
執筆者兼監修者プロフィール
東大産婦人科に入局後、長野県立こども病院、虎の門病院、関東労災病院、東京警察病院、東京都立豊島病院、東大病院など複数の病院勤務を経てレディースクリニックなみなみ院長に就任。
資格
- 医学博士
- 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
- FMF認定超音波医
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妊娠中のエコー検査(超音波検査)で赤ちゃんがダウン症かどうか分かるのか、不安に感じている方も多いでしょう。結論から言えば、エコー検査でダウン症の可能性を示唆する所見が得られる場合はありますが、エコーだけで確定診断を行うことはできません。エコーではあくまで「可能性」を見るに留まり、ダウン症かどうか断定するには他の検査が必要です。それでも、お腹の赤ちゃんの健康を考えるとき、「ダウン症」という言葉に戸惑いや不安を感じてしまうのは自然なことです。しかし、ダウン症はひとつの個性として尊重されるべきものであり、ご家族と赤ちゃんがこれから紡ぐ日々には、きっとかけがえのない大切な時間や喜びが待っていることでしょう。本記事では、エコー検査でどこまでダウン症の兆候が分かるのか、その特徴や限界について分かりやすく解説し、併せて他の出生前検査(NIPTなど)との違いや選択肢も紹介します。不安な気持ちに寄り添いながら、どんな結果でも安心して次の一歩を踏み出せるようサポートいたしますので、どうぞご一読ください。
エコー検査で分かるダウン症の特徴とは
まず、エコー検査でダウン症児に見られやすい特徴的な所見について知っておきましょう。超音波検査では赤ちゃんの体の構造を画像で観察できますが、ダウン症の赤ちゃんではいくつかの特徴的な兆候(マーカー)が報告されています。こうした所見は妊娠時期によって確認できるものが異なるため、妊娠初期と妊娠中期に分けて説明します。
妊娠初期(11週~13週頃)の超音波所見
妊娠初期(11週~13週ごろ)に行う超音波検査では、赤ちゃんの首の後ろのむくみを示す後頸部透明帯(NT:Nuchal Translucency)の厚さや鼻骨の発達状態などをチェックします。NTの厚み(後頸部浮腫の肥厚)は、ダウン症を含む染色体異常のリスク指標として知られており、ダウン症児では首の後ろにむくみが出やすい傾向があります。一般にNTが厚め(例えば3.0mm以上)の場合、染色体異常の確率が統計的に高まることが分かっています。また鼻の骨(鼻骨)の有無や大きさも重要なポイントです。超音波で鼻骨が短かったり写らなかったりする(鼻骨の低形成)場合、ダウン症の可能性が示唆されます。実際、ある研究では妊娠初期に胎児の鼻骨が確認できないケースは、ダウン症児では約60〜70%に上る一方、染色体が正常な胎児では約1%程度しか見られないと報告されています。このようにNTの厚みや鼻骨の発達状態は、妊娠初期における重要な超音波マーカーです。
妊娠中期(16週~20週頃)の超音波所見
妊娠中期の胎児スクリーニング超音波(いわゆる妊娠5か月前後、16~20週頃の詳しいエコー検査)でも、ダウン症の可能性を示唆するいくつかの所見が知られています。エコーで確認される主なソフトマーカーには次のようなものがあります。
- 心臓の異常:心臓に穴が開いている(心室中隔欠損などの先天性心疾患)所見は、ダウン症児に合併しやすい異常の一つです。ダウン症候群の約40~50%に先天性心疾患(房室中隔欠損や心室中隔欠損など)が見られることが知られています。
- 鼻骨の低形成:妊娠中期でも引き続き鼻骨の長さを評価します。胎児の鼻骨が極端に短い場合は、ダウン症を疑う所見となります。
- 胎児の腸管が白く見える:超音波上、胎児の腸の中が他の臓器と比べて白く明るく映る腸管エコー輝度の増加(いわゆる“亮腸”)もマーカーの一つです。腸管が白く見えるのは胎児の腸蠕動の低下などによるもので、ダウン症の場合に認められることがあります。
- 腎盂の拡張:胎児の腎盂(腎臓の一部)の拡大も報告されています。これは胎児期の一過性の所見である場合も多いですが、ダウン症児でやや頻度が高いとされています(他の染色体異常や健康な赤ちゃんにも起こり得ます)。
