不育症とは、
どのような状態ですか
流産や死産が2回以上あると、不育症にあたります。お子さんがいても、続けて起きていなくても含みます。生化学的妊娠(化学流産)、異所性妊娠、胞状奇胎は、流産の回数には数えません。原因になりうるものはいくつか知られていますが、調べても分からないことが多いといわれています。回数やいまの状況は問わず、ご相談いただけます。
定義の言い方は、学会で見直しが進んでいます。
不育症とは
どのような状態ですか?
妊娠はするものの、流産や死産を2回以上経験している状態です。
「不育症管理に関する提言2025」は、不育症を「流産あるいは死産が2回以上ある状態」と定義しています。生児がいるかどうかは問わず、流産や死産が連続していなくても当てはまります。日本では、妊娠22週より前に妊娠が終わることを流産と呼びます。
日本産科婦人科学会の用語集では、不育症を「妊娠は成立するが流産や死産を繰り返して生児が得られない状態」としています。ただ、出産したあとに流産を繰り返す方も、これまで慣例的に不育症として扱われてきました。そのため提言では、お子さんがいるかどうかを問わない定義を使っています。
不妊症は妊娠しにくい状態で、不育症とは別のものです。不育症は、妊娠はしてもそれが続きにくい状態をいいます。
定義の言い回しは、これから変わるかもしれません。提言によると、日本不育症学会は用語集の改訂に向けて、「流産あるいは死産が2回以上ある状態」とする定義の案を示しています。
流産の回数は、
どのように数えますか?
自然に起きた流産を数え、生化学的妊娠・異所性妊娠・胞状奇胎は含めません。
日本産科婦人科学会は、自然流産を2回繰り返したときを「反復流産」、3回以上繰り返したときを「習慣流産」と呼んでいます。流産と診断されて手術を受けたときも、自然流産に含まれます。
異所性妊娠、胞状奇胎、生化学的妊娠(妊娠反応は陽性になったものの、超音波で胎嚢が見える前に終わった状態)。提言でも、流産の回数を数えるときは、これらを入れません。
提言は、流産や死産が1回でも、次の妊娠で流死産のリスクが高いと推定される状態を、不育症の考え方に含めています。たとえば妊娠10週を過ぎてから、原因が分からないままおなかの中で赤ちゃんが亡くなったときは、抗リン脂質抗体症候群を疑って検査をします。
回数には数えませんが、3回以上繰り返すときは、不育症に準じて原因を調べることが提言で勧められています。
生化学的妊娠を回数に含めるかどうかは、国際的には考え方が分かれています。提言は、日本の学会の定義を変えず、数えない方針をとっています。
どのような原因が
考えられますか?
いくつかのリスク因子が知られていますが、詳しく調べても原因が分からないことが多いとされています。
日本産科婦人科学会は、流産を繰り返す不育症のリスク因子として、次のようなものを挙げています。
- 子宮の形の異常
- 全身性エリテマトーデスや抗リン脂質抗体症候群などの自己免疫の病気
- 甲状腺などのホルモンの異常
- 夫婦いずれかの染色体の構造の異常
ただ、同学会の説明では、不育症の精密検査を受けても、半数以上は原因が分からないといわれています。提言も、リスク因子が見つかっても、それが流産の原因とは限らないと注意しています。
日本産科婦人科学会によると、妊娠12週未満の流産で最も多い原因は赤ちゃんの異常で、赤ちゃんの染色体の異常は「ほとんどが偶然のできごと」です。この染色体の異常は、お母さんの年齢とも関係すると説明されています。どの検査で何を調べるかは、不育症のページにあります。
原因が分からなかったときは、
どう考えればよいですか?
