月経トラブルは無理せず減らしましょう
快適な生活のため、産婦人科医の力も借りて。
初経がきてから閉経まで、約40年の間女性はずっと月経があります。
その間に女性ホルモン(エストロゲン)が上がったり下がったり、ダイナミックな変化をきたし、それにより各時期にさまざまな体調の変化を感じます。
この表は女性の一生の大きな流れを表していますが、このダイナミックな変化が1ヶ月の間にも毎月起きています。
正常な月経とは
女性の月経周期は個人差が大きいですが、28〜30日サイクルで女性ホルモンであるエストロゲンとプロゲステロンが上がったり下がったりして、月経をおこします。この視床下部〜下垂体〜卵巣の流れでエストロゲンとプロゲステロンの分泌が調整され、子宮内膜の厚みを変化させて月経を周期的に起こします。このいずれかに異常が見られると、女性ホルモンのバランスが乱れ月経異常を起こします。
月経不順とは
月経不順は、正常な月経の定義から外れた全ての状態を指します。
- 周期の異常
- 量の異常
- 期間の異常
-
無月経
原発性無月経:満18歳を迎えても初経が来ない状態です。
続発性無月経:それまであった月経が3ヶ月以上停止している状態を指します。続発性無月経の中でも、ホルモンの分泌状況により2つに分けられます。
第1度無月経:プロゲステロンのみ出ていない
第2度無月経:エストロゲンもプロゲステロンも出ていない
月経不順の検査
月経量が多い方の中には、子宮筋腫や子宮内膜症が隠れている場合もあるのでそれらを鑑別できるような検査も行います。
また、原発性無月経の場合はMRIや染色体検査を追加することがあります。
問診
- 身長、体重、急激な体重の変化の有無
- 家族歴
- 生活環境の確認(精神状況、摂食状況、激しい運動の有無、内服薬、乳汁分泌の有無)
- 生活環境の確認(精神状況、摂食状況、激しい運動の有無)
- 内服薬
- 乳汁分泌の有無
↓
婦人科的診察
- 内診
- 経腟エコー(経直腸超音波もしくは経腹超音波)
- 子宮頸がん・体がん検診
↓
血液検査
- ホルモン検査(女性ホルモン系、甲状腺ホルモン系)
- 血糖検査
月経不順の原因と対応
いずれも原因は、ホルモンバランスの乱れによるものが大きいと考えます。
ホルモンバランスをきたしている原因としては、
- 不規則な生活
- ストレス
- 肥満
- 過度なダイエット(体重の急激な減少あるいは急激な増加)
- 強度の強い運動を続けている(スポーツ選手など)
が考えられます。しかしながら、上記のどれも当てはまらないけど月経が乱れるという方も中にはいます。全てが病的というわけではなくその人自身の体質ということもあります。初めて生理がきてから、ずっと生理の周期が長い・短いという方もいます。医学的な介入が必要かどうかは都度判断します。
月経不順は慌てる必要はありませんので、以下のような対応をご検討ください。
月経不順を認めたら
1〜2周期様子をみても問題ありません。しかし、医師の判断が早めに欲しいようであればぜひ相談にいらしてください。
ただし、以下の方は早めの受診が良いと考えます。
- 無月経と思われる方(特に18歳まで一度も月経がきていない原発性無月経と考えられる方)
- 月経不順が生活に支障を与えている
- 貧血がある
- 妊娠を希望している
無月経が続く場合は妊娠の可能性もあります!月経があると思ってもそれは妊娠中の出血かもしれません。月経がいつもと違うな、と思った場合は妊娠検査薬を使ってみるのも一つですよ。
月経不順の治療
非薬物療法
適切な食事と運動、適正体重指導、ストレスの軽減など。
薬物療法
年齢や生活環境を考慮し、その方にとってベストな治療法を選択します。妊娠希望の有無によっても治療法の選択が変わります。
- 周期的な黄体ホルモンの投与
- 周期的な卵胞ホルモンと・黄体ホルモンの投与
- 低用量ピル
- 排卵誘発剤の投与(妊娠を希望している方に対して)
- 漢方薬
治療の基本は月経不順の原因となるものを取り除くことです。
子宮筋腫などが原因であれば手術で切除したり、体重の急激な減少が原因なのであれば体重を増やす努力をします。その上で、月経がきちんとくるような薬物療法を行うことが良いでしょう。
過多月経とは
基準よりも経血の量が多いことを言いますが、自分の経血の量が多いのか少ないのか他と比べていないのでよくわからないですよね?
下記に当てはまる場合は、過多月経である可能性があります。
これが当てはまれば過多月経かも!?
