
執筆者兼監修者プロフィール
東大産婦人科に入局後、長野県立こども病院、虎の門病院、関東労災病院、東京警察病院、東京都立豊島病院、東大病院など複数の病院勤務を経てレディースクリニックなみなみ院長に就任。
資格
- 医学博士
- 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
- FMF認定超音波医
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- NIPT(新型出生前診断)は妊娠10週以降に母体の血液検査だけで胎児の染色体異常のリスクを調べられる検査です。採血のみで行い母体や赤ちゃんへのリスクがなく、高い精度でダウン症候群などの異常の可能性をスクリーニングできます。
- NIPTを受けるベストな時期は妊娠12~13週頃と考えられています。妊娠10週を過ぎると胎児由来DNA量が増えて検査精度が安定し、陽性・陰性ともに結果の信頼性が高まります。
- 一方、妊娠後期に近い時期に検査して異常の可能性が分かっても、取れる対応策が制限される場合があります。日本では妊娠22週以降は人工中絶が法律上認められていないため、妊娠後半で異常が判明しても出産以外の選択肢がなくなる可能性があるからです。
- 早すぎる時期(妊娠9週直後など)に検査を受けることにも注意が必要です。胎児DNAが十分でない時期に行うと検体の再提出(判定保留)や異常の見逃し(偽陰性)のリスクが高まります。また陽性(高リスク)だった場合、確定診断である羊水検査(16週以降実施)まで1か月以上不安な時間を過ごすことになりかねません。
結論から言えば、NIPTは妊娠10週0日以降であれば受検可能ですが、中でも妊娠12~13週頃に受けるのがベストだと考えられます。妊娠10週を過ぎると胎児由来DNAの量が安定して十分になり、検査の精度が高くなるからです。また、結果が判明する時期が早ければ、その後に追加検査や対応策を検討するための時間的なゆとりも確保できます。
NIPTは妊娠何週から受けられる?検査可能な時期の基準
日本におけるNIPT(新型出生前診断)は、妊娠10週0日以降に行うことが定められています。日本医学会が認定したNIPT実施施設では、原則として妊娠10週目に入ってからでなければ検査を受けることはできません。これは、妊娠10週未満では胎児由来DNAの量が不十分で検査結果の信頼性が低いためです。実際、妊娠8週頃から母体血中に胎児DNAが検出可能という報告もありますが、妊娠9週以前に検査を行うと検体の再検査率が高くなり(妊娠6週で50%以上、7週で20%とのデータもあります)、精度の観点から現実的ではありません。そのため多くの施設では妊娠10週以降になるまでNIPTを実施しない運用になっています。
なお、NIPT受検にあたっては事前に胎児の心拍確認を行うことが重要です。妊娠初期は流産の可能性もあるため、検査前の超音波検査で赤ちゃんの心拍が確認できてから採血するのが一般的です。当院でもNIPT当日にまず妊娠週数相当の発育や心拍を確認してから検査を行っており、万一胎児の状態に問題が見つかった場合はNIPTではなく適切な対応に切り替えるようにしています。
施設によっては妊娠9週台(例えば9週目以降)からNIPT検査の予約を受け付けている場合もあります。しかし前述の通り、妊娠9週前半での検査は胎児DNA量が十分でないことが多く正確な結果が得られないリスクがあります。安全策を取るならば、少なくとも10週0日を迎えるまでは検査を待つことが望ましいでしょう。
NIPTは何週まで受けられる?検査可能な上限と遅い時期の注意点
上の図は妊娠週数ごとの出生前検査のタイミングを示したものです。NIPTは妊娠10~16週頃の妊娠初期(3~4か月)に行うのが一般的で、確定診断である絨毛検査(11~14週)や羊水検査(15~18週)の時期、および日本で人工中絶が可能なのが妊娠21週6日までであることが視覚的に示されています。このようにスケジュール全体を俯瞰すると、NIPTを妊娠初期のうちに計画すべき理由が理解しやすくなるでしょう。
検査を受けられる上限週数について明確な取り決めはありませんが、実務的には妊娠18週前後がNIPT実施の目安となります。それ以上の週数でも採血自体は可能ですが、結果が判明するまでに約1~2週間かかることを踏まえると、遅くとも妊娠16週頃(4か月末)までに採血を終えておくことが望ましいでしょう。例えば15~16週でNIPTを受ければ、1~2週間後の17~18週頃には結果が判明します。万一高リスク結果となった場合でも、妊娠20週前後までに羊水検査による確定診断が受けられ、妊娠21週6日まで(22週未満)であれば中絶手術による対応も検討可能だからです。
逆に、妊娠後期に近づいてからNIPTを受けても、検査結果を妊娠継続の方針に活かせない可能性があります。前述の通り日本では妊娠22週以降は人工妊娠中絶術が行えないため、妊娠後半で異常が判明しても出産以外の選択肢がなくなってしまうからです。そのため一般的にNIPTはできるだけ妊娠初期のうちに受けておくことが推奨されます。
なお、NIPT自体は理論上妊娠何週であっても実施は可能で、稀には妊娠22週を過ぎてから受検する方もいるようです。ただしこの場合、検査で異常リスクが判明しても妊娠中に取れる対応策は限られます。結果を出産準備の参考情報として活用することはできますが、少なくとも妊娠初期~中期までの検査と比べれば意義は大きく下がってしまう点に留意が必要です。
NIPTを受けるベストなタイミングは妊娠何週?
