レディースクリニック なみなみ

妊娠初期症状は性行為後いつから?セルフチェックや検査のタイミングを解説

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クリニックなみなみ 院長 叶谷愛弓

執筆者兼監修者プロフィール

レディースクリニックなみなみ
院長 叶谷愛弓

東大産婦人科に入局後、長野県立こども病院、虎の門病院、関東労災病院、東京警察病院、東京都立豊島病院、東大病院など複数の病院勤務を経てレディースクリニックなみなみ院長に就任。

資格

  • 医学博士
  • 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
  • FMF認定超音波医
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  • 多くの場合、妊娠初期症状は性行為から約2~3週間後に現れ始めます。これは受精卵の着床が完了し、体内で妊娠維持ホルモン(hCG)が本格的に分泌されるタイミングです。
  • 性行為後1~2週間前後には、ごく初期の兆候(妊娠超初期症状が現れることもあります。例えば、少量の着床出血や軽い下腹部痛などですが、個人差が大きく何も感じない人も少なくありません。
  • 生理前の症状と妊娠初期症状は似ていますが、生理予定日を過ぎても症状が続く場合は妊娠の可能性があります。胸の張りや腹痛が生理予定日以降も治まらない場合などは要注意です。
  • 妊娠の可能性がある場合、性行為から3週間経過した頃(生理予定日から1週間後)に市販の妊娠検査薬で確認できます。フライング検査の結果だけに頼らず、時期が来たら通常の検査薬でも確認しましょう。
  • 妊娠初期は母体と赤ちゃんの大切な時期です。症状に気づいたら飲酒・喫煙を控える、無理な運動を避けるなど体調に配慮して過ごし、不安なことがあれば早めに産婦人科に相談しましょう。

妊娠初期症状が性行為後いつから現れるのか、不安になりますよね。 「もしかして妊娠したのかな…」「妊娠したかどうか判断できる症状はあるの?」と心配になる方も多いでしょう。本記事では、性行為後いつ頃から妊娠初期症状がみられるのかを中心に、妊娠超初期の兆候や症状のセルフチェック方法、妊娠を確認するタイミングなどについて産婦人科専門医がわかりやすく解説します。不安な気持ちに寄り添いながら、正しい知識と対処法をお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。

なお、「妊娠したかもしれない…」と感じた時は、インターネットで調べるだけでなく早めに産婦人科を受診して確認することをおすすめします。お腹の中の赤ちゃんのためにも、ひとりで悩まず専門家に相談しましょう。

妊娠したかもなと妊娠検査薬を手にしている時、さまざまな思いがあると思います。
そんな時にwebなどで色々調べれる時代にはなりましたが、しっかり検査をして、ホッとするためだけでもいいので産婦人科医に頼ってほしいなと考えています。レディースクリニックなみなみに我慢せずに、相談してください。

目次
  1. 1 妊娠初期症状は性行為後いつからみられる?
    1. 1.1 性行為から妊娠が成立するまでのタイムライン
    2. 1.2 性行為から妊娠成立までの流れ(受精・着床のタイミング)
    3. 1.3 妊娠超初期(性行為後1〜2週間)に現れる兆候
    4. 1.4 妊娠初期(性行為後2〜3週間)に現れる主な症状
  2. 2 妊娠初期症状はどんなものがある?
  3. 3 生理前の症状と妊娠症状の違い
  4. 4 妊娠を確認する方法は?
    1. 4.1 ①:妊娠検査薬を使用する
    2. 4.2 ②:基礎体温で比較する
    3. 4.3 ③:産婦人科を受診する
  5. 5 フライング検査って何?
    1. 5.1 フライング検査のメリット
    2. 5.2 フライング検査のデメリット
  6. 6 妊娠初期症状がみられたときの注意点
    1. 6.1 ①:飲酒・喫煙・カフェインの摂取を控える
    2. 6.2 ②:性行為を控える必要は?
    3. 6.3 ③:激しい運動を控える必要は?
    4. 6.4 ③:薬を服用している場合は医師に相談する
  7. 7 妊娠の可能性がある場合の緊急対処法:避妊ピルと中絶の選択肢
    1. 7.1 緊急避妊ピルとは?効果と使用可能なタイミング
    2. 7.2 中絶手術の種類と期間:初期中絶と中期中絶の違い
  8. 8 妊娠初期症状と性行為後の妊娠に関するよくある質問
    1. 8.1 妊娠初期症状は性行為後翌日に出る?
    2. 8.2 妊娠初期と生理前の違いは?
    3. 8.3 妊娠初期症状がみられるまでピルを服用していたけど大丈夫?
    4. 8.4 妊娠検査薬のフライング検査の結果だけで判断しても良いですか?
    5. 8.5 妊娠初期症状がまったく感じない場合、どうすればよいですか?
    6. 8.6 性行為後すぐに妊娠検査薬を使っても正確な結果は得られますか?
    7. 8.7 妊娠初期症状が出ている場合、普段と違う体調管理が必要でしょうか?
  9. 9 まとめ:妊娠初期症状は性行為後3週間程度で現れることが多い

