執筆者兼監修者プロフィール
東大産婦人科に入局後、長野県立こども病院、虎の門病院、関東労災病院、東京警察病院、東京都立豊島病院、東大病院など複数の病院勤務を経てレディースクリニックなみなみ院長に就任。
資格
- 医学博士
- 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
- FMF認定超音波医
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NIPT(新型出生前診断)で「陽性」と告げられても、それはお腹の赤ちゃんに染色体の変化が「確定した」という意味ではありません。NIPTは精度の高い検査ですが、あくまで「可能性を調べるスクリーニング(非確定的)検査」です。陽性の結果は「確定診断のための次の検査を検討する段階に来た」というサインであり、結果がそのまま診断になるわけではありません。突然のことで頭が真っ白になってしまう方も多いですが、まずは落ち着いて、正しい順序で情報を整理していきましょう。
この記事では、NIPTで陽性が出たあとに知っておきたいことを、産婦人科の視点でやさしく整理します。
- NIPTの「陽性」が意味すること(非確定検査とは)
- 「陽性的中率(PPV)」という大切な考え方
- 確定診断のための検査(羊水検査・絨毛検査)の流れ
- 遺伝カウンセリングという相談先について
- 結果を受け止める時間と、心の支えになるもの
- よくあるご質問
NIPTの「陽性」とは|まず知ってほしいこと
NIPT(非侵襲性出生前遺伝学的検査)は、妊婦さんの血液中に含まれる、胎盤由来のDNA断片を分析して、赤ちゃんに21トリソミー(ダウン症候群)・18トリソミー・13トリソミーといった染色体数の変化がある可能性を調べる検査です。採血だけで受けられ、流産のリスクがない点が大きな特長です。
一方で、NIPTは「確定診断」ではなく「スクリーニング(ふるい分け)」に位置づけられます。陽性という結果は「その染色体の変化がある可能性が高い」ことを示すもので、確定させるためには別の検査が必要です。だからこそ、陽性=そうと決まった、ではない、という点をまず知っておいていただきたいのです。
「陽性的中率(PPV)」という考え方
陽性の結果を理解するうえで欠かせないのが陽性的中率(PPV:Positive Predictive Value)という考え方です。これは「陽性と出た人のうち、実際にその染色体の変化があった人の割合」を表します。NIPTの「感度(見つける力)」は非常に高い一方、PPVは検査を受ける方の状況によって変わります。
- 年齢:一般に、年齢が上がるほど染色体変化のもともとの頻度が高くなり、PPVも高くなる傾向があります。
- 対象となる疾患:21トリソミー(ダウン症候群)は比較的PPVが高く、18トリソミー・13トリソミーでは相対的に低くなる傾向があるとされています。
つまり、同じ「陽性」でも、背景によって「実際にその変化がある可能性」は一律ではありません。具体的な数値の解釈は個々の状況で異なるため、後述する遺伝カウンセリングで、ご自身のケースに即した説明を受けることがとても大切です。
陽性的中率は、年齢と疾患でどれくらい変わるのか
ここまで「陽性的中率は状況によって変わります」とお伝えしてきました。この項では、その「どれくらい変わるのか」を実際の数字でご覧いただきます。いま数字を見るのがつらいと感じられる方は、この項を飛ばしていただいてかまいません。先に結論だけお伝えすると、陽性という結果のなかには、実際にはその染色体の変化がなかった方(偽陽性)が一定の割合で含まれます。
出生前検査認証制度が示している数字
出生前検査認証制度(出生前検査認証制度等運営委員会)は、国内で実施されたNIPTの実測データをもとにした、年齢別・疾患別の陽性的中率を公表しています。同制度の説明では「その正確さは年齢によって変わり、妊婦さんが若いと下がる傾向があります。また、ダウン症に比べると、18トリソミー、13トリソミーの判定は正確さが下がります」とされています。