- 四肢の骨の短さ:特に大腿骨(太ももの骨)や上腕骨が妊娠週数に比して短めに測定される場合、ダウン症の可能性を考慮します。ダウン症児では骨の発育傾向に個人差がありますが、一部に長管骨の短縮が見られることがあります。
以上のような超音波マーカー(ソフトマーカー)は、エコー検査でダウン症の可能性を“推測”する材料になります。特に複数の所見が組み合わさって認められる場合、ダウン症など染色体異常のリスクが高まるため詳しい検査を検討します。ただし、これらの所見はいずれも「可能性が高い」ことを示す指標に過ぎず、単独では確定的なものではありません。では、エコー検査だけで限界があるのはなぜでしょうか。次に、超音波検査の限界と注意点について説明します。
エコー検査の限界:見逃しや誤判定もあり得る
超音波検査でいくつかの特徴からダウン症の可能性を指摘できるとはいえ、エコー検査“のみ”でダウン症かどうか断定することはできません。前述のとおりエコー所見は確率論的な「兆候」に過ぎず、医学的にも超音波検査単独でダウン症の診断や除外を行うべきではないとされています。その理由として、まずエコー検査では赤ちゃんの体位や個人差によって所見がはっきりしない場合が多いことが挙げられます。たとえば胎児の向きが悪かったり、妊婦さんのお腹の状態によっては、NTや鼻骨などの評価自体ができないこともあります。またエコー上異常所見が全く指摘されなかったのに、生まれてみたらダウン症だったケースや、その反対に「エコーでダウン症の疑いを指摘されたが、結果的に赤ちゃんの染色体は正常だった」というケースも実際に存在します。このように超音波検査だけでは見逃し(偽陰性)も誤判定(偽陽性)も起こり得ることを、ぜひ知っておいてください。超音波検査は妊娠中の胎児の状態観察に有用な手段ではありますが、ダウン症に関しては限界があるため、本当に確実に知りたい場合には他の検査を併用する必要があるのです。
超音波検査で気になる所見が指摘された場合でも、あるいはエコーでは異常なくても不安が拭えない場合でも、より精度の高い出生前検査を検討することで安心につながるでしょう。次の章では、エコー検査と併用される他の出生前検査(NIPTや母体血清マーカー検査など)について、それぞれの検出精度や検査方法の違いを見てみましょう。
他の出生前検査(NIPTなど)とエコー検査の違い
エコー検査以外にも、赤ちゃんの染色体異常のリスクを調べる出生前検査はいくつか存在します。ここでは代表的な非侵襲的スクリーニング検査と確定診断の検査について、エコー検査との違い(検査方法や受けられる時期、精度など)を解説します。エコー検査は基本的に全ての妊婦健診で行われますが、それだけでダウン症を診断できない以上、必要に応じて以下の検査を組み合わせることが重要です。
新型出生前診断(NIPT)
NIPT(Non-Invasive Prenatal Testing、新型出生前診断)は、妊婦さんの血液中にわずかに存在する胎児由来のDNAを分析して、ダウン症候群(21トリソミー)などの染色体異常の可能性を調べる検査です。妊娠10週以降に採血一回で受けられる非常に簡便な検査であり、母体や胎児へのリスクはほとんどありません(非侵襲的検査)。最大の特徴は検出率の高さで、ダウン症の赤ちゃんを約99%という非常に高い精度でスクリーニング可能と報告されています。これは超音波検査や従来の母体血清マーカー検査と比較して飛躍的に高い感度です。NIPTは現在、厚生労働省の指針のもと認可を受けた医療機関で提供されています。(年齢制限も現在はありません)。なおNIPTはあくまで「非確定的なスクリーニング検査」であり、この検査結果だけで診断が確定するわけではありません。仮にNIPTで「陽性(高リスク)」という結果が出た場合には、最終的な確定診断のために羊水検査や絨毛検査が必要となります。
母体血清マーカー検査(コンバインド検査・クアトロ検査)
