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【産婦人科医監修】妊娠中のカフェイン、胎児への影響は?知っておくべきことまとめ

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クリニックなみなみ 院長 叶谷愛弓

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「妊娠中にコーヒーを飲んでも大丈夫?」「カフェインは赤ちゃんに悪影響があるって聞くけど本当?」

妊娠中は、食事や生活習慣など、あらゆる面で気を配る必要があるため、カフェイン摂取についても不安に思っている妊婦さんは多いのではないでしょうか?

今回は、産婦人科医の私が、妊娠中のカフェイン摂取が胎児に与える影響について、医学的な見地から詳しく解説します。カフェインを控えるべき理由や、安全に摂取するためのポイント、そして具体的な摂取量の目安などをまとめました。この記事を読めば、妊娠中のカフェイン摂取に関する疑問が解消され、安心して過ごせるようになるはずです。

ぜひ最後まで読んで、妊娠中のカフェインに関する正しい知識を身につけてください。

妊娠中に大事なことは、「正しい知識をどこから、だれから学ぶのか」です。
正直、クリニックや病院のwebサイトに記載されていいることは結構誤った情報が書いてあります。
レディースクリニックなみなみでは情報が簡単に手に入りやすい世の中だからこそ、正しい情報をしっかりわかりやすく伝えることが本当に大切だと考えています。

カフェインが胎児に与える影響

妊娠中にカフェインを摂取することへの不安は、多くの妊婦さんが抱える共通の悩みです。なぜ、カフェインは妊娠中に特に注意が必要なのでしょうか?
カフェインは胎盤を通過しやすいことと、カフェインが代謝された後の物質が胎児に影響があるとされています。

カフェインの胎盤通過性

カフェインは分子構造が小さく、脂溶性が高いため妊娠中に胎盤を通過し、胎児の体内にも到達することがわかっています。摂取したカフェインが体内に長く留まり、影響が大きくなる可能性があります。

カフェインは、胎児の成長や発達に影響を与える可能性があるため、摂取量には注意が必要です。

特に日本人はカフェイン代謝が日本人の約4割は代謝が速いタイプとされています。代謝が早いと大丈夫と思いがちですが、全く逆でカフェイン代謝の速いタイプの方が悪い影響が出ることがわかっています。カフェインの代謝物質であるパラキサンチンという物質が胎児の成長を妨げるのではないかとされています。

胎児のカフェイン代謝能力

胎児は、大人と比べてカフェインを代謝する能力が未熟です。具体的には、カフェインを分解する主要な酵素であるCYP1A2の活性が低いため、カフェインの半減期が延長します。このため、母体が摂取したカフェインは胎児の体内により長く留まり、影響が大きくなる可能性があります。

カフェイン摂取によるリスクはどんなものがある?

カフェイン摂取と胎児への影響は時期によっても異なり、大きく3つに分けられます。
妊娠超初期であれば、流産や胎児への発育への影響が、そのほか全体的な影響としては低出生体重時のリスクが高くなると報告があります。
早産に関しても関連があると述べている方がいますが、最近の報告結果でも早産との関連はほとんどないことがわかっています。

1. 低出生体重児のリスク

カフェインの摂取量が多いと、赤ちゃんの体重が小さくなる可能性があります。これはある程度統一の見解です。

  • 複数の研究をまとめた分析によると、お母さんのカフェイン摂取と低出生体重児のリスクには関連があるそうです(参考文献)。
  • 特に、1日300mg以上(コーヒー約3杯分)のカフェインを摂取すると、リスクが高まる可能性が示唆されています(参考文献)。
  • カフェインの代謝が速いタイプの方では、1日300mg以上のカフェイン摂取で赤ちゃんの体重が277gも少なくなったという報告もあります(参考文献)。

2. 流産のリスク

残念ながら、カフェイン摂取は流産のリスクを高める可能性があります。これも統一の見解です。ただし、量に依存することがわかっています。

  • スウェーデンの研究では、1日500mg以上(コーヒー約5杯分)のカフェインを摂取すると、流産率が2.2倍に増加したそうです(参考文献)。
  • さらに驚くべきことに、妊娠前のカフェイン摂取も影響があるかもしれません。アメリカの研究では、妊娠前に1日2杯以上のカフェイン飲料を飲んでいたカップルで流産のリスクが高くなったそうです(参考文献)。

3. 胎児の発育への影響

カフェインは、おなかの中の赤ちゃんの成長にも影響を与える可能性があります。

  • カフェインは子宮や胎盤の血管を縮めてしまい、赤ちゃんへの血液の流れを悪くする可能性があります(参考文献)。
  • また、赤ちゃんの呼吸数や心拍数を増やしたり、起きている時間を長くしたりする可能性もあります。
  • さらに、子宮の収縮を増やしたり、妊娠後期の高血圧のリスクを高めたりする可能性も指摘されています(参考文献)。

4. 早産のリスク

総じて、現在のエビデンスでは、中程度のカフェイン摂取(200-300 mg/日未満)は早産リスクを有意に増加させないと考えられています。ただし、個々の研究結果にはばらつきがあり、さらなる研究が必要とされています。

  • ブラジルでの大規模な研究では、カフェインをたくさん摂取しても早産のリスクは高くならなかったそうです(参考文献)。
  • ただし、お茶の摂取で早産のリスクがやや高くなるという研究結果もあります。まだ研究者の間でも意見が分かれているようですね(参考文献)。