同制度は、具体的な例として次のように説明しています。44歳の方が検査を受けてダウン症が陽性だった場合、99%くらいの方は本当にダウン症がある一方で、25歳の方が13トリソミーが陽性だと言われた場合、その方に本当に13トリソミーがある確率は2割を切る、というものです。同じ「陽性」という2文字でも、背景によって意味する重さがここまで違うということです。
| 妊婦さんの年齢 | ダウン症(21トリソミー) | 18トリソミー | 13トリソミー |
|---|---|---|---|
| 25 | 79.32 | 48.14 | 16.70 |
| 26 | 80.13 | 49.40 | 17.41 |
| 27 | 81.12 | 51.00 | 18.35 |
| 28 | 82.33 | 53.01 | 19.58 |
| 29 | 83.72 | 55.49 | 21.19 |
| 30 | 85.28 | 58.40 | 23.26 |
| 31 | 86.98 | 61.80 | 25.88 |
| 32 | 88.74 | 65.59 | 29.15 |
| 33 | 90.45 | 69.65 | 33.12 |
| 34 | 92.11 | 73.82 | 37.83 |
| 35 | 93.58 | 77.92 | 43.23 |
| 36 | 94.89 | 81.78 | 49.17 |
| 37 | 95.99 | 85.24 | 55.47 |
| 38 | 96.91 | 88.28 | 61.85 |
| 39 | 97.62 | 90.80 | 68.04 |
| 40 | 98.20 | 92.88 | 73.76 |
| 41 | 98.64 | 94.54 | 78.89 |
| 42 | 98.99 | 95.86 | 83.89 |
| 43 | 99.25 | 96.87 | 86.96 |
| 44 | 99.43 | 97.67 | 89.96 |
同制度は、この表について「NIPTコンソーシアムの実測によって得られた感度・特異度と過去に報告された年齢別罹患率を用いて算出した推定値です」と注記しています。実測そのものではなく推定値であり、検査を受けた施設や検査方法によっても変わり得るため、目安としてご覧いただくものです。
この表を、どう読めばよいか
- 表の数字は「陽性と出た方のうち、実際にその染色体の変化があった方の割合」です。100からこの数字を引いた残りが、陽性でも実際には変化がなかった方(偽陽性)にあたります。
- 数字が高い=確定、ではありません。どの年齢・どの疾患でも100%にはならず、はっきりさせるためには確定的検査が必要です。
- 数字が低い=心配いらない、でもありません。もともとの頻度と比べれば、可能性はずっと高い状態にあります。だからこそ次の相談が必要になります。
そしてもっとも大切なのは、この表は集団としての割合であって、いまお腹にいる赤ちゃんが「どちらなのか」を言い当てるものではないということです。ご自身の結果をどう読むかは、年齢・対象となった疾患・受けた検査の内容によって変わります。数字の解釈は、必ず担当の医師や遺伝カウンセリングでご確認ください。
なぜ、若いほど数字が下がるのか
「若い方ほど的中率が下がる」と聞くと、若い方の検査は精度が低いのだろうか、と感じられるかもしれません。そうではありません。検査そのものの性能が年齢で変わるわけではなく、変わっているのは「もともとその染色体の変化がどのくらいの頻度で起こるか」という背景のほうだと考えられています。同制度も、この表を算出するにあたって年齢別の罹患率を用いたと注記しています。
もともとの頻度が低い状況では、同じ精度の検査でも、陽性という結果のなかに偽陽性が占める割合が相対的に高くなります。18トリソミー・13トリソミーの数字がダウン症(21トリソミー)より低いことにも、同じ事情が関わると考えられています。「検査を間違えられた」という話ではない、という点はぜひ知っておいていただきたいところです。
※ 反対に「陰性」という結果の読み方は、陽性とは性質がまったく異なります。くわしくは NIPTの陰性とは|偽陰性と「陰性だったのに」 をご覧ください。
確定診断のための検査|羊水検査・絨毛検査
