執筆者兼監修者プロフィール
東大産婦人科に入局後、長野県立こども病院、虎の門病院、関東労災病院、東京警察病院、東京都立豊島病院、東大病院など複数の病院勤務を経てレディースクリニックなみなみ院長に就任。
資格
- 医学博士
- 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
- FMF認定超音波医
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出生前検査を受けようか迷っているとき、「気持ちの問題」と「お金の問題」は切り離せません。検査そのものは調べたけれど、費用の工面や税金の扱いがわからず手が止まっている——そういうご相談をしばしばいただきます。
この記事では、出生前検査(NIPT)にまつわるお金の「制度」の部分を整理します。保険がきくのか、医療費控除はどう考えればよいのか、助成はあるのか。いずれも個別の判断は当院ではなく別の窓口が行うものですので、「どこに確認すればよいか」までをセットでお伝えします。
そして、この記事でいちばんお伝えしたいのは制度の話ではありません。費用が理由で迷っている方に、「受けないという選択も、同じように尊重されます」ということです。
- 前提|出生前検査が自費とされているのはなぜか
- 医療費控除の考え方|何が対象とされ、何が対象外とされているか
- 公的な助成・補助について|自治体で異なります
- 費用が理由で迷っている方へ
- お金のことを整理するときの「確認先」一覧
- 当院でのご相談について/よくあるご質問
前提|出生前検査は自費診療とされています
まず土台になる事実から。出生前検査は、公的医療保険の対象ではなく自費診療として行われています。出生前検査認証制度(日本医学会)の説明でも、「出生前検査は自費診療で、検査料は、ご自身の負担になります」とされています。
健康保険は「病気やけがの治療」に対する仕組みです
公的医療保険は、原則として病気やけがの診療・治療に対して給付される仕組みです。そのため、正常な経過をたどる妊娠・出産は「病気の治療」にはあたらないという整理になり、妊婦健診も含めて保険の対象外とされています。
出生前検査は、そのうえでさらに「希望した人だけが受ける検査」という位置づけです。自費であることは「軽く扱われている」という意味ではなく、全員に必要な検査として設計されていないから費用の仕組みも別になっている、ということです。
妊婦健診と出生前検査は、費用の扱いが違います
| 妊婦健診 | 出生前検査(NIPTなど) | |
|---|---|---|
| 誰が受けるか | 妊娠された方が全員受ける | 希望した方だけが受ける |
| 位置づけ | 安全なお産のための基本的な検査 | 受けるかどうかをご自身で決める検査 |
| 公的医療保険 | 対象外(自費) | 対象外(自費) |
| 公費による補助 | 市町村による補助の仕組みがあります | 自費診療とされています |
| 確認先 | お住まいの市町村 | 医療機関・お住まいの自治体 |
※制度も料金も見直されることがあります。最新の内容は 料金一覧ページ と NIPTのご案内 でご確認ください。費用相場や施設による違いは NIPTの費用相場は? で解説しています。
医療費控除の考え方|「治療」が軸になります
はじめにいちばん大切なことを。医療費控除の対象になるかどうかを最終的に判断するのは、医療機関ではなく税務署です。当院を含め、医療機関が「対象になります」「なりません」と断定できる立場にはありません。ですのでここでは、国税庁が示している考え方の枠組みと、どこに確認すればよいかをお伝えします。
医療費控除とは、どういう仕組みか
医療費控除は、その年に支払った医療費が一定額を超えるとき、その分をもとに計算した金額の所得控除を受けられる制度です。国税庁は要件として「納税者が、自己または自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために支払った医療費であること」「その年の1月1日から12月31日までの間に支払った医療費であること」の2つを挙げています。保険金などで補てんされた分や出産育児一時金は、差し引いて計算する必要があるとされています。
何が対象とされ、何が原則対象外とされているか
国税庁は対象となる医療費を項目ごとに示しています。出生前検査を考えるうえで関係が深いのは次の記述です。
| 国税庁が示している内容 | 出生前検査を考えるときの意味 |
|---|---|
| 医師または歯科医師による診療または治療の対価(ただし健康診断の費用や謝礼金などは原則として含まれない) | 「治療の対価かどうか」が軸になります |
