執筆者兼監修者プロフィール
東大産婦人科に入局後、長野県立こども病院、虎の門病院、関東労災病院、東京警察病院、東京都立豊島病院、東大病院など複数の病院勤務を経てレディースクリニックなみなみ院長に就任。
資格
- 医学博士
- 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
- FMF認定超音波医
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妊娠検査薬が陽性になっても、その日のうちに受診する必要はありません。産婦人科への初めての受診は妊娠6〜8週頃が推奨されます。早すぎるとまだ赤ちゃんの心拍が確認できず、かえって不安が長引いてしまうためです。
とはいえ、「では、いつ何をすればいいのか」がわからないまま数週間を過ごすのは、とても心細いものです。妊娠初期は、体調の変化に戸惑いながら、初診・母子手帳・妊婦健診の開始と、初めてのことが立て続けに起こります。なかには「受けられる時期が決まっているもの」もあり、知らないうちに時期が過ぎてしまうこともあります。
この記事では、妊娠がわかった直後(妊娠4週頃)から安定期に入る手前(妊娠16週頃)までを、週数ごとの時系列で整理しました。いま何をすべきで、何はまだしなくてよいのか。先の見通しを持っていただくための地図としてお使いください。
- 妊娠がわかった直後にすること・しなくてよいこと
- 妊娠4〜16週のスケジュール早見表
- 初診・心拍確認・母子手帳・妊婦健診が始まるまで
- つわりの時期と、つらいときの選択肢
- 出生前検査を考える場合に知っておきたい時期のこと
- 妊娠初期に気をつけたい生活のこと
- すぐに受診してほしい症状
- よくあるご質問
1. 妊娠がわかった直後(妊娠4〜5週頃)にすること
市販の妊娠検査薬は、生理予定日の頃から使えるものが一般的です。ここで陽性が出た時点が、およそ妊娠4〜5週にあたります。ただし妊娠検査薬でわかるのは「妊娠しているかどうか」までで、赤ちゃんが子宮の中で育っているかどうかまではわかりません。それを確かめるのが、このあとの超音波検査です。
この時期にしていただきたいのは、次の3つだけです。
- 最終月経の初日を記録しておく——週数の計算の基準になります。受診時に必ず聞かれます
- アルコールとタバコをやめる——赤ちゃんの器官がつくられ始める大切な時期です
- 葉酸をとりはじめる——妊娠初期(妊娠3ヶ月頃まで)は特に重要とされています
逆に、この時点で急いで受診する必要はありません。ただし、下腹部の激しい痛みや多量の出血がある場合は例外です(詳しくは後半の「すぐに受診してほしい症状」をご覧ください)。
2. その前に:妊娠週数の数え方
スケジュールを見る前に、ひとつだけ押さえておきたいことがあります。妊娠週数は「最終月経が始まった日」を妊娠0週0日として数えます。受精した日でも、妊娠に気づいた日でもありません。
この数え方だと、排卵・受精が起こるのはおよそ妊娠2週頃にあたります。つまり「妊娠4週」の時点で、受精からはまだ2週間ほどということになります。「妊娠5週なのにおなかが目立たない」と心配される方がいらっしゃいますが、実際にはまだそれだけの時期だとご理解ください。出産予定日は、この数え方で妊娠40週0日にあたる日です。
| 妊娠週数 | 実際に起きていること |
|---|---|
| 妊娠0週 | 最終月経が始まった週(まだ妊娠は成立していません) |
| 妊娠2週頃 | 排卵・受精が起こる頃 |
| 妊娠3週頃 | 着床が起こる頃 |
| 妊娠4週頃 | 生理予定日。妊娠検査薬が使えるようになる頃 |
なお、生理周期が不規則な方や、周期が28日より長い・短い方は、この数え方だと実際の週数とずれることがあります。その場合は、受診時の超音波で赤ちゃんの大きさを計測し、週数と出産予定日を修正することがあります。最初に案内された予定日が後から変わっても、珍しいことではありませんのでご安心ください。
