妊娠するための積極的な治療だけでなく、安全な妊娠・出産を見据えた計画的な管理アドバイスもおこないます。
不妊症とは
夫婦が定期的に性交渉を持ちながら、避妊手段を用いずに1年以上妊娠しない状態を指します。これは、妊娠するための適切な条件が整っているにもかかわらず、妊娠しない状態を意味します。
妊娠の成り立ちについて妊娠しづらいことを検証するためには妊娠の成り立ちについて知っておく必要があります。
妊娠の成り立ちについて
妊娠はこの図のように、射精された精子が子宮の中を泳いで、卵管の先まで到達し排卵した卵と受精します。受精卵は卵管の中を通って子宮内膜に着床し、妊娠が成立します。これらの過程のどの部分が障害されても不妊となります。
不妊の原因
女性側の原因
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排卵因子
ホルモンバランスの乱れなどによりうまく排卵できない場合。 -
卵管因子
卵管の閉塞・損傷で精子が通過できない場合。 -
頸管因子 -
粘液の分泌が少なく、精子が通過できない場合。 -
子宮因子
子宮奇形や子宮筋腫などで着床が阻害されることがあります。 -
加齢
卵子の数は年齢とともに減っていくので年齢とともに妊よう能(妊娠のしやすさ)は低下します。残っている卵子の数を表す値がAMH(抗ミュラー管ホルモン)で、卵巣予備能の指標となります。
男性側の原因
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精子自体の問題
精子の数や運動性、形状に異常がある場合。 -
精道の閉塞
精子が体外に出る経路に障害がある場合。 -
性機能障害
勃起障害や腟内射精障害があり性交渉が困難な場合。 -
加齢
男性もゆっくりですが、年齢とともに精子の質は低下します。
不妊の検査について
月経周期の中で適切な検査時期が存在します。
月経開始日をDay1とし、Day1から数えて何日目に検査を行う必要があるのかグラフを参照ください。
血液検査
- ホルモン基礎値 (Day3〜5): 女性ホルモンの基礎分泌を測定し、卵巣機能を確認します。
- 黄体機能検査(排卵後 Day20頃):黄体形成に問題ないか排卵後にプロゲステロン値を確認します。
- 甲状腺機能(いつでも):甲状腺の病気があると妊娠しづらいことがあります。
- 血糖値 (いつでも):糖尿病があると妊娠しづらいことがあります。
- クラミジア抗体検査(いつでも):クラミジア抗体が陽性の場合には、卵管機能が落ちていて妊娠しづらくなっている可能性があります。
- AMH(いつでも):卵巣に残っている卵子の数を表す値です。卵巣の予備能の指標となります。
超音波(経腟)
- 子宮筋腫や子宮腺筋症、子宮内膜ポリープ、卵巣のう腫など治療必要な疾患がないか調べます。
- 卵胞発育確認 (排卵前):育っている卵胞があるか確認します。
- 排卵確認(排卵後):卵胞がきちんと排卵したかどうかを確認します。
その他
- 精子の動きや形、数を確認します。日程の制約がありますが、当院でも行えます。
- 子宮卵管造影(月経終了後Day10頃):子宮の形態異常がないか、両方の卵管はきちんと通過しているか、造影剤を注入してレントゲン撮影します。
これだけの不妊のスクリーニング検査を行っても、原因がわからないことがあります。原因不明の不妊症であったカップルは、全体の10-30%程度存在すると言われています。
不妊の治療について
治療の必要なものが見つかった場合は、それらを治療し妊娠率を向上させます。
それ以外の、不妊の原因がよくわからないカップルは、タイミング法→排卵誘発薬を用いたタイミング法→人工授精→体外受精というように、数周期で治療をステップアップさせていきます。
タイミング指導
排卵時期を見極め、性交時期を指導する方法です。排卵の2日前が最も妊娠しやすいと言われています。卵胞の大きさを見て排卵日を予測するため、排卵時期周辺は来院回数が増えます。
排卵誘発薬を用いたタイミング指導
薬を使って卵胞を育て、排卵を促し、性交時期を指導します。排卵を促す薬を使う以外は、タイミング法とやり方は同じです。
タイミング法は年齢や検査結果、その方の希望により、何周期行うか決めますが、大体3-4周期行って次に進むことが多いです。当院の場合、人工授精以降は不妊専門のクリニックをご紹介します。
当院での不妊治療は、
- 不妊の精査を行うことができます(一部他のクリニックをご紹介も)。
- 自然周期もしくは排卵誘発剤を用いたタイミング指導を行うことができます。
- 周産期専門医が対応するからこそ、安全な妊娠・出産を見据えた計画的な管理アドバイスをおこないます(プレコンセプションケア)。
よくあるご質問
タイミング法ではどれくらいの妊娠率ですか?
一般的に、不妊症ではないカップルのタイミング法での妊娠率は1周期で15-18%程度と言われています。一方で、不妊症の方は5%程度と言われています。
忙しくてあまりクリニックに行けません。
自宅でも行える方法を提案しながら、なるべくクリニックに来なくても良いような方法を見つけていきます。
夫も一緒に相談できますか?
カップルで受診できますので、ぜひ一緒にいらしてください。
不妊専門クリニックを紹介してもらえますか?
患者様のお住まいや仕事を考慮しながら最適なクリニックをご紹介します。
原因は女性側が多いように思われますが、実は女性側の要因と男性側の要因は1:1程度とされています。