執筆者兼監修者プロフィール
東大産婦人科に入局後、長野県立こども病院、虎の門病院、関東労災病院、東京警察病院、東京都立豊島病院、東大病院など複数の病院勤務を経てレディースクリニックなみなみ院長に就任。
資格
- 医学博士
- 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
- FMF認定超音波医
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妊娠中に避けたい食べ物は、加熱不十分な生肉・生ハム・ユッケ・レアステーキ、生卵・生牡蠣・スモークサーモン、海外産の無殺菌チーズ、そしてアルコールです。一方で、お刺身・お寿司・日本産のナチュラルチーズ・うなぎなどは、ネット上で「NG」と書かれがちですが、条件を守れば食べて大丈夫な食品です。コーヒーは1日1〜2杯まで、マグロなどの大型魚は1〜2週に1回程度なら問題ありません。「ダメなもの」と「気をつければOKなもの」を正しく区別することが、ストレスのない妊娠生活への第一歩です。
妊娠中は「これもダメ、あれもダメ」と食事制限の情報があふれ、不安やストレスを感じていませんか?「うっかり生ものを食べてしまったけど大丈夫?」と心配になったり、何をどこまで我慢すべきか悩んだりする妊婦さんも多いでしょう。大丈夫です。正しい知識に基づけば、妊娠中でも楽しめる食べ物はたくさんあります。このコラムでは産婦人科専門医の視点から、妊婦さんの食事に関する疑問や不安に寄り添いながら、安全な食材選びのポイントをお伝えします。
この記事でわかること
- 妊娠中に本当に避けたい食べ物一覧とその理由(食中毒菌や有害物質のリスク)
- 「NG」と誤解されがちだけれど実はOKな食べ物(お刺身・お寿司・日本産チーズ・うなぎなど)
- 量や頻度に気をつければOKな食べ物(コーヒー・大型魚・塩分の多い食品 等)と安心して摂るためのコツ
- うっかり生ものを食べてしまったときの考え方と、トキソプラズマ感染リスクの実際
- 妊婦さんが食事を楽しむためのポイントと、食事制限と上手に付き合う方法
では、妊娠中の食生活について詳しく見ていきましょう。
なぜ妊娠中は食事に注意が必要なの?
妊娠中の食事にはいくつかの注意点があり、その多くは妊婦さん自身とお腹の赤ちゃんを食中毒や有害物質から守るためです。妊娠すると女性の免疫機能は少し抑えられ、普段より食中毒にかかりやすくなります。また胎盤を通じて胎児に影響を及ぼす物質もあるため、食べ物選びに普段以上の配慮が必要です。主な理由を順番に説明します。
理由1: 食中毒のリスクが高まる
妊娠中はリステリア菌など特定の食中毒菌に対して非妊娠時の約17倍感染しやすいとも言われます。リステリア菌は妊婦さんが感染すると胎盤を通じて赤ちゃんにまで達し、流産や早産の原因となる恐れがあります。さらにトキソプラズマ寄生虫も、健康な人なら無症状で済むところ、妊婦が初感染すると胎児の脳や目に障害を及ぼすリスクがあります。
理由2: 胎盤を通じて胎児に影響する物質がある
代表例がメチル水銀とカフェインです。メチル水銀は一部の大型の魚に含まれる金属で、胎児の神経発達に影響する可能性が指摘されています。カフェインも胎児はうまく代謝できず、体内に長時間残留するため過剰摂取は胎児の発育に悪影響を及ぼす恐れがあります。こうした物質は「量」を管理することが大切です。
理由3: 栄養バランスへの配慮が必要