- 多い日用のナプキンが1時間であっという間にいっぱいになる
- 多い日用のナプキンをしていても漏れることがある
- 経血にレバーのような塊が混じる
- 検診で貧血を指摘された
特に、女性の貧血の原因の多くは月経によるものだと言われています。貧血をきたすほどの月経量である場合は、治療介入の必要があると考えます。
過多月経の検査
過多月経は子宮筋腫などの原因がある器質性過多月経と、特に疾患がなくても月経量が多くなる機能性過多月経の2種類に分けられます。さらには、稀ながら血液の病気などで出血しやすくなり、月経量が多くなることも考えられます。それらを見極めるために以下の検査を行います。
問診
- 過去の検診結果確認(貧血項目、胃カメラ等)
- 経血量が多いことが日常生活にどのような影響を及ぼしているか
↓
婦人科的診察
- 経腟エコー(子宮筋腫や子宮腺筋症、ポリープなどの有無確認)
↓
血液検査
- 貧血や血小板など
- 凝固能(血液の固まりやすさを見る)
過多月経の治療
- 原疾患の治療
- 低用量ピル
- 子宮内黄体ホルモン放出システム(ミレーナ®️)
- 鉄剤内服
- 輸血
子宮筋腫や子宮腺筋症、ポリープなどにより経血量が多くなっているのであれば、それらを治療します。特に何も疾患が見つからない場合は、経血量を減らすためにピルの内服や子宮内黄体ホルモン放出システム(ミレーナ®️)を挿入します。貧血をきたしている場合は貧血自体の治療も行います。過多月経により輸血を必要とする方もいらっしゃるので、自分は月経量が多いのかもと思う場合は一度採血をして貧血の有無を確認してもいいかもしれません。過多月経は自覚されていない方も多いため、会社の検診で貧血を指摘された場合は一度産婦人科を受診するようにしてください。
月経困難症とは
月経困難症は、月経期間中の体調不良を指します。多くの女性は月経時に軽度の不快感や痛みを経験することがありますが、月経困難症とはそれが日常生活に支障をきたすほどの状態となることです。
月経困難症の代表的な症状は以下になります。
- 腹痛、腰痛
- 頭痛やめまい
- 吐き気や下痢
- 乳房の張りや痛み
- 気分の変動
子宮内膜症が原因となって月経困難症が起こる場合もあります。
月経困難症の検査
問診
- 身長、体重
- 排便痛・性交痛・慢性骨盤痛の有無
↓
婦人科的診察
- 内診(骨盤の奥の方に痛みがないか確認)
- 経腟エコー(子宮内膜症、卵巣チョコレートのう嚢腫などの確認)
子宮内膜症が原因となって月経困難症が起こる場合もあるため、子宮内膜症を診断するための検査が必要です。問診で排便痛や性交痛がないかどうか、内診で骨盤底に痛みがないか、超音波で子宮、卵巣に問題がないか調べます。
月経困難症の治療
薬による治療がメインです。
月経困難症の原因として、排卵が挙げられるため、排卵を抑える役目のある低用量ピルが月経困難症の治療の中では最も効果的です。
鎮痛薬:NSAIDsと呼ばれる痛みどめがよく効きます。いわゆるロキソニンなど。
ホルモン剤:低用量ピル、子宮内黄体ホルモン放出システム(ミレーナ)
漢方:当帰芍薬散や桂枝茯苓丸、加味逍遙散、温経湯など
月経困難症は、自分が辛いと思ったら治療の対象です!
- 生理痛は痛いけど、みんなあるものだし、我慢しなくてはいけないもの
- あまりに痛くて救急車を呼んだことがある
- 生理が来ると寝込むことがあるけど、毎回じゃない
これら全て治療対象です!低用量ピルの内服が最も効果的でお勧めです。月経困難症は適切に薬を使うことでコントロールできる疾患です。ぜひ試してください。
月経前症候群(PMS)とは
月経前症候群(PMS)は、月経の始まる約1週間前頃から始まる、心やからだの不調です。月経が始まると症状が和らぐと言われています。PMSの症状は非常に多岐にわたり、重度の場合は日常生活に大きな影響を及ぼすことあります。女性ホルモンの変化が影響していると言われていますが、まだはっきりとした原因はわかっていません。
過去3回の連続した月経において、その月経前5日間の間に少なくとも下記の症状が一つでも当てはまればPMSと診断できるとされています。しかしながら、ここに記載してある症状は代表的なものであり、PMSの症状は数百種類あるとも言われています。月経の前に体調が悪くて体が辛い場合は、ぜひ受診するようにしてください。
PMSの症状について
- 身体的症状
- 乳房の異常な張り
- 頭痛
- むくみ
- 精神的症状
- 抑うつ
- いらいら
- 不安
- 不眠
- 混乱
月経前症候群(PMS)の治療
PMSは排卵によっておこる女性ホルモンの変化が原因であるとも考えられているため、治療は排卵を止める作用のあるピルが中心としたものになります。一方で、PMSは精神症状が前面に出る場合もあり、その場合は精神科や心療内科との協力が必要です。また、生活環境にも強く影響すると言われており、ストレスを軽減させるような工夫も必要でしょう。
- 生活指導(ストレスの軽減、健康的な食事、睡眠時間の確保、運動など)
- 低用量ピル(特に黄体ホルモンとしてドロスピレノンが含まれているものが効果的)/li>
- 漢方薬
- 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(いわゆる抗うつ薬。PMSの間だけ飲むというやり方も効果的であると言われています。)
当院の月経関連トラブル治療の特徴
オンライン診療で
クリニックである程度の治療方針が決まったあとは、便利なオンライン診療へ移行することもできます。症状によっては最初からオンライン診療を選択することもできます。
月経関連の頭痛は頭痛外来で診療できます
当クリニックは脳神経外科医による頭痛外来も受診することができます。今までは連携の悪かった産婦人科と頭痛外来をスムーズに繋げることにより、頭痛に対してもっと適切な薬を処方することができます。
よくあるご質問
痛み止めはどれくらい飲んでもいいのですか?
痛み止めの種類によりますが、基本的には痛みがよくなるまで飲んで良いと言われています。ただし、ロキソニンなどのNSAIDsは多い回数のむと胃潰瘍になる可能性がありますのでその点はご注意ください。
なるべく生理を起こしたくないけど、どのピルがいいですか?
休薬期間や偽薬のない連続投与のピルがお勧めです。
生理自体を止める薬があると聞いたのですが、使えませんか?
ご年齢によりますが生理を止める薬を使うことはほとんどありません。
性交渉の経験のない方は腟からの診察を行いません。
お腹からの超音波など、他の方法に変えますのでご安心ください。