執筆者兼監修者プロフィール
東大産婦人科に入局後、長野県立こども病院、虎の門病院、関東労災病院、東京警察病院、東京都立豊島病院、東大病院など複数の病院勤務を経てレディースクリニックなみなみ院長に就任。
資格
- 医学博士
- 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
- FMF認定超音波医
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妊娠中に絶対食べてはいけないものは、生肉・生魚・生卵などの加熱されていない食品(例:生ハム、ユッケ、レアステーキ、寿司、牡蠣の生食)や非加熱の乳製品(ナチュラルチーズ、生乳)、そしてアルコール飲料です。これらは食中毒菌や寄生虫による感染リスクや胎児への悪影響が大きいため、妊婦さんは避けましょう。一方で、カフェインや魚介類、チョコレートなどは「量や調理法に注意すれば摂取可能」なものです。例えば、コーヒーは1日1~2杯程度まで、マグロなど水銀を含む魚は週1~2回までなら問題ありません。要は「ダメなもの」と「量に気をつければOKなもの」を正しく理解することが大切です。
妊娠中は「これもダメ、あれもダメ」と食事制限の情報があふれ、不安やストレスを感じていませんか?「うっかり生ものを食べてしまったけど大丈夫?」と心配になったり、何をどこまで我慢すべきか悩んだりする妊婦さんも多いでしょう。大丈夫です。正しい知識に基づけば、妊娠中でも楽しめる食べ物はたくさんあります。このコラムでは産婦人科専門医の視点から、妊婦さんの食事に関する疑問や不安に寄り添いながら、安全な食材選びのポイントをお伝えします。
この記事でわかること
- 妊娠中に避けるべき食べ物一覧とその理由(食中毒菌や有害物質によるリスク)
- 妊娠中でも量や頻度を守れば食べられる食品と、その安全な摂取量の目安(カフェイン飲料、魚介類、うなぎなど)
- 実は食べても大丈夫な意外な食品と安心して摂るためのコツ(はちみつ・アボカド・牛乳・焼き肉・カニなどの扱い方)
- 妊婦さんが食事を楽しむためのポイントと、食事制限と上手に付き合う方法
では、妊娠中の食生活について詳しく見ていきましょう。
なぜ妊娠中は食事に注意が必要なの?
妊娠中の食事にはいくつかの注意点があり、その多くは妊婦さん自身とお腹の赤ちゃんを食中毒や有害物質から守るためです。妊娠すると女性の免疫機能は少し抑えられ、普段より食中毒にかかりやすくなります。また胎盤を通じて胎児に影響を及ぼす物質もあるため、食べ物選びに普段以上の配慮が必要です。主な理由を順番に説明します。
食中毒のリスクが高まるため
妊娠中はリステリア菌など特定の食中毒菌に対して非妊娠時の約17倍感染しやすいとも言われます。例えばリステリア菌は通常大人がかかることは稀ですが、妊婦さんが感染すると胎盤を通じて赤ちゃんにまで達し、流産や早産の原因となる恐れがあります。さらにトキソプラズマ寄生虫も、健康な人なら無症状で済むところ、妊婦が初感染すると胎児の脳や目に障害を及ぼすリスクがあります。このように妊娠中はママだけでなく胎児も病原体の影響を受けやすいため、食中毒の予防が特に重要です。
有害物質が胎児に影響を与えるため
妊婦さんが口にしたものの中には、胎盤を通して赤ちゃんに移行するものがあります。代表例がメチル水銀とカフェインです。メチル水銀は一部の大型の魚に含まれる金属で、胎児の神経発達に影響する可能性が指摘されています。カフェインも胎児はうまく代謝できず、体内に長時間残留するため過剰摂取は胎児の発育に悪影響を及ぼす恐れがあります。こうした物質は「量」を管理することが大切です。
栄養バランスへの配慮
妊娠中は赤ちゃんの成長のためビタミンやミネラルが普段以上に必要ですが、一方で一部の栄養素の過剰摂取は禁物です。例えばビタミンAは胎児の発育に必要な反面、妊娠初期に過剰だと胎児の奇形リスクが指摘されています。レバーやうなぎなどビタミンA豊富な食品は食べ過ぎないよう注意しましょう。また塩分の摂りすぎも妊娠高血圧症候群(高血圧やむくみ)の一因となり得ます。「必要な栄養はしっかり、過剰なものは控えめに」が妊婦の食事の基本です。
このように、妊婦さんの食事制限にはきちんとした医学的理由があります。次の章から、具体的に何をどう気をつけるべきかを「絶対NGなもの」「食べ方次第でOKなもの」「実は問題ないもの」に分けて解説します。不安に感じていた食品がどのカテゴリーか、確認しながら読み進めてくださいね。
【NG】妊娠中は避けるべき食べ物(食中毒リスクが高いもの)
まずは、妊娠中に「これは食べてはいけない!」とされる食品です。共通点は十分に加熱されておらず、病原体に汚染されている可能性があるもの、および胎児への明確な悪影響があるものです。妊婦さんは以下の食品を避けましょう。