妊娠中は赤ちゃんの成長のためビタミンやミネラルが普段以上に必要ですが、一方で一部の栄養素の過剰摂取は禁物です。例えばビタミンAは胎児の発育に必要な反面、妊娠初期に過剰摂取すると胎児の奇形リスクが指摘されています。レバーやうなぎなどビタミンA豊富な食品は食べ過ぎないよう注意しましょう。また塩分の摂りすぎも妊娠高血圧症候群(高血圧やむくみ)の一因となり得ます。「必要な栄養はしっかり、過剰なものは控えめに」が妊婦の食事の基本です。
このように、妊婦さんの食事制限にはきちんとした医学的理由があります。次の章から、具体的に何をどう気をつけるべきかを「絶対NGなもの」「食べ方次第でOKなもの」「実は問題ないもの」に分けて解説します。
妊娠中に避けたい食べ物【NGリスト】
まずは妊娠中に避けたほうがよい食べ物から見ていきましょう。食中毒や寄生虫感染のリスクがはっきりしているものに絞っています。
加熱が不十分な肉類(生ハム・ローストビーフ・ユッケ・レアステーキ)
加熱が不十分な肉類は妊娠中は避けましょう。生肉やそれに近い状態の加工肉にはトキソプラズマやその他の細菌(大腸菌O157、サルモネラ等)が潜んでいる恐れがあります。妊娠中に初めてトキソプラズマに感染すると、胎盤経由で胎児にも感染し、流産や先天性トキソプラズマ症(赤ちゃんの脳・目の障害)の原因となり得ます。
具体的に避けたい食品は以下の通りです。
- 生ハム(特に海外産):トキソプラズマやリステリア菌のリスク
- ローストビーフ:低温調理で中心が生に近いものは避ける
- ユッケ・レバ刺し・タルタルステーキ
- レア・ミディアムレアのステーキ
生卵・生牡蠣・スモークサーモン
生卵、生牡蠣などの非加熱の貝類、スモークサーモンは妊娠中は避けるのが安心です。それぞれリスクが異なるので個別に見ていきましょう。
- 生卵:サルモネラ菌による食中毒リスク。生卵かけご飯、すき焼きのつけだれ、自家製マヨネーズ、ティラミスなど
- 生牡蠣など貝類:ノロウイルスや細菌のリスク。妊娠中は免疫力が落ちて当たりやすい可能性も
- スモークサーモン:加熱せず燻製しているだけで、リステリア菌のリスクがあるため避ける
- イクラ・明太子など生の魚卵:加熱したものに切り替えるのが安心
なお、「お刺身・お寿司」については別途「実はOKな食品」で詳しく解説します。生魚と生貝・生卵では考え方が異なります。
海外産の無殺菌チーズ(日本産の市販チーズは基本OK)
「妊娠中はチーズ全般NG」という情報がSNSなどで広がっていますが、これは誤った情報です。妊娠中に避けるべきなのは無殺菌(低温殺菌していない)の牛乳で作られたチーズで、リステリア菌が含まれている可能性があります。
日本では食品衛生法上、チーズの原料となる牛乳は殺菌処理が必須です。そのため、日本国内で製造販売されている市販のチーズは、フレッシュタイプ(モッツァレラ・ブッラータ・カマンベール・クリームチーズなど)も含めて、妊娠中も食べて大丈夫です。
避けたほうがよいのは、輸入のナチュラルチーズで原料に無殺菌乳が使われている可能性があるものです。輸入チーズを選ぶ際は「殺菌乳使用」「pasteurized」の表記を確認してください。表記が不明なものは控えるのが無難です。
| チーズの種類 | 妊娠中に食べてOKか? | ポイント・注意点 |
|---|---|---|
| プロセスチーズ(加熱殺菌済み) | 〇 安全に食べられる | スライスチーズやピザ用チーズなど。製造過程で加熱処理済み。 |
| 日本産ナチュラルチーズ(殺菌乳使用) | 〇 食べてOK | モッツァレラ・カマンベール・クリームチーズなど。日本では殺菌乳使用が必須。 |
| 輸入ナチュラルチーズ(無殺菌乳の可能性あり) | △ 表記を確認 | 「pasteurized」「殺菌乳使用」の表記があればOK。不明なら避ける。 |