妊娠初期症状は性行為後いつからみられる?

性行為から妊娠が成立するまでのタイムライン

妊娠初期症状は一般的に、性行為後約2〜3週間で現れ始めるとされています。ただし、厳密に言えば以下の2段階に分けて考えると分かりやすいです。

  1. 妊娠超初期症状(妊娠1~2週相当): 性交後1〜2週間ほどで起こる着床による兆候
  2. 妊娠初期症状(妊娠2~3週以降): 性交後2〜3週間ほどで本格的に現れる、いわゆるつわりなどの症状
妊娠初期症状が性行為後いつ出るのかを解説している図

まず、赤ちゃんができるまでの体内での流れを確認しましょう。性行為をしてから妊娠が成立するまでには、次のようなステップがあります。

  1. 排卵と受精: 女性の排卵のタイミングで卵巣から卵子が放出されます。この時期にタイミングよく性行為があると、体内に射精された精子が卵管で卵子と出会い受精します(精子が卵子に入り込むことです)。卵子の寿命は排卵後約1日ですが、精子は数日生きられるため、排卵の前後に性行為があれば受精が起こり得ます。受精自体は排卵から1日以内(性行為当日中)に起こると考えられています。
  2. 受精卵の移動: 受精してできた受精卵(受精した卵子)は、細胞分裂を繰り返しながらゆっくり卵管を進み子宮へ向かいます。子宮に到着するまでにおよそ5~6日ほどかかります。
  3. 着床: 受精卵が子宮まで辿り着くと、子宮内膜(子宮の内側の壁)にもぐり込んで着床します。着床が始まるのは排卵から約6~7日後で、着床が完了するまでさらに2~3日かかります。妊娠の成立とは、この着床が完了した状態を指します。つまり、性行為(受精)から妊娠成立まではだいたい9~13日ほど要するのが一般的です。
  4. 妊娠ホルモン(hCG)の分泌開始: 着床が無事に完了すると、受精卵由来の胎芽からhCGホルモン(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)という妊娠維持に必要なホルモンが分泌され始めます。このhCGの作用で生理(月経)が止まり、妊娠に伴うさまざまな体調変化が少しずつ起こり始めます。

性行為から妊娠成立までの流れ(受精・着床のタイミング)

