執筆者兼監修者プロフィール
東大産婦人科に入局後、長野県立こども病院、虎の門病院、関東労災病院、東京警察病院、東京都立豊島病院、東大病院など複数の病院勤務を経てレディースクリニックなみなみ院長に就任。
資格
- 医学博士
- 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
- FMF認定超音波医
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赤ちゃんの頭の形の変化は珍しいことではなく、日本の調査では生後1か月の赤ちゃんの約6割にみられたと報告されています。その多くはごく軽いもので、成長とともに目立たなくなっていきます。ご家庭でできるのは「向きを整えること」と「起きているあいだにうつぶせで過ごす時間をつくること」の2つで、頭を押したり、形を矯正する道具を使ったりする必要はありません。ただし赤ちゃんの頭の骨は月齢が進むほど硬くなるため、できることと選べる方法は月齢によって変わります。左右差が強い場合は、待っていても自然には戻りにくいことも分かっています。
「直し方」を調べていると、ヘルメットを使う方法の情報が多く目に入ってきて、かえって不安になることがあります。実際には、日本の調査で生後1か月の時点でヘルメット治療の対象となる程度の強い変形がみられたのは約7%と報告されており、多くはご家庭でのケアと経過をみることで対応できます。この記事では次のことがわかります。
この記事でわかること
- 赤ちゃんの頭の形が変わるのはなぜか
- うちの子はどのタイプか(3つの見分け方)
- 自然に目立たなくなるのを「待つ」ことと「整える」ことの違い
- 月齢別に、いまできること
- やらないほうがよいこと(枕・矯正グッズなど)
- 形以外に確認しておきたいサイン
赤ちゃんの頭の形は、なぜ変わるのでしょうか
赤ちゃんの頭の骨はやわらかく、つなぎ目もまだ動く状態にあります。生まれてしばらくは寝て過ごす時間が長く、自分で向きを変えることもできないため、同じ方向に頭が当たり続けると、その部分が平らになりやすいのです。これは病気ではなく、寝る姿勢や過ごし方によって起こる形の変化です。
あおむけ寝が広まってから増えました
眠るときにあおむけで寝かせることが広くすすめられるようになってから、後頭部が平らになる赤ちゃんは世界的に増えました。とはいえ、あおむけ寝は乳幼児突然死症候群(SIDS)を防ぐために欠かせないもので、頭の形を理由にやめるものではありません。あおむけで寝かせたうえで、起きている時間の過ごし方を工夫していく、というのが基本の考え方になります。
向き癖が重なると、左右差が出やすくなります
赤ちゃんには「いつも同じ方向を向きやすい」という癖(向き癖)がよくみられます。ベッドの向き、声をかける方向、抱っこや授乳の向きが毎日同じだと、自然とそちら側を向いて過ごすことになります。向き癖そのものは病気ではありませんが、同じ向きが続くと後頭部の片側が平らになりやすく、進むと額や耳の位置にも左右差が出てくることがあります。
また、首の筋肉のかたさから頭がいつも同じ方向に傾いてしまう場合もあります。この場合は向き癖への対応だけでは不十分なことがあるため、後ほど「形以外に確認しておきたいサイン」でお伝えします。
うちの子はどのタイプ? 3つの見分け方
頭の形の変化は、大きく「後頭部の片側が平ら」「後ろ全体が平ら」「それ以外」の3つに分けて考えると、いま何をすればよいかが見えてきます。まずはあおむけに寝ている赤ちゃんの頭の真上から写真を撮ってみてください。おでこと鼻が写真の中心にくるように、両耳も写るようにすると、左右差が分かりやすくなります。
1. 後頭部の片側が平ら(斜頭)
いちばん多いタイプです。真上から見ると、片側の後頭部が平らで、その側の額が前に出ていたり、耳の位置が前後にずれていたりします。頭全体が平行四辺形のように見えることもあります。向き癖と関係していることが多く、向きを整える工夫がそのまま対策になります。

2. 後ろ全体が平ら(短頭・いわゆる絶壁)
横から見ると後頭部の丸みが少なく、頭が前後に短く見えます。左右差は目立ちません。あおむけで過ごす時間が長いことが関係しやすく、起きているあいだの姿勢を変えていくことが中心になります。

3. それ以外の形が気になるとき(長頭など)
額が三角に見える、頭が細長い、生まれたときから形がはっきり違う、月齢が進むにつれて形の変化が強くなっていく——こうした場合は、向き癖とは別の原因を考える必要があることがあります。ご家庭で見分ける必要はありませんので、気になったら早めに相談してください。

「気になるけれど、これはよくある範囲なのだろうか」を知りたいときは、ご自宅で目安を確かめられるツールもあります。キッズクリニックまるまる(自由が丘)が公開している赤ちゃんの頭の形のセルフチェックでは、写真から左右差のおおよその程度を確かめられます。診断ではなく目安を知るためのものですが、相談するかどうかを考える材料になります。