3. 妊娠初期のスケジュール早見表(妊娠4〜16週)
全体の流れを1枚にまとめました。週数の進み方や体調には個人差がありますので、あくまで目安としてご覧ください。
| 時期 | 起こること・すること | 備考 |
|---|---|---|
| 妊娠4〜5週 | 妊娠検査薬が陽性になる頃。最終月経の記録・禁酒禁煙・葉酸 | まだ受診しなくてよい時期 |
| 妊娠5〜6週 | 超音波で胎嚢(たいのう)が見えはじめる | 見えなくても異常とは限りません |
| 妊娠6〜8週 | 産婦人科の初診。超音波で心拍を確認 | 初診の推奨時期 |
| 心拍確認のあと | 母子健康手帳の案内 → 交付 → 妊婦健診がスタート | 交付の手続きは自治体によります |
| 妊娠5〜12週頃 | つわりが出はじめ、ピークを迎えることが多い時期 | つらいときは相談できます |
| 妊娠10〜12週 | 出生前検査(NIPT)を希望する場合の適した時期 | 受ける・受けないは自由です |
| 妊娠11〜13週頃 | 超音波を使う出生前検査を行う場合の時期 | 希望される場合のみ |
| 妊娠15〜20週 | 羊水検査を行う場合の時期 | 確定検査。希望される場合のみ |
| 妊娠16週頃 | つわりが落ち着いてくることが多い時期 | 安定期の入り口 |
4. 週数ごとに、もう少し詳しく
妊娠5〜6週:胎嚢が見えはじめる
子宮の中に赤ちゃんを包む袋(胎嚢)が超音波で確認できるようになる時期です。ただし排卵や着床のタイミングには個人差があり、この時期に見えなくても異常とは限りません。1週間ほど間をあけて、改めて確認することがよくあります。
妊娠6〜8週:初診と心拍の確認
産婦人科への初めての受診は、この時期が推奨されます。目安として、生理予定日から2週間以上経ってから受診すると、胎嚢や心拍が確認しやすくなります。心拍が確認できれば、赤ちゃんが子宮の中でしっかり育っている証拠であり、流産の可能性も大きく下がるとされています。
心拍確認の時期については、赤ちゃんの心拍確認はいつできる?で詳しくご説明しています。
初診では何をする? 持ち物は?
初診では、おおむね次のことを行います。多くは10〜20分程度で終わります。
- 問診——最終月経の初日、生理周期、これまでの妊娠・出産、持病、飲んでいるお薬、アレルギーなど
- 超音波検査——この時期は経腟エコーで行うのが一般的です。胎嚢の有無・位置、心拍を確認します
- 基本的な計測——血圧、体重など
持ち物としては、保険証のほか、最終月経の日がわかるもの(アプリの記録・手帳・基礎体温表など)をお持ちいただくとスムーズです。妊娠検査薬の結果や、気になっていることのメモがあれば、あわせてお持ちください。
ひとつ知っておいていただきたいのは、妊娠そのものは病気ではないため、妊娠の確認や妊婦健診は基本的に自費の扱いになるということです。母子健康手帳の交付後は、自治体の補助(受診票・補助券)が使えるようになります。詳しい費用は料金のご案内をご覧ください。
心拍確認のあと:母子健康手帳と妊婦健診
心拍が確認できると、医師から母子健康手帳の案内があります。交付の手続きや必要書類はお住まいの自治体によって異なりますので、お住まいの窓口をご確認ください。母子手帳を受け取ると、ここから本格的に妊婦健診が始まります。健診では赤ちゃんの発育や、お母さんの血圧・体重・血液の状態などを定期的に確認していきます。
妊娠5〜12週頃:つわりの時期
つわりは妊娠5週頃から出はじめ、8〜11週頃にピークを迎え、16週頃には落ち着いてくる方が多いとされています。ただし個人差がとても大きく、ほとんど感じない方もいれば、水分もとれないほどつらくなる方もいます。
「妊娠したのだから我慢すべき」と思い込む必要はありません。つわりは我慢比べではなく、相談していただける症状です。食べられない日・飲めない日が続くときは、早めにご相談ください。
つわりの過ごし方については、こちらのコラムもぜひご覧ください👇️
つわりが始まったときの過ごし方のコラムはこちら妊娠10〜16週:出生前検査を考える場合の時期