まず、赤ちゃんができるまでの体の中の流れを確認しましょう。性行為をしてから妊娠が成立するまでには、次のようなステップがあります。

  1. 排卵と受精: 女性の排卵のタイミングで卵巣から卵子が放出されます。タイミングよく性行為があると、体内に射精された精子が卵管で卵子と出会い、受精します(精子が卵子に入り込むことです)。卵子の寿命は排卵後約1日ですが、精子は数日生きられるので、排卵の前後で受精が起こり得ます。受精自体は排卵から1日以内(性行為したその日中)に起こると考えられています​。
  2. 受精卵の移動: 受精してできた受精卵(受精した卵子)は細胞分裂を繰り返しながらゆっくり卵管を進み、子宮へ向かいます。子宮に到着するまでにおよそ5~6日ほどかかります。
  3. 着床: 受精卵が子宮までたどり着くと、子宮の内側の壁に潜り込んで着床します(子宮内膜に受精卵がくっついて根を下ろすイメージです)。着床が始まるのは排卵から約6~7日後で、着床が完了するまでさらに2~3日かかります。妊娠の成立とは、この着床が完了した状態を指します。つまり、性行為(受精)から妊娠成立まではだいたい9~13日ほどかかるのが一般的です。
  4. 妊娠ホルモンの分泌開始: 着床が無事に行われると、胎芽(受精卵)はhCGホルモンという妊娠の維持に必要なホルモンを出し始めます。このホルモンのおかげで生理(月経)が止まり、体には妊娠に伴うさまざまな変化が起こり始めます。

妊娠超初期(性行為後1〜2週間)に現れる兆候

妊娠が成立するかしないかというごく初期(受精後1〜2週間ほど)の時期に、人によっては「あれ、もしかして妊娠したかな?」というようなごく軽い兆候を感じることがあります。ただし症状の出方には個人差が大きく、全く何も感じない人も珍しくありません。感じたとしても生理前のちょっとした体調変化に似ているため、見過ごされることも多いです。主な兆候としては次のようなものがあります。

着床出血(ちゃくしょうしゅっけつ)

受精卵が子宮内膜にもぐり込む際に子宮の細かな血管が傷つき、少量の出血が起こる場合があります。これが着床出血です。タイミングはちょうど生理予定日ごろで、出血量はごくわずか(普段の生理と比べ極めて少量)なのが特徴です。出血の色は茶色っぽいか薄いピンク色で、1〜2日程度で止まります【52† 妊娠・出産 更新日: 2025/03/29 公開日: 2024/06/18 妊娠初期の出血・不正出血は大丈夫?原因と着床出血との違い、流産の可能性を解説】。生理のタイミングと重なるため単なる生理と勘違いしやすいですが、通常の生理より格段に量が少なく期間も短い点が異なります。なお、着床出血が全ての妊婦に起こるわけではありません。出血がなくても妊娠していないとは言い切れませんので注意してください。

妊娠初期の出血についてまとめた以下の記事「妊娠初期の出血・不正出血は大丈夫?原因と着床出血との違い、流産の可能性を解説」も合わせて参考にしてください👇️。

軽い腹痛や張り

生理痛とは少し違うチクチク・ピリピリしたような軽い下腹部の痛みや違和感を感じる人もいます。これを感じた場合「着床痛(ちゃくしょうつう)」と呼ぶこともありますが、医学的に明確な根拠がある症状名ではありません。着床の頃に下腹部の軽い痛みを感じても、それ自体は異常ではなく一時的なものです。ただし、激しい腹痛や長引く痛み、出血を伴う場合は早めに医療機関を受診しましょう。

妊娠初期の腹痛についてまとめた以下の記事「妊娠初期症状の腹痛は危険信号?産婦人科専門医が教える症状別対処法と受診の目安」も合わせて参考にしてください👇️。

妊娠初期(性行為後2〜3週間)に現れる主な症状

妊娠が成立してからさらに少し経ち、妊娠超初期を過ぎた頃(性行為後2〜3週間、ちょうど生理が来ないと気付く時期以降)になると、体は本格的に“妊娠モード”に入ります。個人差はありますが、この頃から以下のような典型的な妊娠初期症状が現れることが多いです。

つわり(悪阻)

妊娠初期の代表的な症状が「つわり」です。主に吐き気やムカムカ感など胃のむかつきが起こり、食欲が落ちたり特定の匂いに敏感になることもあります。つわりが始まる時期には個人差がありますが、早い人では妊娠4週(性行為後約2週間)頃から始まり、一般的には妊娠5〜6週頃(性行為後3〜4週間)から感じ始める人が多いとされています。症状の強さや続く期間も人それぞれですが、「少し胃がむかつくな」という軽いものから、ひどい場合は嘔吐を伴うこともあります。朝起きたときに吐き気を感じる人が多いですが、人によっては一日中気持ち悪さが続く場合もあります。つわりは辛い症状ですが妊娠初期によくある現象なので、あまり不安になりすぎず、つらいときは無理をせずこまめに休みましょう。