生肉・加工肉類(生ハム・ローストビーフ・レアステーキ・ユッケなど)
加熱が不十分な肉類は妊娠中は避けてください。生肉やそれに近い状態の加工肉にはトキソプラズマやその他の細菌(大腸菌O157、サルモネラ等)が潜んでいる恐れがあります。例えば生ハムやローストビーフなどは一見加工済みですが中心部まで火が通っていない場合があり、妊婦が食べるとトキソプラズマ症に感染するリスクがあります。トキソプラズマに妊娠中初めて感染すると、胎盤経由で胎児にも感染し、流産や先天性トキソプラズマ症(赤ちゃんの脳・目の障害)の原因となり得ます。ユッケやレバ刺し、レアステーキなど明らかな生肉はもちろん、生ハム・ミディアムレア程度の肉もNGと心得ましょう。
ナチュラルチーズ・非加熱の乳製品(未殺菌乳など)
加熱殺菌されていない乳製品も妊娠中は避けるべき食品です。具体的にはナチュラルチーズ(特にソフトタイプのチーズで加熱殺菌されずに作られたもの)や生乳(搾りたてで低温殺菌していない牛乳)などが該当します。これらにはリステリア菌という食中毒菌が潜む可能性があります。リステリア菌は塩分濃度の高い食品や低温の冷蔵庫内でも生き延び増殖する厄介な細菌で、妊婦が感染すると胎児へ感染し流産や早産、新生児の髄膜炎など重い影響を及ぼすことがあります。
代表的な注意食品: カマンベールチーズやブルーチーズなどの軟質チーズで「ナチュラルチーズ」と表示されているもの、生産工程で殺菌されていない輸入チーズ、また生ヤギ乳を使ったチーズなどがこれに当たります。生ハムやスモークサーモン、肉や魚のパテもリステリア菌汚染のリスクがあるため、同様に避けましょう。妊娠中は「非加熱の乳製品は食べない」と覚えてください。
予防策
「加熱処理された乳製品を選ぶ」ことです。市販のプロセスチーズ(とろけるチーズやスライスチーズなど)は原料が加熱殺菌済みで作られており妊娠中も安全に食べられます。クリームチーズやカッテージチーズも日本で市販されているものは基本的に殺菌乳使用で問題ありません。チーズを購入する際はパッケージの表示を確認し、「要加熱」や「非加熱」という注意があれば避ける、「殺菌」「加熱殺菌」などの表示がある製品を選ぶと安心です。また冷蔵庫内でも油断せず、開封後は早めに食べきるようにしましょう。
(※参考: チーズの種類別・妊婦の可否まとめ)
| チーズの種類 | 妊娠中に食べてOKか? | ポイント・注意点 |
|---|---|---|
| プロセスチーズ(加熱殺菌済み) | 〇 安全に食べられる | スライスチーズやピザ用チーズなど。製造過程で加熱処理済み。 |
| ナチュラルチーズ(加熱殺菌された牛乳使用) | 〇 基本的に問題なし | 国産の一般的なチーズの多くはこちら。表示を確認。 |
| ナチュラルチーズ(非加熱の原料乳使用) | × 避ける | カマンベール、ブルーチーズ等。一部輸入チーズに該当。 |
| 生乳・非殺菌乳使用の乳製品 | × 避ける | 店舗や牧場で提供される殺菌なし牛乳、生シェイク等はNG。 |
生卵・生牡蠣・非加熱の魚介類(刺身・魚卵・スモークサーモンなど)
卵や魚介類も生食は避けましょう。妊婦さんは生卵をそのまま食べたり、生卵を使った料理(すき焼きの生卵つけ、非加熱のマヨネーズやティラミス等)はサルモネラ菌による食中毒のリスクがあるため控えてください。生牡蠣はノロウイルスや細菌に汚染されている場合が多く、激しい食中毒を起こす危険があります。ノロウイルスによる嘔吐・下痢で妊婦さんが脱水状態になると、お腹の赤ちゃんにも悪影響が及ぶ可能性があるため特に注意が必要です。
またお刺身やお寿司といった生の魚介も、一般には妊娠中はリスクがあります。刺身そのものには寄生虫(アニサキスなど)による食中毒リスクがあり、これ自体は胎児感染しないものの、母体が強い腹痛に見舞われると流産を誘発しかねません。さらに生魚介に付着したリステリア菌による感染の可能性もゼロではありません。イクラや明太子などの魚卵も生のまま食べるタイプのものは同様です。スモークサーモンも加熱せず燻製しているだけなので、生食の一種と捉えて避けてください。
「魚介類は必ず加熱して食べる」ことです。卵も完全に火を通す(卵かけご飯や半熟卵は控える)ようにしましょう。どうしてもお寿司が食べたいときは、後述する加熱済みのネタを選ぶようにします。調理済みの魚でも、冷蔵庫で長期間保存した刺身の残りや〆サバなどは避けるほうが無難です。妊婦さんにとって「新鮮でも生はNG、必ず火を通す」が合言葉です。
アルコール(妊娠中は絶対NG)
