執筆者兼監修者プロフィール
東大産婦人科に入局後、長野県立こども病院、虎の門病院、関東労災病院、東京警察病院、東京都立豊島病院、東大病院など複数の病院勤務を経てレディースクリニックなみなみ院長に就任。
資格
- 医学博士
- 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
- FMF認定超音波医
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日本医学会「出生前検査認証制度」の認証施設で行うNIPTでは、赤ちゃんの性別はお伝えしていません。これは「調べたけれど教えない」という意味ではなく、そもそも性別が検査の対象に入っていないためです。認証施設のNIPTが調べているのは、21トリソミー(ダウン症候群)・18トリソミー・13トリソミーの3つに限られています。
「調べればわかるはずなのに、どうして教えてくれないのだろう」——そう感じられるのは、とても自然なことだと思います。一日でも早く知りたい、名前を考えたい、上の子に伝えたい。その気持ちは、わがままなどではありません。この記事では、その疑問に「決まりだから」で答えるのではなく、なぜそういう制度になっているのかを順を追ってご説明します。
- 認証施設のNIPTで性別がわからない理由(結論)
- NIPTが調べている「3つの染色体」とは何か
- 認証施設が性別を伝えない、3つの考え方
- 「性染色体を調べること」と「性別を教えること」の違い
- 認証施設と、認証を受けていない施設の考え方の違い
- 性別を知りたいと思ったときの、現実的な道筋
- よくあるご質問(羊水検査ならわかる? など)
結論|認証施設のNIPTでは、性別はお伝えしていません
いちばん知りたいところからお答えします。出生前検査認証制度の認証施設で受けるNIPTでは、赤ちゃんの性別はわかりませんし、お伝えもしていません。よく誤解されるのが、「検査すればわかっているのに、施設が伏せている」わけではないという点です。認証施設のNIPTは性別を調べる設計になっておらず、医師の手元にも性別の情報は届きません。
「わからない」と「教えない」は違う
「教えてもらえなかった」と感じると、壁があるように思えてしまいます。けれど実際には、検査の設計そのものが、はじめから3つの染色体だけに絞られている——性別は最初から検査の視界の外にあります。検査当日に「性別も一緒に見ておいてください」とお願いいただいても、残念ながらお応えできません。
NIPTが調べているのは「3つの染色体」だけ
出生前検査認証制度の説明では、NIPTはダウン症(21トリソミー)、18トリソミー、13トリソミーの3つについて、病気がある可能性を調べる検査とされています。裏を返せば、この3つ以外は調べていないということです。
なぜ3つだけなのか
同制度の説明では、対象を限定している理由について、「精度が十分に検証されているのがこの3つの疾患だからです」とされています。さらに、検査精度が十分に検証されていない疾患を検査の対象とする施設は認証していないとも明記されています。
つまり「対象が少ない=簡易な検査」ということではなく、結果を根拠として次の判断ができる範囲に、あえて絞り込んでいるという考え方です。裏づけが十分でない項目までお返しすると、受け取った方が判断に迷うだけの情報になってしまう——それを避けるための線引きです。
NIPTでわかること・わからないこと
| 項目 | 認証施設のNIPTで |
|---|---|
| 21トリソミー(ダウン症候群) | 可能性を調べます |
| 18トリソミー・13トリソミー | 可能性を調べます |
| 赤ちゃんの性別 | 調べません(検査の対象外) |
| 性染色体の数の変化 | 調べません(検査の対象外) |
| 心臓など体のかたちの変化 | わかりません(超音波で調べる領域です) |
| 症状の重さ・生まれてからの経過 | わかりません |
| 結果の性質 | 「可能性の高さ」を示す非確定的検査です |
あわせて知っておいていただきたいのが、NIPTでわかる範囲は、生まれつきの病気全体のごく一部だということです。同制度の説明では、生まれてくる赤ちゃん100人のうち3〜5人ほどが先天的な疾患をもって生まれてくるとされ、そのうち染色体が原因の疾患は約25%、NIPTの対象である3つの染色体疾患はさらにその約70%——計算すると100人あたり0.7人程度にあたる、と説明されています。「受ければ赤ちゃんのことがひととおりわかる」わけではないという前提を共有したうえで受けていただきたいと考えています。
なぜ認証施設は性別を伝えないのか|3つの考え方
「精度が検証されていないから」という説明だけでは、性別についてはやや物足りなく感じられるかもしれません。実際、性別の判定そのものは技術的にむずかしいことではないからです。それでも認証施設が性別をお伝えしないのには、制度の考え方としていくつかの理由が重なっています。