なお、赤ちゃんの頭には軽い左右差があるのがふつうで、「軽度」と表示される赤ちゃんは少なくありません。数字だけで判断せず、写真の記録とあわせてお使いください。
自然に治るの? 「待つ」と「整える」は違います
「そのうち治りますか」は、いちばんよくいただくご質問です。頭の形の変化は、多くが成長とともに目立たなくなっていきます。ただし「治るのを待つ」ことと「気づいたときに整える」ことは別のもので、後者は今日から始められます。
いちばん目立つのは生後2〜4か月ごろ
頭の形の変化は新生児のころから現れはじめ、生後2〜4か月ごろにいちばん目立ちます。その後、首がすわって自分で向きを変えられるようになる4〜6か月ごろから減っていき、寝返りが始まると、眠っているあいだも自然と向きが変わるようになります。おすわりや歩き始めで頭が床に当たる時間そのものが短くなることも、目立たなくなっていく理由のひとつです。
また、向き癖などでできる頭の形の変化そのものが、赤ちゃんの脳の成長を妨げたり、知能に影響したりすることはないと考えられています。頭の形に変化がある赤ちゃんとない赤ちゃんで、脳の大きさに差がないことも確かめられています。ここを心配される方はとても多いので、先にお伝えしておきます。
ただし、体の動きがまだ少ない時期の赤ちゃんは向きが変わりにくく、その結果として頭の形が変わりやすいことが知られています。つまり頭の形は「原因」ではなく、体の動かし方のようすを知らせてくれるサインになることがあります。首すわりや寝返りなどの発達で気になることがあれば、頭の形とあわせてご相談ください。
それでも「早く気づくほど有利」な理由
赤ちゃんの頭の骨は、生後数か月のあいだにいちばん大きく成長します。骨がやわらかく、成長する力が大きいこの時期は、向きを整える工夫の効果も出やすい時期です。逆に月齢が進むと骨は硬くなり、同じ工夫をしても変化はゆるやかになります。
ただし、「自然に目立たなくなる」のは、変化が軽い場合の話です。左右差が強い場合は、待っていても自然には戻りにくいことが分かっています。日本の調査では、変形が強かった赤ちゃんを寝る向きの工夫だけで3か月みたところ、その多くは同じ程度のままでした。
つまり、軽ければ待つあいだに目立たなくなり、強ければ待っても変わりにくいということです。そして、どちらなのかをご家庭で見分けるのは簡単ではありません。ですから、「向きを整える工夫を今日から始める」ことと「左右差がはっきりしていると感じたら早めに一度みてもらう」ことを、同時に進めるのがいちばん確実です。待つことは、何もしないことではありません。
月齢別・いまできること
できることの中身は月齢によって変わります。いまの月齢でできることに集中していただくのがいちばん確実です。以下はおおよその目安で、赤ちゃんによって前後します。
| 月齢 | この時期にできること |
|---|---|
| 0〜2か月 | 向き癖がつく前に、寝かせる向き・声をかける方向・抱っこの向きを日ごとに変える。予防がいちばん効く時期 |
| 2〜4か月 | 形の変化がもっとも目立つ時期。向きを整える工夫の効果も出やすい。写真で記録を始める |
| 4〜6か月 | 寝返りで自然に向きが変わり始める。左右差が強いままなら、この時期までに一度みてもらうと選べる方法が多い |
| 6〜8か月 | 骨が硬くなってくる時期。ヘルメットを使う方法も含めて考えたい場合は、この時期までの相談が目安 |
| 8か月以降 | おうちでのケアが中心。おすわり・歩き始めとともに目立たなくなっていくことが多い |
どの月齢でも共通してできる2つのこと
ひとつは向きを整えることです。寝かせる位置、声をかける方向、おもちゃを置く位置、抱っこや授乳の向きを少しずつ入れ替えていきます。もうひとつは起きているあいだにうつぶせで過ごす時間(タミータイム)をとり入れることです。頭が床に当たらない時間をつくり、首や背中の力を育てます。
どちらも手順にちょっとしたコツがあります。具体的なやり方は、向き癖への対応(おうちでできる5つの工夫)とタミータイムの進め方で、月齢別の目安や安全のための注意点まで紹介されています。うつぶせで過ごすのは、起きていて大人が見ているあいだだけです。眠るときは必ずあおむけに戻してください。
やらないほうがよいこと
よかれと思って行われていることのなかには、効果がはっきりしないものや、かえって危険なものがあります。次の3つは避けてください。
1. 向き癖防止枕・ドーナツ枕を使う
頭の形を整えるとうたう枕が市販されていますが、形が良くなるという効果は確認されていません。それに加えて、眠っている赤ちゃんのそばに枕やクッションなどのやわらかい物を置くことは、窒息の危険があります。安全な睡眠のためには、寝床には何も置かないことがすすめられています。
