レディースクリニック なみなみ

ダウン症はいつわかる?産婦人科専門医が教える妊娠中の検査時期と方法

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クリニックなみなみ 院長 叶谷愛弓

執筆者兼監修者プロフィール

レディースクリニックなみなみ
院長 叶谷愛弓

東大産婦人科に入局後、長野県立こども病院、虎の門病院、関東労災病院、東京警察病院、東京都立豊島病院、東大病院など複数の病院勤務を経てレディースクリニックなみなみ院長に就任。

資格

  • 医学博士
  • 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
  • FMF認定超音波医
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  • 妊娠中に赤ちゃんがダウン症かどうか確認するには、いくつかの出生前検査(スクリーニング検査)を受ける必要があります。 母体の自覚症状や体調の変化だけでダウン症を察知することはできません。
  • 最も早く高精度に調べられる検査は NIPT(新型出生前診断) で、妊娠10週以降に採血で受けられます。 エコーで妊娠を確認後すぐに検査可能で、ダウン症の検出率は約99%以上と非常に高いのが特徴です。
  • 他のスクリーニング方法には、妊娠11〜13週に行うコンバインド検査(超音波検査+母体採血)や、妊娠15〜20週頃に行う母体血清マーカー検査(クアトロ検査)があります。それぞれダウン症を約80〜90%の精度で検出できるとされています。
  • こうした出生前診断はいずれも確定診断ではありません。 検査で高リスクと判定された場合、羊水検査(15週以降)絨毛検査(11〜14週)といった確定検査で胎児の染色体を直接調べます。確定検査ではダウン症の有無をほぼ100%判定できますが、流産のリスク(羊水検査で約0.3%、絨毛検査で約1%)を伴うため注意が必要です。
  • 超音波検査では、胎児の首のむくみ(NT)や鼻骨の有無などダウン症に特徴的な所見を妊娠11〜13週頃に確認できる場合があります。 しかしエコーだけでダウン症を確定診断することはできず、異常が指摘されないまま出生し、生後にダウン症と判明するケースもあります。気になる場合は精度の高いNIPTなどの検査受検を検討しましょう。

赤ちゃんの健康を考えるとき、「ダウン症」という言葉に戸惑いや不安を感じることもあるでしょう。しかし、ダウン症はひとつの個性として尊重されるものであり、ご家族と赤ちゃんがこれから紡ぐ日々には大切な時間や喜びがきっと待っています。この記事では「ダウン症はいつわかるのか」をわかりやすく解説し、検査のタイミングや方法をご紹介します。どんな結果でも安心して次の一歩を踏み出せるようサポートしますので、どうぞご一読ください。

ダウン症候群とは?その原因と起こりやすさ

ダウン症候群(正式名称:21トリソミー)は、21番目の染色体が通常より1本多いことによって起こる先天性の疾患です。人の体細胞は通常46本(23対)の染色体を持ちますが、ダウン症では21番染色体が3本あるため「21トリソミー」とも呼ばれます。出生頻度は全新生児の約0.15〜0.2%(約600〜800人に1人)とされ、染色体異常症の中で最も多い疾患の一つです。

ダウン症候群の発生原因のほとんどは、受精時の偶発的な染色体分配のエラーによるものです。特別な遺伝的素因がなくても誰にでも起こり得るものであり、両親の行動や生活習慣によって防げるものではありません。ただし母親の年齢が高くなるほど発生率が上がることが知られています。例えば母体年齢30歳では約1/667の確率ですが、35歳では約1/350、40歳では約1/100まで上昇します。45歳では約1/30(約3.3%)とさらに高くなります。一方で、高齢出産であっても大多数(例えば40歳では99%、45歳でも約96〜97%)の赤ちゃんは染色体異常なく生まれてくることも忘れてはいけません。このようにダウン症の発生リスクは年齢とともに上がりますが、若年でも高齢でも“絶対”ではなく確率の問題です。

ダウン症候群の赤ちゃんには、筋力の低下(低緊張)や知的発達の遅れといった特徴がみられます。個人差はありますが、成長のペースがゆっくりで、将来的に軽度~中等度の知的障害を伴います。また先天性の心疾患や消化器奇形、甲状腺機能低下症、視覚・聴覚の障害などを合併することもあり、生まれてから医療的サポートが必要となるケースもあります。近年は医療の発達により、ダウン症のある方でも適切な治療やサポートを受けながら学校生活や就労など社会参加する例も増えています。平均寿命も延びており、現在ではダウン症の人の平均寿命は50〜60歳前後とも報告されています(医療環境によって差があります)。このようにダウン症候群は赤ちゃんの将来に一定の影響を及ぼしますが、家族や周囲の支えにより多くの方が笑顔で生活されていることも事実です。

