執筆者兼監修者プロフィール
東大産婦人科に入局後、長野県立こども病院、虎の門病院、関東労災病院、東京警察病院、東京都立豊島病院、東大病院など複数の病院勤務を経てレディースクリニックなみなみ院長に就任。
資格
- 医学博士
- 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
- FMF認定超音波医
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出生前診断(出生前検査)とは、妊娠中に、赤ちゃんの染色体や体の状態についての情報を調べる検査の総称です。ひとつの検査を指す言葉ではなく、目的も方法もちがう複数の検査をまとめた呼び名だとお考えください。そのため「出生前診断を受けるかどうか」を考える前に、そもそもどんな検査があって、何がわかるのかを知っておくことが出発点になります。
そしてもうひとつ、先にお伝えしておきたいことがあります。当院では、染色体の病気の可能性を知ることが目的であれば、まずNIPTをおすすめしています。後半で根拠とともにご説明します。
「言葉は聞いたことがあるけれど、調べるほど種類が出てきて余計にわからなくなった」——そんな状態でこのページにたどり着いた方も多いのではないかと思います。この記事では、全体の地図をお渡しするつもりで、次の順に整理します。
- 出生前診断とはどのような検査の総称か(「非確定的検査」と「確定的検査」という2つの分け方)
- 出生前診断でわかること
- 出生前診断でわからないこと——ここは、わかることと同じくらい大切です
- 検査の種類と特徴(比較表)
- 当院がまずNIPTをおすすめしている理由
- 受けるかどうかを考えるときに、大切にしたいこと
- よくあるご質問
出生前診断とは|まず「2つの分け方」を押さえる
「出生前診断」と「出生前検査」は、どう違うのか
調べていると、「出生前診断」と「出生前検査」という2つの言い方が出てきて、戸惑われるかもしれません。日常的にはほぼ同じ意味で使われていますが、厳密に言えば少しちがいがあります。
- 出生前検査——妊娠中に赤ちゃんの状態を調べる検査全般を指す、広い言い方です
- 出生前診断——本来「診断」は、病気があるかないかを確定させることを指します
ここが混乱のもとになりやすいところで、「出生前診断」と呼ばれている検査のなかには、実際には診断を確定できないものが含まれています。NIPTやコンバインド検査がそれにあたります。国の制度上の名称も「出生前検査認証制度」となっており、近年は「検査」という言い方が使われる場面が増えています。
言葉の違い自体を気にしていただく必要はありませんが、「診断」という言葉がついていても、結果が確定とは限らない——この一点だけ頭の片隅に置いておいていただくと、あとの説明が理解しやすくなります。
「非確定的検査」と「確定的検査」
出生前診断にはいくつもの検査がありますが、「非確定的検査」と「確定的検査」の2つに分けて考えると、全体像が一気につかみやすくなります。この分け方さえ理解しておけば、あとは個々の検査を当てはめていくだけです。
| 非確定的検査 | 確定的検査 | |
|---|---|---|
| 代表的な検査 | NIPT、コンバインド検査、母体血清マーカー検査(クアトロテスト) | 羊水検査、絨毛検査 |
| 何がわかるか | 染色体の病気がある可能性の高さ | 染色体の変化があるかないか |
| お腹に針を刺すか | 刺さない(採血・超音波のみ) | 刺す |
| 流産のリスク | なし | あり |
| 結果の扱い | 陽性でも診断ではない | 診断として扱える |
言い換えると、非確定的検査は「絞り込むための検査」、確定的検査は「はっきりさせるための検査」です。どちらが上ということではなく、役割がちがいます。
実際の流れとしては、まず非確定的検査を受けて、その結果を受けて確定的検査を検討するかどうかを考える——という順序が一般的です。いきなり確定的検査から始めることは、近年は多くありません。
出生前診断でわかること
出生前検査認証制度の説明では、認証施設のNIPTで調べる対象は21トリソミー(ダウン症候群)・18トリソミー・13トリソミーの3つとされています。これは、精度が十分に検証されているのがこの3つの疾患だからという理由によるものです。
- 21トリソミー(ダウン症候群)
- 18トリソミー
- 13トリソミー
- (確定的検査であれば)性染色体の数の変化や、そのほかの染色体の数・形の変化