アルコール飲料は妊娠中は一切禁止です。妊娠が判明したらビール・ワイン・日本酒・カクテル等あらゆるお酒は直ちにやめましょう。アルコールは胎盤を通過し、胎児の発育に直接悪影響を与えます。特に妊娠初期の飲酒は胎児性アルコール症候群といって、赤ちゃんの先天異常や知的発達障害の原因になる可能性があります。「少量なら大丈夫では?」と思われがちですが、安全な摂取量は確立されていません。個人差もあり、「これくらいならOK」というラインは無いため、妊娠中は一滴でもアルコールは口にしない姿勢が推奨されています。
妊娠前に飲酒習慣があった方でも、妊娠がわかった時点でやめればリスクは軽減できます。万一「妊娠に気づかず妊娠初期に飲んでしまった…」という場合も、以降禁酒すれば胎児への影響を最小限に抑えられます。ノンアルコール飲料やソフトドリンクで代用し、お酒の席では周囲に妊娠を伝えて無理に勧められないようにしましょう。
アルコールではありませんが、栄養ドリンク類もカフェインや大量のビタミンA・生薬成分を含むものがあります。特に滋養強壮ドリンクには高濃度のカフェイン(1本でコーヒー1~2杯分以上)が含まれるものもあるため、妊娠中は避けた方が安心です。
【注意】量や頻度に気をつければ食べてよいもの
次に、妊娠中でも「絶対ダメ」ではなく、摂取量や食べ方に注意すれば楽しめる食品を紹介します。これらは“制限付きOK”のものです。「知らずに全部我慢していた!」という方は、ぜひ適切な範囲で取り入れてください。
魚介類(マグロなど大型の魚)※水銀に注意
魚は妊娠中も大切なタンパク源かつ栄養豊富で、積極的に食べたい食品です。ただし、一部の大型魚にはメチル水銀が多く含まれるため食べ過ぎに注意しましょう。メチル水銀は自然界の汚染物質で、魚を大量に食べる習慣のある地域で胎児への影響が懸念され報告されています。具体的には、妊婦さんが長期間にわたり高濃度の水銀を摂ると、胎児の神経系の発達にごくわずかな遅れが生じる可能性があると指摘されています。そのため、厚生労働省は魚種ごとに妊婦が食べてもよい頻度の目安を定めています。
水銀に注意が必要な主な魚と摂取量目安
| 魚の種類・グループ | 妊娠中の摂取目安量(頻度) | 主な魚の例 |
|---|---|---|
| 特に水銀が多い | 極力食べない(~2ヶ月に1回) | ※主に一部のイルカ・クジラ類 |
| 水銀が多い | 週1回まで(80g程度) | クロマグロ、メバチマグロ、キンメダイ、メカジキ 等 |
| 水銀中程度 | 週2回まで(160g程度) | ミナミマグロ、ヨシキリザメ、キダイ、ユメカサゴ 等 |
| 一般的な魚(安全) | 制限なし | サケ、カツオ、キハダマグロ、イワシ、アジ 等 |
妊婦さんが特に注意すべきはマグロなど大型の魚です。マグロと一口に言っても、大きさや種類で水銀量が異なります。クロマグロ(本マグロ)やメバチマグロは大型で食物連鎖の上位にいるため水銀濃度が高めなので週1回程度に留めます。一方、キハダマグロやビンナガマグロ(ツナ缶の原料になるような種類)は水銀含有量が低く、通常の食べ方であれば妊婦さんでも問題ありません。同様にサバ・サンマ・イワシなどの青魚、鮭やタラなども気にせず魚全般で週2~3回はむしろ積極的に食べて大丈夫です。
魚はDHAやEPAなど赤ちゃんの脳の発達に役立つ脂肪酸を含む優良な食品です。「注意が必要=食べてはいけない」ではなく、「同じ種類の魚ばかり大量に食べ過ぎない」ように心がけましょう。例えばマグロの刺身が大好物でも、妊娠中は連日食べたり一度に大皿いっぱい…といった極端な食べ方は避け、量を適度に抑えれば問題ありません。色々な種類の魚をバランスよく食べることで、水銀の摂り過ぎを防ぎつつ魚の栄養を活かすことができます。
ビタミンAを多く含む食材(うなぎ・レバーなど)※過剰摂取に注意
ビタミンAは胎児の発育に必要なビタミンですが、妊娠初期に摂りすぎると胎児に奇形が生じる可能性が指摘されています。そのため厚生労働省は妊婦のビタミンA耐容上限量(一日あたり摂っても健康被害が出ないとされる量)を2,700µg RAEと設定しています。通常の食事でこの量を超えることは滅多にありませんが、鶏レバー・豚レバーは別格です。レバー100gには約14,000µgものビタミンAが含まれ、一串(20g)の焼き鳥レバーでも2,800µgに達し、たったそれだけで1日の上限を超えてしまう計算です。したがって妊娠中はレバーを食べない、もしくは極少量に留めることが鉄則です。
一方、うなぎ(鰻)もビタミンAが豊富な食材として知られています。鰻の蒲焼き100g(一般的な一人前)には約1,500µgのビタミンAが含まれます。これは上限の半分強に相当し、鰻を毎日のように大量に食べるのは望ましくありません。ただし鰻自体は禁止ではなく、適量を守れば栄養豊富な良い食品です。例えば妊娠初期は週1回程度にとどめ、一回の量も半分(50g程度)に控えるなどすれば安心でしょう。鰻以外ではアンコウの肝(あん肝)やウマカイカ(魚卵の一種)などもビタミンAが多い食品として注意が呼びかけられています。