では、もし自分の赤ちゃんがダウン症かもしれないと心配な場合、お腹の中にいる妊娠中にその可能性を知ることはできるのでしょうか? 次から、妊娠中に行えるダウン症の検査の種類と受けられる時期について詳しく説明します。

妊娠中にダウン症はいつわかる?どの時期に検査できるか

結論から述べると、妊娠中に赤ちゃんがダウン症かどうかを知ることは可能です。そのためには「出生前検査(プリネイタル検査)」と呼ばれる検査を受ける必要があります。出生前検査にはスクリーニング検査(非確定的検査)と確定検査の2種類があります。それぞれ受けられるタイミングが決まっており、以下に主な検査方法と「いつ(何週頃)わかる」のかをまとめます。

主な出生前スクリーニング検査と受けられる週数

検査名妊娠何週頃に実施できるかダウン症検出率(感度)流産リスク
NIPT(新型出生前診断)妊娠10週目以降(10〜18週頃)約99%(陰性的中率99.9%)なし(採血のみ)
コンバインド検査(初期超音波+採血)妊娠11週〜13週ごろ約80〜95%(施設や測定項目により差あり)なし(非侵襲)
母体血清マーカー検査(クアトロテストなど)妊娠15週〜20週ごろ約70〜85%(報告により幅あり)なし(採血のみ)

まず、妊婦健診の超音波検査などではお母さん自身が「赤ちゃんがダウン症かもしれない」と感じ取れるような予兆は基本的にありません。ダウン症の可能性を調べるには上記のような専門的な検査を受ける必要があるのです。

中でも最も早く結果が得られる検査がNIPT(新型出生前診断)です。NIPTは母体の血液中に流れる胎児由来のDNA断片を解析して、胎児に染色体数の異常(21トリソミー=ダウン症候群、18トリソミー、13トリソミー)がないかを調べる先進的なスクリーニング検査です。妊娠10週以降であれば受けることができ、結果が出るまでに1〜2週間程度かかります。母体からの採血のみで行い流産などのリスクがない安全な検査でありながら、ダウン症候群の検出率は約99%と非常に精度が高い点が大きなメリットです。実際、NIPTで陰性(異常の疑いなし)と出た場合は99.9%の確率で赤ちゃんにダウン症など染色体異常がないとされています。そのため近年は、「まずNIPTで調べ、万一陽性(疑いあり)なら確定検査へ進む」という手順で出生前診断を行うケースが増えています。

NIPT以外にも妊娠初期〜中期に受けられるスクリーニング検査があります。代表的なのが「コンバインド検査」と呼ばれる方法で、妊娠11~13週ごろに行います。これは超音波検査で胎児の首の後ろのむくみ(NT:Nuchal Translucency)の厚さや鼻骨の有無などをチェックし、同じ時期に母体の血液中のホルモン(hCG)やタンパク(PAPP-A)の値を測定して、両方の結果から染色体異常のリスク度を算出する検査です。イギリスのFMF(胎児医学財団)という機関が確立した手法で、日本でも限られた医療機関で提供されています。NTの計測や母体マーカーを組み合わせることで、ダウン症の約90%以上を検出できるとされています。ただし検査の精度(感度)は実施施設の超音波計測技術や使用するマーカー項目によって幅があり、おおむね80〜95%程度と報告されています。仮にこのコンバインド検査で「陽性(高リスク)」と判定されても、それだけでは確定とは言えません。その場合は後述する羊水検査など確定検査が推奨されます。

さらに妊娠中期(15〜20週頃)には「母体血清マーカー検査」(いわゆるクアトロテストなど)を受ける選択肢もあります。これは母体血液中の4種類のホルモン値からダウン症などのリスクを推定するスクリーニング検査です。従来から行われてきた方法ですが、ダウン症の検出率は約70〜80%程度とNIPTやコンバインド検査に比べると感度が低めです(※偽陽性率もやや高い傾向があります)。現在では母体年齢や希望に応じて、こうした血清マーカー検査よりNIPTを選択される妊婦さんの方が多くなってきています。

確定検査(羊水検査・絨毛検査)はいつ受けられる?