もうひとつ心配なのは、枕に期待して相談の時期が遅れてしまうことです。枕を使っているあいだに月齢が進み、選べる方法が減ってしまうことがあります。
2. 頭を手で押す・形を矯正しようとする
赤ちゃんの頭を手で押して形を変えようとしたり、頭蓋骨を動かすとうたう施術を受けたりする必要はありません。頭の形は、日々の姿勢の積み重ねで少しずつ変わっていくものです。
3. 「そのうち治る」とだけ考えて、月齢が過ぎるのを待つ
多くが目立たなくなっていくのは事実ですが、左右差が大きい場合には、月齢が進むほど選べる方法は減っていきます。待つあいだにできることがある——この記事でいちばんお伝えしたいのはこの点です。
形以外に確認しておきたいサイン
頭の形そのものより先に、確認しておきたいことがあります。次のようなときは、向き癖への対応だけでは足りないことがあるため、早めに相談してください。
- 首がいつも同じ方向に傾いている、反対を向かせようとすると強く嫌がる
- 首すじにしこりのようなものを触れる
- 生まれたときから頭の形がはっきり違う、月齢が進んでも形の変化が強くなっていく
- 頭のつなぎ目に沿って、硬い盛り上がり(すじ)が触れる
- 頭のやわらかい部分(大泉門)の張りが気になる、または反対に、早くから触れなくなった
- 健診で頭囲の増え方について説明を受けた、母子健康手帳の頭囲のグラフが急に曲線をまたいでいる
- 繰り返し吐く、ぐったりしている、機嫌の悪さが続く(この場合は早めに受診してください)
首の傾きは斜頸といって、頭の形の左右差と一緒に起こることがあります。乳児健診でも確認される項目で、必要に応じて首の動きを広げる方法が案内されます。頭の形が気になるときは、首の動きもあわせて見てもらうと安心です。
また、まれではありますが、頭の骨のつなぎ目が早く閉じてしまうことで形が変わる病気もあります。向き癖による形の変化とは対応が異なり、この場合は月齢にかかわらず早めの受診が必要になるため、医療機関では両者を見分けたうえで方針を考えます(この記事でお伝えした「生後8か月ごろまで」という目安は、向き癖でできた形の変化についてのものです)。後頭部の片側が平らになる状態や後ろ全体が平らな状態については、それぞれくわしい解説があります。
「相談する=ヘルメットを使うことになる」ではありません。まずは状態を見てもらい、必要かどうかを一緒に考えるところから始まります。「このまま様子を見て大丈夫ですよ」と分かることにも、十分な意味があります。迷っている段階でご相談いただいて、まったく構いません。
よくあるご質問
赤ちゃんの頭の形は自然に治りますか。
多くは成長とともに目立たなくなっていきます。生後2〜4か月ごろにいちばん目立ち、寝返りやおすわりができるようになるにつれて減っていくのが一般的です。ただし左右差が大きい場合は、骨がやわらかいうちに向きを整えるほうが、変化を小さくとどめやすくなります。
いつまでに相談すればよいですか。
頭の骨は生後数か月がいちばん大きく成長するため、その力を利用できる時期のほうが選べる方法が多くなります。選べる方法がいちばん多いのは生後6か月ごろまでで、ヘルメットを使う方法も含めて考えたい場合は、遅くとも生後8か月ごろまでのご相談が目安です(装具は機種ごとに装着を始められる月齢が決まっており、ご相談から採型・製作までにも時間がかかります)。それ以降でも状態を見てもらうことはできますので、月齢を理由にあきらめる必要はありません。
向き癖防止枕は使ってもよいですか。
おすすめできません。頭の形が良くなるという効果は確認されておらず、それに加えて、眠っている赤ちゃんのそばに枕やクッションを置くことは窒息の危険があるためです。向き癖への対応は、起きている時間の姿勢の工夫とうつぶせ遊びが基本になります。
あおむけ寝をやめれば形は良くなりますか。
眠るときは必ずあおむけにしてください。あおむけ寝は乳幼児突然死症候群(SIDS)を防ぐために欠かせないもので、頭の形を理由にやめるものではありません。工夫するのは、起きているあいだの過ごし方です。
頭の形は将来なにか影響しますか。
向き癖などでできる頭の形の変化そのものが、脳の成長を妨げたり知能に影響したりすることはないと考えられています(脳の大きさに差がないことも確かめられています)。多くは成長とともに目立たなくなり、髪が生えそろうころには気にならなくなることが多いです。ただし頭の形は、体の動かし方のようすを知らせるサインになることがあるため、発達で気になることがあればあわせてご相談ください。
写真はどうやって撮ればよいですか。
あおむけに寝ているときに、頭の真上から撮ります。おでこと鼻が写真の中心にくるように、両耳も写るようにすると左右差が見やすくなります。月に1回ほど、同じ撮り方で残しておくと変化を比べられ、相談されるときにも役立ちます。
まとめ
