できず、代わりに子宮外で出血や腫瘤が見える場合、異所性妊娠が強く疑われます。
異所性妊娠は放置すると非常に危険です。子宮外で育った妊胚は正常には成長できず、やがて周囲の組織を圧迫・破裂させ、大出血を引き起こします。特に卵管が破裂すると腹腔内で大出血が起こり、母体がショック状態に陥るリスクがあります。妊娠初期の不正出血に加え、下腹部の一側(右か左)のみに強い痛みを感じる場合は異所性妊娠の可能性があります。さらに、肩が痛む、めまいや失神といった症状がある場合は腹腔内出血が進行している恐れがあり緊急です。異所性妊娠が疑われたら、即座に産婦人科で診察・治療(手術や薬物治療)が必要になります。
特に普段から生理不順の方は、「生理が遅れて不正出血が続いているだけ」と思い込み、異所性妊娠に気づくのが遅れる危険があります。妊娠検査薬で陽性が出たのに子宮内エコーで胎嚢が見えないと言われた場合や、妊娠初期に不正出血が続き下腹部痛がある場合には、必ず医療機関で詳しい検査を受けてください。
③:切迫流産
切迫流産とは、妊娠22週未満で妊娠が継続しているにもかかわらず、流産が起きるかもしれない兆候(出血や腹痛など)がある状態を言います。
簡単に言えば「流産の一歩手前の状態」で、まだ胎児は子宮内に生存しています。症状としては、性器出血(腟からの出血)と下腹部痛が主なサインです。出血量は少量の場合もあれば、生理以上に出る場合もあります。腹痛も軽い生理痛程度から、流産が進行しつつある場合は強い痛みまで様々です。切迫流産の場合、頚管(子宮の入口)はまだ開いていませんが、この状態から出血や痛みが強まり頚管が開大してしまうと流産が確定してしまいます。
切迫流産と診断された場合、安静に過ごすよう指示されるのが一般的です。ただし現時点で、切迫流産を確実に食い止める特効薬や確実な治療法はありません。よく流産予防に黄体ホルモン剤(プロゲステロン)や張り止めの薬(子宮収縮抑制剤)が処方されることがありますが、その効果には限界があります。安静にしたり薬を使ったりしても流産を完全に予防できる明確な証拠はないとされています。
しかしながら、安静にすること自体は母体の負担を減らし状態悪化を防ぐ意味で推奨されます。また、重い物を持つ・長時間立ちっぱなし・激しい運動をする・性交渉をする等の負荷は避けた方が良いでしょう。必要に応じて職場への配慮(勤務軽減)をお願いすることも検討してください。
切迫流産といわれた場合は、定期的に超音波検査で胎児の心拍や発育を確認しながら経過を見ていきます。出血が止まり胎児が順調に育てば、妊娠継続となります。一方、出血量が増えたり胎児の心拍が停止してしまった場合は流産確定となり、子宮内容物を排出させる処置(流産手術)が必要になります。いずれの場合も医師の指示に従い、適切な対応を取ることが大切です。
④:胞状奇胎
胞状奇胎は、受精卵の染色体異常により胎盤のもとになる絨毛組織が異常増殖してしまう疾患です。受精卵由来の異常増殖なので「妊娠の一種」ではありますが、正常な胎児は存在せず、子宮内がブドウの房のような小さな嚢胞で満たされるのが特徴です。この状態になると、妊娠継続は不可能であるだけでなく、大量の性器出血や妊娠悪阻(つわり)の重症化、子癇様発作など様々な合併症を引き起こすことがあります。妊娠検査薬は強陽性(hCGホルモン値が非常に高いため)になりますが、超音波検査では胎嚢や胎児心拍は確認できず、代わりに子宮内いっぱいに雪のような粒状のエコー像が見られます。
胞状奇胎が判明した場合、できるだけ早期に子宮内容除去術(掻爬〈そうは〉手術)を行って異常増殖した組織を取り除く必要があります。放置すると絨毛組織がさらに増殖して侵入奇胎や絨毛癌といった悪性化を起こすリスクがあるためです。手術後もhCG値が正常に下がるかどうかを慎重に経過観察する必要があります。胞状奇胎は頻度自体は高くありませんが(妊娠のおよそ0.1〜0.2%程度といわれます)、妊娠初期の不正出血の原因として知っておくべき重要な疾患です。妊娠初期に異常にhCGが高値である、つわりが重篤化している、子宮が妊娠週数の割に極端に大きい、といった所見がある場合に疑われます。自己判断は難しいため、医師の指摘があれば速やかに治療を受けましょう。
⑤:前置胎盤
前置胎盤とは、胎盤が子宮口(子宮の出口)を覆うように低い位置に付着している状態です。通常、胎盤は子宮の上部に位置しますが、前置胎盤では下部にあるため、胎盤が子宮口を塞ぐ形になります。前置胎盤になると妊娠中期〜後期にかけて無痛性の出血(痛みを伴わない出血)を起こしやすく、分娩直前にも大量出血のリスクがあります。妊娠初期(超初期)においては前置胎盤そのものが原因で出血することは多くありません。しかし、妊娠が進むにつれて胎盤が大きくなると子宮口付近への刺激で出血しやすくなるため、妊娠初期の段階で胎盤が低い位置にあると分かった場合は注意して経過を見る必要があります。