上述のようなスクリーニング検査で「ダウン症の可能性が高い」という結果が出た場合、最終的な確定診断のためには染色体そのものを調べる検査が必要です。胎児の染色体を直接調べる代表的な確定検査として絨毛検査羊水検査があります。確定検査では胎児の細胞から染色体を培養し数や構造を観察するため、ダウン症であるかどうかをほぼ100%の精度で診断可能です。

  1. 絨毛検査(絨毛膜採取法) – 妊娠11~14週頃に受けることができます。胎盤の元になる絨毛組織の一部を採取して胎児の染色体を解析します。お腹(子宮)に針を刺す処置で、流産や胎児への影響のリスクが約1%程度あると報告されています。結果は検査後約1~2週間で判明します。妊娠初期に確定診断がつく利点はありますが、侵襲的検査のリスクを踏まえて実施判断がなされます。
  2. 羊水検査 – 妊娠15週以降(16週〜18週ごろが多い)に受けられます。腹部から細い針を刺して羊水を約15〜20mlほど採取し、そこに含まれる胎児細胞を培養・分析します。流産リスクは約0.3%と低いですが、絨毛検査に比べ検査可能な週数が遅いため結果判明も妊娠中期(検査から約2週間後)になります。陽性だった場合に妊娠継続か中断かの判断を迫られる時期が遅くなる点には留意が必要です。

確定検査はいずれも高度な専門技術を要するため、実施できる医療機関が限られます。また侵襲を伴うため、スクリーニング検査とは異なり誰もが受けるものではなく、スクリーニング結果や各家庭の希望に応じて実施を検討する検査となります。産婦人科医や遺伝カウンセラーと十分相談した上で受けるかどうか決めるようにしましょう。

超音波検査でダウン症はわかる?エコー所見と限界

妊娠11~13週頃の胎児超音波画像。首の後ろのむくみ(NT)が測定されています。NTの肥厚はダウン症候群など染色体異常のリスク指標となりますが、確定診断にはなりません。

妊婦健診などで行われる超音波検査(エコー検査)だけでダウン症を見つけることはできるのでしょうか?――結論として、エコー検査のみでダウン症かどうかを断定することはできません。しかし、一部の超音波所見からダウン症の可能性を“推測”できる場合があるのも事実です

前述のNT(後頸部浮腫)はその代表例で、ダウン症児では首の後ろにむくみが出やすい傾向があるため妊娠初期の超音波検査でNTを計測します。一般にNTが厚め(3.0mm以上など)の場合、ダウン症などの確率が高まることが統計的に知られています。また鼻骨の低形成(鼻の骨が短い/写らない)、心臓の三尖弁や静脈管の血流異常、手足の骨の短さ、頭部や腸管の形態異常など、いくつかの超音波マーカーがダウン症候群の胎児に合併しやすい所見として報告されています。妊娠中期の20週前後に行う胎児スクリーニング超音波でも、心臓に穴(心室中隔欠損)がある、腸が白く見える(腸管蠕動低下)、腎盂が拡張している、太ももの骨が短い、といった所見が認められるときはダウン症の可能性を考慮します。

とはいえ、これらはあくまで「可能性が高い」という指標に過ぎず、超音波検査だけで確定診断はできません。実際には、胎児の向きや個人差によってエコー上の所見がはっきりしないことも多く、「エコー異常が全くなかったのに生まれたらダウン症だった」「エコーで指摘があったが結果的に染色体は正常だった」というケースもあります。超音波検査は妊娠中の胎児の状態を観察する有用な手段ですが、ダウン症については見逃しも誤判定もあり得るという限界を知っておきましょう。本当に確実に知りたい場合は、やはりNIPTなどのスクリーニング検査を受けておくことをおすすめします

検査を受けるタイミングは?なるべく早期の受検がおすすめ

では、出生前検査は妊娠のいつ頃受けるのが良いのでしょうか?前述したように各検査ごとに受けられる時期は決まっていますが、基本的には「できるだけ早め」に検査を受けることが推奨されます。その理由として以下の点が挙げられます。

