執筆者兼監修者プロフィール
東大産婦人科に入局後、長野県立こども病院、虎の門病院、関東労災病院、東京警察病院、東京都立豊島病院、東大病院など複数の病院勤務を経てレディースクリニックなみなみ院長に就任。
資格
- 医学博士
- 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
- FMF認定超音波医
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ドーナツ枕は、使わないことをおすすめします。
頭の形を整える効果は、はっきりした根拠がまだ乏しいのが現状です。そのうえ、とくに眠っているあいだは、枕やクッションなどのやわらかい物が顔のまわりにあると、窒息の危険があります。頭の形が気になるときは、起きている時間の過ごし方の工夫が基本です。
この記事でわかること
- ドーナツ枕を使わないほうがよい理由
- 頭の形への効果について、研究でわかっていること
- 頭の形が気になるときに、代わりにできること
- すでに使っている場合の考え方
- 相談を考えたいサイン
ドーナツ枕とは
ドーナツ枕は、まん中がくぼんだ輪の形をした赤ちゃん用の枕です。後頭部の一か所に重さがかからないようにして、頭の形を整えることをうたって売られています。頭を左右から支えて向き癖を防ぐとうたう「向き癖防止枕」も、同じ目的の商品です。
赤ちゃんの頭の骨はやわらかく、同じ場所に重さがかかり続けると、その部分が平らになりやすいのは事実です。そのため「枕で重さを分散すれば」と考えるのは自然なことです。ただ、眠っている赤ちゃんの安全という面から見ると、注意が必要な点があります。
ドーナツ枕を使わないほうがよい理由
眠っているあいだのやわらかい物は、窒息の原因になりうる
生まれて間もない赤ちゃんは、顔に物がかぶさっても、自分で顔の向きを変えたり払いのけたりすることがうまくできません。米国小児科学会は、枕などのやわらかい物を、眠っている赤ちゃんの寝床に置かないよう勧めています。乳幼児突然死症候群(SIDS)や窒息のリスクを下げるためです。
日本でも、こども家庭庁が呼びかけています。柔らかいクッションは避けて硬めで平らな布団やマットレスを使い、赤ちゃんのまわりには何も置かない、という内容です。消費者庁の2016年の発表では、2010〜2014年の5年間に、0歳の赤ちゃんの就寝中の窒息死が160件確認されています。やわらかい寝具に顔が埋まることは、その原因のひとつとして挙げられています。消費者庁も、寝ている子どもの顔の近くに、枕やタオルなど口や鼻を覆う物を置かないよう呼びかけています。
海外では、頭の形を整える枕について注意が出ています
米国食品医薬品局(FDA)は2022年11月に、頭の形を整えるとうたう赤ちゃん用の枕について注意を出しました。頭の形や左右差を整える目的や、病気の予防・治療の目的で、こうした枕を使わないように、という呼びかけです。FDAは、こうした枕で効果が示された例を把握しておらず、承認を受けていない医療機器にあたるとしています。
また米国では、赤ちゃんを寝かせたり支えたりするクッション類に、2025年5月から安全基準が義務づけられました。対象の例には「頭の位置を保つ枕」も挙がっています。クッション類全体では、2010〜2022年に少なくとも79人の赤ちゃんの死亡が報告されました。その8割以上は、生後3か月までの赤ちゃんでした。さまざまな製品を合わせた数で、ドーナツ枕によるものが何件かは示されていません。それでも、首のすわらない時期の赤ちゃんのまわりにやわらかい物を置かないことの大切さが分かります。
頭の形への効果は? 研究でわかっていること
枕で頭の形が変わるかを調べた研究は、数が多くありません。ドイツで、頭の形に変化がある生後5か月以下の赤ちゃん50人を調べた研究があります。枕を使うグループと、首のストレッチをするグループに分けて、6週間比べたものです。どちらのグループでも改善し、数字の上では枕のグループがやや大きく改善しました。ただし人数が少なく、何もしないグループとの比較もないため、枕の効果とまでは言えません。
このほかの研究は、早産の赤ちゃんの研究や、比較の対象がない小さな研究が中心です。家で眠る赤ちゃんに使ったときの安全性まで確かめた、大きな研究は見当たりません。
米国の脳神経外科の学会(Congress of Neurological Surgeons)は、2016年にガイドラインを出しています。頭の形への効果は、枕と理学療法(首のストレッチなど)ではっきりした差はない、という内容です。そのうえで、眠る場所にやわらかい物を置く危険を理由に、枕よりも理学療法を優先するよう勧めています。枕による上乗せの効果ははっきりせず、安全面の心配がある。これが、ドーナツ枕をおすすめしない理由です。
頭の形が気になるときに、代わりにできること
ご家庭でできることの基本は、次の2つです。どちらも、道具を使わずに始められます。
- 起きているあいだに、うつぶせで過ごす時間をつくる(タミータイム)。大人がそばで見ているときに行います
- いつも同じ向きにならないように、向きを整える。抱っこの向きや、話しかける方向を変えるといった工夫です
眠るときは、あおむけに寝かせて、まわりには何も置かないのが基本です。あおむけ寝は乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスクを下げるためのもので、頭の形を理由にやめるものではありません。
具体的なやり方は、グループの小児科・キッズクリニックまるまる(自由が丘)のコラムにまとめています。タミータイムの始め方と、向き癖への工夫をご覧ください。月齢ごとにできることは、赤ちゃんの頭の形の直し方|自然に治る?でも紹介しています。
すでにドーナツ枕を使っている場合は
使っている場合は、使うのをやめて、眠るときはあおむけで、まわりに何も置かずに寝かせてください。
枕をやめて頭の形が気になるときは、起きている時間の工夫に切り替えてみてください。真上から頭の写真を撮って変化を記録しておくと、相談するときにも役立ちます。
相談を考えたいサイン
次のようなときは、枕などに頼って様子を見るより、一度相談しておくと安心です。
- 頭の左右差や、後頭部の平らさがはっきりしてきた
- 首がいつも同じ方向に傾いている、反対を向かせると強く嫌がる
- 健診で頭の形について指摘された
- 耳の位置や顔の左右差が気になる
- 生まれたときから頭の形がはっきり違う、または月齢が進むほど目立ってくる