| 生乳・非殺菌乳使用の乳製品 | × 避ける | 店舗や牧場で提供される殺菌なし牛乳、生シェイク等はNG。 |
アルコール
アルコール飲料は妊娠が判明したら避けるのが大原則です。アルコールは胎盤を通過し、胎児の発育に直接悪影響を与えます。特に妊娠初期からの継続的な飲酒は胎児性アルコール症候群(FAS)の原因になる可能性があります。
ただし、胎児への影響は「相当な量を継続的に」飲んだ場合に出るものです。妊娠に気づかず最初の数週間に少量のお酒を飲んでしまった、というケースはほとんど問題になりません。気づいた時点で禁酒すれば大丈夫ですので、過剰に自分を責めないでくださいね。
エナジードリンク・栄養ドリンク
栄養ドリンク類はカフェインや大量のビタミンA・生薬成分を含むものがあります。特に滋養強壮ドリンクには高濃度のカフェイン(1本でコーヒー1〜2杯分以上)が含まれるものもあるため、妊娠中は避けた方が安心です。
アルコールではありませんが、栄養ドリンクの中にはカフェインや薬効成分を多く含むものがあり、妊婦さんには不向きです。眠気覚ましが必要なときは、ノンカフェインのお茶やぬるめのコーヒー1杯程度に留めましょう。
量や頻度に注意すれば食べてOKな食べ物
次に、妊娠中も「絶対ダメ」ではなく、量や食べ方に注意すれば楽しめる食品を紹介します。「知らずに全部我慢していた!」という方は、ぜひ適切な範囲で取り入れてください。
マグロなどの大型魚(水銀に注意)
魚は妊娠中も大切なタンパク源で、積極的に食べたい食品です。ただし、一部の大型魚にはメチル水銀が多く含まれるため食べ過ぎに注意しましょう。
とはいえ、マグロを毎日のように食べる方は少ないはずです。1〜2週に1回程度であれば全く問題ありません。クジラ・イルカなど食物連鎖の上位にいる海洋哺乳類は妊娠中は控えるのが無難です。厚生労働省は魚種ごとに妊婦が食べてもよい頻度の目安を定めています。
水銀に注意が必要な主な魚と摂取量目安
| 魚の種類・グループ | 妊娠中の摂取目安量(頻度) | 主な魚の例 |
|---|---|---|
| 特に水銀が多い | 極力食べない(〜2ヶ月に1回) | ※主に一部のイルカ・クジラ類 |
| 水銀が多い | 週1回まで(80g程度) | クロマグロ、メバチマグロ、キンメダイ、メカジキ 等 |
| 水銀中程度 | 週2回まで(160g程度) | ミナミマグロ、ヨシキリザメ、キダイ、ユメカサゴ 等 |
| 一般的な魚(安全) | 制限なし | サケ、カツオ、キハダマグロ、イワシ、アジ 等 |
魚はDHAやEPAなど赤ちゃんの脳の発達に役立つ脂肪酸を含む優良な食品です。「注意が必要=食べてはいけない」ではなく、「同じ種類の魚ばかり大量に食べ過ぎない」ように心がけましょう。色々な種類の魚をバランスよく食べることで、水銀の摂り過ぎを防ぎつつ魚の栄養を活かせます。
ビタミンAを多く含む食材(うなぎ・レバー)
ビタミンAは胎児の発育に必要なビタミンですが、妊娠初期に摂りすぎると胎児に奇形が生じる可能性が指摘されています。妊婦のビタミンA耐容上限量は1日2,700µg RAEと設定されています。
レバーは特に要注意で、レバー100gには約14,000µgものビタミンAが含まれ、焼き鳥レバー1串(20g)でも2,800µgに達します。妊娠中はレバーを食べない、もしくは極少量に留めることが鉄則です。
うなぎについては「妊娠中はうなぎNG」と検索される方が非常に多いのですが、過度な心配は不要です。うなぎにビタミンAが多いのは事実ですが、問題になるのは毎日のように大量に食べた場合だけ。実際には、うなぎは年に1〜2回、土用の丑の日に食べるかどうかという食品なので、その程度の頻度であれば全く問題ありません。「ちょっと食べる」のは良い栄養補給にもなります。