| 妊娠と診断されてからの定期検診や検査などの費用、通院費用は医療費控除の対象になります(出産に伴う費用の具体例として) | 妊婦健診にあたる部分は対象と示されています。ただし、希望した方だけが受ける出生前検査を指した記述ではありません |
| 健康診断・人間ドックの費用は疾病の治療を伴うものではないので対象とはならない。ただしその結果、重大な疾病が発見され引き続き治療を行った場合には対象に含まれる | 検査だけで終わったか、そのあと治療につながったかで扱いが変わりうる、という考え方です |
この3つを並べると、考え方の軸が「治療との結びつき」にあることが見えてきます。治療そのもの、あるいは治療に先立つ診察と同じように位置づけられるものは対象に含まれ、そうでないものは原則として含まれない、という整理です。
検査だけで終わった場合と、そのあと治療が必要になった場合
上の表の3つめが、いちばん誤解されやすい点です。国税庁の質疑応答事例には次のようにあります。
「いわゆる人間ドックその他の健康診断は疾病の治療を伴うものではないので、その人間ドック等の費用は、医療費控除の対象とはなりません。ただし、健康診断の結果、重大な疾病が発見され、引き続きその疾病の治療を行った場合には、その健康診断は、治療に先立って行われる診察と同様に考えることができますので、その健康診断のための費用も、医療費控除の対象に含まれます」
ここで示されているのは、「同じ検査でも、そのあとの経過によって扱いが変わりうる」という考え方です。ただしこれはあくまで人間ドック・健康診断について示された考え方であり、出生前検査が同じように扱われると国税庁が述べているわけではありません。
領収書を保管し、判断は所轄の税務署にご相談ください
判断が分かれうるからこそ、手元の記録だけは残しておいてください。あとから「対象になるかもしれない」となったとき、領収書がなければ動きようがありません。
- 医療機関の領収書(検査の費用・診察の費用がわかるもの)
- 通院にかかった交通費の記録——国税庁は「家計簿などに記録するなどして実際にかかった費用について明確に説明できるようにしておいてください」としています
- 同じ年に支払った、ご家族分も含めた医療費——生計を一にするご家族の分を合算する仕組みです
手続きは確定申告で行い、申告先は所轄の税務署です。領収書の内容と、検査を受けた経緯・そのあとの経過を整理したうえでご相談ください。当院では検査の内容や経過を整理してお伝えできますが、そこから先の判断は税務署の領分になります。
公的な助成・補助について|自治体によって異なります
「補助金が出ると聞いたのですが」というご質問もいただきます。ここも当院が全国の状況を把握して断定できる領域ではありません。
妊婦健診には、市町村による公費負担の仕組みがあります
妊婦健診については、市町村が公費による補助を行う仕組みがあります。国の資料でも妊婦1人につき出産までに14回程度を目安とした公費負担の状況が示されており、出生前検査認証制度も「妊婦健診は公費による補助制度があります。詳しくは、お住まいの自治体にお尋ねください」と案内しています。
ただし、これは妊婦健診についての仕組みです。出生前検査そのものは自費診療とされていますので、妊婦健診の補助とは別のものとしてお考えください。
助成の有無は、お住まいの自治体の窓口でご確認ください
自治体が独自に行っている支援は、地域によって内容が異なり、また年度ごとに見直されることがあります。当院が特定の自治体名を挙げてご案内すると、制度が変わったときに古い情報として残ってしまいます。実際にお住まいの地域で使えるかどうかは、市区町村の母子保健の担当窓口(保健センターなど。母子健康手帳を受け取った窓口が目安です)にご確認いただくのが確実です。あわせて加入されている健康保険の窓口やお勤め先の福利厚生の担当部署も確認先になります。
お問い合わせの際は、「出生前検査(NIPT)の費用について、助成や給付の制度があるか」と具体的にお尋ねいただくと話が早いかと思います。
費用が理由で迷っている方へ
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。
受けないという選択も、同じように尊重されます
出生前検査は、受けたほうがよい検査ではありません。出生前検査認証制度の説明でも、妊婦健診の検査が「すべての人に受けていただきたい基本的な検査」とされているのに対し、出生前検査は「おひとりおひとりが、情報やサポートを受けながら、受けるかどうかを決める検査」と、はっきり書き分けられています。
ですので、「費用の都合で受けなかった」という結論も、「よく考えて受けないことにした」という結論も、選択として何ら変わりません。受けないことを選んだ方が、そのことで責められたり、準備が足りないと見なされたりする筋合いはありません。認証施設として検査をご案内している立場から、はっきり申し上げておきます。