NIPTが普及する以前から行われてきた方法に母体血清マーカー検査があります。これは母体の血液中のホルモンやタンパク質濃度を測定し、ダウン症などのリスクを統計学的に算出するスクリーニング検査です。代表的なものに、妊娠11~13週頃に行う「コンバインド検査」(超音波検査によるNT計測+母体血清マーカー2項目)や、妊娠15~20週頃に行う「クアトロ検査」(母体血清マーカー4項目)があります。コンバインド検査では超音波によるNTの測定と母体血液検査を組み合わせることで約80〜90%の精度でダウン症を検出できるとされます。クアトロ検査(第2四半期の4マーカー検査)も検出率はおおむね75〜80%程度と報告されており、いずれもエコー検査単独より高い検出力を持ちます。これら血清マーカー検査はNIPTと比較すると精度は劣りますが費用が比較的安価で、NIPTの実施条件を満たさない妊婦さんにも提供されてきました。ただ近年はNIPTの登場により選択肢が移行しつつあります。いずれにせよ、コンバインド検査やクアトロ検査もスクリーニングの一種であり確定診断ではないため、結果が陽性(高リスク)の場合には追加の確定検査が必要です。
羊水検査・絨毛検査(確定診断の検査)
エコー検査やNIPTなどで高リスクが示唆された場合、最終的な確定診断を行う方法として羊水検査や絨毛検査があります。羊水検査は妊娠15週以降に受けられる検査で、お母さんのお腹に細い針を刺して少量の羊水を採取し、そこに含まれる胎児の細胞から染色体を調べます。染色体を直接解析するため、ダウン症かどうかほぼ100%の精度で判定可能な検査ですが、侵襲的手技のため流産のリスク(約0.3%)を伴います。一方、絨毛検査は妊娠11~14週頃に行える確定検査で、胎盤の元になる絨毛組織の一部を採取して染色体を解析します。こちらも診断精度はほぼ100%ですが、流産リスクが約1%とやや高いため、近年は主に羊水検査の方が多く行われています。確定検査はいずれも高度な医療設備と技術を要するため実施できる医療機関が限られる上、侵襲を伴うことから誰もが受ける検査ではなくスクリーニング結果や各ご家庭の意思に基づき慎重に選択されます。これらの検査を受ける際は必ず産婦人科医や遺伝カウンセラーと十分相談した上で進めるようにしましょう。
各検査の精度と特徴まとめ
以上、エコー検査を含む主な出生前検査の特徴をまとめると次のようになります。
- 超音波検査(エコー) – 妊娠初期~中期を通じて胎児の形態を観察。NTの肥厚や鼻骨の低形成、心奇形など特徴的な所見からダウン症の可能性を推測できます。母体への負担がなく安全な検査ですが、見逃しや誤判定のリスクがあり、確定診断はできません。
- NIPT(新型出生前診断) – 妊娠10週以降に母体採血で行う新しい検査。ダウン症の検出率は約99%と非常に高く、非侵襲的で流産のリスクもありません。エコーや他の母体血清マーカー検査に比べ精度が最も高いスクリーニングですが、確定診断ではないため陽性時には羊水検査等の確定検査が必要です。
- コンバインド検査(初期コンバインド) – 妊娠11~13週頃に行う超音波(NT計測)+血液検査。エコー所見と血清マーカーを組み合わせて約80〜90%の精度でダウン症を検出できるとされています。検査結果が出るまでに1~2週間ほど要します。
- クアトロ検査(母体血清マーカー検査) – 妊娠15~20週頃に行う母体血液検査。4種類のホルモン値からダウン症リスクを算出し、検出率は約75~85%程度です。コンバインド検査同様にスクリーニング検査であり、高リスク時は追加検査が推奨されます。
- 羊水検査 – 妊娠15週以降に実施可能な確定検査。お腹に針を刺して羊水中の胎児細胞を採取し、赤ちゃんの染色体を直接調べます。ダウン症の有無をほぼ100%の精度で診断可能ですが、侵襲的手技のため約0.3%の流産リスクがあります。結果判明まで約2週間です。
- 絨毛検査 – 妊娠11~14週頃に行える確定検査。子宮に管や針を挿入して胎盤の絨毛組織を採取し、染色体を解析します。診断精度は羊水検査と同等(ほぼ100%)ですが、流産リスクは約1%とやや高めです。妊娠初期に結果が得られる利点があります。
上記のようにエコー検査と他の出生前検査は、それぞれ時期や方法、精度が異なります。超音波検査で得た所見はあくまで一つの判断材料ですので、必要に応じてNIPTなど精度の高いスクリーニングを併用し、さらに確定検査で最終確認をするという流れになります。大切なのは、これらの検査を「受ける・受けない」も含めてご夫婦の意思で選択できるということです。経産婦さんであっても高齢出産で不安が強い場合や、初産でもどうしても赤ちゃんの状態を事前に知っておきたい場合など、状況に応じて最適な検査の組み合わせは異なります。迷ったときは無理に一人で決めようとせず、かかりつけ医に遠慮なく相談してみましょう。