また、超音波検査では染色体ではなく赤ちゃんの体の形——心臓や脳、おなかの臓器などの様子——を見ていきます。「染色体を調べる検査」と「形を見る検査」は別のものだとご理解いただくと、混乱しにくくなります。
出生前診断でわからないこと
ここが、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。出生前診断は、生まれてくる赤ちゃんのすべてを予測できる検査ではありません。
- 自閉スペクトラム症・知的障害・発達障害——これらは染色体の数の変化として現れるものではないため、NIPTでも羊水検査でもわかりません
- 症状の重さや、生まれてからの経過——染色体の変化が見つかっても、その子にどの程度の症状が出るかまではわかりません
- 対象になっていない多くの病気——調べているのは限られた範囲です
「検査を受けたのだから、これで全部安心」とはならない、ということです。逆に言えば、検査を受けなかったからといって、何かを取り返しのつかないかたちで見落とすわけでもありません。この範囲を知ったうえで、受けるかどうかを考えていただくのがよいと思います。
なぜ、調べる対象がこれほど限られているのか
「技術があるなら、もっといろいろ調べればいいのに」と感じる方もいらっしゃると思います。ここには理由があります。
出生前検査認証制度の説明では、認証施設のNIPTで調べる対象が3つに限られているのは、精度が十分に検証されているのがこの3つの疾患だからだとされています。そして、検証されていない疾患を検査の対象にしている施設は、認証されていません。
つまり「対象が少ない」のは技術が足りないからではなく、確かなことだけをお伝えするために、あえて範囲を絞っているということです。項目数の多さが、そのまま検査の良さを意味するわけではありません。
※認可施設と認可を受けていない施設の考え方の違いについては NIPTの費用相場は?認可施設と非認可施設の違い でも解説しています。
検査の種類と特徴
| 検査 | 時期の目安 | 方法 | 位置づけ | 流産リスク |
|---|---|---|---|---|
| NIPT | 妊娠10週0日〜 | 採血のみ | 非確定的 | なし |
| コンバインド検査 | 妊娠11〜13週 | 超音波+採血 | 非確定的 | なし |
| 母体血清マーカー検査(クアトロテスト) | 妊娠15〜20週 | 採血のみ | 非確定的 | なし |
| 絨毛検査 | 妊娠11〜14週 | 絨毛を採取 | 確定的 | 1% |
| 羊水検査 | 妊娠15〜16週以降 | 羊水を採取 | 確定的 | 0.3% |
※時期や適応は施設・状況により異なります。上記は一般的な目安です。検査ごとの時期をくわしく知りたい方は 出生前診断はいつからいつまで? をご覧ください。
NIPT
母体の血液中にわずかに含まれる赤ちゃん由来のDNAを調べる検査です。採血のみで、赤ちゃんへの負担がありません。認証施設では、対象は21・18・13トリソミーの3つに限られています。
※受けられる時期は NIPTは何週に受けるのがベスト?、費用は NIPTの費用相場は?、性別がわかるかどうかは NIPTで性別はわかる? で解説しています。
コンバインド検査・母体血清マーカー検査
どちらも結果が「1/256」のような確率で返ってくる非確定的検査です。コンバインド検査は超音波での計測(NTなど)と専用の血液検査を組み合わせ、母体血清マーカー検査は採血のみで行います。
注意しておきたいのは、出生前検査認証制度の説明で、母体血清マーカーで「スクリーニング陽性」となった方のなかには、実際にはその病気がない「偽陽性」の方が多く含まれているとされている点です。
※くわしくは コンバインド検査とは|NIPTとの違いと受ける時期 で解説しています。
羊水検査・絨毛検査
お腹に針を刺して、赤ちゃん由来の細胞を直接調べる確定的検査です。染色体の変化があるかないかを診断として確認できる一方、羊水検査では0.3%(およそ300人に1人)の流産のリスクがあるとされています。
そのため、はじめから確定的検査を行うことは近年は多くありません。非確定的検査をはさむことで、実際に確定的検査が必要になる方を絞り込むことができるためです。
※くわしくは 羊水検査とは|わかること・リスク・費用を解説 をご覧ください。
当院がまずNIPTをおすすめしている理由
染色体の病気の可能性を知ることが目的であれば、当院ではまずNIPTをご案内しています。理由は、結果の確からしさに差があるためです。