①出生前検査は「その後の医療とケアにつなげる」ための検査だから
出生前検査は、赤ちゃんの情報を集めること自体が目的ではありません。病気をもつ可能性を知り、その後の妊娠経過の見守り方や出産の場所、生まれたあとの医療・福祉の準備につなげていくことが本来の位置づけとされています。
この枠組みの中では、性別は「その後の医療につながる情報」ではありません。性別がわかっても、妊娠中の管理方針や出産準備の医学的な中身が変わるわけではないからです。医療として提供する検査の枠に、性別が入ってこない——これが1つ目の考え方です。
②検査対象を限定するという、制度そのものの設計だから
先ほど触れたとおり、認証制度では検査の対象を3つの染色体疾患に限定すること自体が、認証の条件になっています。「性別くらいなら」と思われるかもしれませんが、いったん例外を認めると際限がなくなり、精度の裏づけがある範囲に絞るという制度の芯が失われてしまいます。認証施設が一律に対応をそろえているのは、施設ごとの裁量で結果の範囲が変わらないようにするためでもあります。
③性別の情報が、医学的な必要のない選択に結びつきうるという懸念があるから
3つ目は、少しデリケートな話になります。出生前に得られた情報が、妊娠を続けるかどうかの判断材料になりうる——この点は、出生前検査という分野が長く向き合ってきたテーマです。国内の学会の指針でも、出生前診断が「障碍を有する者の生きる権利と命の尊重」を否定することにつながりかねない、という懸念が繰り返し述べられてきました。
性別についても、同じ枠組みで考えられてきました。医学的な必要性がないにもかかわらず、性別を理由とした選択に結びつきうる——そうした指摘は国内外で長く議論されてきたと考えられており、医療として提供する検査で性別の情報を返すことには、慎重な姿勢がとられています。
誤解のないよう申し添えますが、これは「性別を知りたいと思うこと自体がいけない」という話ではありません。それは生まれてくる子を迎える準備の一部であり、ごく自然な気持ちです。ここで問題にされているのは、医療という仕組みがどこまでの情報をどう提供するかという設計の話です。
「性染色体を調べること」と「性別を教えること」は別のこと
混同されやすい点を整理しておきます。「性染色体を調べる」ことと「赤ちゃんの性別を伝える」ことは、目的がまったく違います。
性染色体を調べることに医学的な意味がある場合もある
人の染色体は、1番から22番までの常染色体のペアと、性別によって異なる性染色体(X染色体・Y染色体)のペアからできているとされています。この性染色体にも数の変化が起こることがあり、成長や発達に関わると知られています。
ですから、性染色体の数の変化を調べること自体には医学的な意味がある場面があります。ただしそれは「男の子か女の子かを知るため」ではなく、疾患の可能性を評価するためです。
認証施設のNIPTでは、性染色体は検査対象に含まれない
一方で、認証制度におけるNIPTの対象は、あくまで21・18・13トリソミーの3つです。性染色体の数の変化は、認証施設のNIPTの対象には含まれていません。国内の学会がかつて示していたNIPTの指針でも、性染色体の数的異常や染色体の微小欠失を検出する検査は、その指針が対象とするNIPTには含まれない、と整理されていました。
「性染色体の医学的評価」と「性別の告知」は別の話です。前者が意味を持つ場面があるからといって、後者が検査のサービスとして提供されるわけではありません。
認証施設と、認証を受けていない施設|考え方の違い
NIPTを調べていると、「性別がわかる」「調べられる項目が多い」といった案内を目にすることがあります。これは、認証を受けている施設と受けていない施設とで、検査の設計の考え方が異なるためです。どちらが良い・悪いという話ではなく、「何を根拠に、どこまでを結果として返すのか」の違いとして整理します。
| 認証施設 | 認証を受けていない施設 | |
|---|---|---|
| 検査の対象 | 21・18・13トリソミーの3つに限定 | 施設ごとに異なります |
| 対象を決める基準 | 精度が十分に検証されていること | 施設ごとの方針によります |
| 性別 | 検査の対象外・お伝えしません | 施設ごとに異なります |
| 検査前後の説明 | 認証の要件として体制が定められています | 施設ごとに異なります |
| 陽性だった場合 | その後の相談・確定的検査につなぐ体制が前提とされています | 施設ごとに異なります |
大切なのは、「調べられる項目が多いほど良い検査」とは限らないという視点です。検査はその結果をどう使えるかまでがセットで、はじめて意味を持ちます。