頭の骨がいちばん大きく成長するのは、生後数か月のあいだです。気になったら、生後2〜4か月ごろを目安に、かかりつけの小児科や乳幼児健診で相談してみてください。4か月を過ぎていても相談できます。健診で頭の形を指摘されたときのことは、乳児健診で頭の形を指摘されたらにまとめています。2026年11月中旬に開院するキッズクリニックまるまるでは、頭の形外来で、計測をもとに頭の形を評価します。
よくあるご質問
ドーナツ枕はやめたほうがいいですか。
はい、使わないことをおすすめします。頭の形への効果ははっきりせず、眠っているあいだは窒息の危険があるためです。頭の形のためには、起きているあいだのうつぶせ遊びや、向きを整える工夫が基本になります。
新生児にドーナツ枕は危険ですか。
使わないことをおすすめします。首がすわる前の赤ちゃんは、顔に物がかぶさっても自分で向きを変えることが難しい時期です。米国では、赤ちゃん用のクッション類に関係する死亡の8割以上が、生後3か月までの赤ちゃんでした。ドーナツ枕だけでなく、さまざまな製品を合わせた数です。とくに首がすわる前は、寝床に何も置かないようにすると安心です。
ドーナツ枕は絶壁に効果がありますか。
効果があるかどうかは、はっきりしていません。枕を使った小さな研究で改善の報告はありますが、大きな研究で効果と安全性が確かめられたものはありません。絶壁(後頭部が平らな形)が気になるときは、起きている時間に後頭部が下になる時間を減らす工夫が基本です。くわしくは、キッズクリニックまるまるの赤ちゃんの絶壁頭は治る?をご覧ください。
何か月から、いつまで使えますか。
頭の形のために、ドーナツ枕を使う必要のある時期はありません。こども家庭庁は、1歳未満の赤ちゃんが眠るときに、まわりに物を置かずシンプルに整えるよう呼びかけています。
寝かせるときに、丸めたタオルを頭の横に置くのはどうですか。
眠っているあいだは、頭を固定する物を置かないほうが安全です。こども家庭庁は、ぬいぐるみやタオルなどは窒息のリスクにつながるとしています。向き癖が気になるときは、起きているあいだに、抱っこや話しかける向きを変える工夫をしてみてください。
吐き戻しが心配で、頭を高くして寝かせたいときは。
枕やクッションで頭を高くするのは、避けたほうが安全です。米国小児科学会は、赤ちゃんの頭を高くするために、マットレスの上や下に枕などを入れないよう勧めています。頭を高くしても、吐き戻しを減らす効果はないとされています。吐き戻しが多い、体重の増えが気になるといったときは、健診や小児科で相談してみてください。
まとめ
ドーナツ枕は、使わないことをおすすめします。頭の形への効果がはっきりせず、とくに眠っているあいだは、やわらかい物による窒息の危険があるためです。頭の形が気になるときは、起きているあいだのうつぶせ遊びと、向きを整える工夫が基本です。眠るときは、あおむけで、まわりに何も置かずに寝かせます。
左右差が強い、首の傾きが気になるといったときは、生後2〜4か月ごろを目安に相談してみてください。4か月を過ぎていても相談できます。
執筆者兼監修者プロフィール
東大産婦人科に入局後、長野県立こども病院、虎の門病院、関東労災病院、東京警察病院、東京都立豊島病院、東大病院など複数の病院勤務を経てレディースクリニックなみなみ院長に就任。
資格
- 医学博士
- 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
- FMF認定超音波医
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参考文献
- Sleep-Related Infant Deaths: Updated 2022 Recommendations for Reducing Infant Deaths in the Sleep Environment. American Academy of Pediatrics (2022). https://doi.org/10.1542/peds.2022-057990
- Do Not Use Infant Head Shaping Pillows to Prevent or Treat Any Medical Condition: FDA Safety Communication. U.S. Food and Drug Administration (2022). https://content.govdelivery.com/accounts/USFDA/bulletins/3358a08
- Safety Standard for Infant Support Cushions (16 CFR part 1243). U.S. Consumer Product Safety Commission (2024). https://www.federalregister.gov/documents/2024/11/04/2024-25181/safety-standard-for-infant-support-cushions
- 赤ちゃんが安全に眠れるように ~1歳未満の赤ちゃんを育てるみなさまへ~. こども家庭庁 (2025). https://www.cfa.go.jp/policies/boshihoken/kenkou/sids
- 0歳児の就寝時の窒息死に御注意ください!. 消費者庁 (2016). https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/release/pdf/161024kouhyou_1.pdf
- A prospective randomized trial on preventative methods for positional head deformity: physiotherapy versus a positioning pillow. Wilbrand JF, et al. J Pediatr (2013). https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23312680/
- Congress of Neurological Surgeons Systematic Review and Evidence-Based Guideline for the Management of Patients With Positional Plagiocephaly: The Role of Physical Therapy. Baird LC, et al. Neurosurgery (2016). https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27776088/