カフェイン(コーヒー・紅茶・緑茶)
カフェインの摂り過ぎも妊娠中は注意が必要です。妊婦さんが高用量のカフェイン(概ね1日300mg以上)を常用すると、低出生体重児や流産のリスク上昇との関連が報告されています。
WHOやEFSAなどは「妊婦のカフェイン摂取量は1日200〜300mgまでに抑えるべき」という指針を示しています。具体的な目安は以下の通りです。
- コーヒー:マグカップで1〜2杯まで(1杯あたり約100mg)
- 紅茶:3〜4杯まで(1杯あたり約30〜40mg)
- 緑茶:紅茶と同程度
- ココア・チョコレート:微量(ココア1杯 約10〜20mg、板チョコ1枚 約20〜30mg)
「1日コーヒー1〜2杯まで」を目安にすれば、ココアやチョコレートも組み合わせて楽しめます。
明太子・刺激物・塩分の多い食品
明太子は加熱すれば安心です。生のまま毎日食べるのは避け、明太子パスタなど火を通した料理で楽しみましょう。
刺激物(キムチ・カレー・唐辛子の効いた料理)は胎児への直接的な悪影響はありませんが、つわりや胃もたれを悪化させることがあります。妊娠中はマイルドな味付けを基本にし、香辛料は少量に留めましょう。
インスタントラーメンやスナック菓子など塩分・添加物の多い食品も「少しならOK、頻繁・大量はNG」の代表です。たまの息抜きとして食べる分には構いません。スープを全部飲まない、果物でカリウムを補うなどの工夫を取り入れましょう。
実は妊娠中も食べてOKな食品
ネット上で「NG」と書かれがちですが、実は妊娠中も食べてよい食品を紹介します。「全部ダメ」と思い込んで我慢していると、食事の楽しみが減り、妊娠生活のストレスにつながってしまいます。
お刺身・お寿司(生魚)は基本的にOK
当院では「お刺身もお寿司も基本的に食べて大丈夫」とお伝えしています。日本では生魚を食べる文化が古くからあり、生魚そのものに妊婦さん特有の大きな問題はありません。胎児への影響よりも、食中毒(アニサキス等)に気をつけることのほうが大切です。
お刺身・お寿司を楽しむときの4つのポイントはこちらです。
- 新鮮なものを信頼できるお店で食べる(寄生虫・食中毒リスクを下げる)
- 貝類(牡蠣など)は心配なら避ける(体調が悪いと当たりやすい)
- マグロなど大型魚は1〜2週に1回程度に(水銀に注意)
- クジラ・イルカは控える(食物連鎖の上位で水銀が多い)
「妊娠中はお寿司禁止」と思って我慢している方は、ぜひお気軽に楽しんでください。お母さんが食事を楽しめることも、妊娠生活を快適に送るうえでとても大切です。
「お寿司=生魚で危険」というイメージが広まっていますが、日本の食文化では生魚を食べることは一般的です。お母さんが楽しめる食事は、妊娠生活全体の質を高めます。神経質になりすぎず、新鮮なものを適量楽しむことを心がけましょう。
日本産のナチュラルチーズ(モッツァレラ・カマンベール等)
前述の通り、日本産のチーズはフレッシュタイプも含めて食べて大丈夫です。モッツァレラ、ブッラータ、カマンベール、クリームチーズ、リコッタチーズ等、国内製造のものはすべて殺菌乳を原料にしています。
SNS等で「妊娠中はナチュラルチーズ全部ダメ」という情報を見かけたら、それは海外産の無殺菌チーズの話だと理解してください。
はちみつ
「1歳未満の乳児にはちみつNG」という話は有名ですが、妊婦さんがはちみつを食べても全く問題ありません。乳児がダメなのは乳児ボツリヌス症を防ぐためで、大人の腸ではボツリヌス菌は繁殖しません。