妊娠初期には、希望される方を対象に、おなかの赤ちゃんの状態を調べる出生前検査という選択肢があります。受けるかどうかはご本人・ご夫婦が決めることで、受けないという選択も同じように尊重されます。すべての妊婦さんが受ける検査ではありません。
ただし、検査には受けられる時期の目安があります。ここでは時期だけを整理しておきます。
- NIPT(母体血を用いた出生前遺伝学的検査)——妊娠10週0日以降。10〜12週頃が適した時期とされています。早ければ早いほどよいわけではなく、9週台前半など早すぎる時期は、赤ちゃん由来のDNAの量が十分でなく結果が出せない(判定保留)可能性が高まります
- 超音波を使う検査——妊娠11〜13週頃
- 羊水検査(確定検査)——妊娠15〜20週頃
NIPTは、赤ちゃんの心拍が確認されたあとに行うのが一般的です。妊娠初期は流産の可能性もあるため、超音波で赤ちゃんの様子を確認してから採血を行います。心拍確認が取れていない段階で、焦って予約をする必要はありません。
検査の内容・わかること・わからないこと、受けるかどうかの考え方については、それぞれのコラムで詳しくご説明しています。まずは「そういう選択肢があり、時期の目安がある」ことだけ知っておいていただければ十分です。
検査を受けるかどうかに、医学的な正解はありません。受けないと決められる方もたくさんいらっしゃいます。私たちがお伝えしたいのは「いつまでに考えるか」だけです。時間に追われて決めることにならないように、時期があることだけ知っておいてください。
5. 「知らないうちに時期が過ぎていた」を避けるために
妊娠初期にすることの多くは、時期が多少前後しても取り返しがつきます。初診が1週間遅れても、母子手帳の交付が数日ずれても、大きな問題にはなりません。
一方で、出生前検査だけは「受けられる期間」が決まっています。妊娠10週より前は受けられず、また日本では妊娠22週以降の人工妊娠中絶が法律上できないため、あまり遅い時期に検査を受けると、結果が出たあとに選べることが限られてしまいます。
これは「受けたほうがよい」という意味ではありません。受けるか受けないかを、時間に追われずに考えていただくために、時期の存在だけは早めに知っておいていただきたいということです。ご夫婦・パートナーとよく話し合う時間も含めて、妊娠8〜9週頃までに一度考えてみられると、余裕をもって決めていただけます。
6. 妊娠初期に気をつけたい生活のこと
妊娠初期は、赤ちゃんの大事な器官がつくられる時期にあたります。とはいえ、神経質になりすぎる必要はありません。押さえておきたいのは次の点です。
| 項目 | 目安 |
|---|---|
| アルコール・タバコ | 完全にやめる |
| カフェイン | 1日200mg程度(コーヒー約2杯)まで |
| 葉酸 | 妊娠3ヶ月頃までは特に意識してとる |
| 運動 | 適度なら問題なし。激しい運動・重い物は避ける |
| 市販薬 | 自己判断で飲まず、医師・薬剤師に相談 |
食べ物・お薬については、それぞれ詳しいコラムをご用意しています。
「これくらいで連絡していいのかな」と迷って、我慢されてから来られる方がいます。診察して何もなければ、それがいちばんよい結果です。判断はこちらでしますので、心配なときは遠慮なくご連絡ください。
7. すぐに受診してほしい症状
妊娠初期の腹痛や少量の出血は、よくあるマイナートラブルであることも多く、その多くは安静にして様子を見ていただいて構いません。ただし、次のような場合は週数にかかわらず、夜間でも医療機関にご連絡・受診してください。子宮外妊娠(異所性妊娠)や流産の初期症状である可能性があります。
- 意識が遠のくほどの多量の出血
- 耐えがたい下腹部の激しい痛み
- 水分もとれない状態が続き、尿がほとんど出ない
判断に迷う程度の症状については、妊娠初期の出血・妊娠初期の腹痛のコラムもあわせてご覧ください。
妊娠初期のスケジュールに関するよくある質問
妊娠検査薬が陽性でした。すぐ病院に行くべきですか?