ポイント
「レバーは基本NG、うなぎは量をほどほどに」が目安。特に妊娠3ヶ月までの初期はビタミンA過剰の影響を受けやすいので、意識して控えましょう。ビタミンAは動物由来(レチノール)のものが影響します。緑黄色野菜に含まれるβカロテンは体内で必要量だけビタミンAに変わり、過剰症の心配はありません。ですのでニンジンやほうれん草を遠慮する必要はありません。同様に鰻も適量なら良質なたんぱく質やビタミン類の供給源になります。「好きだけど不安…」という食品は、頻度と量を控えめにして楽しむようにしましょう。何かの拍子に少し食べ過ぎてしまっても、一度で重大な危険が生じるわけではありませんので、過度に心配せず今後控えめにすれば大丈夫です。
カフェイン(コーヒー・紅茶・ココア・チョコレートなど)
カフェインの摂り過ぎも妊娠中は注意が必要です。カフェインはコーヒー、紅茶、緑茶、エナジードリンク、チョコレート、ココアなどに含まれる刺激成分で、少量なら眠気覚まし程度の作用ですが、大量に摂取すると胎児への影響が懸念されます。妊婦さんが高用量のカフェイン(概ね1日300mg以上)を常用すると、低出生体重児(赤ちゃんの体重不足)や流産のリスク上昇との関連が報告されています。また妊娠中はカフェインの分解が遅くなり、摂ったカフェインが胎盤を通じて胎児の体内に蓄積しやすいことも分かっています。
では、妊娠中はカフェインを全く摂ってはいけないの? そんなことはありません。世界保健機関(WHO)や欧州食品安全機関(EFSA)などは「妊婦のカフェイン摂取量は1日200~300mgまでに抑えるべき」という指針を示しています。具体的にはコーヒーならマグカップで1~2杯程度が目安です。紅茶や緑茶にもカフェインは含まれますが、コーヒーより少なめ(紅茶一杯で約30~40mg)なので、紅茶なら3~4杯程度までOKという計算になります。ココアやチョコレートに含まれるカフェインはさらに微量です。ココア飲料1杯に約10~20mg、板チョコ1枚に約20~30mg程度とされます。したがって、カフェイン摂取の主な源はコーヒー・紅茶などの飲み物と考え、1日のトータルが200mgを超えないよう意識すれば大丈夫です。
ポイント
「1日コーヒー2杯まで」がひとつの目安です。カフェインに敏感で不安な方は1日200mg以下を守ると安心でしょう。逆に完全にカフェインを断つ必要はありません。我慢しすぎてストレスを溜めるほうが身体に悪影響です。適度に楽しみつつ、どうしても心配な日はカフェインレスコーヒーやデカフェのお茶に切り替えるなど工夫しましょう。最近はノンカフェインのコーヒーや紅茶、妊婦さん向けのハーブティーも充実しています。チョコレートも1日1~2欠片まで、と決めてゆっくり味わえば気分転換になりますよ。なお栄養ドリンク類やエナジードリンクには高濃度カフェインが含まれるものがあるため避けましょう(前述のとおり)。カフェイン含有量を知って上手に付き合えば、妊娠中でもコーヒーブレイクを楽しめます。
刺激物・塩分の多い食品(明太子・キムチ・インスタント食品など)
香辛料の強いものや塩分の高い食品も、妊娠中はできれば控えめにしたいものです。ただし「絶対ダメ」というわけではなく、母体への負担を考慮して摂り過ぎないよう注意するという位置づけです。
例えば明太子。ピリ辛で食欲をそそりますが、明太子は塩分が非常に高い食品です。小さな切れ子1腹で食塩相当量が1.5~2g程度あり、汁物と合わせるとすぐ一日の塩分目標量を超えてしまいます。塩分の過剰摂取は妊娠中、高血圧やむくみにつながりやすいので注意が必要です。また明太子は生のタラコを原料にしており、厳密には非加熱食品です。市販品は製造過程でしっかり衛生管理されていますが、やはり生ものである以上わずかながら食中毒リスクはゼロではありません。したがって妊娠中は「明太子は毎日食べない」「食べるならよく火を通す(明太子パスタのソースに混ぜて加熱する等)」ことをおすすめします。
キムチやカレー、唐辛子の効いた料理など刺激物については、胎児への直接的な悪影響はありません。しかし妊婦さん本人の胃腸への負担が大きいです。つわりの時期は刺激の強い匂いや味で吐き気が誘発されることもありますし、妊娠後期は胃もたれや胸やけが起こりやすくなります。香辛料たっぷりの食事はこうした不調を悪化させる可能性があります。また辛いものを食べ過ぎるとお腹を壊したり、汗をかいて脱水気味になることも考えられます。妊娠中はマイルドな味付けを基本にし、香辛料は少量にしておきましょう。どうしても食べたい時は、量を減らしたりヨーグルトを一緒に摂るなど胃への刺激を和らげる工夫をすると良いです。