提言は、これまでの流産が赤ちゃん側の染色体の異常の繰り返しである可能性を説明するよう求めています。
「不育症管理に関する提言2025」は、一般的な検査でリスク因子が見つからないときは、流産しやすい特別な原因が隠れているというより、これまでの流産が赤ちゃん側の染色体の異常の繰り返しであることが多い、としています。
提言では、まず状況をていねいに説明して不安をやわらげ、薬を使わずに次の妊娠に臨むことを基本としています。妊娠が分かったときから支えていくこと(テンダー・ラビング・ケア)も大切だとしています。
流産の回数がとても多いときなどは、別の考え方が示されています。どう考えるかは、これまでの経過をうかがってから、診察でお話しします。
どのようなときに
受診を考えればよいですか?
流産や死産が2回以上あることが、定義の上での目安です。1回でも、ご不安があればご相談ください。
学会の資料には、何回で受診という目安は書かれていません。提言の定義では、流産または死産が2回以上で不育症にあたります。1回でも、次の妊娠でリスクが高いと考えられるときは不育症に含めます。
当院では、不育症の検査とご相談を受けています。流産の回数やいまの状況は問わず、検査を受けるか決めていない段階でもご相談いただけます。他院ですでに検査を受けた方も、あらためてご相談ください。
妊娠そのものがなかなか成立しないことが気になるときは、不妊症の検査の対象になります。受診を考える期間の目安は不妊治療は、いつから始めればよいですか、検査の種類は不妊検査のページにあります。
気持ちがつらいときは、
どこに相談できますか?
医療機関のほか、東京都の「不妊・不育ホットライン」でも不育症の相談を受け付けています。
提言は、流産や死産は人生のなかでも大きな出来事で、不安や気分の落ち込みが起こりやすいとしています。そのあとの悲しみ(グリーフ)は当たり前の反応ですが、不安症やうつにつながることもあり、そのときはメンタルヘルスの専門家に紹介したほうがよいとも書かれています。支えは、ご本人だけでなくご夫婦や家族の単位で考えるべきだともしています。
東京都の「不妊・不育ホットライン」では、専門の研修を受けたピアカウンセラーが、流産を繰り返す方の悩みの相談に応じ、不育症の原因や検査・治療のことも教えてくれます。男性も相談できます。相談できる日時と電話番号は、東京都福祉局のページでご確認ください(2026年9月17日に確認)。
当院では、まずお話をうかがうところから始めます。気持ちの整理がつく前に、話だけしにいらしても構いません。話すのがつらくなったら、その場で言ってください。待合でのお呼びの仕方も、ご希望があれば受付で伺います。
よくある質問
流産が1回だけでも、相談してよいですか?
はい、どうぞご相談ください。提言も、1回でも次の妊娠でのリスクが高いと推定される状態を、不育症の考え方に含めています。
子どもがいても、不育症にあたりますか?
提言の定義では、生児がいるかどうかは問いません。出産のあとに流産を繰り返す方も含まれます。
流産が続けて起きたわけではありません。当てはまりますか?
提言の定義では、流産や死産が連続していなくても、2回以上あれば不育症にあたります。
化学流産も、流産の回数に入りますか?
生化学的妊娠は回数に含めません。ただし3回以上繰り返すときは、不育症に準じて原因を調べることが勧められています。
パートナーも一緒に受診したほうがよいですか?
ご夫婦の血液で染色体を調べる検査など、お二人に関わる検査があります。ご一緒のほうがよいときは、そのつどお知らせします。
次の妊娠まで、期間をあけたほうがよいですか?
日本産科婦人科学会の説明では、流産のあとに避妊の期間を置く必要はないとされています。気持ちが落ち着くまで待っても構いません。
監修・更新
監修:城南レディースクリニック品川 院長 岩﨑 信爾(日本生殖医学会認定 生殖医療専門医/日本産科婦人科学会認定 産婦人科専門医)
最終更新:2026年9月19日
この記事は一般的な医学情報をまとめたものです。個別の診断・治療方針は診察のうえでご説明します。
出典
「不育症管理に関する提言」改訂委員会「不育症管理に関する提言2025」(PDF)
公益社団法人 日本産科婦人科学会「流産・切迫流産」
東京都福祉局「東京都 不妊・不育ホットライン」