
執筆者兼監修者プロフィール
東大産婦人科に入局後、長野県立こども病院、虎の門病院、関東労災病院、東京警察病院、東京都立豊島病院、東大病院など複数の病院勤務を経てレディースクリニックなみなみ院長に就任。
資格
- 医学博士
- 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
- FMF認定超音波医
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- 胎児の心拍は超音波検査で早ければ妊娠5週後半から確認可能ですが、一般的には妊娠6~7週頃にほとんどの妊婦さんで確認できます。
- 排卵時期のずれなどで実際の妊娠週数が想定より若い場合もあり、7週目には正常妊娠ならほぼ100%心拍が確認できたとの報告もあります。6週で見えなくても異常と即断せず、1週間程度あけて再検査することが一般的です。
- 心拍確認後は流産リスクが大きく低下します。例えばある研究では、妊娠6週での流産率約9.4%が7週では4.2%、8週まで進めば1.5%程度まで下がったと報告されています。心拍が確認できれば赤ちゃんが順調に育っている可能性が高まります。
- 心拍確認までの妊娠初期は体調管理が大切です。葉酸サプリメントを1日400µg摂取することが厚生労働省から推奨されており、喫煙や飲酒は避けましょう。強い腹痛や大量の出血など異常症状があれば、心拍確認の予定日を待たずに早めに受診してください。
妊娠がわかったら、次に待ち遠しいイベントの一つが赤ちゃんの「心拍確認」ですよね。「赤ちゃんの心拍はいつ確認できるんだろう?ちゃんと育っているかな…」と不安に感じる妊婦さんも多いのではないでしょうか。特に初めての妊娠では、検査薬で陽性反応が出た後から心拍が確認できるまでの間がとても長く感じられるものです。結論から言えば、赤ちゃんの心拍が超音波検査で確認できる時期は妊娠6~7週頃が目安です。ただし個人差があり、受精のタイミングが遅れた場合などはもう少し遅れることもあります。妊娠5週前後では子宮内に胎嚢(赤ちゃんが入った袋)は見えても心拍までは確認できないのが普通で、心拍確認のためには胎嚢確認から1~2週間待つ必要があります。
1. 赤ちゃんの心拍確認はいつできる?どのように確認するの?
胎児の心拍(心臓の拍動)は、超音波検査によって視覚的に確認します。一般的に経腟超音波検査(膣から入れるエコー)なら妊娠5週後半~6週頃から、経腹超音波検査(お腹の上からのエコー)ではもう少し遅れて妊娠8週前後から確認できるようになります。まず妊娠5週前後で子宮内に胎嚢(たいのう)という黒い丸い袋が映り、その中に妊娠6週頃になると胎芽(たいが:赤ちゃんの元になる胚)が現れます。胎芽の中でピコピコと点滅するように動いているのが赤ちゃんの心臓で、この動きを捉えることで心拍確認となります。心拍が確認できた時点で妊娠は順調に子宮内で継続していることが確かめられ、医師も「赤ちゃんの心拍確認できましたよ」と伝えてくれるでしょう。
では具体的に「心拍確認ができるタイミング」について、もう少し詳しく見てみましょう。先述のとおり、経腟エコーでは6週台でほとんどの場合に心拍を確認できますが、これはあくまで最終月経から数えた妊娠週数上の目安です。実際には排卵日が遅れたり生理周期が不規則だったりすると、同じ「妊娠6週目」でも胎児の成長度合いがずれることがあります。たとえば生理不順で排卵が1週間程度遅れた場合、最終月経から6週目でも胎児はまだ5週相当の大きさかもしれません。胎嚢が確認できてから心拍確認までに約2週間要するケースもありえます。そのため、医療機関では通常妊娠7~8週頃に初回の超音波検査を行い、確実に心拍が確認できる時期を狙って妊娠の継続を確認します。早く赤ちゃんを見たい気持ちはあると思いますが、あまりにも早い週数(4~5週など)に受診しても「胎嚢すら見えない」「胎嚢は見えたけど心拍がない」と逆に不安が増えてしまうことが多いです。心拍確認は慌てず適切なタイミングで受診することが大切と言えるでしょう。
なお、超音波で確認される赤ちゃんの心拍数(1分間に何回打つか)は妊娠週数によって変化します。心拍は始まったばかりの妊娠5週目頃には90~100bpm(拍動/分)とゆっくりですが、その後急激に増加して9週頃に170~180bpm前後でピークに達します。その後は少しずつ落ち着いて、妊娠16週頃には約150bpmになることが知られています。成人の安静時心拍数(60~100bpm程度)と比べると非常に速いですが、胎児の心臓は小さく一回に送り出せる血液量が少ないため、全身に血液を巡らせるのにより高速で拍動する必要があるのです。超音波検査では心拍数も測定できますが、妊娠初期(特に5~6週)は多少ゆっくりめでも正常範囲なので過度に心配しないでくださいね。
2. 心拍確認までの過ごし方:妊娠初期にやるべきことは?