※認証施設と認証を受けていない施設の違い、費用の考え方については NIPTの費用相場は?認可施設と非認可施設の違い でくわしく解説しています。
妊婦健診の超音波では、妊娠が進むにつれて性別がわかってくることが多くあります。ただし、赤ちゃんの向きや姿勢によっては、その日には確認できないこともあります。「今日は教えてもらえなかった」と気にされる方がいらっしゃいますが、多くは赤ちゃんの位置の問題です。どうぞ焦らずにいてください。
性別を知りたいと思ったときに|現実的な道筋
ここまで制度の話が続きましたが、「では、性別はいつわかるのか」という点もお伝えしておきます。
妊婦健診の超音波で、妊娠が進むにつれてわかってくることが多い
赤ちゃんの性別は、通常の妊婦健診で行う超音波検査の中で、妊娠が進むにつれて推定できるようになってくることが多いとされています。特別な検査を追加で受けなければわからない、というものではありません。ただし、知っておいていただきたいことがあります。
- 時期には個人差があります——同じ週数でも、しばらく確認できない方もいらっしゃいます
- 赤ちゃんの向きや姿勢に左右されます——足を閉じている、背中を向けている状態では確認できません
- 超音波での推定は確実なものではありません——後から変わることもあります
- 健診の主目的は性別の確認ではありません——赤ちゃんの発育や羊水・胎盤の状態の確認が中心です
当院で何週ごろに、どのようにお伝えしているかについては、健診の際に担当の医師にお尋ねください。「知りたい」「まだ聞きたくない」というご希望も、遠慮なくお伝えいただければと思います。
※超音波検査で何がわかるのかについては ダウン症はエコー検査でわかる? でも取り上げています。
「性別を知るため」にNIPTを受ける意味は乏しい
以上をふまえると、性別を知ることだけを目的にNIPTを受けることには、あまり意味がありません。認証施設のNIPTでは性別はわからず、妊婦健診の超音波という道筋がすでにあるからです。NIPTは「3つの染色体疾患の可能性を知り、その先の準備や検査につなげたい」と考えたときに意味を持つ検査です。
検査を選ぶときに、整理しておきたいこと
「性別はわからない」と知ったうえで、あらためて受けるかどうかを考える方もいらっしゃいます。ご相談の場でよく整理していただくのは、次のような点です。
| 考えるポイント | 整理のしかた |
|---|---|
| 何を知りたいのか | 「性別」なのか、「染色体疾患の可能性」なのか、「赤ちゃんが元気に育っているか」なのか。目的によって、合う検査が変わります |
| その情報を何に使うのか | 結果を知って、妊娠経過や出産の準備をどう変えたいか。「知ったうえで備えたい」も立派な目的です |
| 結果が出たあとをどう考えるか | NIPTは非確定的検査です。陽性だった場合に確定的検査へ進むかまで見通しておくと迷いが減ります |
| どこで受けるか | 検査項目の多さだけでなく、結果が出たあとの相談体制まで含めて考えます |
| 誰と決めるのか | おひとりで抱え込まず、パートナーや医療者と一緒に考えていただければと思います |
受けるかどうかに医学的な「正解」はなく、受けないという結論も同じように尊重されるべき選択です。迷いの整理については 出生前診断を受けるべき?受けた人の割合やメリット・デメリット、時期については NIPTは何週に受けるのがベスト? をあわせてご覧ください。
当院のNIPTについて
レディースクリニックなみなみは、日本医学会「出生前検査認証制度」の認証施設です。したがって当院のNIPTでも赤ちゃんの性別はお伝えしていません。そのうえで、次のような体制でご相談をお受けしています。
- 産婦人科専門医が、検査の前後の説明まで一貫して担当します
- 遺伝カウンセリングに対応しています——「何を知りたいのか」を一緒に整理するところから始められます
- NIPTで陽性となった場合の確定検査(羊水検査)まで、当院がフォローします——羊水検査は当院では実施しておらず、基幹施設である日本赤十字社医療センターと連携して受けていただきます。手配は当院が行います
- 羊水検査が必要になった場合、その検査費用は当院が負担します——NIPTの料金にあらかじめ含めています
- 基幹施設である日本赤十字社医療センターと連携しています
当院のNIPTは採血のみの非確定的検査で、妊娠10週0日からお受けいただけます(推奨は12〜13週ごろ)。NIPTのほか、コンバインド検査、初期精密超音波検査(胎児ドック)を行っています。
目黒駅から徒歩4分、土日も診療しており、WEB予約は24時間受け付けています。紹介状は不要です。検査内容や費用は NIPTのご案内 および 料金一覧ページ をご確認ください。「まだ受けると決めたわけではないけれど、話だけ聞いてみたい」というご相談も歓迎しています。
よくあるご質問
NIPTで赤ちゃんの性別はわかりますか?