- 出生前検査認証制度の説明では、NIPTは「偽陽性が少ない」とされています
- NIPTで陰性だった場合にその病気がない確率は、どの年齢層でも99.99%以上と説明されています
- 一方、母体血清マーカーでスクリーニング陽性となった方には偽陽性が多く含まれるとされています
- 同じ説明のなかで、スクリーニング陽性の場合に「もっと精度の高い非確定的検査」を検討する選択肢が示されています
偽陽性が多いということは、実際には病気がないのに「陽性」と言われ、不安な時間を過ごしたうえで確定的検査まで考えることになる方が増えるということです。この負担を減らせる点が、NIPTが選ばれるようになった大きな理由だと考えています。
実際、NIPTが行われるようになってから、羊水検査の実施件数は世界中で減っているとされています。
なお、「赤ちゃんの姿も詳しく見ておきたい」という目的であれば、超音波は超音波として、初期精密超音波検査(胎児ドック)を受けていただくほうが目的に合います。目的ごとに適した検査を選んでいただくのが、結果的にいちばんはっきりした情報が得られる方法だと考えています。
| 知りたいこと | 当院でおすすめしている検査 |
|---|---|
| 染色体の病気の可能性を、できるだけ正確に知りたい | NIPT |
| 赤ちゃんの形態を、時間をかけて超音波で見ておきたい | 初期精密超音波検査(胎児ドック) |
| 染色体の変化があるかないかを、はっきりさせたい | 羊水検査(多くはNIPTの結果を受けて検討します) |
出生前の検査は、受けないという選択も同じように尊重されるものです。当院でご説明する時間は、検査をおすすめするための時間ではありません。ご本人とパートナーが納得して決められるように、材料をそろえる時間だと思っていただければと思います。
受けるかどうかを決めるのは、ご本人です
出生前診断は「受けなければならない」ものではありません。受ける・受けないも含めて、ご本人とパートナーが選ぶことだとされています。受けないという結論も、同じように尊重される選択です。
考えるときに整理しておくとよいのは、次のような点です。
- 何を知りたいのか——「染色体のこと」か、「赤ちゃんが元気かどうか」か。目的によって適した検査が変わります
- 結果をどう使いたいのか——「知ったうえで備えたい」も立派な目的です
- いつまでに決めるのか——検査には受けられる時期があります
- 誰と決めるのか——おひとりで抱え込まず、パートナーや医療者と一緒に考えていただければと思います
迷われている段階の考え方は 出生前診断を受けるべき?受けた人の割合やメリット・デメリット でくわしく整理しています。
当院について
レディースクリニックなみなみは、日本医学会「出生前検査認証制度」の認証施設です。
- 産婦人科専門医が、検査の前後の説明まで一貫して担当します
- 遺伝カウンセリングに対応しています——受けるかどうかを決める前からご相談いただけます
- NIPTで陽性となった場合の確定検査(羊水検査)まで、当院がフォローします——羊水検査は当院では実施しておらず、基幹施設である日本赤十字社医療センターと連携して受けていただきます。手配は当院が行います
- 羊水検査が必要になった場合、その検査費用は当院が負担します——NIPTの料金にあらかじめ含めています。費用を理由に確定検査をあきらめることがないようにという考えによる制度です
- 基幹施設である日本赤十字社医療センターと連携しています
非確定的検査としてはまずNIPTをご案内し、目的に応じて初期精密超音波検査(胎児ドック)や羊水検査をご提案しています。費用は 料金一覧ページ・出生前診断のページ でご確認ください。目黒駅から徒歩4分、土日も診療し、WEB予約は24時間受け付けています。紹介状は不要です。
「まだ受けると決めたわけではないけれど、違いだけ聞いてみたい」というご相談も歓迎しています。わからないことは、わからないままで大丈夫です。まずはお気軽にお声がけください。
NIPTの検査内容・受けられる時期・費用・当院の体制については、NIPTのご案内 にまとめています。ご予約・ご相談はWEBから24時間受け付けています(土日も診療しています)。
よくあるご質問
いいえ。主に21トリソミー(ダウン症候群)・18トリソミー・13トリソミーといった特定の染色体の変化を調べるもので、すべての病気や障害がわかるわけではありません。とくに自閉スペクトラム症・知的障害・発達障害は、染色体の数の変化として現れるものではないため、NIPTでも羊水検査でもわかりません。また、染色体の変化が見つかっても、症状の重さや生まれてからの経過まではわかりません。