むしろ、はちみつは栄養豊富で妊娠中におすすめの甘味料です。つわりで食欲がない時に、紅茶にはちみつとレモンを入れて飲むと喉ごしが良くカロリーも確保できます。
アボカド
アボカドは「森のバター」と呼ばれるほど栄養価の高い食品で、ビタミンEや葉酸、食物繊維、良質な脂質を多く含み、妊婦さんに積極的に取り入れたい食品です。海外では「妊婦がアボカドを食べると赤ちゃんのアレルギーリスクが下がる」という研究報告もあります。
注意点はカロリーで、1日あたり1/2個程度を目安に、サラダやトーストに加えるのがおすすめです。皮を切る前によく洗うことも忘れずに。
しっかり加熱すればOKなもの(焼き肉・カニ・寿司の加熱ネタ)
焼き肉はウェルダンで食べれば妊娠中もOK。カニは加熱されたものなら問題ありません(ボイルガニ等)。お寿司の加熱ネタ(玉子焼き、かんぴょう巻き、納豆巻き、茹でエビ、蒲焼きうなぎ、蒸しアナゴ等)は安心して食べられるので、お刺身が苦手・不安な方はこうしたネタを選ぶのもおすすめです。
温泉卵・半熟卵料理
卵料理好きの方は気になるかもしれませんが、温泉卵や半熟卵は安全とは言えません。完全に中心まで固ゆでになっていないと菌が残存する可能性があります。妊娠中は卵は固ゆで・しっかり焼きで食べるのがベター。半熟の卵料理は出産までお預けにしましょう。
うっかり生ものを食べてしまったときは?
「ウェルダンと言って頼んだステーキが、よく見たらちょっと赤かった」「外食のサンドイッチに気づかず生ハムが入っていた」——そんなケースで真っ青になって受診される妊婦さんが多くいらっしゃいます。けれど、過度に焦る必要はありません。確率論で考えると、トキソプラズマが赤ちゃんに影響する可能性は実はかなり低いのです。
トキソプラズマが赤ちゃんに影響する確率は実は低い
例えば30歳の妊婦さんがトキソプラズマの抗体を持っていなかったとしても、それまでの30年間、たまにレアな肉を食べる機会はあったはずです。それでも感染してこなかったということは、たまたまこの妊娠中の10ヶ月の間に感染する確率も、同じくらい低いということです。
さらに、リスクはステップごとにどんどん下がっていきます。
- 生肉を食べる → トキソプラズマに感染する:確率は低い
- 母体が感染 → 赤ちゃんに移行する:全員が移行するわけではない
- 赤ちゃんに移行 → 発症する:症例はさらに少ない
このように、最終的に赤ちゃんに影響する可能性はかなり小さな確率になります。
心配なら2〜3週間後に採血で確認できます
それでも気になる方は、食べてから2〜3週間ほど経ってから採血でトキソプラズマの抗体を調べることができます。診察時にご相談ください。なお、食べた直後の検査では結果が出にくいので、少し時間を置く必要があります。
何より大切なのは「慌てない」こと
慌てて真っ青な顔で来院される方が多いのですが、きちんと情報をお伝えすると皆さん納得して帰られます。「ゼロではない」と「すごく高い」は違います。推奨はしていないだけで、誤って少し食べてしまったからといって、めちゃめちゃ焦る必要はないということを覚えておいてください。
食事制限と上手に付き合うコツ
「ダメ」より「OK」に目を向ける
食べられないものより食べられるものに意識を向けましょう。例えば生ハムはNGでも加熱したハム・ベーコンはOK、生牡蠣はNGでも加熱牡蠣(カキフライ等)はOKです。代替となる安全な食品はたくさんあります。「これはダメだけど、じゃあ代わりに何なら楽しめるかな?」と前向きに考えてみると、選択肢は意外に豊富です。
調理法を工夫する