出生前検査認証制度の認証施設で受けるNIPTでは、赤ちゃんの性別はわかりません。調べているのは21トリソミー(ダウン症候群)・18トリソミー・13トリソミーの3つで、性別や性染色体は検査の対象に含まれていないためです。「調べたけれど伝えない」のではなく、そもそも検査の設計に入っていない、とご理解いただければと思います。
どうして認証施設では性別を教えてもらえないのですか?
3つの考え方が重なっています。①出生前検査が「病気の可能性を知り、その後の医療やケアにつなげる」ための検査と位置づけられており、性別はその枠に入らないこと。②認証制度では検査の対象を3つの疾患に限定すること自体が要件とされていること。③性別の情報が医学的な必要のない選択に結びつきうるという懸念が長く議論されてきたこと。性別を知りたいというお気持ちを否定するものではなく、医療として提供する検査の範囲をどう定めるか、という制度設計の話になります。
性染色体の検査を追加すれば、性別がわかりますか?
認証施設のNIPTでは、性染色体の数の変化は検査の対象に含まれていないため、項目として追加することはできません。なお「性染色体の数の変化を調べること」と「性別を知ること」は目的が異なり、前者は数の変化に関わる疾患の可能性を評価するために行われるものです。
性別はいつごろ、どうすればわかりますか?
通常の妊婦健診で行う超音波検査の中で、妊娠が進むにつれて推定できるようになってくることが多いとされています。ただし時期には個人差があり、赤ちゃんの向きや姿勢によって確認できないこともあります。超音波での推定は確実なものではありません。当院で何週ごろにどうお伝えしているかは、健診の際に担当医にお尋ねください。
羊水検査を受ければ性別はわかりますか?
羊水検査は赤ちゃんの染色体を調べる確定的検査で、性染色体を含めた染色体の状態が対象になります。ただし、得られた情報をどのようにお伝えするかは検査の目的や施設の方針によって異なります。羊水検査はお腹に針を刺す検査で流産などのリスクをともなうため、性別を知ることを目的に受ける検査ではありません。ご不明な点は検査前のご説明の際にご確認ください。
性別が知りたいだけの場合、NIPTを受ける意味はありますか?
性別を知ることだけが目的であれば、認証施設のNIPTを受ける意味は乏しいと考えられます。性別はわかりませんし、性別については妊婦健診の超音波という道筋がすでにあるためです。NIPTは、3つの染色体疾患の可能性を知り、その先の準備や確定的検査につなげたいと考えたときに意味を持つ検査です。
まとめ
- 認証施設で受けるNIPTでは、赤ちゃんの性別はわかりません——「教えない」のではなく、検査の対象に入っていません
- 調べるのは21・18・13トリソミーの3つで、その理由は「精度が十分に検証されているのがこの3つだから」とされています
- 性別を伝えない背景には、①その後の医療とケアにつなげるためという位置づけ ②対象を限定する制度設計 ③医学的な必要のない選択に結びつきうるという懸念が重なっています
- 「性染色体を調べること」と「性別を教えること」は別です。前者には医学的な意味がある場面がありますが、認証施設のNIPTの対象外です
- 性別は妊婦健診の超音波で、妊娠が進むにつれて推定できるようになってくることが多いとされています(確実なものではありません)
- 制度が線を引いているのは「医療として提供する検査の範囲」であって、性別を知りたいというお気持ちを否定するものではありません
レディースクリニックなみなみは認証施設として、産婦人科専門医が検査の前後の説明まで一貫して対応しています。「何を知りたいのか」を整理するところからのご相談も承っておりますので、どうぞお気軽にお声がけください。
執筆者兼監修者プロフィール
東大産婦人科に入局後、長野県立こども病院、虎の門病院、関東労災病院、東京警察病院、東京都立豊島病院、東大病院など複数の病院勤務を経てレディースクリニックなみなみ院長に就任。
資格
- 医学博士
- 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
- FMF認定超音波医
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参考文献
- 日本医学会 出生前検査認証制度等運営委員会「NIPT(母体血を用いた出生前遺伝学的検査)」および検査説明文書
- 日本産科婦人科学会「出生前に行われる遺伝学的検査および診断に関する見解」



「性別を知りたい」というお気持ちは、まったく自然なことです。名前を考えたい、上のお子さんに伝えたい——診察でもよくうかがいます。ですので、これからご説明するのは「知りたがるのはよくない」という話ではありません。なぜこの検査の対象に入っていないのか、という制度の話です。