  1. 結果を早く知ることで、十分に時間をかけて家族で話し合える: 検査結果が陽性だった場合、「出産に向けて準備を進めるのか」「妊娠を継続しない選択をとるのか」など、ご夫婦・ご家族で大切な決断をしていく必要があります。早い時期に結果が分かれば、それだけ話し合いや心の準備に充てられる時間を確保できます。特に結果に対してすぐ結論を出す必要はありませんから、情報収集や専門家への相談なども含め、しっかり考える余裕を持てるでしょう。
  2. 中絶を選択する場合、身体的・精神的負担を軽減できる: やむを得ず妊娠の中断(人工中絶)という決断をする場合は、早ければ早いほど母体への負担が小さく安全です。日本では母体保護法により人工中絶が可能なのは妊娠21週まで(22週未満)と定められています。そのため、例えばNIPTで陽性となり羊水検査で確定診断を行う場合、遅くとも妊娠18週頃までにNIPTを受けておかないと21週までに結論を出すのが難しくなるケースがあります。現実的にも、多くの医療機関では妊娠18週頃までをNIPT受検の目安期限として設定しています。妊娠後期が近づくにつれ中絶手術の心身への負担も増すため、「検査は何週までに」と早めの受検を呼び掛ける背景にはお母さんの負担軽減という目的もあります

以上より、ダウン症などの出生前検査は妊娠初期のうちになるべく余裕をもって受けておくのが望ましいと言えます。もちろん、検査を受けるかどうか自体もご夫婦によって考え方が異なりますので、「絶対に受けなければいけない」というものではありません。しかし「知らないまま出産を迎えて驚き戸惑うより、事前に知って心の準備をしたい」「万一の場合は早めに対応策を考えたい」というお気持ちがあるなら、遠慮せず担当医に相談してみてください。

まとめ:レディースクリニックなみなみでもNIPTを実施中、不安なときは専門医にご相談を。

ダウン症をはじめとする赤ちゃんの染色体異常について不安がある方は、ぜひ一度専門医に相談してみましょう。当院(レディースクリニックなみなみ)は日本医学会のNIPT認証施設として、妊娠10週以降(9週以降も可能)の新型出生前診断を実施しています。認定施設として経験豊富な産婦人科医師・スタッフが在籍し、検査前後のカウンセリングや結果後のフォローまで丁寧に対応いたします。「検査を受けた方がいいのか迷っている」「結果が心配で踏み出せない」といったお悩みも含めてお気軽にご相談ください。当院では小児科医とも連携し、もし陽性だった場合の対応や生まれてからのケアについても専門的なアドバイスを提供しております。お一人で抱え込まず、まずは専門家に話を聞くだけでも安心につながるはずです。妊婦健診の延長で出生前検査をうまく活用し、安心してマタニティライフを送れるようサポートいたします。

あなたと赤ちゃんにとって最良の選択ができるよう、当院スタッフ一同いつでもお手伝いします。どうぞお気軽にご相談ください。まずはお問い合わせをお待ちしております。😊

NIPTの費用に関するよくある質問

ダウン症は妊娠何週でわかりますか?

妊娠10週目以降に受けられるNIPT(新型出生前診断)で、高精度(感度約99%)にスクリーニングが可能です。結果は採血後1〜2週間で判明します。

超音波(エコー)検査だけでダウン症は確定できますか?

エコー検査ではNT(後頸部浮腫)や鼻骨所見などを指標として「可能性」を推測できますが、確定診断はできません。確実に調べたい場合はNIPTなどの検査を受けてください。

NIPTで陽性(高リスク)と判定されたらどうすればいいですか?

陽性の場合は、妊娠11〜14週に受けられる絨毛検査や妊娠15週以降の羊水検査で確定診断を行います。いずれも流産リスクがあるため、産婦人科医や遺伝カウンセラーと十分相談のうえ判断しましょう。

NIPTにはリスクや副作用はありますか?

NIPTは母体採血のみで行う非侵襲的検査のため、流産リスクや身体的負担はほぼありません。ただし、検査で高リスク判定をされた際の心理的負担に備えたサポートが重要です。

検査をなるべく早く受けたほうがいい理由は?

早期に結果を知ることで、ご家族でじっくり話し合う時間が確保でき、万一の際の対応や心の準備を余裕を持って進められます。また、中絶手術を選択する場合も身体的負担を軽減できます。

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執筆者兼監修者プロフィール

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院長 叶谷愛弓

東大産婦人科に入局後、長野県立こども病院、虎の門病院、関東労災病院、東京警察病院、東京都立豊島病院、東大病院など複数の病院勤務を経てレディースクリニックなみなみ院長に就任。

資格

  • 医学博士
  • 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
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