NIPTで陽性が出たあと、確定診断を希望される場合に行われるのが羊水検査や絨毛検査です。これらは赤ちゃんやその周囲の細胞を直接調べる「確定的検査」で、染色体の状態を確定させることができます。
- 羊水検査:おおむね妊娠15〜16週以降に、お腹から細い針で羊水を採取して調べます。
- 絨毛検査:羊水検査より早い時期(おおむね妊娠11週前後〜)に行える施設もあります。
いずれもごくわずかながら流産などのリスクが伴うため、受けるかどうかは「結果をどう活かしたいか」というお気持ちも含めて、十分な説明のうえで決めていきます。受けない、という選択も尊重されます。検査の適応や時期は施設や状況により異なるため、担当の医師にご確認ください。
遺伝カウンセリングという相談先
陽性という結果に向き合うとき、心強い支えになるのが遺伝カウンセリングです。臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーが、検査結果の意味、次の選択肢、それぞれのメリットや負担、利用できる支援などを、中立的な立場でていねいに説明します。
「何を聞けばいいかわからない」という状態で大丈夫です。わからないこと・不安なこと・迷っていることを、そのまま言葉にして相談できる場所です。ご夫婦・パートナーと一緒に受けることもできます。
結果を受け止める時間と、心の支え
陽性という言葉に、強い不安や孤独を感じるのは自然なことです。どんな選択をしても、それはご本人やご家族が大切に考えた末の選択であり、誰かに責められるものではありません。情報を整理する時間、気持ちを言葉にする時間を、どうかご自身に許してあげてください。
一人で抱え込まず、パートナーや、医療者、遺伝カウンセリングなど、頼れる人とつながりながら進めていきましょう。当院でも、ご不安なお気持ちに寄り添いながら、必要な情報と次の一歩をご一緒に整理していきます。
これからのことを、どの順番で考えていけばよいか
陽性という結果を受け取ったあと、多くの方が「すぐに何かを決めなければいけない」と感じられます。けれど、いますぐ決めなければならないことは、実はそれほど多くありません。順番に整理していきましょう。
今日のうちにできること
- 結果用紙を手元に置き、どの染色体についての陽性なのかを確認する(21トリソミー・18トリソミー・13トリソミーのどれか)。前の項でご覧いただいたとおり、疾患によって意味する確からしさが違います
- 受けた検査が何を対象にしていたのかを確認する。結果用紙や説明書に記載されています
- 聞きたいこと・不安なことを、思いつくまま書き出しておく。整理されていなくてかまいません
- ひとりで抱えず、パートナーやご家族と共有する。言葉にできる範囲で十分です
これだけでも、次に相談の場に立ったときのやりとりがずいぶん進みます。逆に言えば、今日必要なのはこのくらいまでです。
今日決めなくてよいこと
確定的検査を受けるかどうか、その結果をどう受け止めるか——これらは、今日この場で答えを出さなければならないことではありません。受けないという選択も、同じように尊重されます。「決められない」「気持ちが定まらない」という状態のまま相談していただいて大丈夫です。決め方そのものを一緒に考える場が、前の項でご紹介した遺伝カウンセリングです。
※ 確定的検査の内容については 羊水検査とは|わかること・リスク・費用を解説、検査を受けるかどうかの考え方については NIPTのメリット・デメリット でくわしく取り上げています。
当院でのご相談について
当院は出生前検査認証制度の認証施設です。産婦人科専門医が、検査の前の説明から結果をお伝えしたあとのご相談まで一貫して対応し、遺伝カウンセリングにも対応しています。確定的検査である羊水検査は当院では実施しておらず、必要な場合は日本赤十字社医療センターへ手配する協力体制をとっています。
NIPTは採血のみで受けていただけ、妊娠10週0日から実施しています(推奨は12〜13週です)。目黒駅から徒歩4分、土日も診療しており、紹介状は不要です。Webからは24時間ご予約いただけます。診療内容と費用は NIPT(出生前検査)のページ と 料金表 でご案内しています。
よくある質問(FAQ)
NIPTで陽性なら、赤ちゃんは必ずその病気なのですか?