妊娠が判明してから心拍確認までの数週間は、嬉しさと同時に不安も大きい時期です。赤ちゃんの心拍が確認できるまでは「本当に無事育っているかな…」と落ち着かない気持ちになるものですが、その間にお母さんができる大切なこともいくつかあります。ここでは、心拍確認を待つ妊娠超初期~初期の過ごし方について押さえておきましょう。
葉酸の摂取
妊娠がわかったら最優先で始めたいのが葉酸サプリの摂取です。葉酸は胎児の正常な発育に欠かせないビタミンB群の一種で、特に妊娠初期の神経管の発生に必要になります。厚生労働省は妊娠を計画している女性や妊娠初期の女性は1日400µgの葉酸を追加摂取することを推奨しており、葉酸を十分に摂ることで胎児の神経管閉鎖障害(無脳症や二分脊椎など)のリスクを低減できるとされています。妊娠初期(~妊娠3ヶ月頃)までは特に葉酸が重要なので、サプリメントを活用して必要量を補給しましょう。
生活習慣の注意
胎児の心拍が確認できる頃までは、いわば赤ちゃんの大事な器官形成が始まる時期です。アルコールやタバコは胎児の発育に悪影響を及ぼす可能性があるため、この時期から完全に絶ちましょう。カフェインも大量摂取は避け、1日200mg(コーヒー約2杯程度)までに控えるのが無難です。また、体を冷やさないようにし十分な睡眠とバランスの良い食事を心がけてください。適度な運動は問題ありませんが、過度な激しい運動や重い物を持つことは避け、安静第一で過ごします。特につわりが始まっている人は無理せず、つらい時は家事や仕事を周囲に頼るなどして休息を優先しましょう。
妊娠初期の「栄養や食事について」のコラムもぜひご覧ください。他の栄養などについても紹介しています👇️
レディースクリニックなみなみの妊娠初期やつわり中の栄養のコラムはこちら初診のタイミング
産婦人科への初めての受診は妊娠6~8週頃が推奨されます。あまり早く行き過ぎると心拍が確認できず不安になるためです。目安として、生理予定日から2週間以上経ってから受診すると胎嚢や心拍が確認しやすくなります。ただし下腹部の激痛や多量の出血など緊急性の高い症状がある場合は、週数に関わらずすぐ医療機関へ連絡・受診してください。腹痛や出血は妊娠初期によくあるマイナートラブルの場合も多いですが、中には子宮外妊娠(異所性妊娠)や流産の初期症状の可能性もあります。特に意識が遠のくほどの出血や耐え難い痛みがある際は夜間でも躊躇せず救急受診しましょう。軽い痛みや少量の出血であれば安静にして様子を見つつ、心配な場合は次回健診時に相談すれば大丈夫です。
3. 心拍確認後に受けられる検査:新型出生前診断(NIPT)
赤ちゃんの心拍が確認でき、妊娠が順調に進んでいることがわかるとホッとしますよね。その次の関心事として、「赤ちゃんの健康状態を詳しく知りたい」と考える方もいるのではないでしょうか。近年は希望者を対象に新型出生前診断(NIPT:Non-Invasive Prenatal Testing)を妊娠初期に受けることが可能です。NIPTとは、妊娠10週以降に採血(母体血)をするだけで胎児の染色体異常のリスクを調べられる検査です。具体的には、ダウン症候群(21トリソミー)や18トリソミー、13トリソミーといった代表的な染色体数の異常について、赤ちゃんがそれらを持っている可能性が高いか低いかを高い精度でスクリーニングできます。採血のみで行い母体や胎児への直接的なリスクはなく、安全性の高い検査方法です。
NIPTを受けるタイミングは早ければ妊娠10週0日から可能ですが、実は「早ければ早いほど良い」というものではありません。妊娠10週を過ぎると胎児由来のDNA量が増えて検査精度が安定するため、NIPTは妊娠10~12週頃に受けるのがベストとされています。逆に妊娠9週台前半などあまりに早すぎる時期に検査をすると、胎児のDNA量が不十分で正確な結果が出ず、検体の再提出(判定保留)になるリスクが高まります。また日本では妊娠22週以降は人工中絶が法律上できなくなるため、あまり妊娠後期に近い時期に検査を受けて万一異常の可能性が判明しても選択肢が限られてしまいます。以上のことから、NIPTを希望する場合は妊娠10~12週の間(特に11週頃)に計画すると良いでしょう。
なお、NIPTは原則として赤ちゃんの心拍が確認された後に実施されます。妊娠初期は流産の可能性があるため、検査前に超音波で赤ちゃんの生存を確認してから採血を行うのが一般的な手順です。当院でもNIPT当日にまず心拍確認を行ってから検査を実施しています。赤ちゃんが元気に育っていることを確認した上で行うからこそ意味のある検査ですので、心拍確認が取れていない段階で焦って予約する必要はありません。