前置胎盤は超音波検査で診断されます。妊娠中期の健診で前置胎盤気味と言われても、子宮が大きくなるにつれて胎盤が相対的に上に移動し(胎盤が動くというより子宮の伸展で位置関係が変わる)、後に問題なくなるケースもあります。一方、妊娠後期まで前置胎盤が続いた場合、母子の安全のため帝王切開による分娩が選択されます。いずれにせよ、前置胎盤そのものは主に妊娠後期の出血原因であり、妊娠初期の出血としてはまれなケースです。ただし初期に少量の出血が続き、検査で前置胎盤と判明した場合には安静度を高めに維持しつつ妊娠経過を追うことになります。

ここまでが妊娠に関連して起こる出血で、注意が必要なものです。続いて、妊娠とは関係のない出血で、妊娠時期にも起こるものに関して簡単に説明します。
⑥:子宮頸部びらん
エストロゲンの分泌量が増加することで、子宮頸部の円柱上皮が腟側(外側)に向くことによって生じます。びらん部分は物理的な刺激に弱いので性交渉などの刺激で出血が起こることもあります。妊娠時期に特有のものではないですが、女性ホルモンの分泌が上昇するため起こりやすいとされます。
⑦:子宮頸管ポリープ
経産婦さんに多いとされています。
子宮頸部にポリープという良性の腫瘍があって、物理的な刺激で擦れて出血する場合があります。これも特に妊娠とはあまり関係がありませんが、出産時に邪魔になる場合があるので大きさなどによっては事前に切除することもあります。
妊娠初期に出血した場合に確認すべきチェックポイント
妊娠初期に出血が起きた際に、どの程度緊急性があるかを判断するために確認しておきたいポイントがあります。具体的には、「出血の色」「出血の量と続く期間」「腹痛の有無と程度」の3点です。これらによって、着床出血など心配のいらないケースなのか、すぐ受診すべきケースなのかがおおよそ判断できます。それぞれのチェックポイントについて解説します。
①:出血の色をチェック
まず出血している血液の色を確認しましょう。茶色や暗赤色の出血の場合、時間が経った血液(古い出血)が体外に出てきていると考えられます。茶褐色のおりもの程度であれば、ごく少量の出血が酸化した可能性が高く、緊急度は高くありません。ただし茶色であっても長く続く場合は念のため受診しましょう。一方、鮮やかな赤い色の出血(鮮血)が見られる場合は、比較的新しい出血であることを示唆します。鮮血がポタポタと垂れる・トイレで伝い落ちるほど出ている場合や、生理用ナプキンが真っ赤に染まる場合は、着床出血のような少量出血ではなく異常な出血と考えられます。
また、ピンク色の出血は頸部びらんやポリープなど子宮の入口からの少量出血によく見られます。おりものにうっすら血が混じってピンク〜薄赤色に見える程度であれば過度に心配はいりません。
②:出血の量と期間をチェック
次に出血量と出血が続く期間を確認しましょう。これは非常に重要なポイントです。出血量がごく少量で、短期間で止まった場合は着床出血など問題のないケースが多いです。目安としては、生理用ナプキンがほとんど汚れない程度のシミが1〜2日ついただけで止まった、といった場合は心配ないでしょう。一方、生理と同じかそれ以上の量の出血が出ている場合は注意が必要です。特にナプキンが1時間もたたず真っ赤に染まる、レバーのような血塊が出る、といった場合は切迫流産や進行流産の可能性が高くなります。
出血が続く日数も重要です。単発で一度出血しただけで止まれば問題ないケースが多いですが、何日も出血がだらだと続く場合は異常の可能性があります。例えば着床出血であれば通常1〜3日程度で止まりますが、それ以上長引く場合は別の原因が考えられます。また、最初は少量だった出血が時間とともに増えてくる場合も注意信号です。
③:腹痛の有無と程度をチェック
腹痛(下腹部痛)があるかどうか、その痛みの強さも重要なチェックポイントです。妊娠初期には軽い下腹部の違和感やチクチクとした痛みを感じることがあり、これ自体は子宮が大きくなる過程で起こる生理的な痛みの場合があります。しかし、出血を伴っている腹痛となると話は別です。基本的に痛みを伴う出血は注意が必要です。
痛みの程度を見てみましょう。軽い生理痛程度の鈍い痛みであれば、切迫流産など初期のトラブルでみられることがありますが、すぐに流産が進行するとは限りません。安静にして痛みが和らぐか様子を見ましょう。一方、耐え難いほどの激しい痛みや、冷や汗をかく・立っていられないほどの痛みがある場合は緊急です。流産が進行していたり、異所性妊娠で破裂しかかっていたりする可能性があります。特に片側の下腹部に鋭い痛みが集中する場合や、肩先に痛みを感じる場合(内出血が広がって横隔膜を刺激している兆候)は要注意です。こうした強い痛みを伴う出血がある時は、夜間であっても迷わず救急受診してください。
逆に出血はあるが痛みが全くないという場合、例えば着床出血や頸部からの出血では痛みを伴わないことが多く、緊急性は低めです。
産科外来を予約する妊娠初期の出血に関するよくある質問
妊娠初期に出血しない場合も流産のリスクはある?