妊娠中のカフェイン摂取に関するガイドライン

妊娠中のカフェイン摂取量については、世界中の医療機関で様々なガイドラインが示されています。
大事なポイントは、人種によってカフェインの代謝の速度や効率が異なることです。そのため、上記でまとめた海外の研究は一つの参考として、日本人には日本人向けのガイドラインをよく知ることが大切なのです。
それぞれのガイドラインで推奨される摂取量は異なりますが、共通しているのは「過剰なカフェイン摂取は避けるべき」ということです。
ここでは日本人が気にするべき実際の量に関して日本の各ガイドラインを参照して説明します。

日本助産学会が推奨するカフェイン摂取量の目安

日本助産学会のガイドラインでは非常に細かく、国内、国外のエビデンスをまとめているものの摂取量に関して統一の見解とは示しておらず、現在では「控えることが勧められる」としています。2020年以前のガイドラインでは300mgとされていたものの、300mgに統一するエビデンスもないとの判断から、上記になっています。
日本の 30~39 歳の女性の平均カフェイン摂取量は 213 mg/日である ことも示されています。

厚生労働省が推奨するカフェイン摂取量の目安

厚労省では、妊娠中のカフェイン摂取量について、主に海外のデータを参照しており日本国内のデータを明示してくれていません。世界保健機関(WHO)、英国食品基準庁(FSA)、カナダ保健省 (HC)のデータを参照しています。200から300mgまでを一つの目安としています。

農林水産省が推奨するカフェイン摂取量の目安

こちらでも、他国のデータを引用しており、200から300mgまでを一つの目安としています。

まとめると、1日200mg以下の摂取であればまず安全と思って間違い無いです。
以下に具体的なカフェインの含有量もあげていきますが、コーヒー2杯くらいであれば問題ないです。
食事や生活を制限しすぎることはお母さんにとってストレスでもあるので、そのくらいは楽しんで飲んでも大丈夫です。
正しい知識で妊娠生活を我慢だけするものから、楽しんでするものに変えていきましょう。

カフェインの含有量

カフェインは、コーヒー、紅茶、緑茶、ウーロン茶、コーラ、チョコレート、エナジードリンクなどの食品や飲み物に含まれています。以下は、一般的な食品や飲み物に含まれるカフェイン量の目安です。

食品・飲み物カフェイン量(mg)
コーヒー(1杯150ml)80~100
紅茶(1杯150ml)30~50
緑茶(1杯150ml)20~30
ウーロン茶(1杯150ml)20~30
コーラ(1本350ml)30~40
チョコレート(100g)20~40
エナジードリンク(1本500ml)70~150

これらの目安を参考に、カフェイン摂取量を把握するようにしましょう。

妊娠中にコーヒーを飲んでも大丈夫?

妊娠中にコーヒーを飲んでも大丈夫ですが、1日2杯までを目安にしましょう。ただし、個人差や妊娠経過によって適切な摂取量は異なりますので、気になる場合は担当医に相談するようにしましょう。

また、カフェイン含有量が多いコーヒー豆の種類や、濃いコーヒーは避けるようにしましょう。

紅茶を飲んでも大丈夫?

妊娠中にカフェインを含むお茶を飲んでも大丈夫ですが、1日2杯までを目安にしましょう。紅茶や緑茶、ウーロン茶など、様々な種類のお茶にカフェインが含まれています。お茶の種類によってカフェイン含有量は異なりますので、成分表を確認したり、インターネットで調べたりして、カフェイン量を把握するようにしましょう。

妊娠中にチョコレートを食べても大丈夫?

妊娠中にチョコレートを食べても大丈夫ですが、1日1~2個程度を目安にしましょう。チョコレートには、カフェインの他に、糖分や脂肪分も含まれているため、過剰摂取は控えるようにしましょう。

また、妊娠中は血糖値の上昇に注意が必要なため、チョコレートを食べる際には、食事と一緒にとったり、時間帯を意識したりすることが大切です。

妊娠中にエナジードリンクを飲んでも大丈夫?

これはダメと思っていただいて良いです。妊娠中にエナジードリンクは控えるべきです。エナジードリンクは、カフェイン含有量が高く、妊娠中には推奨されません。また、エナジードリンクには、カフェイン以外にも、糖分や人工甘味料、ビタミンなど、妊娠中に摂取を控えた方が良い成分が含まれている場合があります。

妊娠中は、健康的な食事と十分な睡眠を心がけ、エナジードリンクに頼らず、体力を維持するようにしましょう。

妊娠中のカフェイン摂取に関するよくある質問

妊娠中におすすめのカフェインレス飲料は?

麦茶、ハーブティー(一部を除く)、カフェインレスコーヒーなどが選択肢として挙げられます。

カフェインを含む食品ってあるの?

基本的にカフェインの入った飲料の成分が入った食品と思っていただいて間違い無いです。
コーヒー、チョコレート、紅茶などが入った食品はカフェインが含まれています。

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まとめ|妊娠中のカフェイン摂取は、適量を守って安全に

妊娠中のカフェイン摂取については、適量を守ることが重要です。各ガイドラインを参考に、1日200mgを目安としましょう。ただし、個人差や妊娠経過によって適切な摂取量は異なります。

重要なポイント:

  1. カフェイン摂取量を把握し、過剰摂取を避ける
  2. 低出生体重児や流産のリスクに注意
  3. 日本人は約4割がカフェイン代謝の速いタイプで、より注意が必要
  4. コーヒーは1日2杯まで、エナジードリンクは控えましょう

カフェインを控えたい場合は、カフェインレス飲料やハーブティーなどの代替品を選びましょう。正しい知識を身につけ、信頼できる情報源から情報を得ることで、健康的で安心な妊娠生活を送ることができます。

レディースクリニックなみなみでは妊娠中の栄養相談も受け付けていますので、お気軽にご連絡ください。あなたと赤ちゃんの健康を第一に考え、適切なアドバイスをさせていただきます!

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