インスタントラーメンやスナック菓子など塩分・添加物の多い食品も同様に「少しならOK、頻繁・大量はNG」の代表です。カップラーメンは塩分に加え油分も多く、毎日食べていると妊娠中の体重増加や血圧上昇につながりかねません。ただ、妊娠中期以降にむしょうにジャンクフードが食べたくなることもありますよね。たまの息抜きとして食べる分には構いません。例えば「月に一度だけ」「具材を追加して栄養を補う」「スープは全部飲まない」などルールを決めて付き合うと良いでしょう。「塩分を控えなきゃ…」とストレスを溜めるより、飲み物や果物でカリウムを摂って塩分排出を促すなどポジティブな対策も取り入れてみてください。
【OK】実は食べても大丈夫なもの・誤解されがちなもの
最後に、妊婦さんが「これって食べていいのかな?」と迷いがちな食品で、実際は心配いらないものを紹介します。ネット上の噂や思い込みで敬遠されがちですが、正しい知識を持てば過度に制限する必要がないとわかります。
はちみつ(蜂蜜)
「1歳未満の乳児にはちみつNG」という話は有名ですよね。この影響か、「妊婦もはちみつはダメ?」と心配される方がいますが、妊娠中にはちみつを食べても全く問題ありません。乳児がダメなのは乳児ボツリヌス症という、消化管内でボツリヌス菌が増殖してしまう病気を防ぐためです。赤ちゃんの腸内環境は未熟で、生はちみつに含まれうるボツリヌス菌の芽胞を抑え込めません。しかし大人の腸はしっかりしているため、妊婦さんがはちみつを食べても菌は繁殖せず、菌自体が胎盤を通過することもありません。したがってお腹の赤ちゃんに悪影響が及ぶことはないのです。
むしろ、はちみつは栄養豊富で妊娠中におすすめの甘味料です。精製された白砂糖よりビタミンやミネラルを含み、エネルギー補給にもなります。つわりで食欲がない時に、紅茶にはちみつとレモンを入れて飲むと喉ごしが良くカロリーも確保できます。ただし糖分であることに変わりはないのでカロリーオーバーには注意しましょう。妊娠糖尿病の方は控える必要がありますが、そうでなければ妊婦さんも遠慮なくはちみつを楽しんでOKです。
アボカド
アボカドは「森のバター」と呼ばれるほど栄養価の高いフルーツ(野菜扱い)です。ビタミンEや葉酸、食物繊維、良質な脂質を多く含み、妊婦さんにとって嬉しい栄養素の宝庫です。妊娠中にアボカドを食べること自体に危険性はなく、むしろ積極的に取り入れたい食品でしょう。海外では「妊婦がアボカドを食べると赤ちゃんのアレルギーリスクが下がる」という研究報告もあるほどです。
注意点があるとすればカロリーです。アボカドは脂肪分が多く可食部100gあたり187kcalほどあります。大きめのアボカド1個で200~250gほどありますから、1個丸ごと頻繁に食べているとカロリーオーバーになりがちです。そこで1日あたり1/2個程度を目安に、サラダに加えたりトーストに塗ったりすると良いでしょう。
もう一点、アボカドは生食することが多いので調理前によく洗うこともお忘れなく。果肉は皮に包まれて安全そうに思えますが、包丁で皮を切る際に表面の細菌が刃を伝って果肉に付く可能性があります。皮を流水でこすり洗いし清潔な包丁で切れば、生のままでも安心して食べられます。まとめると、アボカドは妊娠中も「適量を守ればGOODな栄養食」です。
しっかり加熱すればOKなもの(焼き肉・カニ・寿司など)
「食べ方次第でOKになるもの」も押さえておきましょう。妊娠中にダメと言われがちな食品でも、加熱調理すれば安全に楽しめるケースは多いです。
焼き肉・ステーキ
前述の通り、生や半生の肉はNGですが、十分に火を通せばお肉料理自体は問題ありません。妊娠中は牛肉・豚肉・鶏肉問わず、中心まで完全に加熱することが条件です。焼き肉店ではレア気味の提供が多い牛タンやロースも、しっかり焼き切ればOK。「焼き過ぎかな?」と思うくらいでちょうどです。ご家庭でもハンバーグの中がピンク色の状態は避けましょう。お肉は良質のタンパク源なので、ウェルダン調理で安心して摂取してください。
カニ・エビなど甲殻類
カニは「妊婦が食べると良くない」という迷信を耳にすることがありますが、科学的根拠はありません。カニもエビも低脂肪で高タンパク、ミネラルも豊富な優良食材です。注意点はただ一つ、鮮度の落ちたものを生や半生で食べないこと。甲殻類は鮮度が落ちるとヒスタミンという物質が増え、食中毒様の症状(蕁麻疹や嘔吐)を引き起こすことがあります。またカニの生食(カニ刺しなど)は寄生虫感染の例も報告されています。加熱したカニ(茹でガニ、カニ鍋、カニクリームコロッケ等)であれば妊婦さんも安全に楽しめますのでご安心ください。エビも寿司屋のネタでボイルエビはOKですが生の甘エビは避けましょう。
お寿司のネタ