「お金がないから受けられない」とご自身を責めてしまう方がいらっしゃいますが、費用は、受けるかどうかを決めるためのまっとうな検討材料のひとつです。限られた中で何を優先するかを考えるのは、後ろめたいことではありません。
費用のことは、相談のときに率直に話していただいて構いません
診察室で費用の話をするのは気が引ける、と感じる方は少なくありません。けれど費用は判断の材料のひとつですから、それを外して相談しても話がかみ合いません。
- 「費用を考えると迷っている」——前提が共有できると、お伝えする内容も変わります
- 「受けないと決めているが、話は聞いておきたい」——受けることが前提のご案内はしません
- 「どの検査までなら現実的か」——時期や目的によって選択肢が変わりますので、整理してご説明します
受けるかどうかそのものについては NIPTのメリット・デメリット で、受けられる時期については NIPTを受ける時期 でくわしく取り上げています。
結果が出たあとの費用まで含めて考えておくと、迷いが減ります
見落とされやすいのが、「陽性だった場合、そのあとにも費用がかかりうる」という点です。NIPTは非確定的検査ですので、陽性となれば確定的検査である羊水検査を受けるかどうかを考えることになります。
当院では、NIPTの結果が陽性となり羊水検査が必要になった場合、その検査費用を当院が負担する仕組みを設けています。費用を理由に確定検査をあきらめてほしくないという考えによるものです。なお羊水検査そのものは当院では実施しておらず、基幹施設である日本赤十字社医療センターと連携して受けていただきます。手配も当院で行います。
※羊水検査については 羊水検査とは、陽性だった場合の流れは NIPT陽性と言われたら をご覧ください。
お金のことを整理するときの「確認先」一覧
ここまでの内容を「何を、どこに聞けばよいか」という形にまとめます。それぞれ担当が違いますので、一か所に聞こうとすると答えが出ません。
| 知りたいこと | 確認先 | 備考 |
|---|---|---|
| 検査の料金・支払い方法 | 受診される医療機関 | 当院は 料金一覧ページ に掲載(改定されることがあります) |
| 医療費控除の対象になるか | 所轄の税務署 | 医療機関は判断できません |
| 自治体の助成があるか | 市区町村の母子保健担当窓口 | 地域・年度によって異なります |
| 健康保険からの給付があるか | 加入されている健康保険の窓口 | 付加給付は保険者ごとに異なります |
| 検査の内容・受けるかどうか | 受診される医療機関 | 当院は検査前のご相談のみでも承ります |
まず料金を確認し、次に助成の有無を自治体に確認し、税金の扱いは支払いが終わってから税務署に確認する——という順番が現実的です。医療費控除は年が明けてからの手続きですので、検査の前に結論を出そうとしなくて大丈夫です。
当院でのご相談について
レディースクリニックなみなみは、出生前検査認証制度の認証施設です。費用のご相談を含めて、次のような体制でご案内しています。
- 産婦人科専門医が、検査の前後の説明まで一貫して担当します
- 遺伝カウンセリングに対応しています——受けるかどうかの段階からご相談いただけます
- 基幹施設である日本赤十字社医療センターと連携しています
- 陽性となった場合の羊水検査は、当院が手配し、費用も当院が全額負担します——羊水検査は当院では実施しておらず、日本赤十字社医療センターと連携します
当院のNIPTは採血のみの非確定的検査で、妊娠10週0日から受けていただけます(推奨は12〜13週)。目黒駅から徒歩4分、土日も診療しており、WEB予約は24時間受け付けています。紹介状は不要です。なお当院では、出生前の検査としてまずNIPTをご案内する方針をとっており、コンバインド検査を基本的にはおすすめしていないのも、この方針によるものです。
「まだ受けると決めたわけではないけれど、費用も含めて話を聞いてみたい」というご相談を歓迎しています。検査内容・受けられる時期・当院の体制は NIPTのご案内 に、料金は 料金一覧ページ にまとめています(改定されることがありますので最新の内容は料金ページでご確認ください)。
よくあるご質問
NIPTに健康保険は使えますか?
出生前検査は自費診療として行われています。出生前検査認証制度の説明でも「出生前検査は自費診療で、検査料は、ご自身の負担になります」とされています。公的医療保険が原則として病気やけがの診療・治療に対する仕組みであることによるものです。実際の取り扱いは受診先でご確認ください。
NIPTの費用は医療費控除の対象になりますか?