つわりについてまとめた以下の記事「つわりはいつまで?原因・時期別の対策と体験談まで」も合わせて参考にしてください👇️。

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倦怠感(だるさ)

妊娠初期には妊娠を維持するホルモンが急増するため、強い眠気や体のだるさ(倦怠感)を感じやすくなります。少し動いただけで疲れやすかったり、昼間でも眠くて仕方がなくなることがあります。「最近なんだか異常に眠い」「ちょっと動いただけですぐ疲れる」と感じる場合、妊娠による体調変化の可能性があります。これもホルモンの影響で誰にでも起こりうることで、特別珍しいことではありません。つらいときはしっかり休息をとり、無理せず過ごしてくださいね。

胸の張り

妊娠すると乳腺が発達し始めるため、胸が張ったように感じたり乳房が敏感になることがあります。生理前にも胸の張りを感じることがありますが、妊娠初期の胸の張りはそれと似ているものの持続的で強めかもしれません。ブラジャーがきつく感じたり、胸に触れるとチクチク痛むような敏感さを覚える人もいます。これは赤ちゃんに備えて体が準備をしているサインですので、過度に心配しなくても大丈夫です。ただし胸の張りの感じ方も個人差が大きく、まったく感じない人もいます。

その他の症状

この時期には他にも、頻尿(トイレが近くなる)や食べ物の好みの変化、気分の浮き沈み(情緒不安定)などが現れることもあります。例えば「トイレがやたら近い」「急に特定の食べ物ばかり欲しくなる」「大好きだったものが受け付けなくなった」といった変化です。またホルモンバランスの影響で情緒不安定になりやすく、些細なことでイライラしたり泣きたくなったりする人もいます。これらも一時的なものですので、あまり心配しすぎずリラックスして過ごしましょう。

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妊娠初期症状はどんなものがある?

妊娠初期に現れやすい主な症状を妊娠の時期別にまとめました。ご自身の体調と照らし合わせてチェックしてみてください。

  • 妊娠超初期症状(性行為後1〜2週間)
    おりものの変化
    少量の出血(着床出血)
    下腹部の痛み・違和感
  • 妊娠初期症状(性行為後2〜3週間)
    基礎体温の高温期が続く・微熱
    胸の張り・乳首の痛み
    強い眠気・倦怠感
    頻尿
    頭痛
    腰痛
    情緒不安定(イライラしやすい)
    肌荒れ
    消化器の不調(便秘・胃のむかつき)
  • 妊娠4週以降の症状(生理予定日頃〜本格的な妊娠初期症状)
    生理が来ない
    吐き気・つわり
    匂いに敏感になる
    食欲の変化(食べ物の好みが変わる)
    唾液や鼻水が増える
    めまい・立ちくらみ

これらの中で複数の症状が当てはまり、かつ避妊をせず性行為を行っていた場合は妊娠の可能性があります。心当たりがある方は、早めに市販の妊娠検査薬で確認してみてもよいでしょう。初期症状の現れ方には個人差が大きく、症状が全く出ない人もいます。上記の症状はあくまで一例ですので、「いつもと体調の変化の出方が違うかどうか」を目安にしつつ、最終的には検査薬で確認するのが確実です。

つわりは我慢する必要はないです。

「薬に頼るのは良くないのでは?」と感じる妊婦さんも多いかもしれませんが、つわりがあまりにつらいときは無理に我慢せずお薬の力を借りることも大切です。近年、日本でもつわり専用の飲み薬「ボンジェスタ」が登場しています。ボンジェスタは妊娠中の吐き気・嘔吐を和らげるための薬で、元々は米国や欧州で広く使われてきたものです。つらい症状を抱え込まず、必要に応じて産婦人科で相談してみましょう。