同じ食材でも調理法次第で安全度が変わります。野菜はよく洗う、肉はしっかり焼く、卵は固ゆでに——基本の「付けない・増やさない・やっつける」を意識すれば、大抵の食材は怖くありません。
家族にも協力してもらう
外食やテイクアウト時、家族が「これは大丈夫?」と一緒に気にしてくれると安心です。妊娠していることを共有して、無理に勧められないようにしましょう。
困ったときは医療者に相談を
「これを食べちゃったけど大丈夫?」といった小さな疑問でも構いません。一人で抱え込まず、私たち医療者を頼ってくださいね。妊娠中の食生活を適切にサポートいたします。
まとめ
妊娠中に本当に避けたい食べ物は、加熱不十分な肉・生卵・生牡蠣・スモークサーモン・海外産の無殺菌チーズ・アルコールなど限られています。一方で、お刺身・お寿司・日本産のチーズ・うなぎ・カフェインなどはネット上で「NG」と書かれがちですが、条件を守れば食べて大丈夫な食品です。
食べ物のリスクは厳密にすべて防ごうとしても限界があります。外食のサンドイッチに気づかず生ハムが入っていた、というケースもゼロにはできません。だからこそ、過剰に怖がるのではなく、「バランスよく、過剰摂取を避けて食べる」という考え方が大切です。
そして何より、妊娠期間中もお母さん自身が食事を楽しめることを忘れないでください。「お寿司を我慢しなきゃ」と思いながら過ごすより、たまにお寿司を食べて、ゆったり食事の時間を過ごすことで、快適な妊娠生活を送ることができます。
当院(レディースクリニックなみなみ)では、妊婦さんの食事に関するご不安やご相談にも丁寧に対応しております。「これを食べちゃったけど大丈夫?」といった小さな疑問でも構いませんので、お気軽にご相談ください。安心して食事を楽しみ、健やかな妊娠生活を送りましょう。
レディースクリニックなみなみを予約する妊娠中の食事に関するFAQ(よくある質問)
妊娠に気づく前に、生肉料理やお酒を飲んでしまいました…。赤ちゃんへの影響は大丈夫でしょうか?
多くの場合、過度な心配は不要です。妊娠に気づかずに生肉料理や少量のお酒を口にしてしまう妊婦さんは実は少なくありません。アルコールも生肉も、「相当な量を継続的に」摂取しない限り胎児への影響が出る確率は低いとされています。生肉に関しては、トキソプラズマに感染する確率自体が低く、さらに母体感染→胎児移行→発症と各ステップで確率はどんどん下がるため、最終的に赤ちゃんに影響する可能性はかなり小さくなります。気づいた時点で控えれば、多くの場合大丈夫です。
それでも気になる方は、食べてから2〜3週間ほど経ってから採血でトキソプラズマの抗体を調べることができます。診察時にお気軽にご相談ください。「これを食べてしまったけど大丈夫?」という小さな疑問でも構いません。
ノンカフェインのコーヒーやお茶なら、いくら飲んでも大丈夫ですか?
はい、カフェインレスのコーヒーやノンカフェインのお茶は妊娠中の強い味方です。基本的にいくら飲んでもカフェインによる悪影響を心配する必要はありません。カフェインレスのコーヒーには微量(カフェイン97〜99%除去なので数mg程度)のカフェインが残りますが、通常のコーヒーの数十分の一以下です。何杯飲んでも1日の許容量200mgを超えることはまずないでしょう。ただしコーヒーですから、一度に大量に飲めば胃がむかつくこともありますし、砂糖やミルクをたくさん入れればカロリーオーバーになる点は注意です。
紅茶や緑茶にもデカフェ製品がありますし、麦茶やルイボスティー、ハーブティーなど最初からノンカフェインのお茶もあります。そういったものと上手に組み合わせて、水分補給&気分転換に役立ててください。
妊婦でも安心して食べられるお寿司のネタはありますか?