「お寿司=生魚」のイメージですが、妊婦でも食べられるお寿司のネタはあります。代表的なのは加熱処理されたネタです。具体的にはエビ(茹でたもの), アナゴ・ウナギ(タレを付けて焼いたもの), 玉子焼き, かんぴょう巻きや納豆巻きなどの野菜・大豆系ネタです。サーモンやイカ、貝類の生ネタは避け、どうしてもお刺身系が欲しい場合はマグロの赤身を信頼できるお店で少量…という程度に留めましょう(マグロは比較的寄生虫リスクが低い魚ですが、生食は自己責任となります)。お寿司を我慢しすぎるとストレスなら、上記の安全なネタを選んで“寿司気分”を味わうのも一つの工夫です。
温泉卵・半熟卵料理
卵料理好きの方は、温泉卵や卵かけご飯、半熟目玉焼きなど「妊娠中はダメ?」と不安かもしれません。生卵はサルモネラ菌リスクがあるため基本避けるべきですが、温泉卵(70℃程度で凝固させた卵)や半熟卵も安全とは言えません。完全に中心まで固ゆでになっていないと菌が残存する可能性があるからです。したがって妊娠中は卵は固ゆで・しっかり焼きで食べるのがベターです。半熟の卵料理は出産までお預けにする方が安心でしょう。
牛乳・ヨーグルト・プロセスチーズ(加熱殺菌された乳製品)
上のNG項目でナチュラルチーズを避けるべきと書いたため、「乳製品全般ダメなの?」と心配になった方もいるかもしれません。安心してください。一般的に市販されている牛乳やヨーグルト、プロセスチーズなどの乳製品は全て加熱殺菌済みであり、妊娠中も安全に摂取できます。むしろ妊婦さんにはカルシウムやタンパク質の補給源として牛乳・乳製品は積極的に取り入れてほしい食品です。1日コップ1~2杯の牛乳、あるいはヨーグルト1パック+チーズ1個など、乳製品からカルシウムを毎日しっかり摂ると赤ちゃんの骨や歯の発育に役立ちます。
注意点としては、妊娠中はお腹が緩くなりやすい体質になる方もいるので、牛乳を飲むと下痢しやすい人は無理に牛乳そのものを飲まなくてもOKです。ヨーグルトやチーズから摂ったり、シチューやホワイトソースに牛乳を使うなど調理に組み込む方法もあります。またプレーンヨーグルトにはちみつや果物を入れてデザートにすると一石二鳥です。いずれにせよ「生乳使用・非殺菌」の特殊な製品以外は妊婦でも問題なく食べられると覚えておきましょう。
妊娠中の食事を楽しむためのポイント
ここまでNG食品や注意すべき食品について述べてきましたが、「あれもダメ」「これも控えて」と制限ばかりではストレスが溜まってしまいます。妊娠中でも食事を楽しく、美味しく続けるために、以下のポイントを心がけてみてください。
OKなものに目を向ける
食べられないものより食べられるものに意識を向けましょう。例えば刺身がダメでも焼き魚や煮魚は◎、生ハムがダメでも加熱したハムやベーコンはOKです。代替となる安全な食品はたくさんあります。「これはダメだけど、じゃあ代わりに何なら楽しめるかな?」と前向きに考えてみると、意外に選択肢は豊富です。妊婦向けレシピ本やインターネットで妊婦でも食べられるメニューを検索するのも参考になります。
調理法を工夫する
同じ食材でも調理法次第で安全度が変わります。例えば野菜サラダは生野菜に土由来の菌が付いている恐れがありますが、野菜スープや煮物にすれば安心です。お寿司が恋しければ手作りで安全なネタを使ってみる、ステーキはよく焼きにしてガーリックソース等で風味を補うなど、「火を通す+味付けの工夫」で満足感を高めましょう。食中毒予防の基本である「付けない・増やさない・やっつける」(洗う・速やかに冷蔵・十分加熱)を意識すれば、大抵の食材は怖くありません。
家族にも協力してもらう
妊婦さんだけ別メニューで我慢…では寂しいですよね。ご家族と一緒に妊婦向けの食事を楽しむ工夫も大切です。例えば家族が刺身を食べるときは妊婦さん用に同じ魚でムニエルを作る、パーティーでもノンアルコールドリンクで乾杯するなど、周囲も巻き込んで妊娠ライフをサポートしてもらいましょう。「妊婦だから」と一人で抱え込まず、パートナーや家族に不安や希望を共有すれば、きっと協力してくれるはずです。
栄養バランスを楽しむ
妊娠中は一層バランスの良い食事が求められますが、これは見方を変えればいろいろな食品を楽しめるチャンスです。毎食「主食・主菜・副菜」をそろえるよう意識すると、自然とバラエティ豊かな献立になります。和食ばかりで飽きたら洋食や中華も取り入れ、彩り豊かなプレートにすると気分も上がります。食べつわりで空腹がつらい場合は、おにぎりや果物など小腹満たしアイテムを持ち歩くのも◎。妊娠中の特別な時期を、食生活を見直す良い機会と捉えてポジティブに過ごしましょう。
心配なときはプロに相談
最後に、どうしても「これ食べてしまったけど大丈夫かな…」と不安が残る場合は、健診時などに遠慮なく産婦人科医や管理栄養士に相談してください。ネットの情報だけでは判断がつかないことも多いですし、専門家に確認すれば安心できます。当院でも妊婦さんの食事に関するご相談を日々受け付けています。お一人で悩まず、私たち医療者を頼ってくださいね。妊娠中の食生活を適切にサポートいたします。