目的によって変わります。当院では、染色体の病気の可能性を知ることが目的であればまずNIPTをおすすめしています。偽陽性が少なく、陰性だった場合の確からしさが高いとされているためです。赤ちゃんの形態を詳しく見ておきたい場合は初期精密超音波検査(胎児ドック)、はっきり確定させたい場合は羊水検査、というように、目的ごとに適した検査をご提案しています。妊娠週数によっても選べる検査が変わりますので、ご相談ください。
NIPTは採血のみで行う非確定的検査で、流産のリスクはありません。結果は「可能性が高い・低い」を示すもので、診断ではありません。一方、羊水検査はお腹に針を刺して羊水を採取する確定的検査で、染色体の変化があるかないかを診断として確認できますが、0.3%の流産のリスクがあるとされています。役割が違う検査で、多くの場合はまずNIPTを受け、その結果を受けて羊水検査を検討するという流れになります。
受けられないわけではありませんが、近年は、はじめから確定的検査を行うことは多くありません。羊水検査にはわずかとはいえ流産のリスクがあるため、そのリスクを負う方をできるだけ少なくしたほうがよい、という考え方によるものです。まず負担の少ない非確定的検査を受けていただき、その結果をふまえて検討する進め方が一般的です。ご希望や経過によっては、はじめから確定的検査を選ぶという選択もありますので、ご相談ください。
いいえ。出生前診断は受けなければならないものではなく、受ける・受けないはご本人とパートナーが選ぶことだとされています。受けないという選択も、同じように尊重されます。当院でも、検査をおすすめする場としてではなく、判断の材料をそろえる時間として説明を行っています。
非確定的検査の「陽性」は診断ではありません。まず結果の意味についてご説明したうえで、確定的検査(羊水検査)に進むかどうかを一緒に考えていきます。進まないという選択もあります。当院は認証施設として遺伝カウンセリングに対応しており、確定検査まで当院でフォローできますので、結果が出てから別の施設を探していただく必要はありません。
まとめ
- 出生前診断は複数の検査の総称で、「非確定的検査」と「確定的検査」に分けて考えると全体像がつかめます
- 調べているのは主に21・18・13トリソミー。自閉スペクトラム症・知的障害・発達障害はわかりません
- 当院では、染色体の可能性を知る目的であれば、まずNIPTをおすすめしています(偽陽性が少ないとされているため)
- 赤ちゃんの形態を見たい場合は初期精密超音波検査(胎児ドック)、確定が必要な場合は羊水検査と、目的ごとに選ぶのがよいと考えています
- 近年ははじめから確定的検査を行うことは多くありません。まず非確定的検査を受け、その結果をふまえて検討します
- 受ける・受けないを決めるのはご本人とパートナーです。受けないという選択も尊重されます
レディースクリニックなみなみは出生前検査認証制度の認証施設として、NIPTを中心に、確定的検査(羊水検査)まで産婦人科専門医が一貫して対応しています。「どれを選べばいいのかわからない」という段階でのご相談も承っておりますので、時期に余裕のあるうちに、どうぞお気軽にお声がけください。
執筆者兼監修者プロフィール
東大産婦人科に入局後、長野県立こども病院、虎の門病院、関東労災病院、東京警察病院、東京都立豊島病院、東大病院など複数の病院勤務を経てレディースクリニックなみなみ院長に就任。
資格
- 医学博士
- 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
- FMF認定超音波医
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参考文献
- 日本医学会 出生前検査認証制度等運営委員会「出生前検査の種類(NIPT
- 母体血清マーカー検査
- 超音波検査
- 羊水検査
- 絨毛検査)」
- 日本産科婦人科学会「産婦人科診療ガイドライン 産科編」



ここが、私がいちばんお伝えしたいところです。検査を受けたからといって、すべてが分かるわけではありません。そして、受けなかったからといって、取り返しのつかない見落としをするわけでもありません。この範囲を知らないまま受けるかどうかを決めてしまうと、あとで「そういう検査だと思っていなかった」となりかねません。