判断するのは税務署ですので、医療機関の立場から断定することはできません。国税庁は対象となる医療費を「医師または歯科医師による診療または治療の対価」とし、健康診断の費用などは原則として含まれないとする一方、健康診断についても「その結果、重大な疾病が発見され、引き続きその疾病の治療を行った場合には、治療に先立って行われる診察と同様に考えることができる」という考え方を示しています。領収書と経過を整理したうえで、所轄の税務署にご相談ください。
医療費控除を申告するとき、何を用意すればよいですか?
まず医療機関の領収書を保管してください。通院の交通費についても、国税庁は「家計簿などに記録するなどして実際にかかった費用について明確に説明できるようにしておいてください」としています。生計を一にするご家族の分を合算する仕組みですので、同じ年のご家族分もあわせて整理を。申告先は所轄の税務署です。
自治体からNIPTの費用の補助は受けられますか?
自治体が独自に行っている支援は地域・年度によって異なりますので、当院が全国の状況を把握して個別にお答えすることはできません。お住まいの市区町村の母子保健の担当窓口(保健センターなど)に「出生前検査の費用について助成の制度があるか」とお尋ねください。健康保険の窓口やお勤め先の福利厚生の担当部署も確認先です。
妊婦健診の公費負担は、出生前検査にも使えますか?
妊婦健診については市町村による公費補助の仕組みがありますが、これは妊婦健診についての制度です。出生前検査認証制度の説明では、出生前検査は自費診療で検査料はご自身の負担になるとされていますので、妊婦健診の補助とは別のものとお考えください。補助の内容はお住まいの自治体にお尋ねください。
費用が理由で迷っています。受けないという選択でもよいのでしょうか?
はい。出生前検査認証制度の説明でも、妊婦健診の検査が全員に受けていただきたい基本的な検査とされているのに対し、出生前検査は「おひとりおひとりが、情報やサポートを受けながら、受けるかどうかを決める検査」と書き分けられています。受けないという結論も、同じように尊重されます。
まとめ
- 出生前検査は自費診療とされています。公的医療保険が原則として病気やけがの治療に対する仕組みであることによるもので、妊婦健診も含めて保険の対象外です
- 医療費控除について国税庁は、対象となる医療費を「医師または歯科医師による診療または治療の対価」とし健康診断の費用などは原則として含まれないとする一方、健康診断でもその結果として重大な疾病が発見され引き続き治療を行った場合には対象に含まれるという考え方を示しています
- 対象になるかどうかを判断するのは税務署です。領収書と経過を整理して所轄の税務署にご相談ください
- 自治体の助成は地域・年度によって異なります。市区町村の母子保健の窓口、健康保険の窓口、お勤め先の福利厚生の担当にご確認ください
- 受けないという選択も、同じように尊重されます。出生前検査は「受けたほうがよい検査」ではなく、受けるかどうかをご自身で決める検査です
- 費用のことは、相談のときに率直にお話しいただいて構いません
レディースクリニックなみなみは出生前検査認証制度の認証施設として、検査の前のご説明から結果のお伝えまで、産婦人科専門医が一貫して対応しています。「受けるかどうかも含めて、まだ決めていない」という段階でのご相談も歓迎しています。どうぞお気軽にお声がけください。
執筆者兼監修者プロフィール
東大産婦人科に入局後、長野県立こども病院、虎の門病院、関東労災病院、東京警察病院、東京都立豊島病院、東大病院など複数の病院勤務を経てレディースクリニックなみなみ院長に就任。
資格
- 医学博士
- 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
- FMF認定超音波医
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参考文献
- No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除). 国税庁. https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1120.htm
- No.1122 医療費控除の対象となる医療費. 国税庁. https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1122.htm
- No.1124 医療費控除の対象となる出産費用の具体例. 国税庁. https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1124.htm
- 質疑応答事例「人間ドックの費用」(所得税基本通達73-4). 国税庁. https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shotoku/05/09.htm
- お腹の赤ちゃんの検査の種類. 日本医学会 出生前検査認証制度等運営委員会. https://jams-prenatal.jp/testing/



ここで「では出生前検査はどちらなのか」と、はっきりした答えを期待されるかと思います。けれど、そこを当院が断定すると、かえってご迷惑をおかけすることになります。税務の判断は、そのあとどうなったかを含めた個別の事情で変わりうるからです。わからないことを「わからない」とお伝えするのも、説明の一部だと考えています。