レディースクリニックなみなみでのサポート体制
ダウン症をはじめ赤ちゃんの状態に不安があるとき、信頼できる医療機関で相談しながら検査を進めることが何より大切です。当院レディースクリニックなみなみでも、妊婦様の不安に寄り添いながら十分な説明とサポートを行っています。当院は日本医学会のNIPT認証施設として、妊娠10週以降(9週以降も可)に新型出生前診断(NIPT)を実施しており、経験豊富な産婦人科医師・スタッフが検査前後のカウンセリングから結果後のフォローまで丁寧に対応いたします。NIPTの詳細やご予約については、詳しくは当院までお問い合わせください。また「検査を受けた方がいいのか迷っている」「結果が心配で踏み出せない」といったお気持ちの方も、どうぞお気軽にご相談ください。当院では小児科医とも連携し、万一NIPTで陽性(高リスク)だった場合の対応や、生まれてからのケアについても専門的なアドバイスを提供しております。妊婦健診の延長線上にある出生前検査をうまく活用していただき、安心してマタニティライフを送れるようスタッフ一同サポートいたします。
まとめ:赤ちゃんの検査はNIPT認証施設などの専門施設で
ダウン症をはじめとする赤ちゃんの染色体異常について不安がある方は、ぜひ一度専門医に相談してみましょう。当院(レディースクリニックなみなみ)は日本医学会のNIPT認証施設として、妊娠10週以降(9週以降も可能)の新型出生前診断を実施しています。認定施設として経験豊富な産婦人科医師・スタッフが在籍し、検査前後のカウンセリングや結果後のフォローまで丁寧に対応いたします。「検査を受けた方がいいのか迷っている」「結果が心配で踏み出せない」といったお悩みも含めてお気軽にご相談ください。当院では小児科医とも連携し、もし陽性だった場合の対応や生まれてからのケアについても専門的なアドバイスを提供しております。お一人で抱え込まず、まずは専門家に話を聞くだけでも安心につながるはずです。妊婦健診の延長で出生前検査をうまく活用し、安心してマタニティライフを送れるようサポートいたします。
あなたと赤ちゃんにとって最良の選択ができるよう、当院スタッフ一同いつでもお手伝いします。どうぞお気軽にご相談ください。まずはお問い合わせをお待ちしております。
NIPTの費用に関するよくある質問
ダウン症をエコー検査だけで確定できますか?
いいえ。超音波検査(エコー)は「可能性を示す」スクリーニングの一つであり、ダウン症かどうか断定することはできません。最終的にはNIPTや羊水検査・絨毛検査などで染色体を直接調べる必要があります。
ダウン症の特徴的なエコー所見は、妊娠何週頃から確認できますか?
妊娠11〜13週頃の初期エコーで、首の後ろのむくみ(NT肥厚)や鼻骨の低形成などが見られる場合があります。中期(16〜20週頃)には心臓異常や高輝度腸管、大腿骨短縮などのソフトマーカーも検出可能です。
NIPT(新型出生前診断)はいつから受けられますか?
妊娠10週以降に母体の採血のみで受検できます。非侵襲的で母子へのリスクはほぼありません。(妊娠9週以降でも受検可能ですが、精度が増すため10週以降がベストです。)
NIPTの検出率(感度)はどのくらいですか?
ダウン症の検出率は約99%以上と非常に高精度です。陰性的中率(偽陰性率の低さ)も99.9%と報告されています。
エコーで異常が指摘されなかった場合は安心ですか?
いいえ。エコー所見が正常でもダウン症を完全に否定することはできません。見逃し(偽陰性)の可能性があるため、不安が残る場合はNIPTなど追加の検査を検討しましょう。
当院の「NIPT」のページもぜひご覧ください。他の出生前診断などについても紹介しています👇️
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執筆者兼監修者プロフィール
東大産婦人科に入局後、長野県立こども病院、虎の門病院、関東労災病院、東京警察病院、東京都立豊島病院、東大病院など複数の病院勤務を経てレディースクリニックなみなみ院長に就任。
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