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生理前の症状と妊娠症状の違い

生理前症状と妊娠初期症状を解説する図

妊娠初期症状は月経前のPMS(Premenstrual Syndrome:月経前症候群)の症状とよく似ています。胸の張り、下腹部痛、眠気、イライラ、食欲の変化など、多くの点で共通しているため妊娠の兆候と区別がつきにくいことがあります。

一般的にPMSは生理が始まる数日前から起こり、生理開始とともに症状が軽減・消失します。一方、妊娠初期症状は生理予定日頃から感じ始め、そのまま生理が来ない状態で症状が続くという違いがあります。例えば、胸の張りや腹痛が「生理予定日を過ぎても治まらない」場合は妊娠を疑う一つの目安になります。また、妊娠特有の兆候として着床出血(PMSで出血は起こりません)や、普段とは違う強い眠気・だるさなどが挙げられます。

とはいえ、人によっては妊娠していても症状が非常に軽かったり、逆に生理前に吐き気やめまいを感じる重いPMSの方もおり、症状だけで完全に見分けることは困難です。「症状の現れ方がいつもと違うかどうか」が一つのヒントにはなりますが、最終的には妊娠検査薬で確認するのが確実でしょう。不安な場合は無理に自己判断せず、早めに産婦人科で相談するのも賢明です

妊娠初期のおりものの変化についてまとめた以下の記事「妊娠初期のおりものの変化 | 生理前や性感染症との違いを解説」も合わせて参考にしてください👇️。

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妊娠を確認する方法は?

①:妊娠検査薬を使用する

妊娠かな?と思ったら、まずは市販の妊娠検査薬を使用して確認する方が多いでしょう。市販の妊娠検査薬も正しい時期に使用すれば99%以上の精度で結果が分かります。一般的には生理予定日から1週間後以降に検査するのが良いタイミングです。それより早すぎると正確な結果が出ず、陰性になってしまうことが多いので注意しましょう。市販の検査薬は、妊娠すると分泌が増えるhCGホルモンの量を検知して判定しています。そのため、正しく妊娠しているか最終判断するには産婦人科での超音波検査等が必要です。

妊娠反応陽性でもきちんと妊娠しているかはわからない?

妊娠検査薬で陽性反応が出て安心し、そのまましばらく受診しない方がたまにいます。しかし、陽性反応が出た場合でも、正常妊娠ではなく子宮外妊娠(異所性妊娠)といって卵管など子宮外の場所で妊娠していたり、あるいは胎児が順調に育たないケースもあり得ます。妊娠検査薬で陽性を確認できたら、必ず早めに産婦人科で検査を受け、正常に妊娠が進んでいるか確認しましょう。

②:基礎体温で比較する

普段から基礎体温をつけている方は、基礎体温の変化から妊娠に気付ける場合もあります。妊娠すると、高温期(体温が高い時期)がいつもより長く続き、生理も来なくなるという特徴があります。これは妊娠後に黄体ホルモン(プロゲステロン)の分泌が増え、その作用で体温が高温のまま維持されるためです。通常、排卵後の高温期は12~14日ほどで終わりますが、妊娠すると16日以上高温期が持続し、予定していた生理が起こらなくなります。このような基礎体温パターンが見られれば、妊娠の可能性が高いと判断できます。

③:産婦人科を受診する

最終的に妊娠を確定するには、産婦人科で診察を受ける必要があります。産婦人科では、超音波検査によって子宮内に胎嚢(赤ちゃんの入る袋)が確認できるか、さらに胎児の心拍が確認できるかを調べます。最終月経開始日から数えて妊娠5週後半~6週前半(妊娠1ヶ月半頃)より前に受診しても、胎嚢や心拍が確認できないため後日あらためて再受診となるケースが多いです。一方で、受診が遅すぎると子宮外妊娠などの異常妊娠の発見が遅れてしまう場合もあります。不安な場合は、妊娠5~6週頃に一度受診し、その後の受診タイミングについて主治医と相談しておくと安心です。

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フライング検査って何?