まとめ
妊娠中の「食べてはいけないもの」は、生肉・生魚・非加熱乳製品・アルコールなど限られたものです。一方で適切に調理し量を守れば食べられるものはたくさんあります。ネットの情報に惑わされず、厚生労働省や食品安全委員会など公的機関のガイドラインに基づいて判断すれば過度な心配は不要です。食事制限にストレスを感じたら、医師や管理栄養士に相談しながらストレスのない食生活を送りましょう。
妊娠中はママと赤ちゃんの健康のために食事に気を遣う大切な時期ですが、同時に人生の中で限られた特別な時間でもあります。食べ物に神経質になりすぎて心が疲れてしまっては元も子もありません。「これはダメだけど代わりにこれを食べよう」「今日はこれを美味しく食べられて幸せ」と前向きに考え、妊娠期間の食事を楽しんでください。正しい知識に基づいて工夫すれば、妊婦さんでも美味しく安全に食べられるものはこんなにあるのですから。
当院(レディースクリニックなみなみ)では、妊婦さんの食事に関するご不安やご相談にも丁寧に対応しております。「これを食べちゃったけど大丈夫?」といった小さな疑問でも構いませんので、お気軽にご相談ください。専門医としてエビデンスに基づいたアドバイスを差し上げ、あなたのマタニティライフをサポートいたします。安心して食事を楽しみ、健やかな妊娠生活を送りましょう。
レディースクリニックなみなみを予約する妊娠中の食事に関するFAQ(よくある質問)
妊娠に気づく前に、生肉料理やお酒を飲んでしまいました…。赤ちゃんへの影響は大丈夫でしょうか?
ご自分が妊娠していると知らずに、生ものを食べたり飲酒をしてしまう妊婦さんは実は少なくありません。結論から言えば、1回や短期間のことであれば過度に心配しすぎないでください。例えばトキソプラズマは、生肉を一度食べただけで必ず感染するものではなく、仮に初感染してしまった場合もきちんと治療すれば胎児への感染を防ぐことができます。またアルコールも、妊娠ごく初期の大量摂取を続けた場合にリスクが高まるとされますが、妊娠判明後すぐに禁酒すればまず問題ないと考えられます。いずれの場合も「これから先は注意する」ことが大切です。気づかずにしてしまったことを悔やむより、今後は食中毒予防と禁酒を徹底しましょう。どうしても不安な場合は、産科でトキソプラズマ抗体検査を受けたり超音波検査で赤ちゃんの発育を確認することもできます。まずは深呼吸して、「みんな気づく前は多少はやらかしているもの」と捉え、前向きに対処しましょう。
ノンカフェインのコーヒーやお茶なら、いくら飲んでも大丈夫ですか?
カフェインレス飲料は妊婦さんの強い味方です。基本的にいくら飲んでもカフェインによる悪影響を心配する必要はありません。カフェインレスのコーヒーには微量(カフェイン97~99%除去なので数mg程度)のカフェインが残りますが、通常のコーヒーの数十分の一以下です。したがって何杯飲んでも1日の許容量200mgを超えることはまずないでしょう。ただしノンカフェインとはいえコーヒーですから、一度に大量に飲めば胃がむかつくことはありますし、砂糖やミルクをたくさん入れればカロリーオーバーになる点は注意です。紅茶や緑茶にもデカフェ製品がありますし、麦茶やルイボスティー、ハーブティーなど最初からノンカフェインのお茶もあります。そういったものと上手に組み合わせて、水分補給&気分転換に役立ててください。「ノンカフェインだから1日〇リットル飲まなきゃ」などと義務的に摂る必要もありません。あくまでリラックス手段の一つとして、適量を楽しみましょう。
妊婦でも安心して食べられるお寿司のネタはありますか?
はい、あります。妊娠中でも食べられるお寿司としておすすめなのは、加熱済みor非生魚のネタです。具体的には玉子(玉子焼き), かんぴょう巻・お新香巻(野菜系), 納豆巻き(大豆), 茹でエビ, 蒸しアナゴ・蒲焼きウナギなどです。これらは生ものではないので食中毒のリスクが低く、妊婦さんでも比較的安全に食べられます。逆に避けたほうが良いネタは、生の魚介類全般(マグロ・サーモン・ブリ・イカ・貝類など)です。特にサーモンや貝類は寄生虫や細菌のリスクがあるので控えましょう。マグロの赤身は比較的安全とはいえ完全にリスクゼロではないため、できれば火が通ったツナ缶などで代用する方が安心です。「お寿司屋さんに行っても自分だけ食べられない…」という場合は、お店にお願いして巻物の具材を工夫してもらうのも一手です。最近は妊婦向けに創作寿司を提供してくれるお店もありますよ。ポイントは「お寿司=生魚」にこだわらないこと。上記のようなメニューを選べば、お寿司屋さんでも我慢せず楽しめます。
チーズケーキやティラミスは食べても大丈夫でしょうか?
