
執筆者兼監修者プロフィール
東大産婦人科に入局後、長野県立こども病院、虎の門病院、関東労災病院、東京警察病院、東京都立豊島病院、東大病院など複数の病院勤務を経てレディースクリニックなみなみ院長に就任。
資格
- 医学博士
- 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
- FMF認定超音波医
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検査結果を見て「この数値、大丈夫かな…?」と不安になってしまったり、家に帰ってから「この検査項目で何がわかるんだっけ…」と思ったことはありませんか?不妊治療の過程では多くの検査がありますが、結果を受け取ったときに戸惑ったり、パートナーに結果を伝えるときにも診察室で聞いた説明を思い出せなくなる…といった経験があるかもしれません。レディースクリニックなみなみでは、そんな皆さんの気持ちに寄り添いながら検査結果の読み解き方をお伝えしています。不安を少しでも和らげ、一緒に前向きに歩んでいけるよう、このページで主要な検査の目的や結果の意味を分かりやすく解説します。
一般ホルモン(内分泌)検査
一般ホルモン検査って何を調べるの?
血液の中のホルモンの値を調べる検査です。生理のタイミングに合わせて採血し、妊娠に関わるいくつかのホルモン(卵胞刺激ホルモン:FSH、黄体化ホルモン:LH、エストラジオール:E2、プロラクチン:PRL、黄体ホルモン:P4 など)を確認します。これによって、脳と卵巣がうまく連動して排卵が起きているか、ホルモンのバランスが整っているかを知ることができます。また必要に応じて、妊娠に影響する甲状腺ホルモンなどもあわせて調べ、不妊の原因が隠れていないかを確認します。
基礎ホルモン検査
検査項目 | 基準値/正常範囲 | 何を確認しているか |
FSH(卵胞刺激ホルモン) | 3.0~10.0 | 卵巣にどれくらい卵子の元が残っているかを調べます。数値が高すぎると卵巣の機能が低下している可能性があります。 |
LH(黄体形成ホルモン) | 2.4~12.6 | 排卵がちゃんと起きているかを調べます。数値が高すぎるとPCOS(多嚢胞性卵巣症候群)、低すぎると排卵しにくい可能性があります。 |
E2(エストラジオール) | 10~50(月経中) 28.8~196.8(卵胞期) | 卵子が育っているかを調べます。数値が低いと卵子が育ちづらく、高すぎるとホルモンバランスが崩れ排卵や妊娠に影響することがあります。 |
PRL(プロラクチン) | 4.9~29.3 | 母乳を作るホルモンで、数値が高いと排卵に影響し、不妊の原因になることがあります。 |
TSH(甲状腺刺激ホルモン) | 0.61~4.23 不妊治療中:<2.5 | 甲状腺が正常に働いているかを確認します。高いと甲状腺の働きが低下している可能性があり、低すぎると逆にホルモンが多すぎる状態です。どちらも妊娠に影響することがあります。 |
fT4(遊離サイロキシン) | 0.75~1.45 | 体のエネルギーを作る甲状腺ホルモンの量を調べます。少なすぎると排卵障害や着床不全、不妊の原因になることがあります。多すぎると動悸や体調不良の原因になります。 |
排卵期・黄体期ホルモン検査
検査項目 | 排卵期の基準 | 黄体期の基準 | 何を確認しているか |
LH | 14.0~95.6 | 1.0~11.4 | 排卵が近づくと一気に増えるホルモンです。排卵時期を確認できます。 |
FSH | 5.0~24.0 | 1.3~6.2 | 卵子が育つために必要なホルモンです。排卵がちゃんと起きているかを調べます。 |
E2 | 36.4~525.9 | 44.1~491.9 | 卵子の成長や子宮内膜の厚さに関わるホルモンです。数値が低いと妊娠しにくく、高すぎてもバランスが崩れることがあります。 |
P4 (プロゲステロン) | ≤5.7 | 2.1~24.2 | 排卵後に分泌され、妊娠を助けるホルモンです。十分に分泌されないと着床が難しくなることがあります。 |
検査結果の読み解き方
ホルモンの値が基準の範囲にある場合は、ホルモンバランスが整っていて、脳と卵巣がきちんと連動しているサインと考えられます。一方で、FSHが高いと卵子の数が少なくなっている可能性があり、プロラクチンが高いと排卵の妨げになることがあります。ただし、数値が少し基準から外れていても心配しすぎる必要はありません。ストレスや寝不足で一時的に変動することもありますし、年齢や体の状態によっても動きます。もし異常な値が出た場合は、もう一度検査をしたり、お薬で調整できることもあるので、必ず医師と一緒に確認していきましょう。
AMH(抗ミュラー管ホルモン)検査
AMHって何を調べるの?