いいえ。NIPTは非確定的なスクリーニング検査で、陽性は可能性が高いことを示します。確定には羊水検査などの確定的検査が必要です。
陽性的中率(PPV)はどのくらいですか?
年齢や対象疾患によって変わります。21トリソミー(ダウン症候群)は比較的高く、18トリソミー・13トリソミーでは相対的に低い傾向があります。認証施設のNIPTが対象としているのは、この3つの染色体です。
確定検査は必ず受けないといけませんか?
いいえ。受ける・受けないはご本人の意思で選べます。受けない選択も尊重されます。
確定検査にはリスクがありますか?
羊水検査・絨毛検査はごくわずかながら流産などのリスクが伴います。時期や適応は施設・状況により異なります。
誰に相談すればよいですか?
遺伝カウンセリング(臨床遺伝専門医・認定遺伝カウンセラー)が中立的に説明します。パートナーと一緒に受けることもできます。
結果が出るまで不安でたまりません。
一人で抱えず、医療者や遺伝カウンセリング、身近な人とつながってください。当院でもお気持ちに寄り添いながら整理します。
NIPTの結果はいつ、どのように伝えられますか?
出生前検査認証制度の説明では、採血から検査結果を受け取るまでの日数は1〜2週間とされています。結果は、対象となるそれぞれの病気ごとに「陽性」「陰性」「判定保留」のいずれかで示されます。認証施設では、結果をお伝えするところで終わりにせず、そのあとのご相談までを含めて対応することになっています。結果用紙は捨てずに手元に置き、どの染色体についての結果なのかをご確認ください。
35歳でダウン症が陽性でした。実際にその可能性はどのくらいですか?
出生前検査認証制度が公表している推定値では、35歳の方でダウン症(21トリソミー)が陽性だった場合の陽性的中率は93.58%とされています。裏を返すと、陽性でも実際には変化がなかった方(偽陽性)が残りにあたります。ただしこれは集団としての割合であり、ご自身の赤ちゃんについて確定したものではありません。はっきりさせるためには確定的検査が必要です。数字の受け止め方も含めて、遺伝カウンセリングでご相談いただけます。
若いと陽性的中率が下がるのは、検査の精度が低いということですか?
いいえ、検査そのものの性能が年齢で変わるわけではありません。出生前検査認証制度の説明では「その正確さは年齢によって変わり、妊婦さんが若いと下がる傾向があります」とされていますが、これは、もともとその染色体の変化が起こる頻度が年齢によって違うことを反映していると考えられています。もともとの頻度が低い状況では、陽性という結果に偽陽性が占める割合が相対的に高くなります。検査に誤りがあったという意味ではありません。
執筆者兼監修者プロフィール
東大産婦人科に入局後、長野県立こども病院、虎の門病院、関東労災病院、東京警察病院、東京都立豊島病院、東大病院など複数の病院勤務を経てレディースクリニックなみなみ院長に就任。
資格
- 医学博士
- 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
- FMF認定超音波医
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参考文献
- NIPT(非侵襲性出生前遺伝学的検査)とは(陽性的中率の年齢別データを含む). 日本医学会 出生前検査認証制度等運営委員会. https://jams-prenatal.jp/testing/nipt/
- お腹の赤ちゃんの検査の種類. 日本医学会 出生前検査認証制度等運営委員会. https://jams-prenatal.jp/testing/
- 羊水検査とは. 日本医学会 出生前検査認証制度等運営委員会. https://jams-prenatal.jp/testing/amniocentesis/
- 産婦人科診療ガイドライン 産科編 2023. 日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会 (2023). https://minds.jcqhc.or.jp/summary/c00801/
- 母体血を用いた出生前遺伝学的検査(NIPT)に関する指針改訂について. 日本産科婦人科学会 (2022). https://www.jsog.or.jp/medical/849/



数字が高くても、低くても、いまわかっているのは「可能性の高さ」までです。あなたの赤ちゃんについて、確定したことはまだ何もありません。いまはそこだけ持っていただければ十分です。