当院ではお刺身・お寿司は基本的に食べてよいとお伝えしていますので、サーモン・マグロ・イカなどお好みのネタを召し上がっていただいて構いません。ただし牡蠣などの貝類は体調次第で当たりやすいため、心配な方は避けてください。マグロなど大型魚は水銀の観点で1〜2週に1回程度に留めるとより安心です。
どうしても生魚に不安がある方は、加熱ネタを選ぶと食中毒リスクをさらに下げられます。具体的には玉子焼き、かんぴょう巻き・お新香巻き、納豆巻き、茹でエビ、蒸しアナゴ、蒲焼きうなぎなどです。これらは生ものではないので、食中毒リスクが低く、妊婦さんでも安心して食べられます。
チーズケーキやティラミスは食べても大丈夫でしょうか?
チーズケーキは基本的にOKです。一般的なベイクドチーズケーキはオーブンで焼かれており、原料のクリームチーズも日本産であれば殺菌乳由来なので問題ありません。レアチーズケーキも市販品は加熱殺菌された原料で作られていることが多いですが、家庭で生クリームや牛乳が非殺菌のものを使うと注意が必要です。
一方、ティラミスは注意が必要です。伝統的なレシピでは生の卵黄・卵白とアルコール(マルサラ酒など)を使用するため、妊娠中は避けたほうが無難です。卵・アルコール不使用のレシピであればOKです。市販のティラミス風スイーツでは卵不使用のものもありますが、表示を確認してから購入してください。
総じて、「焼いたお菓子はOK、焼いていないお菓子は慎重に」と覚えておくと良いでしょう。
つわりで食事が思うように摂れません。カップラーメンや菓子パンばかりになってしまいますが赤ちゃんに影響ありますか?
つわり期にカップラーメンや菓子パンしか喉を通らないと心配になりますが、赤ちゃんには心配いりません。胎児はお母さんの体に蓄えられた栄養や、少量でも摂取できた栄養から必要な分をしっかりもらって成長します。妊娠初期〜中期は赤ちゃんもまだ小さく、栄養需要もそれほど多くありません。それよりもお母さん自身がエネルギー切れにならないことが大切です。
食べられるものが炭水化物中心でも構いませんので、少しずつでもカロリーと水分を確保しましょう。カップラーメンばかりだと塩分が高いので、スープは残す・汁気を切って麺だけ食べる、合間に水や麦茶を飲んで塩分を排泄する、といった工夫をすると良いです。果物やゼリー飲料など口当たりの良いものも利用してみてください。
つわりが落ち着いてきたら、徐々に野菜やタンパク質も摂れるよう移行すれば問題ありません。極端に何も食べられず体重が減り続ける場合は早めに医師に相談してください(点滴などによる栄養補給も検討します)。
執筆者兼監修者プロフィール
東大産婦人科に入局後、長野県立こども病院、虎の門病院、関東労災病院、東京警察病院、東京都立豊島病院、東大病院など複数の病院勤務を経てレディースクリニックなみなみ院長に就任。
資格
- 医学博士
- 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
- FMF認定超音波医
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参考文献
- お母さんになるあなたと周りの人たちへ. 内閣府食品安全委員会. https://www.fsc.go.jp/okaasan.html
- 妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項. 厚生労働省 (2010改訂). https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/suigin/dl/index-a.pdf
- リステリアによる食中毒. 厚生労働省. https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000055260.html
- 食品中のカフェイン ファクトシート. 内閣府食品安全委員会 (2018改訂). https://www.fsc.go.jp/factsheets/index.data/factsheets_caffeine.pdf
- 神経管閉鎖障害の発症リスク低減のための妊娠可能な年齢の女性等に対する葉酸の摂取に係る適切な情報提供の推進について. 厚生労働省 (2000). https://www.mhlw.go.jp/www1/houdou/1212/h1228-1_18.html
肉類は中心までしっかり火を通すことが重要です(目安は中心温度75℃で1分以上加熱)。妊娠中は焼き肉に行っても全てのお肉をウェルダンで食べるよう徹底しましょう。「焼き肉を我慢する必要はありませんが、生焼けは厳禁」です。