卵巣から分泌されるAMH(抗ミュラー管ホルモン)というホルモンの血中濃度を測定する検査です。AMH値は卵巣内に残っている卵胞の数(卵子の在庫量)を反映するとされ、いわゆる「卵巣年齢」の目安になります。生まれたときに女性の卵巣にある原始卵胞は加齢とともに減少しますが、その残数を推し量る指標がAMHです。特徴的なのは、AMH値は月経周期の影響を受けないためいつでも測定可能なこと。そして年齢ごとに平均値の目安はありますが、人によって個人差が大きい点です。不妊治療では治療計画を立てる上で参考になるため希望者や必要な方に行います。
年齢別・AMHの基準値(中央値)
年齢 | 中央値 | 全体の95%の方が収まる数値の範囲 |
≤27歳 | 4.69 | 0.76~14.18 |
30歳 | 4.02 | 0.79~12.74 |
35歳 | 2.62 | 0.37~10.18 |
40歳 | 1.47 | 0.08~6.13 |
42歳 | 1 | 0.05~5.81 |
45歳 | 0.41 | 0.03~3.43 |
全年齢・AMHの解釈基準
AMH値 | 評価 | 評価の説明 |
6.8以上 | 高値 | 卵子の数は多めです。ただし多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の可能性があり、刺激すると卵巣が腫れやすい(OHSS)ことがあり注意が必要です。 |
2.0~6.0 | 良好 | 卵子の数は十分にあり、年齢に応じた妊娠のしやすさがあります。 |
1.0~2.0 | やや低下 | 卵子の数が少し減ってきています。妊娠を考えている場合は、早めの治療を検討した方が安心です。 |
0.5~1.0 | 低下 | 卵子の数が少なくなっています。妊娠を望む場合は積極的な治療が必要になる可能性があります。 |
0.5未満 | 著明低下 | 卵巣の働きがかなり弱まっており早発卵巣不全の可能性があります。早めに治療方針を相談することが大切です。 |
検査結果の読み解き方
AMH値が高めの場合、卵巣に残っている卵胞数が比較的多いことを示唆します。ただし高すぎる場合は多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の可能性もあり、卵がたくさんあっても成熟しにくいケースもあります。一方、AMH値が低めの場合は卵胞数の減少(卵巣予備能低下)が考えられます。ただし、AMHには正常値というものがありません。年齢平均より低くても、それはその人の個性の範囲かもしれませんし、逆に高いから必ずしも妊娠しやすいわけでもありません。極端に低い数値(閉経に近い値)の場合を除き、値だけで妊娠の可否は判断できない点に注意しましょう。AMHが低くても自然に排卵・妊娠する方はいくらでもいますし、高くても年齢が進めば卵子の質は低下します。

執筆者兼監修者プロフィール
東大産婦人科に入局後、長野県立こども病院、虎の門病院、関東労災病院、東京警察病院、東京都立豊島病院、東大病院など複数の病院勤務を経てレディースクリニックなみなみ院長に就任。
資格
- 医学博士
- 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
- FMF認定超音波医
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