フライング検査とは、生理開始予定日の1週間後よりも早い時期に、早期妊娠検査薬を使って妊娠検査を行うことを指します。一般的な市販の妊娠検査薬は、生理開始予定日の1週間後から使用するのが適切とされていますが、フライング検査では生理予定日当日やその数日前から検査を試みます。通常より早期に使うため、hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)ホルモンの濃度が25mIU/mLで反応するものを使用します。これは一般的な妊娠検査薬(50mIU/mLで反応)よりも低いホルモン値で反応するため、通常より早い段階から妊娠を検知できる仕組みです。

フライング検査のメリット

フライング検査最大のメリットは、妊娠をいち早く知ることができる点です。妊娠の兆候を感じて不安な場合、「とにかく一日でも早く結果を知りたい」という気持ちに応えてくれます。

フライング検査のデメリット

一方、フライング検査にはいくつかデメリットや注意点もあります。検査時期が早すぎることで結果が不正確になる可能性があり、hCGの量が不十分だと正確な判定が得られません。そのため、陽性が出ても後日改めて通常の検査薬で再検査が必要になるケースがあります。また、通常であれば気づかないようなごく早期の化学流産(受精卵が着床し一時的にhCGが出るが成育が続かないケース)まで知ってしまう可能性があります。さらには、はっきりしない状態が長引くことで逆にストレスになってしまうこともあります。フライング検査をする際は、こうした不確定要素による精神的な負担があり得ることも理解しておきましょう。

妊娠初期症状がみられたときの注意点

妊娠初期(妊娠12週頃)までは、妊娠自体が安定していない不安定な時期です。同時に胎児の重要な器官が形成される大切な時期でもあります。妊婦さん自身の体も大きく変化する時期ですので、妊娠が判明したら生活面でいくつか注意すべきポイントがあります。心配なことがあれば早めに産婦人科で相談し、適切な指導を受けましょう。

①:飲酒・喫煙・カフェインの摂取を控える

妊娠の可能性があると思ったら、タバコとお酒は直ちにやめてください。アルコールには胎児の奇形リスクを高める作用があるため、赤ちゃんの器官形成期(妊娠2〜8週)には厳禁です。また、タバコに含まれるニコチンや一酸化炭素、シアン化合物、鉛などは胎盤の血流を悪くし、早産や子宮内胎児発育不全の原因になりますので喫煙も厳禁です。

一方でカフェインに関しては、適量であれば胎児への悪影響がないことが分かっています。WHOの報告でも「1日200mg(コーヒー約2杯)以下のカフェイン摂取であれば胎児への影響はない」とされています。過剰摂取は控える必要がありますが、そこまで神経質になる必要はありません。

妊娠初期のカフェインについてまとめた以下の記事「妊娠初期のカフェイン摂取は大丈夫?胎児への影響と知っておくべきこと」も合わせて参考にしてください👇️。

②:性行為を控える必要は?

妊娠初期だからといって、必ずしも性交渉(セックス)を控えなければならないわけではありません。夫婦間のスキンシップも心の安定のため大切です。ただし、妊娠中は普段以上にいくつか気を付けたいポイントがあります。あまりに激しい性交渉は切迫流産や早産につながる恐れがありますし、不衛生な状態だと細菌性腟炎を起こしやすくなります。細菌性膣炎が起こると早産・流産のリスクが高まるため、妊娠中の性行為はいつも以上に清潔に優しく行うようにしてください。

また、妊娠中になんらかの症状があって産婦人科を受診する際には、性交渉をした事実は隠さず伝えましょう。診察や処置に必要な重要情報ですので、恥ずかしがらずに主治医に話してくださいね。

③:激しい運動を控える必要は?