赤ちゃんの頭の形の変化は珍しいことではなく、その多くは成長とともに目立たなくなっていきます。ご家庭でできるのは、向きを整えることと、起きているあいだにうつぶせで過ごす時間をつくることの2つです。枕や矯正グッズは必要ありませんし、安全のうえでもおすすめできません。
そのうえで、頭の骨がやわらかい時期にできることは月齢によって変わります。まずは真上からの写真を撮って記録を始め、左右差が大きいと感じたり、首の傾きが気になったりするときは、早めに相談してください。相談することは、ヘルメットを使うと決めることではありません。いまの状態を知り、必要なことだけを選ぶための第一歩です。
執筆者兼監修者プロフィール
東大産婦人科に入局後、長野県立こども病院、虎の門病院、関東労災病院、東京警察病院、東京都立豊島病院、東大病院など複数の病院勤務を経てレディースクリニックなみなみ院長に就任。
資格
- 医学博士
- 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
- FMF認定超音波医
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参考文献
- 加藤理佐ほか. 新生児・乳児の頭蓋変形. 日本大学医学雑誌 82(4) (2023). https://www.jstage.jst.go.jp/article/numa/82/4/82_203/_pdf/-char/ja
- Miyabayashi H, et al. Cranial Deformation in Japanese Infants. Neurologia medico-chirurgica 62(5) (2022). https://www.jstage.jst.go.jp/article/nmc/62/5/62_2021-0384/_article
- 林俊哲ほか. 頭蓋形状矯正ヘルメット治療の現状と展望. 小児の脳神経 49(4) (2024). https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspn/49/4/49_160/_article/-char/ja
- Noto T, et al. Natural Course of Severe Deformational Plagiocephaly. Journal of Clinical Medicine 10(15):3531 (2021).
- Collett BR, et al. Brain volume and shape in infants with deformational plagiocephaly. Child's Nervous System 28(7) (2012). https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3393042/
- American Academy of Pediatrics. Sleep-Related Infant Deaths: Updated 2022 Recommendations. Pediatrics 150(1) (2022). https://publications.aap.org/pediatrics/article/150/1/e2022057990/188304/
- Congress of Neurological Surgeons. Systematic Review and Evidence-Based Guideline on the Role of Cranial Molding Orthosis (Helmet) Therapy (2016). https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27776089/
- ベビーバンド よくあるご質問(適用月齢・推奨時期). JMC株式会社. https://www.babyband.jp/faq
- リモベビー よくあるご質問(装用開始月齢). グンゼメディカル株式会社. https://remobaby.com/faq
- U.S. Food and Drug Administration. Infant Head-Shaping Pillows: Do Not Use (2022). https://publications.aap.org/aapnews/news/22583/Infant-head-shaping-pillows-can-cause-suffocation
頭の形は毎日見ていると、かえって分かりにくいものです。「気のせいかもしれない」と思ったときこそ、写真に残しておいてください。1か月後に並べてみると、目立たなくなってきているのか、あまり変わっていないのかが、ご自身の目で確かめられます。記録があると、相談されるときにも伝えやすくなります。