以上を踏まえると、NIPTを受ける理想的なタイミングは妊娠3~4か月頃(妊娠12~13週前後)だと言えます。この時期であれば赤ちゃんの心拍もすでに確認できており、検査に必要な胎児DNA量も十分で精度が安定しています。万一NIPTで高リスク結果が出ても、その後の確定検査(羊水検査は通常16週以降)や対応策の検討に十分な時間を確保できる時期です。我々をはじめ複数の出生前診断専門施設の見解では、「結果を踏まえ十分に考える時間を持つには16週までに羊水検査を受けるのがよい。そこから逆算するとNIPTは12~13週には受けておくと安心」とされています。
多くの医療機関でも「妊娠初期(3~4か月)のうちにNIPTを受けるのが理想的」と案内しており、当院でも妊娠10~16週頃までの早い段階での受検をおすすめしています。特に妊娠12~13週頃は、妊婦健診の日程やご夫婦の予定と照らし合わせても検査を組み込みやすいタイミングでしょう。
また、ちょうど妊娠12~14週頃には初期胎児超音波検査(いわゆる胎児ドック)を行うことで、NIPTでは分からない胎児の形態的な異常(無脳症や重度心奇形など)を発見できる可能性があります。NIPTと同日に超音波スクリーニングを併施することで検査精度をさらに高め、より安心につなげることが可能です。当院でも希望される方にはNIPT当日に妊娠12~13週の精密超音波検査を実施しており、「赤ちゃんが元気に動いている様子を見て安心できた」という声もいただいています。
もちろん、「一日でも早く結果を知りたい」「上の子の都合や夫婦の休みに合わせて受けたい」など各ご家庭で事情やご希望は様々だと思います。大切なのは、NIPTのメリットと限界を理解した上で、ご自身が納得できるタイミングを選ぶことです。妊娠週数の制約やスケジュール調整などで迷う場合は、遠慮なく担当医や認証施設の遺伝カウンセラーに相談してみましょう。
まとめ:NIPTは妊娠初期に計画を立て、不安な時は専門医に相談しましょう
NIPTは受検できる週数に幅があるため、タイミング選びに悩むこともありますが、妊娠初期のうち(目安として妊娠12~13週前後)に受けておくのが最も安心です。早めに結果が分かることでその後の方針に余裕を持って備えることができますし、陰性であれば妊娠後半を安心して過ごせるメリットも得られます。検査を受けるかどうか、そしていつ受けるかはご夫婦の価値観や状況にもよりますので、じっくり話し合って決めることが大切です。
タイミングについて判断に迷うときは、無理に一人で抱え込まず専門の産婦人科医に相談しましょう。認証施設であれば遺伝カウンセリングなどを通じて不安や疑問に丁寧に答えてもらえます。当院でも妊婦さんとご家族の気持ちに寄り添いながら、最適な検査計画を一緒に考えていきますので、どうぞお気軽にご相談ください。
レディースクリニックなみなみのNIPTを予約するNIPTのベストな時期に関するよくある質問
NIPTを受けるか迷っています。何週目までに決めれば間に合いますか?