妊娠初期でも適度な運動であればまったく問題ありません。むしろ軽い運動は妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群のリスク低減につながるという報告もあります。激しい衝撃や転倒などのリスクがあるスポーツは避けたほうが良いですが、ウォーキングやマタニティヨガなど穏やかな運動であれば積極的に行って大丈夫です。妊娠中の性行為と同様で、適度であればむしろ体にも良いので過度に心配しすぎないでくださいね。

③:薬を服用している場合は医師に相談する

妊娠が判明したら、現在服用している薬について必ず医師に伝えて指示を仰ぎましょう。妊娠超初期(妊娠が判明する前後)とそれ以降の妊娠時期とでは、薬の影響に関する考え方が異なります。胎児の器官形成期である妊娠初期(妊娠2〜8週)には、多くの薬剤で催奇形性(赤ちゃんの奇形リスク)の観点から服用に注意が必要です。それ以降の時期については、その薬剤が胎児に有害かどうか(胎児毒性の有無)で判断されます。

ここでは妊娠超初期に特に注意が必要な薬剤の例を挙げます。

  • 抗てんかん薬
  • 抗血栓薬(血液をサラサラにする薬)
  • 免疫抑制薬
  • 抗リウマチ薬

※上記は一例であり、薬ごとに妊娠時期や用法によって注意レベルが異なる場合があります。また、胎児への影響を心配するあまり自己判断で薬を中断すると、今度は妊婦さん自身の健康に支障を来す恐れもあります。妊娠希望の段階や妊娠判明後に服用中の薬がある場合は、必ず産婦人科医または処方医に相談し、最適な対応を決めてもらいましょう。

妊娠の可能性がある場合の緊急対処法:避妊ピルと中絶の選択肢

性行為後に「妊娠したかも?」と感じた時点で、すでに緊急避妊ピル(アフターピル)を使用できる期間が過ぎている場合がほとんどです。妊娠初期症状らしきサインが出ている場合は、受精卵の着床完了から時間が経っているため、残念ながらアフターピルで妊娠を避けることはできません。ただし、望まない妊娠の場合には中絶という選択肢も含め検討が必要になります。ここでは緊急避妊ピルと中絶手術について簡単に説明します。

緊急避妊ピルとは?効果と使用可能なタイミング

緊急避妊ピルは、性行為後に妊娠を防ぐために服用するお薬です。排卵を抑制したり、受精卵の着床を妨げる効果があります。このピルは性行為後72時間(できれば120時間以内)の服用が推奨されており、服用が早ければ早いほど効果が高まります。薬の種類には「レボノルゲストレル」(ノルレボ錠など)や「ウリプリスタル酢酸エステル」(エラワン錠)があります。それぞれ効果や使用条件が異なりますが、どちらも「緊急時の避妊方法」であり常用するものではありません。副作用として、不正出血や軽度の吐き気などが報告されていますが、いずれも短期間で収まることが一般的です。避妊効果はできるだけ早期に服用したほうが高いとされているので、必要な場合はなるべく早めに医師へ相談しましょう。

中絶手術の種類と期間:初期中絶と中期中絶の違い

妊娠の継続が難しい場合、中絶手術という選択肢もあります。中絶手術には大きく分けて、妊娠初期(妊娠11週6日まで)に行う手術と、妊娠中期(妊娠12週以降)に行う手術があります。妊娠初期の中絶は主に「経胎盤的吸引法」や「搔爬(そうは)法」といった方法で行われ、多くの場合短時間で終わり、麻酔下で行うため痛みが少ないのが特徴です。一方、妊娠中期の中絶では「誘発分娩法」といって子宮収縮剤を用い、分娩に近い形で胎児を排出する方法がとられます。こちらは母体への負担が大きくなります。中絶可能な週数や手続きは国や地域によって異なるため、事前に最新の情報を確認する必要があります。また、中絶を検討する際は身体的なリスクだけでなく精神的な負担も大きいものです。必ず医師やカウンセラーとしっかり相談し、自分にとって最善の選択を考えてください。

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妊娠初期症状と性行為後の妊娠に関するよくある質問

妊娠初期症状は性行為後翌日に出る?