出血がない場合でも流産の可能性は15%程度はあります。
出血が必ずしも流産のしるしではないので覚えておきましょう。
妊娠初期に性行為や自慰行為をした際に出血した場合は大丈夫?
妊娠中はエストロゲンの作用で子宮頸部のびらんが起きやすいです。
この際にセックスなどで物理的な刺激が追加されると出血しやすいです。ただこの場合は胎児に大きな影響はないことが多いです。
どんな時に病院にかかったらいいですか?
非常に難しい質問で、正解はないのですが、腹痛を伴う出血は必ず受診です。
そのほかの出血は、量が多い時、持続的に出て止まらない場合も必ず受診です。
着床出血と生理の違いは?見分ける方法はありますか?
はい、着床出血は生理と比べて「時期・量・色・期間」の点で異なります。 着床出血は妊娠超初期(生理予定日前後)に起こり、出血量はごく少量で色は薄いピンク〜茶色であることが多く、1〜2日程度で止まるという特徴があります。一方、生理は通常5日前後続き、初日から2日目にかけて量が増え経血量が多くなり、色も鮮紅色〜暗赤色であることが多いです。また生理には経血の塊が出たり強い生理痛を伴うことがありますが、着床出血ではそのような症状は通常みられません。
妊娠初期に出血している間の過ごし方は?安静にすべきですか?
基本的には安静第一で過ごし、無理をしないことが大切です。 妊娠初期に出血が起きた場合、たとえ少量でも念のため激しい運動や重労働は避けましょう。家事や仕事も可能な範囲で負担を減らし、できる限り体を休めてください。横になって安静にしていると出血が治まるケースも多いです。特に切迫流産と診断された場合は医師から自宅安静の指示がでます。入浴も長湯は避けシャワーのみにするなど、体に負担をかけないようにしましょう。
まとめ:妊娠初期に出血が起きた場合は落ち着いて医師に相談しましょう
妊娠初期の出血は決して珍しいものではなく、多くは着床出血など心配のいらないケースです。少量の出血であれば深呼吸して落ち着き、まずは安静に様子を見ても大丈夫な場合が多いでしょう。その後の妊婦健診で状況を伝えれば問題ありません。実際に出血だけで流産になるとは限らず、多くの妊婦さんはその後無事に妊娠を継続しています。
しかし一方で、妊娠初期の不正出血の中には注意すべき異常もあります。腹痛を伴う大量出血や鮮血が続く場合などは、流産や子宮外妊娠など放置できない状況の可能性があります。このような症状があればできるだけ早く医療機関を受診し、適切な処置を受けてください。
大切なのは、不安なときほど一人で悩まず専門家に相談することです。妊娠初期はただでさえ不安になりがちな時期です。出血に気づいて動揺するのも当然ですが、自己判断で悲観しすぎないようにしましょう。まずは今回ご紹介したポイントを参考に状況を把握し、必要に応じてかかりつけ医に連絡してください。医師に相談すれば適切な検査や対応策を示してもらえます。
妊婦さんと赤ちゃんの状態を最もよく知っているのは主治医です。気になる症状があれば遠慮せず質問し、指示に従ってください。正しい情報に基づいて行動すれば過度に怖がる必要はありません。妊娠初期の出血を乗り越え、どうか前向きな気持ちで赤ちゃんの成長を見守っていきましょう。
レディースクリニックなみなみの妊婦健診のページ 産科外来を予約する妊娠初期全体の症状や流れを把握しておくことも不安解消に役立ちます。「妊娠初期症状のまとめ記事」で全体像に目を通しておきましょう👇️。
参考文献

執筆者兼監修者プロフィール
東大産婦人科に入局後、長野県立こども病院、虎の門病院、関東労災病院、東京警察病院、東京都立豊島病院、東大病院など複数の病院勤務を経てレディースクリニックなみなみ院長に就任。
資格
- 医学博士
- 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
- FMF認定超音波医
…続きを見る
普段と異なり、妊娠時期に出血が起こると普段のちょっとした不正出血と同じような量や性状でも、本当に大丈夫なのかなと心配になるのが普通の反応です。まずはご自身の体調に変わりはないかもしっかり把握して、あまり抱え込みすぎずにかかりつけ医に相談しましょう。