チーズケーキについては基本的にOKですが、ティラミスは注意が必要です。チーズケーキにもいくつか種類がありますが、一般的なベイクドチーズケーキ(オーブンで焼くもの)は材料の卵がしっかり焼かれていますし、使われるクリームチーズも加熱殺菌された製品なので妊婦さんが食べても問題ありません。スフレチーズケーキ(半熟タイプ)も中心まで火が通っていればOKです。一方、レアチーズケーキ(焼かずに冷やし固めるタイプ)は注意が必要です。市販品は加熱殺菌処理された原料で作られていることが多いですが、家庭で作る場合ゼラチンで固めるだけで卵を全く使わないレシピなら安全なものの、生クリームや牛乳が非殺菌だとリスクがあります。心配であれば、妊娠中はレアチーズケーキを避けベイクドを選ぶと安心でしょう。
ティラミスは伝統的なレシピでは生の卵黄・卵白を使用します。またマスカルポーネチーズ自体は殺菌乳由来ですが、ティラミスには洋酒(ラム酒やマルサラ酒)が含まれることも多いです。つまりティラミスは「生卵+アルコール」という妊婦には不向きな要素を含むデザートなのです。市販のティラミス風スイーツでは卵不使用のものもありますが、表示を見ないとわかりません。したがって妊娠中はティラミスは避けておくのが無難でしょう。どうしても食べたい場合は卵・アルコール不使用レシピで手作りするか、メーカーに確認した上で購入してください。総じて、「焼いたお菓子はOK、焼いていないお菓子は慎重に」と覚えておくと良いでしょう。
つわりで食事が思うように摂れません。カップラーメンや菓子パンばかりになってしまいますが赤ちゃんに影響ありますか?
つわりの時期は食べられるものを食べられるだけで大丈夫です。カップラーメンや菓子パンしか喉を通らないと心配になりますが、赤ちゃんには心配いりません。胎児はお母さんの体に蓄えられた栄養や、少量でも摂取できた栄養から必要な分をしっかりもらって成長します。妊娠初期~中期は赤ちゃんもまだ小さく、栄養需要もそれほど多くありません。それよりもお母さん自身がエネルギー切れにならないことが大切です。食べられるものが炭水化物中心でも構いませんので、少しずつでもカロリーと水分を確保しましょう。カップラーメンばかりだと塩分が高いので、スープは残す・汁気を切って麺だけ食べる、合間に水や麦茶を飲んで塩分を排泄する、といった工夫をすると良いです。果物やゼリー飲料など口当たりの良いものも利用してみてください。
つわりが落ち着いてきたら、徐々に野菜やタンパク質も摂れるよう移行すれば問題ありません。それまでは「食べられるものを食べられるときに」が最優先です。極端に何も食べられず体重が減り続ける場合は早めに医師に相談してください(点滴などによる栄養補給も検討します)。しかし多くの妊婦さんはつわり期を乗り越えれば食欲が戻ってきますので、今は無理せず過ごしましょう。当院の別記事「つわり中の食事のコツ」もぜひ参考にしてみてください。つわり期特有の食べづらさへの対処法を紹介しています。同じものばかりになってしまうのは仕方ありません。赤ちゃんはお母さんが思うよりたくましいので、「これしか食べられない…ごめんね」と自分を責めず、乗り切ればOK!くらいの気持ちでいてくださいね。
参考文献
厚生労働省 「妊娠中の食事に関する情報提供(リステリア・魚の水銀など)」 (2023年)
食品安全委員会 『お母さんになるあなたと周りの人たちへ-妊娠の前から気をつけたい食べ物のこと-』(令和5年更新)
厚生労働省 「妊婦への魚介類の摂食と水銀に関する注意事項」 薬事・食品衛生審議会資料 (平成17年11月 改訂平成22年6月)
日本産科婦人科学会 「妊婦等における水銀を含有する魚介類の摂食に関する注意事項について」 (2013年)
農林水産省 「カフェインの過剰摂取についてQ&A」 (2015年)
執筆者兼監修者プロフィール
東大産婦人科に入局後、長野県立こども病院、虎の門病院、関東労災病院、東京警察病院、東京都立豊島病院、東大病院など複数の病院勤務を経てレディースクリニックなみなみ院長に就任。
資格
- 医学博士
- 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
- FMF認定超音波医
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肉類は中心までしっかり火を通すことが重要です(目安は中心温度75℃で1分以上加熱)。調理の際は生肉を扱った手や調理器具から他の食材に菌が移らないよう注意し、生肉に触れた後は石鹸でよく手を洗ってください。妊娠中は焼き肉に行っても全てのお肉をウェルダン(完全に火が通った状態)で食べるよう徹底しましょう。「焼き肉を我慢する必要はありませんが、生焼けは厳禁」です。