急いで受診する必要はありません。初めての受診は妊娠6〜8週頃が推奨されます。早すぎる時期に受診すると、まだ胎嚢や心拍が確認できず、改めて受診し直すことになりやすいためです。目安として、生理予定日から2週間以上経ってからの受診をおすすめします。ただし、多量の出血や耐えがたい下腹部痛がある場合は、週数にかかわらずすぐにご連絡ください。
母子健康手帳はいつもらえますか?
一般的には、超音波で赤ちゃんの心拍が確認できたあとに医師から案内があり、その後にお住まいの自治体の窓口で交付を受けます。時期の目安は妊娠8〜11週頃ですが、交付の手続き・必要書類・受け取れる場所は自治体によって異なります。詳しくはお住まいの市区町村の窓口をご確認ください。母子手帳を受け取ると、そこから妊婦健診が本格的に始まります。
出生前検査は、いつまでに決めればよいですか?
NIPTは妊娠10週0日以降に受けられ、10〜12週頃が適した時期とされています。ご夫婦で話し合う時間も含めると、妊娠8〜9週頃までに一度考えてみられると余裕をもって決めていただけます。ただし、これは「受けたほうがよい」という意味ではありません。受けるかどうかはご本人・ご夫婦が決めることで、受けないという選択も同じように尊重されます。
つわりがつらいのですが、受診してもよいのでしょうか?
もちろんです。つわりは我慢しなければならないものではなく、ご相談いただける症状です。特に、水分もとれない・尿がほとんど出ない・体重が急に減ったといった場合は、早めにご相談ください。食べられるものを探す工夫や、症状に応じた対応をご一緒に考えます。
心拍が確認できませんでした。どうすればよいですか?
その時点で心拍が確認できなくても、異常とは限りません。排卵や着床のタイミングには個人差があり、週数の数え方によっては、まだ確認できる時期に達していないことがあります。多くの場合、1週間ほど間をあけて改めて確認します。不安な時間になりますが、まずは次回の確認まで、できるだけ普段どおりにお過ごしください。
まとめ:妊娠がわかったあなたへ
妊娠初期は、うれしさと不安が同時にやってくる時期です。情報はいくらでも見つかる一方で、「自分はいま何をすればいいのか」はかえって見えにくくなりがちです。
まずは最終月経の日を記録し、禁酒・禁煙をして、妊娠6〜8週頃に受診する。当面はこれだけで十分です。そのあとは、心拍の確認、母子手帳、妊婦健診と、ひとつずつ進んでいきます。出生前検査という選択肢については、時期の目安があることだけ頭の片隅に置いていただき、受けるかどうかはご夫婦でゆっくり話し合ってください。受けないという選択も、同じように尊重されるものです。
私たちレディースクリニックなみなみのスタッフ一同、妊婦さんと赤ちゃんが安心して過ごせるようお手伝いいたします。気になることがあれば、どうぞ遠慮なくご相談ください。
執筆者兼監修者プロフィール
東大産婦人科に入局後、長野県立こども病院、虎の門病院、関東労災病院、東京警察病院、東京都立豊島病院、東大病院など複数の病院勤務を経てレディースクリニックなみなみ院長に就任。
資格
- 医学博士
- 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
- FMF認定超音波医
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参考文献
- 出生前検査について(検査の種類・NIPT・羊水検査). 日本医学会 出生前検査認証制度等運営委員会. https://jams-prenatal.jp/
- 母体血を用いた出生前遺伝学的検査(NIPT)に関する指針改訂について. 日本産科婦人科学会 (2022). https://www.jsog.or.jp/medical/849/
- 食品中のカフェイン. 食品安全委員会 (2018改訂). https://www.fsc.go.jp/factsheets/index.data/factsheets_caffeine.pdf



陽性が出たその日に、慌ててお電話をくださる方はとても多いです。お気持ちはよくわかります。ただこの時期は、来ていただいても超音波でまだ何も見えないことがあります。少し待つ時間も、必要な時間だと思っています。