当院の「NIPT」のページもぜひご覧ください。他の出生前検査などについても紹介しています👇️
レディースクリニックなみなみのNIPTのページはこちら4. つわりがつらいときは無理しないで:ボンジェスタによる治療
妊娠初期のもう一つの大きな課題といえば「つわり(悪阻)」です。個人差はありますが、多くの妊婦さんが妊娠5~6週頃から吐き気や食欲不振などのつわり症状を経験し、妊娠12~16週頃まで続くことが知られています。軽い吐き気程度で収まる人もいれば、重度の吐き気・嘔吐で水すら飲めなくなる「妊娠悪阻」と呼ばれる状態になる人もいます。つわりは一時的なものとはいえ、その間に妊婦さんの体力や精神力を奪ってしまうため、「つわりは我慢するしかない」と無理を重ねるのは望ましくありません。当院では「つわりを必要以上に我慢しなくていい」という考えのもと、妊娠中でも安全に使えるお薬による治療も行っています。
注目されているつわり治療薬「ボンジェスタ」をご存知でしょうか。ボンジェスタ(Bonjesta)はアメリカFDAに承認された妊婦専用の吐き気止め薬で、有効成分は抗ヒスタミン薬のドキシラミンとビタミンB6(ピリドキシン)です。この2つの成分の組み合わせは1950年代からつわり治療に用いられてきた実績があり、安全性・有効性が多くの研究で確認されています。ボンジェスタは徐放性製剤(徐々に薬効成分が放出される錠剤)で、就寝前に1錠服用すると翌朝~日中のつわり症状を和らげてくれる設計になっています。臨床試験でもプラセボ(偽薬)に比べて有意に吐き気・嘔吐回数が減少し、特につらい朝方の吐き気に効果的とされています。
当院の「つわり外来」についてもぜひご覧ください👇️
レディースクリニックなみなみのつわり外来のページはこちら5. まとめ:赤ちゃんの心拍確認を待つあなたへ
妊娠超初期~初期は、嬉しさと同時に不安も多く押し寄せる時期です。「赤ちゃんの心拍確認」が一つの大きなゴールになっている方も多いでしょう。赤ちゃんの心拍は通常、妊娠7週頃までには確認できます。もし6週で見えなくても落ち着いて、医師と相談しつつ適切なタイミングで再チェックしてもらえば大丈夫です。心拍が確認できれば、赤ちゃんがしっかり子宮内で育っている証拠。流産の確率も大きく下がり、安心して次のステップに進めます。心拍確認後は母子手帳を受け取って本格的に妊婦健診がスタートし、必要に応じてNIPTなどの検査を計画したり、出産に向けた準備が始まります。妊娠初期の不安や体調不良とうまく付き合いながら、赤ちゃんの成長を信じて見守っていきましょう。私たちレディースクリニックなみなみのスタッフ一同、妊婦さんと赤ちゃんの健やかな経過を心よりサポートいたします。いつでもお気軽にご相談くださいね。
胎児の心拍確認に関するよくある質問
妊娠初期、心拍確認はいつできますか?
心拍は一般的に妊娠6~7週頃に確認できます。早ければ妊娠5週後半から見えることもありますが、通常6週以降が目安です。
6週で心拍が確認できなかった場合はどうすればいい?
6週で心拍が確認できない場合もありますが、焦らず1週間程度あけて再度検査を受けましょう。排卵日や着床のタイミングに個人差があるため、確認までに時間がかかることがあります。
心拍確認後にNIPTはいつ受けるべきですか?
NIPT(新型出生前診断)は妊娠10~16週頃が最適です。妊娠10週以降で赤ちゃんの心拍確認後に受けることが一般的です。
心拍確認後につわりがひどい場合、どうすればよいですか?
つわりがひどい場合、無理せず休むことが大切です。必要に応じて、当院では安全なつわり治療薬(ボンジェスタ)を処方しています。
妊娠初期に気をつけるべき生活習慣は?
妊娠初期は禁煙、禁酒が必須です。また、カフェイン摂取は1日200mg以内に抑え、葉酸を1日400µg摂取することが推奨されています。
心拍が確認できた後の流れはどうなりますか?
心拍が確認できた後は、次に母子手帳を受け取り、妊婦健診が本格的にスタートします。希望があれば、NIPTなどの出生前診断を受けることも可能です。

執筆者兼監修者プロフィール
東大産婦人科に入局後、長野県立こども病院、虎の門病院、関東労災病院、東京警察病院、東京都立豊島病院、東大病院など複数の病院勤務を経てレディースクリニックなみなみ院長に就任。
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- 医学博士
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