翌日に妊娠による症状が現れることはありません。性行為の翌日ではまだ妊娠が成立していないため、妊娠起因の体調変化は絶対に出ないです。もし性交の翌日に体調の変化や出血があった場合、それは妊娠とは別の不正出血や性感染症による症状などの可能性があります。

妊娠初期と生理前の違いは?

大きな違いはホルモン分泌の量と継続期間です。妊娠初期には、生理前よりもはるかに多くのエストロゲンとプロゲステロン(黄体ホルモン)が分泌されるため、体調不良などの症状が起こります。ただ、体内で起こっている変化の原因となるホルモン自体は同じなので、症状としてはPMSとよく似ています。その結果、妊娠初期症状は生理予定日を過ぎても続く点で生理前(PMS)との違いが現れます。例えば、生理予定日を過ぎても胸の張りや眠気・だるさが続く場合は妊娠の可能性があります。一方で個人差も大きいため、症状だけで判断するのは難しく、最終的には検査薬での確認が必要です。

妊娠初期症状がみられるまでピルを服用していたけど大丈夫?

問題ありません。 ピルを正しく服用していれば妊娠はほぼ(約99%)防げますが、飲み忘れなどで妊娠する可能性はゼロではありません。ただ、仮にピル内服中に妊娠したとしても、服用していたピルが胎児や母体に悪影響を及ぼすことはないとされています。心配しすぎず、妊娠が判明した時点で服用を中止し産婦人科で相談しましょう。

妊娠検査薬のフライング検査の結果だけで判断しても良いですか?

フライング検査の結果だけに頼るのはおすすめできません。 フライング検査はあくまで早期の参考程度と考えましょう。たとえフライング検査で陽性反応が出ても、後日必ず通常の妊娠検査薬でも確認する必要があります。逆にフライング検査で陰性だった場合も妊娠を否定しきれません。適切な時期に再度検査を行い、正確な判断をしてください。

妊娠初期症状がまったく感じない場合、どうすればよいですか?

妊娠初期症状は個人差が大きく、まったく感じない人もいます。症状がないからといって必ずしも妊娠していないわけではありません。生理の遅れや他の体調の変化があれば、市販の妊娠検査薬で確認し、不安な場合は産婦人科に相談してください。

性行為後すぐに妊娠検査薬を使っても正確な結果は得られますか?

性行為直後は、まだ受精や着床が完了していないため、検査薬は正確な結果を示しません。一般的には、生理予定日から1週間後以降に使用するのが望ましく、そうすることでhCGホルモンの十分な上昇を確認できます。

妊娠初期症状が出ている場合、普段と違う体調管理が必要でしょうか?

妊娠初期は体やホルモンバランスに変化が生じるため、十分な休息と栄養管理が重要です。無理をせず、生活習慣を整えながら、症状がひどい場合や不安があれば早めに産婦人科を受診して適切な指導を受けることをおすすめします。

まとめ:妊娠初期症状は性行為後3週間程度で現れることが多い

妊娠初期症状は性行為後、およそ2〜3週間前後で現れ始めることが多いです。ただし、人によっては1〜2週間ほどでごく軽い妊娠超初期症状を感じることもあります。いずれの場合も、生理予定日前後の時期に「何かいつもと違う体調不良」や「普段感じない違和感」に気づいたら、我慢せずに産婦人科に相談するか、市販の妊娠検査薬を使って確認してみましょう。妊娠しているかどうかいち早く知ることで、今後の生活で気を付けるべきこと(お酒やタバコを控える等)が明確になりますし、必要であれば早めに対策を講じることができます。

妊娠初期症状が出始めた方は、いわゆるつわりの始まりなど体調・精神面で大きな変化が訪れる時期です。決してひとりで抱え込まず、つらい症状があれば産婦人科で相談してみてくださいね。私たち医師は、妊婦さんが安心して過ごせるよう全力でサポートします。

妊娠初期症状全般についてまとめた以下の記事も合わせて参考にしてください👇️。

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  • 医学博士
  • 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
  • FMF認定超音波医
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