NIPT(新型出生前診断)は任意の検査ですので、「絶対に受けなければいけない」というものではありません。悩まれるお気持ちも自然なことですが、受けるかどうかはなるべく早めに決めておくことをおすすめします。一般的にNIPTは妊娠10週0日から受けられ、15〜16週頃までに行うのが望ましいとされます。多くの妊婦さんは14週頃までに検査を受ける傾向があり、それを過ぎると結果を待って追加検査(羊水検査など)を行い、必要なら対応を考える時間が慌ただしくなってしまいます。せっかく受けようと思っても週数オーバーで受けられないこともありますから、NIPTを検討中であれば遅くとも妊娠14〜15週頃までには結論を出し、主治医に相談しておくと安心です。
NIPTは妊娠何週から何週まで受けられますか?
NIPTは妊娠10週以降であれば受けられる検査です。胎児由来のDNAが母体血中に十分増えるのがちょうど妊娠10週頃とされており、それ以前は精度が確保できないためです。一方、受けられる上限の週数について明確な全国一律の決まりはありませんが、日本で広く行われているNIPTでは妊娠15〜16週頃までに受けることが推奨されています。施設によっては18週頃まで対応可能な場合もありますが、先述のように結果後の対応時間を考えると妊娠初期〜中期に入る頃(およそ10〜14週)までに受け終えるのが理想的です。
NIPT検査は妊娠何週目に受けるのがベストですか?
妊娠初期のうち(10〜14週頃)に受けるのが理想的とされています。ただし「ベストなタイミング」は妊婦さんの状況によっても異なります。一般には、できるだけ早めに結果が欲しい方は妊娠10〜12週頃に検査を受けます。一方で、つわりがひどく採血が難しい場合や「夫婦でもう少し話し合ってから決めたい」という方は、妊娠15週前後まで検討期間をとって受けることもあります。NIPTは予約制で事前に遺伝カウンセリングを受ける必要があるため、具体的な検査時期は主治医と相談して決めることが大切です。いずれにせよ妊娠10週を過ぎていれば検査は可能ですので、ご自分の体調やご都合に合わせて計画しましょう。
NIPTの検査精度は受ける週数によって変わりますか?
妊娠10週以降であれば、検査精度は受ける週数によって大きく変わることはありません。NIPTでは母体血中の胎児由来DNA量(胎児cfDNA)の割合がポイントですが、妊娠10週頃にその割合が安定すると言われています。そのため10週さえ過ぎていれば、妊娠11週でも14週でもほぼ同じ高い精度で結果が得られます。実際、当クリニックをはじめ多くの施設で妊娠10〜14週に検査を受ける方が多いですが、体調が落ち着いてから受けたいという場合に15週以降で受けても結果の正確さ自体は心配いりません。陰性(異常がない)場合の的中率は99%以上と非常に高く、週数によってこの精度が低下することはないと考えてよいでしょう。
NIPTは赤ちゃんや母体に影響がありますか?何週目でも安全に受けられる?
NIPTは母体の血液を調べるだけの検査です。お腹に針を刺すような処置は行わないため、赤ちゃんに害を及ぼす心配はありません。お母さんの体への負担も採血と同程度で、流産のリスクなども心配ない安全な検査です。受けられる週数内であれば、妊娠10週目で受けても後期で受けても安全性は変わりませんのでご安心くださいね。なおNIPTでは、羊水検査のように検査自体に流産リスクが伴わないことから、赤ちゃんへの影響が心配な場合の第一選択肢として注目されています。ご家族の方にとっても、母体や胎児へ負担の少ない検査といえるでしょう。もし不安な点があれば、遠慮せず医師に相談してみてください。自分と赤ちゃんにとって安心できる形で検査を受けることが一番大切です。
当院の「NIPT」のページもぜひご覧ください。他の出生前診断などについても紹介しています👇️
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東大産婦人科に入局後、長野県立こども病院、虎の門病院、関東労災病院、東京警察病院、東京都立豊島病院、東大病院など複数の病院勤務を経てレディースクリニックなみなみ院長に就任。
資格
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とはいえ、NIPTを受けられる週数にはある程度幅があり、「早すぎても大丈夫かな」「遅くなりすぎると意味がないのでは」と不安になることもありますよね。そこで本記事では、NIPTはいつからいつまで受けられるのか、何週目に受けるのが最もおすすめなのかについて、最新の知見やガイドラインを踏まえて詳しく解説します。検査時期選びの参考にしてください。